「魅せられて三井寿」
やおい、それは腐女子の秘めやかな悦楽。よさげな男二人をみたとき、やおいっこが最初に考えるのは「受け攻めは?」。受けというのは突っ込まれるほう、突っ込むほうは攻めといいます。突っ込むってどこに? そんなこと乙女に聞いちゃ駄目よというか驚くべきことに受けには人類の英知の結晶ミラクルホールこと「やおい穴」がついているのです。けっしてアナルに挿入ではありません。その証拠として受けは痔で苦しむことはないばかりか、あらふしぎはじめてにもかかわらず攻めの愛撫に「…濡れてきたな」。まことにやおい穴は偉大です。そしてある人物を受けとみるか攻めとみるかで、やおいっこたちは今日も熱く不毛なバトルを繰り広げているのです(まあどっちもOKの「リバ」と呼ばれるひともいますが)。受けか攻めかでその人物はまったくの別人なのです。
今回は数年前、やおいっこも一般人も問わずに大ブレイクを果たしいまだに熱狂的なファンが存在するまんが、男子なら知らないとはいわせない週間少年ジャンプ連載「スラムダンク」(井上雄彦作)の脇キャラ、三井寿とやおい作家について語らせていただきます。
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『本当に、やさしい』
(c)よしながふみ
青磁ビブロススーパーBE×BOYコミックス 1997年
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『グズんなってGO 』
(c)語シスコ
語シスコ個人同人誌 1995年発行
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いったんは不良の道を選んだ三井が夢をあきらめきれずに叫んだ一言「バスケがしたいです」。この言葉に何人の乙女が道を狂わせられたことでしょう。実際、主人公花道とライバル流川のカップリング(恋愛感情を持つふたりを指しこう呼びます。略称カプ)、花道×流川と流川×花道(攻め×受けが基本表記。上述のとおり受けか攻めかで全く違うジャンルと考えるのが無難です)まっさかり(まあ実際さかってますが)のなか、地味に人気を集めたのが三井。私見ですが実力派の作家たちがこぞって描いたのが三井がらみのカプでした。
たとえば三井攻めでいえばよしながふみ。乱暴でひねくれた三井×イノセントな木暮という話を描かせたら随一。その片鱗は短編集「本当に、やさしい。」の表題作などでみることができます。そして三井受け。少数ですが熱烈な支持者がいます。語シスコはそのひとり。デビュー短編集「ラブ&カタストロフィー」では三井の不良面を押し出した感のあるいまどきの男の子たちのラブと亀頭を描いています。
さて、これを読んでいるあなたはよしながふみ派それとも語シスコ派? やおいっこなら即答です。「やっぱイノタケが最高!」そうですやおいっこがどんなに血をたぎらせてやおいを描いても本家には決してかなわないのです。いつか井上雄彦が第二部を描いてくれること、それがスラムダンクやおいっこの最大の夢。「バカボンド」も「リアル」もおもしろいけどね。
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