タニグチリウイチの出没!
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タニグチリウイチの出没!

「TDRをぶっ飛ばせ!」

長期低落傾向を続ける「紅白歌合戦」の視聴率を後目に、千葉県浦安市にある「東京ディズニーリゾート」ではこの大晦日も、全国から何万人という人たちが集まっては、カウントダウンなんかをして2002年の訪れを祝っていたらしい。そうでなくても「東京ディズニーリゾート(TDR)」、さすがは世界有数のテーマパークだけあって、徹底的に作り込まれた建物と練り込まれたアトラクションが非日常の世界へと人を誘い、現実の辛さ厳しさを忘れさせてくれると大好評。「東京ディズニーシー」やショッピングモール「イクスピアリ」のオープンなんかもあって、来場者の数を年々着実に増やして来ている。

イクスピアリ
ヨーロッパ風の中庭から遠くのぞむはシンデレラ城。 門前にあっても「イクスピアリ」はしっかり「TDR」してる。

その代わり、ほかの東京周辺にあるテーマパークの類は来場者数がこれまた長期低落傾向にあるようで、屋内プールの「ワイルド・ブルー横浜」はすでに閉鎖になってしまったし、「横浜ドリームランド」と「向ヶ丘遊園」この冬から春にかけ、相次ぎ閉園となる予定。そうそう、オウム真理教で有名になった上久一色村にあった「富士ガリバー王国」も潰れたなあ。もちろん、「TDR」が日々、人の心を楽しませるにはどうしたら良いんだろうと考えに考えを重ね、どうやったら人に集まってもらえるんだろうと営業努力に勤しんでいることは分かってる。分かってるけど、でも一方には、そんな“戦略”にまんまんと乗せられ、浦安へと詣でさせられ非日常に浸らせられている人々の、どこか“どーぶつ的”な雰囲気に、いまいち釈然と出来ない。

なるほど行けば楽しい「TDR」。与えられたテーマとやらに乗せられはめられ流される、その快感に酔いしれて悪いことなんてひとつもない。けれどもたまには、ひとつ思想のもとでガチガチに作り込まれた世界に身をゆだねるんじゃなくて、いろいろな場所で行われているいろいろなことから自分なりのテーマを探ってみるのも悪くはない。平凡に過ぎていく日常でも、何の気なしに暮らしている街でも、そこに何らかのテーマを見つけ、すくい上げることができさえすれば、人はいつだってココロの中にあるテーマパークに足を踏み入れることができる。

彼女とスキーリゾートでともに迎える新年を否定する訳では決してない。彼氏と「TDR」でカウントダウンを数える大晦日だって素晴らしい。ああ、素晴らしいともさ。けど、それが不可能な身の上だからといって、落ち込んでいてはつまらない。ココロにテーマをひねり出し、街へと足を踏み出して、そこに自分だけのテーマパークを見つけ、浸り、ドップリとはまり込めばいい。そう思い、街をふらつき歩いて見つけだした非TDR的年末年始の過ごし方の数々を今回は一挙にご紹介。「TDR」に無縁の頭がひねりだした妄想のテーマパークとも言うけどね、ふう。

「東京ドーム」は大混戦

それにしてもすごかった大晦日の東京・水道橋は「東京ドーム」周辺地区。丑三つ時も近いというのに、まだ10代をおぼしき少女たちが群れをなして歩き座り輪になって固まり、今見たばかりのイベントの興奮に喚起の声をあげている。恒例になっているジャニーズ事務所系タレントの年越しイベントに出て楽しんだばかりの少女たちで、JR水道橋の駅は真夜中だというのにホームからあふれんばかりの人で大にぎわい。少女にお目にかかれるチャンスの滅多にない暮らしを日々している身とって、それはそれで眼福な光景ではあったけど、そうした個人的な事情はおいても、かくも大勢の人を集めるイベントが、浦安ではない場所でもしっかりと開催されているのは面白かった。

3万人以上がひと所に集まっては同じ舞台を見て同じ歓声を上げる姿は、参加している個人個人の想いの強さはそれとして、端から見れば同じ空間に身を置くことで、一体感を味わいたいという人の集合体に見えないこともない。その意味で、ジャニーズ・タレントのイベントに出ること自体は、「TDR」でカウントダウンに参加するのと大差ない。問題は、同じ「東京ドーム」という場所が、ジャニーズ・タレントのイベント一色で包まれていた訳ではない、ということだ。

闘強童夢
大きな卵の中ではジャニーズ・タレントに少女た ちがキャアキャア。隣りの「ジオポリス」では兄ちゃん姉ちゃんが鳥肌みのるに ウォー。これこそが多様性なのだ。

この日、「東京ドーム」のすぐ隣りにある「後楽園ゆううえんち」内の屋内型ゲームセンター「ジオポリス」で開催されたのは「1231ジオポリス陥落!」という聞くに恐ろしげなイベントだった。出演者は鳥肌実。そう、右翼的な言説にあふれた演説を、右翼的な扮装をして右翼的な場所でやってのけて人気の芸人、そのあまりにもテレビに不向きな内容から、最後の密室芸人と呼ぶ人もいたりいなかったりする日本万歳党党首こと鳥肌実の演説会が、よりにもよってジャニーズ・タレントのコンサートのすぐ隣りで開かれていたのだった。

もちろん、「1231ジオポリス陥落」それ単体を抜き出せば、規模は1000人程度とはいっても立派にひとつのイベントで、出席する人たちに働く感性にも、同じ目的を持ってひとつところい集まりたいというニュアンスが色濃くあって、「TDR」でカウントダウンに酔いしれたり、「東京ドーム」でジャニーズ・タレントの姿に嬌声を上げるのとやっぱり大差はない。熱烈なファンを何百万人と抱えるジャニーズ・タレントでもあるまいし、まさか鳥肌実の大晦日なんて人が東京から出払う日に開催されるイベントで、開場直前にチケット売場に到着して、当日券すら完売になって追加発売を待つ行列に直面して、入れるんだろうかと不安にかられながらチケットの発売を待つことになろうとは思わなかったけれど、それはそれ、「TDR」やジャニーズ・タレントに少しであっても近づいた現れ。驚くべきことではない。

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