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■マンガと音楽の奇妙な関係
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『-ペケ-の体操CD』 PONY CANYON,1993
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マンガを読むとき、しばしば音楽を流しています。本連載でも、もとむら氏がマンガと音楽の絶妙な関係を語っていますが、確かに相性のいいBGMにハマると気分もさらに昂揚します。
で、人気があるマンガになると、イメージアルバムが出ることがあります。さすがにその音は、多くの場合、マンガの世界観にピッタリ合致します。イメージアルバムをBGMにマンガを読むと、感慨もひとしおです。が、中には驚くほど期待と違うものもあります。
新井理恵『×-ペケ-』も人気があったため、CDが2枚出ています。1枚目のCDが『-ペケ-の体操CD』(PONY CANYON,1993)[図]ですが、正直言って、これがなんだか、実によくわかりません。名前のとおりラジオ体操風味やエアロビクス風の曲が収録されていますが、マンガとの関連が甚だしく不可解なのです。これをBGMに『×』を読んでも、ちっとも盛り上がりません。逆に、その萎え萎え加減が実に『×』らしいといえば、そう言えないこともないのでしょうか。付録でついてくる「ペケ体操出席カード」など、実に脱力します。
しかし、マンガのイメージアルバムには、思わぬミュージシャンが参加していることがあります。『-ペケ-の体操CD』の場合、それが大槻ケンヂです。そして、大槻ケンヂが作詞した曲を、新井理恵本人が熱唱しています。新井理恵のかわいくて色っぽい声の脱力具合がハンパではなく、ハイ・レベルの萎え萎えパワーを放射しています。聞いた後、しばらくは力が抜けて動けません。
しかし、大槻ケンヂのオリジナル歌詞をもらえるとは、うらやましい限りです。そこで、筋肉少女隊をBGMに『×』を読むことを思いつき、さっそく実行してみました。そして、それは想像どおりというか、予想に反してというか、尋常ならざる驚くべき相乗効果を発揮したのです。ちっとも笑えなくなるのです。音なしで読んでいたときは、ヤケクソの愚痴も、脱線気味の悪口も、ときどき荒れる描線も、ギャグだと思って陽気に笑えました。が、「ダ〜メ人間〜」という音波で満たされた空間では、徹底的にシャレになっていなかったのです。
この世にはそっとしておいたほうがいい世界もあるのだなあと痛感した次第です。(はいぼく)
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