漫画的男子しばたの生涯一読者
TINAMIX
漫画的男子しばたの生涯一読者
しばたたかひろ

■合併号のなぞ 〜雑誌

雑誌をよく買っている人はたぶん気づいたと思うが、6月発売の月刊誌はやけに合併号が多かった。「7+8月号」という奴だ。つまりこれは7月発売の号をお休みする雑誌が多かったからだ……というわけではもちろんない。なぜ合併号が増えたかといえば、月号表示に関する出版社と取次間の取り決めが変わったからで、これまでは21日発売号から実際の発売月の2ヶ月先の号数(つまり6月発売号なら8月号)が付けられたのだが、これが「17日以降」に変更されたのだ。これによって17日〜20日発売の雑誌が軒並み7+8月号となったというわけである。

すべての雑誌が移行してくれればまだ良かったのだが、例えば「ウルトラジャンプ」(集英社)、「月刊サンデーGX」(小学館)などは6月19日発売だったが号数表示は7月号のままだった。「7+8月号」にした雑誌にしても、発売日が変わったわけでもないのに2001年だけ11号しか出なかったことになるわけで、後から見たら混乱の素となるに違いない。こういった読者にとってまったく利点がなく、必要とも思えない改変は正直勘弁してほしいところである。

なんでこういうことになったのかはよく知らないが、なんにせよ読者としては混乱してしまう。ただでさえ雑誌の号数表示は読者の感覚とはズレている。もともと2ヶ月先の月号を表示する時点で分かりにくいのだ。例えば1月号がその前の年の11月に出て、肝心の1月にはすでに書店から消えているとか。週刊誌なんかはさらに読者からは規則性が分かりにくい。号数表示を見ても、ある程度慣れた人でなければその雑誌がいつごろ発売されたものか判別するのは困難だろう。個人的な意見でいえば、ちょっと表記が煩雑になるけど、その本が書店に並ぶ期間をそのまま号数にしてくれるのが一番ありがたい。例えば6月10日発売の月刊誌なら「6/10〜7/9号」といった具合に。

といきなり堅苦しい話から入ったけど、いつものようにまずは雑誌チェックから。

ガンダムエースNo.001 Summer (角川書店)
ガンダムエース
「ガンダムエース」
No.001 Summer
角川書店
6月に創刊された雑誌の中で、まずびっくりさせられたのがこれ。タイトルを見れば一目瞭然、ガンダム専門の漫画誌である。創刊号の目玉は「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」。アニメのガンダムでキャラクターデザインをした張本人、安彦良和がファーストガンダムを描くという連載だ。当たり前だがさすがに本家本元、これこそガンダムというべきガンダムっぷり。実際モビルスーツはやたらカッコイイし、かつてガンプラに燃えた人間に「ああこれこれ」と思わせるだけのものがあった。このほかに漫画は北爪宏幸、介錯、大和田秀樹が執筆。「鋼鉄天使くるみ」など、オタク的ベタなノリでベタなネタを圧倒的ともいえるテンションで展開することで定評のある介錯の「ジオン少女物語」は、ガンダムものながら女の子がいっぱい出てきて実にこの人らしい仕上がりで立派。季刊ぺースという発行間隔で、「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」あたりはホントに連載が終わるのかという懸念はあるものの、やはりかつて、そして今もなお現役を続けているファンにとっては見逃せない雑誌ではある。だた、それ以外の層にとっては、さすがにあんまり用はない本なのかも、とは思う。とりあえずガンダマーは買っとくべし!
コミック伝説マガジンNo.1 (実業之日本社)
コミック伝説マガジン
「コミック伝説マガジン」
No.1
実業之日本社
びっくりしたといえばこちらもそうだ。現在、日本の漫画界は少年ジャンプ系を中心としてリバイバルブームまっただなか。ある意味、この雑誌はそのブームの最先端に立っているのかもしれない。まずは収録作品を挙げてみよう。

作:手塚治虫+製作:手塚プロダクション「鉄腕アトム」/永井豪とダイナミックプロ「オモライくん2001」/画:原田久仁信+作:原康史「プロレスヒーロー列伝 力道山」/吉森みき男「新しまっていこうぜ!」/三浦みつる「Theかぼちゃワインsequel」/えびはら武司「まいっちんぐマチコ先生」/コンタロウ「新1・2のアッホ!!」/藤子不二雄A「踊ルせぇるすまん」/みやたけし「嵐のフィールド」/石ノ森章太郎「ストリップ」(復刻)/池上遼一「黄金仮面」(復刻)/望月三起也「突撃ラーメン」(復刻)

