How To Training HIROPON FACTORY ART Class 村上隆
こんにちは、TINAMIX読者の皆様。
はじめまして。私はアーティストの村上隆といいます。
オタクとファインアートの異種格闘技を延々と行っている人間です。現代アメリカとヨーロッパ諸国を中心に動いているアートワールドサーキットのシステムにいかに日本のアーティストが食い込むのかというのがテーマでやって来ています。今回は、その日本における美術教育の未来と新人アーティスト諸君をいかに鍛えてものにしてゆくかについてお話ししようと思います。
私はアーティスト活動と並行して、HIROPON FACTORYというアーティスト集団のディレクションも行っています。業界があまりにも人材不足なので、底あげ作業とも考えている活動なんですが。そこで育成している主なアーティストは、「ミスター」「タカノ綾」「青島千穂」「森岡友樹」「藤本昌」といったところで、それぞれに発表、メディア露出の機会も増えています。
ディレクションのやり方ですが「君の良い所はここだよ」という場所を本人達に気付かせることのみに集中する「良い所ドーピング」を行っています。(ちなみにアート業界には別に検査があるわけではないので例えばドラッグを使ったとしてもドーピングチェックはされません。むしろアーティストを構成するサブテキストとしてドーピングは面白がられたりします。)
自分の作品のコアを見つけられなくて、でも何か自分では表現するの楽しい! ただそれだけで作品を作る作家になれると思っている子達が現行の美大、専門学校生には多いです。ただそのほとんどが自分では「好き」以上の表現には至らず、才能のある子でも消化不良を起こしているような状態です。その子達の表現をこちら側からブースターかけて、エンジン全開させるにはかなりのチューンアップが必要でこれが僕は美術教育だと思うのです。
個人で制作していると、最初はエンジンがプスンという感じが、ほとんどだと思うのですが、うちのアーティスト達には、それを何人かのHIROPONのスタッフでチューンしてアドバイスをくり返し、作品のクオリティを上げたり、ポイントを絞っていったりしてゆきます。ただそのチューンの仕方は、極端な形でのチューンアップなので、終わった途端それが有効かどうかは分かりません。
「ミスター」にせよ他のアーティストにせよ、私達がそういったチューンを行い、何年か過ぎた今になって振り返ると、なんとかアーティストとしての基本は出来上がったという結果が出ています。でもそういった過程を踏まえてくると次第に、本人が学習して自分の力でチューンも微妙に変えてゆけるようにもなります。どのアーティストも段々とスタイルは固まってきていますが、ただ最初は短期的な展覧会に焦点を合わせたチューンアップなので、ドーピングを受けるアーティスト側にはストレスがたまる方法ではあるのですが…。
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