漫画的男子しばたの生涯一読者
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漫画的男子しばたの生涯一読者

■ 連載ものだにょ〜単行本その1

1月はお正月ということであんまり注目単行本は出ないかも?とか思っていたんだけど、やっぱりけっこう出ました。というわけで今回も2ページで。まずは連載モノの1巻めが発売された作品から。

「ふたつのスピカ」 1巻 柳沼行 メディアファクトリー [bk1]

ふたつのスピカ
「ふたつのスピカ」 1巻
柳沼行

とても良心的な作風を持った注目の新鋭の初単行本。ロケットの墜落事故で母親を失った少女・アスミが、宇宙飛行士を目指して奮闘するという物語である。優しくて暖かみのあふれる絵柄で、宇宙に憧れる気持ち、登場人物たちのまっすぐな想いをとても丁寧に描いている。「ふたつのスピカ」の前段階、読切で掲載された「2015年の打ち上げ花火」「アスミ」も収録されていて、こちらは主人公アスミがもっと幼かったころの日々を描いている。これがまた切なくて優しくてとても気持ちのいいファンタジーとなっている。絵柄的には垢抜けないところはあるけれども、こんなに健気さを素直に感じさせる作品もあまりない。これからも大事に読んでいきたい作品。(メディアファクトリー「コミックフラッパー」で連載中)

「ドロヘドロ」 1巻 林田球 小学館 [bk1]

ドロヘドロ
「ドロヘドロ」 1巻
林田球

魔法使いたちが魔法の練習のため出没し、好き勝手やっている街・ホールを舞台に、トカゲ男のカイマンとその相棒の女性ニカイドウが暴れまくる。普段、魔法使いたちはホールの住人を実験台にしているのだが、カイマンたちは逆にその魔法使いを狩る。魔法といっても、舞台はぼろぼろなコンクリが剥き出しの退廃的な近未来世界といった趣。かなり殺伐としたやっつけ合いをしているのだが、毎回描かれるカイマンたちの食事シーン(主に餃子)など、妙にのどかな雰囲気が漂っているのが特徴。林田球の作画もシャープでかっこいい描線だけど、どこか暖かみがある。絵柄も話も個性的で、軽妙なノリがとても楽しい。なかなか楽しみな素材である。(小学館「ビッグコミックスピリッツ増刊 IKKI」で連載中)

「安住の地」 1巻 山本直樹 小学館 [bk1]

安住の地
「安住の地」 1巻
山本直樹

そういえば山本直樹の長編連載作品はけっこう久しぶりである。延々と砂漠が続く大地で難渋していた女子高生的制服姿の女の子が、崖にこびりつくように家が立ち並ぶ「西の崖」と呼ばれる地にたどり着き、彼女を助けた「ヒガシ」「ニシ」と名乗る男たちと一緒に暮らし始める。お話的に大きな展開はないけれども、途中で日本から来た女お笑い芸人二人組が迷い込んできたり、主人公の少女の悲惨な来歴が語られたりといった事件はある。それでもストーリー展開はあくまで淡々としていて、語られることも何が本当なんだかウソなんだかよく分からない。そういうことが繰り返していくうちに些末なことなどどんどんどうでもよくなっていってしあう、最近の山本直樹作品特有の日常の「だらだら感」がどうにも気持ちいい。(小学館「ビッグコミックスピリッツ増刊 IKKI」で連載中)

「ガガガガ」 1巻 山下ゆたか 講談社 [bk1]

ガガガガ
「ガガガガ」 1巻
山下ゆたか

まずこの単行本を手にとると、その装丁に驚かされる。漫画の単行本の表紙は、普通はきれいなコート紙が多いのだが、この本はぺらぺらの新聞紙みたいな紙を使っていて手触りからして「おっ」と思わさせる。で、この作品はヤバい薬を一手に取りしきり他の地域からアンタッチャブルとして恐れられている「キカイ島」から、盗まれた薬を追って本土にやってきたベニマルとレーイチという男二人のコンビが主役格として活躍する。最初はなんてことない事件に思えた薬の盗難が、実はけっこう大ゴトにつながっていて……といった筋立て。硬質な線で細部までが克明に描かれておりクオリティは非常に高く、ただのヤンキー漫画とは一線を画す。とても不穏で迫力があって面白いのだが、連載は現在長期中断期間に入っている。続きが気になるのでぜひ連載を再開してほしいものだが。(講談社「ヤングマガジン」掲載作品。連載は現在中断中)

「キャラメラ」 1巻 武富智 集英社 [bk1]

