漫画的男子しばたの生涯一読者
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漫画的男子しばたの生涯一読者

■ さようならこんにちは 〜単行本未収録作品

それでは単行本未収録の注目作から。

「部長島耕作」 【最終回】 弘兼憲史
「取締役島耕作」 【新連載】 弘兼憲史

部長島耕作
「部長島耕作」
弘兼憲史

ついに「部長島耕作」が最終回! とか思ったら、まあおおかたの予想通り取締役に。とはいえ部長編のしめくくりはけっこう予想外のモノだった。島耕作に、まさに予想外の人物から電話がかかってくるというメタ漫画的なネタにはけっこうびっくりさせられた。まあなんだかんだいって、「モーニング」には島耕作がないとちょっと寂しいような気はする。 (「部長島耕作」最終回:「モーニング」2/28 No.11 講談社/「取締役島耕作」開始:「モーニング」3/14 No.13 講談社))

「浦安鉄筋家族」 【最終回】 浜岡賢次

浦安鉄筋家族
「浦安鉄筋家族」
浜岡賢次

「週刊少年チャンピオン」の名物小学生ギャグ「浦安鉄筋家族」も最終回。といってもこれも島耕作と似たようなパターン。いつものメンツが進級し、3月20日発売のNo.17から新シリーズが開始の予定となっている。 (「週刊少年チャンピオン」3/7 No.13 秋田書店)

「ブラックジャックによろしく」 【新連載】 佐藤秀峰

ブラックジャックによろしく
「ブラックジャックによろしく」
佐藤秀峰

「ヤングサンデー」(小学館)で海難救助をテーマにした傑作「海猿」をモノにした佐藤秀峰が、今度は医療をテーマとした新連載をスタートさせた。超一流大学の付属病院に勤める研修医の若者の視点を通して、現代の日本医療界の現場をセンセーションナルに描いていく作品である。一瞬の判断に人間の生と死がすべてかかってくる極限状況を描き出す佐藤秀峰の筆力は、近年出てきた作家として珍しいほどの正統派な力強さを持っている。医療の最先端という舞台は、その資質が強烈に発揮されそうだ。お話は、すでに序盤からかなりの盛り上がりを見せている。要注目である。(「モーニング」2/21 No.10 講談社)

「少年エスパーねじめ」 【新連載】 尾玉なみえ

少年エスパーねじめ
「少年エスパーねじめ」
尾玉なみえ

本連載第21回で紹介したとおり、以前読切で掲載された「少年エスパーねじめ」が本格的に連載化された。超能力は持ってて正義の意思もあるけれど、結果的に人の迷惑になることにしか力を使ってない少年・ねじめが主人公。いきなり町で出会っためがね君の家に住みついちゃったり、その振る舞いは傍若無人。独特のクセのある絵柄と妙な節回しのギャグが連載になってもいい味を発揮している。(「週刊少年ジャンプ」3/11 No.13 集英社)

「いちご100%」 【新連載】 河下水希

いちご100%
「いちご100%」
河下水希

「週刊少年ジャンプ」としては珍しいバリバリのラブコメ作品が登場。映画大好きな主人公が屋上に飛び出したら、いきなりいちごのパンツが視界を覆い尽くし、彼は謎の美少女とファーストコンタクトを果たす。そのときの女の子を追い求めるうちに彼は、ショートカットで元気のいい見るからに分かりやすいカワイイ女の子と、実はめがねをとるとすごい美人なめがねっ娘の間で微妙な三角関係を形成することに……といった具合。かなりパンチラ多めでトキメキ度の高いガチンコのラブコメ作品となりそう。 (「週刊少年ジャンプ」3/4 No.12 集英社)

「平成義民伝説 代表人」 【新連載】 木多康昭

平成義民伝説 代表人
「平成義民伝説 代表人」
木多康昭

かつて「幕張」で旋風を巻き起こした木多康昭の新連載がスタート。宇宙飛行士になるといってアイドルグループ「IGARASHI」を脱退した主人公が宇宙へ行くための訓練を続けるも、テレビの企画で「IGARASHI」の面々が先に宇宙へ行くことになってしまってブチ切れ。シャトルを乗っ取るところからお話はスタートするが、連載はあっという間にとんでもない展開に。板垣恵介「餓狼伝」や「GTO」などからネタを引っ張ってくるなどすでにやりたい放題。いったいこれからどんな展開になるのか全然分からないが、まあ予想するだけ無駄だとは思う。とにかくこうなったら派手な花火をぶち上げていただきたい。(「週刊少年マガジン」2/27 No.11 講談社)

「神原則夫の人生劇場」 【新連載】 神原則夫

神原則夫の人生劇場
「神原則夫の人生劇場」
神原則夫

オヤジギャグを随所に織り込みつつ妙に飄々とした、独特の作風の持ち主である神原則夫が「アフタヌーンシーズン増刊」に登場。中年サラリーマンの哀愁漂う人生の機微を、脱力するボケに乗せて、さりげなく感動的に描いてしまうその呼吸は絶妙。ジーンとするのに、あくまでナンセンスで重くなりすぎることがないのが不思議。 「アフタヌーンシーズン増刊」Spring Vol.10 講談社)