よくもまあこれだけ集めてきたものだとさすがに驚くラインナップである。しかも上記の作品、「(復刻)」と書いてあるもの以外は全部新作なのである。それだけに、第15回で紹介した「コミック特盛」のような1冊まるまる再録の雑誌と比べると興味深く読めはするのだが、現在の漫画に慣れてしまっている読者としてはさすがに古いという印象は否めない。ともあれ、これらの作品をリアルタイムで読んでいた人が「ああ、あったあった」と懐かしみながら読むにはいいのであろう、きっと。

ビッグコミックスピリッツ7/31増刊 新僧 (小学館)
ビッグコミックスピリッツ
「ビッグコミックスピリッツ」
7/31増刊 新僧
小学館
このところ、IKKI、山田x号と、次々新増刊を出している「ビッグコミックスピリッツ」グループにまた新顔が登場した。この増刊のコンセプトは、スピリッツ系の若手作家だけで誌面を構成し、作品発表の場を与えるというもののようだ。今回の執筆陣とタイトルは以下のとおり。

乗附雅春「中途退学物語」 / 池田圭司「ネル」 / ツギノツギオ「スッパニタータ」 / 見ル野栄司「マンガンブラザーズ」 / 白發中也「カスミガウラー」 / コンダレーシング「ビリヤードスター」 / 上西淳二「柔道山脈大俵」 / 中村裕「リーゼント2001」 / 西崎泰正「ジャイアンツの星」 / 耳原一雄「Eの食卓」 / 橋口コウジ「紅葉〜kureha〜」 / いわしたしげゆき「潜水少年」 / 堀内浩樹「大脱走」 / 三浦明「十手無用」 / 上野景照「Blue.Blue」 / ユタ「ハンプ」

個人的には、以前ヤングサンデーで「サルハンター」という邪悪な猿と人間の戦いを描いた怪作を連載していたツギノツギオが登場していたのうがうれしかった。「スッパニタータ」は、釈迦の生涯に心打たれた少年が、禁欲的な生活を送りつつも日々性欲に悶々とし続けるという話。アンバランスな絵柄はたいへんにクセが強いけれども、得も言われぬムンムンするエネルギーを持っておりとても濃厚な読み口となっている。それから他誌で連載を持っていたといえば、いわしたしげゆきも、「そらみみくろすけ」名義で「放課後戦隊ゴタッキー」(単行本は全3巻/講談社/絶版)という漫画を以前描いていた人だ。他誌デビューの人は他にもいるかもしれない。

そういった一部を除き若手ばかりではあるのだが、意外と全体にメジャーっぽさを持ったまとまりのある誌面になっていたのは、さすがにスピリッツ系という感じがした。なんにせよ、普段はあまり見ることのない作家さんの作品をまとめて読めるというのはうれしいところ。細々とでもいいので、こういう増刊はこれからも続けてもらいたい。

近代麻雀オリジナル増刊号 ウイニング8/1 夏号 (竹書房)
近代麻雀オリジナル増刊号 ウイニング
「近代麻雀オリジナル増刊号 ウイニング」
8/1 夏号
竹書房
こちらも新創刊の増刊である。執筆陣は伊藤誠、秋月めぐる、犬上すくね、重野なおき、日高トモキチ、大武ユキ、安彦麻理絵、後藤正人。麻雀系ではありつつも、麻雀の勝負を見せる漫画というよりは、お話の中に麻雀が出てくるといった感じの作品が多め。例えば犬上すくね「おかしな二人」は、平凡な麻雀好き男子と、彼の幸運の女神的存在の女の子の関係が主で、麻雀というよりはむしろラブコメだし、秋月めぐる「ハリケーンガール」は麻雀は出てこずボウリングがメイン。そのほかの作家陣もどちらかといえば近代麻雀各誌連載陣のような、ギラギラした印象の人はおらず、爽やかな作風の人で固めている。近代麻雀系だと脂っこくて読めなかったみたいな人でも気楽に読める雑誌となっている。
チャンピオン.AIR (秋田書店)
チャンピオン.AIR
「チャンピオン.AIR」
秋田書店
富沢ひとし「エイリアン9」の特集本的増刊かと思っていたらそれだけの本ではなかった。扱いはヤングチャンピオンの増刊なのだが、その実は秋田書店の雑誌から、いろいろ作家さんを集めてきたといった趣。執筆陣は、富沢ひとしのほか、葉月京、倉島圭、瀬口たかひろ、SALADA、柴田芳樹、もりしげ、大藤玲一郎、大熊ジン、かないしぎんたん、有希うさぎ、吉川うたた、東雲水生、丸尾末広。週刊/月刊少年チャンピオンだけでなく、ミステリーボニータなどのホラー誌、少女誌系の作家も参加している。こういうお祭り的な増刊というのは、なんだか見ててワクワクするし面白い。ほかの出版社でもやってみたら楽しいと思う。 >>次頁
page 1/3
==========
ホームに戻る
インデックスに戻る
*
前ページへ
次ページへ