キャラメラ
「キャラメラ」 1巻
武富智

美しい作画と印象的なドラマ作り。期待の俊英・武富智の初単行本。不良のたまり場だったゲーセン「キャラメル」で使いっ走りをしていた少年・数井が、そこで店員をしていた年上の女性・アッ子さんと鮮烈な出会いをし、成長してから再びキャラメルに引き寄せられていくという青春ストーリー。初の長期連載ということでお話としてのまとまりはイマイチなのだが、一話にいっぺんくらいは必ずハッとさせられる印象的なシーンが含まれている。また武富智は、これまでも「ヤングジャンプ」の増刊枠を中心に傑作短編を何本もモノにしている有望株である。この作品をきっかけに、短編集も刊行してくれないかな〜と期待している。(集英社「ヤングジャンプ」で連載中)

「ORANGE」 1巻 能田達規 秋田書店 [bk1]

ORANGE
「ORANGE」 1巻
能田達規

能田達規版「サカつく」とでもいうべき物語。愛媛のみかんジュース会社を母体に持つ弱小サッカークラブが天才ストライカー・若松ムサシを得て、資金難、薄い選手層などの逆風に耐えながら一部昇格を目指して闘っていく過程を描いた作品。サッカーの二部→一部の昇格争いはかなり長丁場で過酷な闘いであるだけに、漫画のほうもドラマチックに盛り上がっていきそうな気配。(秋田書店「週刊少年チャンピオン」で連載中)

「警視正 大門字さくら子」 1巻 作:大西祥平+画:高橋のぼる 小学館 [bk1]

大門字さくら子
「警視正 大門字さくら子」 1巻
作:大西祥平
画:高橋のぼる

周囲にあるすべてのものを「器の大きさ」を基準にはかる美人警察署長・大門字さくら子のハチャメチャな生活を描く作品。美人なわりには最初の登場シーンからしてジャージ姿だし、牛丼の食べ方に異様なこだわりを見せたりと、妙な味わいがあっておかしい。驚異の女体盛り漫画「リーマンギャンブラーマウス」を描いた高橋のぼると、漫画評論などで個性的な仕事をしている大西祥平というクセモノコンビによる作品だけに、かなりダイナミックでヘンな漫画となっている。なんだか目が離せない。(小学館「ビッグコミックスペリオール」で連載中)

「キーチ!!」 1巻 新井英樹 小学館 [bk1]

キーチ!!
「キーチ!!」 1巻
新井英樹

漫画界きっての骨太なストーリーテラー、「ザ・ワールド・イズ・マイン」の新井英樹の最新作。無口で乱暴だけれども、けしてへこたれない強い幼稚園児・染谷輝一、通称キーチの人生を描く作品。キャラ主導の作品なので、展開はキーチしだい。何をしでかすのか1巻が終わった段階でもまだ全然予想がつかないが、何かデッカいことをやってくれそうな気配はぷんぷん漂っている。(小学館「ビッグコミックスペリオール」で連載中)

「てるてる×少年」 1巻 高尾滋 白泉社 [bk1]

てるてる×少年
「てるてる×少年」 1巻
高尾滋

信州の旧家のお嬢さまで、現在は親許を離れて町の中学校に通っている御城紫信を追ってやってきた、おつきの少年忍者・奥才蔵。才蔵は一見弱っちいメガネくんだけど、紫信を守るためなら信じられない力を発揮する。この二人を中心に、微笑ましいドラマを展開していく作品。それぞれのキャラクターの微妙に変化する想いを浮き彫りにする描写力の高さに加え、才蔵がショタ的に萌え萌えな存在であることも大きなポイント。高尾滋の描く少年少女は前からすごくかわいかったが、今回はその魅力をとてもストレートに出してきている感じ。(白泉社「花とゆめ」で連載中)

「ぴよこにおまかせっ!」 1巻 ひな。 メディアワークス [bk1]

ぴよこにおまかせっ!
「ぴよこにおまかせっ!」 1巻
ひな。

おなじみ「デ・ジ・キャラット劇場」。この作品の主役は、でじこを誘拐して身代金をゲットしようと企むブラックゲマゲマ団の首領・ピョコラ=アナローグIII世、通称ぴよこ。作画は本来のコゲどんぼではなくひな。だが、こちらも十分にかわいい絵柄でまったくもって違和感がない。なんかいろいろやってるけど、とても平和で頭を使わないでもつるつる読めるし、素直に楽しめるコメディになっている。(メディアワークス「電撃コミックガオ!」で連載中) 

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