「MELTDOWN」 【新連載】 遠藤浩輝

MELTDOWN
「MELTDOWN」
遠藤浩輝

「アフタヌーン」本誌で「EDEN」を連載中の遠藤浩輝が、増刊のほうでも新作をスタート。環境汚染により人類から性別が失われつつある未来世界が舞台。第一話では、性器を持たず男でも女でもないけれども、お互いの欠落を埋め合うように寄り添う二人の若者の視点からお話が展開される。初回の出来からしてかなり本格的でSFチックな話となりそうで期待を持たせる。ただし次回は6月発売号掲載ということでちょっと間隔があいてしまうのはツライところ。「アフタヌーンシーズン増刊」Spring Vol.10 講談社)

「6月ドライブ」 【新連載】 森拓真

6月ドライブ
「6月ドライブ」
森拓真

通りすがりの女子高生と小学生男子に金を借りたことが契機となって、この二人に引きずり回されることになってしまった金欠青年。この3人が、静岡と秋田を結ぶ妙なドライブに出かける……という感じ。森拓真はこれまで「トークライブレッスン」などの秀作読切を連発しており、しばた的にはけっこう注目の新鋭である。絵的には垢抜けないところがあるけれども、テンポ良くお話を進める構成力に優れたセンスを感じる。(「別冊ヤングマガジン」3/1 No.029 講談社)

「青 オールー」 【新連載】 羽生生純

青 オールー
「青 オールー」
羽生生純

アクの強い作画と得体の知れない力のあるストーリーを描く羽生生純の新連載。大ヒットを飛ばしたかと思ったら突如引退してしまった漫画家を追いかけて、一人の雑誌編集者が沖縄の地へ渡るところからお話はスタート。その後、この漫画家と編集者は酒場でヤクザにつかまり、彼らの抗争に巻き込まれていく……という感じの第一話。正直どんなふうにお話が展開していくのか今のところまったく予想がつかないものの、いずれにしろ一筋縄で行くとはとても思えない。(「コミックビーム」3月号 エンターブレイン

「高速回線は、光うさぎの夢をみるか?」 【読切】 華倫変

高速回線は、光うさぎの夢をみるか?
「高速回線は、光うさぎの夢をみるか?」
華倫変

これはけっこうびっくりさせられる問題作である。インターネットのホームページで、自殺するまでの100日間を動画で公開する少女の姿を描いた物語。絶望や被害妄想といった思考、ネット上でのひやかしや悪意の言葉などがぐっちゃぐちゃに入り混じり、狂気を募らせていく少女の脳味噌の中身がそのままぶちまけられたような内容となっている。自殺の日に向かってどんどんお話が加速していくくだりには慄然とさせられる。静かなラストシーンも非常に印象的。人によって受け取り方は分かれるタイプの作品だと思うが、著しく刺激的な作品であることは間違いない。(「マンガ・エロティクスF」Vol.14 太田出版 [bk1]

「ドッペルゲンガー」 【読切】 児玉充洋

ドッペルゲンガー
「ドッペルゲンガー」
児玉充洋

一見するとあまり描き慣れていないのかな〜と思われるようなコミカルな絵柄だったが、最後までちゃんと読んでみたらこれがなかなか泣けるいいお話だった。森に住むドッペルゲンガーが、冒険者である少年の姉を殺して彼女になり代わり、人間としての生活を謳歌する。しかし人間としての生活が楽しければ楽しいほど、「弟」に対する罪悪感も増してきてドッペルゲンガーは苦悩することになる。人間に憧れながらけしてホンモノにはなれないドッペルゲンガーの悲しみを優しく描き出しており、感動的な作品に仕上がっている。(「別冊ヤングマガジン」3/1 No.029 講談社)

「OKOSAMA-GUN」 【読切】 双川直也

OKOSAMA-GUN
「OKOSAMA-GUN」
双川直也

8歳の子供でありながらすご腕の殺し屋である少女「仔犬」ちゃんの生き様を描く。コミカルでカワイイ絵柄と、けっこうハードボイルドで読みごたえのあるストーリーのギャップが面白い。(「別冊ヤングサンデー」3/25 No.14 小学館)

「春雨」 【読切】 吉岡康二

春雨
「春雨」
吉岡康二

田舎から出てきて一人暮らしを始めようという女の子の不安な気持ちを丁寧に綴った作品。丁寧に一本一本引かれた描線は、湿気た町の空気の感触をリアルに感じさせる。細やかな描写に見るべきものあり。(「アフタヌーン」4月号 講談社)

「ROBOT」 【読切】 佐原ミズ

ROBOT
「ROBOT」
佐原ミズ

ホンモノの人間が珍しくなり、クローンやロボットが入り混じって構成されている未来社会を舞台に、主人のいなくなったロボットの悲しいほどの忠実さを美しく描写している。キレ味のいい洗練された画風で完成度は高い。(「アフタヌーン」4月号 講談社)

といったところで今月はおしまい。 

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