■『レディ・ギネヴィア』、いよいよ文庫化
祝文庫化、『レディ・ギネヴィア』!! 2000年11月16日、小学館より発売です。つまりこの拙文が皆様の目にふれた今日発売だ。
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小学館コミックス文庫
2000年11月発売
本体価格 648円+税
名作、いよいよ文庫化!
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いやもう、少女漫画ファンの間では、いまかいまかと待ち望まれてた文庫化ですよ。「○月頃出るらしい」、「いや延期になったそうだ」、「未収録作がつくんじゃないか」って噂が先行しまくりでしたから。でもついに発売だ。これで、「古本屋いくら回ってもないんです」とか「ようやくあったけどプレミアついてた」という悩みから解放されるぞ。
「昔出た単行本持ってるからいらない」という方、単行本未収録作「オリバー」も収録されるぞ。悪いことはいわん、買っとけ。
余談だが、漫画の文庫化と音楽のCD再発は、よく似ている。
- 名作が入手しやすくなる
- 場合によっては、単行本未収録作(未発表曲、シングルB面曲)が掲載(ボーナストラック)される
- サイズが小さくなる
などなど。
「文庫で買うのはいやだ」という人も稀にいて、まぁそれはそれでいいんだけど。でもそれは、「アナログでないとダメだね、フフン」と言いつつ中古レコード屋で再発CDの何倍もの金を出して買ってる、渋谷レコードヴァレー界隈の自称DJくんたちとなんら変わりがないことだってくらいは、よーく認識して欲しいもんだ。あたしなんざ、読めりゃいいのよ、聴けりゃいいのよ精神で生きております。だいたい、漫画でスクラッチできるわけじゃないんだしさ。
閑話休題、今回の文庫化を記念して、「青少年のための少女漫画入門」でも、この80年代中期の名香智子作品、『レディ・ギネヴィア』を大・大・プッシュ。身近にも、「名香智子にはまったのは、この作品がきっかけ」という人が多く、絶対取り上げたい作品だったのだよ。もちろんあたしも、この作品に魅了されて、コミックスそろえた口です。
■正しき男女交際
でもって、そこまで大・大プッシュする名香智子漫画の魅力とは何か? それは自由恋愛である。「自由恋愛」というのも完全に死語だな。だいたい「自由恋愛って何よ?恋愛って自由なもんじゃん」と言われそうだ。でも、果たして恋愛って自由なもんか? 少なくとも、漫画とか映画で語られる恋愛は、すごく不自由なもんだ。
たとえば、最近のありがちなハリウッド恋愛映画。主人公はキャリア・ウーマン。彼氏もいるけど心が満たされない毎日。そんなある日、自分と価値観の違う男性と出会う。最初は反発を覚えつつも、徐々に彼に慣れていき、彼に対して恋心を持っている自分に気づく。そしてなんやかんやの紆余曲折を経たあげく、彼と結ばれる。そして、本当の自分に気づく。
こんなの恋愛映画と呼ぶのはおこがましいです。これからは、本当の自分映画とでも呼ぶべきだろう。または、メグ・ライアン映画と呼んでも可。要は、愛とかどうでもよくて、自分が可愛いだけでしょ、正味な話。だいたい、男でなくてもいいじゃん。メグ・ライアン映画では、相手の男をイルカに変えても、ストーリーは成立するはずだ。
ことほどさように、漫画とか映画といったウソ話で描かれる恋愛は、不自由なものである。「本当の自分」とか「真実の愛」という言葉にがんじがらめなのだ。なお、ウソ話という言葉にいまいちピンとこない方は、以降「虚構」とでも脳内変換してもらいたい。
対して、名香智子の漫画には、本当の自分なんて抽象的な単語が出てくる余地はない。なぜなら、すべてのキャラが自立しきっているからだ。もちろん、どのキャラも悩みを持っている。しかしそれは、「本当の自分になりたい」なんて曖昧なものではない。もっと具体的なものだ。
その具体的なものの一例。『レディ・ギネヴィア』中に「サー・アーサー」という回がある。この話は、要は作品中のサブキャラである、奔放な才媛ユーリエと貴族の御曹司アーサーがいかにしてくっついたかという話だ。
ユーリエは、週末自分をデートに誘ってくれるアーサーに好意を持っていた。しかし、デートの後自宅に誘っても、ドアの前で帰ってしまうアーサーに耐え切れず、別の男と同棲してしまう。もっとも、その男は気に入らないことがあるとユーリエを殴ってしまうような男なのだが。
ある日、ユーリエはアーサーにきっぱり言い渡す。
- ユーリエ
- 「でも食事や映画だけなら結構!!わたしは紳士と淑女のおつきあいは苦手なのよ!!」
それを聞いて、アーサーは自分の悩みをユーリエに対して吐露する。
- アーサー
- 「問題は……いつもわたしの目の前にある問題は…わたしがきみを満足させられるかということなんだ」
そう、自立した人間にとっての悩みとは、かくも具体的なものである。たとえ、他人から見ればどんなにしょうもないことであろうとも。
しかも告白はこう続く。
- アーサー
- 「きみが成熟した女性であり、わたしにはそういう経験がなく自信もない。どのようにしたらいいかわからないし、タフでもないし…」
自立した人間というのは、決してかっこつけた人間のことではない。自分の漠然とした感情を、言語化して伝えることができる人間のことである。場合によっては、肉体言語もあり。つまり、相手と対話ができる人間ということに他ならない。そして、恋愛において一番大事なものが、対話であることはもはや言うまでもないこと。まったくこれこそ、正しき男女交際。
ところで、上記引用台詞を見て、「何のこと言ってるのかわからない?」という方いらっしゃいますでしょうか? もし、いらっしゃいましたら、説教してやるから俺のとこへ来い!!(もちろん肉体言語付きの説教)>>次頁
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