「愛紗ちゃん!男の人だよ!男の人!触ってもいいかな?いいかな?」
「いけません桃香様。むやみやたらに男の人に触っては....」
「そう言いながら、愛紗も興味深々なのだ」
「鈴々!余計な事を言うな!」
「....どうしてこうなった」
目の前に居る三人の女の子を前に、こう呟かずにいられない。
『三国志』
漢王朝の権威が失墜し、黄巾の乱から始まった戦乱の時代。
大陸を治めていた諸侯は戦いに次ぐ戦いで次々と滅び、大陸の行く末は3人の男に委ねられた。
『己の野望の為』
『民の為に』
『一族の悲願を果たす為』
それぞれの悲願を果たす為に、幾多の英傑が彼らに付き従い戦い抜いた。
この時代は現代日本でも人気が高く、小説・漫画・ゲームなど多種多様な媒体で親しまれている。
そんな三国志の英傑達に会える機会があり、会いたいかと問われれば会いたい。
俺だって曲がりなりにも剣術を学んでる身だ。出来るのであれば、歴史の教科書に載る程の英雄に一手御指南願いしたい。
でも.....
「息を荒くして…今にも襲い掛かってきそうな女の子はどうなのさ…」
「あの…落ち着きましたか」
「ごめんなさい、初対面なのに見苦しい所を見せちゃいました」
学校の寮で寝ていたはずが、起きたら見知らぬ土地。周囲に建物は無く電波も通じない。
自分に起きた状況を理解出来ずに居た自分の前に現れた目の前に居る『劉備』『関羽』『張飛』を名乗る美少女。
一瞬時代劇の撮影か?とも思ったが、俺がそんな時代劇に出演するハズもないし、監督やカメラマンなどのスタッフも見当たらない。目の前に広がるのは平原とごつごつとした山脈に美少女の3人だけ。
これがコスプレしてるだけならいいんだけどなぁ…
「大丈夫だよ、いきなりだったから少し驚いただけだから。いきなりで申し訳ないんだけど、ここの場所を教えてもらえるかな」
「ここは幽州涿郡の五台山の麓だよ♪答えてあげたから…触ってもいいよね!」
「桃香様!うらやま....じゃなかった、自重してください」
「愛紗ちゃん...半分本音出てるよ?」
幽州涿郡?五台山?
日本でそんな地名は存在しないし…幽州涿郡は劉備の出身地に加え、関羽も一時期幽州涿郡に居たはず。
なぜ英雄達が女性になっているのか、なぜ彼女達が男に飢えてるのかは解らないが……タイムリープの影響なのか…。
「ごほん。私の事はいいのです。それより、貴方様のお名前を伺ってもよろしいでしょうか」
そういえば、彼女たちの名前だけ聞いて俺のは答えてなかった。いくら気が動転してたからといって、真っ先に名乗らないのは不味かったな。これがじいちゃんにばれたら半殺しどころじゃ済まなかった…。
「名乗るのが遅れてすみません。俺の名前は北郷一刀といいます」
「北郷さんって言うんだ。うん、覚えた!北郷さんはどうしてこんなところで寝てたの?」
劉備さんの『覚えた!』に一瞬寒気がしたのは気のせいかな…
どうしてここで寝ていたか…正直に未来から来たと言っても通じないどころか、頭がおかしい人と思われてもおかしくはない。
かといって、完全に嘘をつくのも気が引けるし、当たり障りのない返事にしよう。
「それが……自分でもなんでここに居るか解らないんだ」
俺は確かに寮で寝てたはず…ドラマみたく、何かきっかけが合ってこうなるなら解るんだが…ただ部屋で寝てただけなのに起きたら違う時代に居ました。なんて言った所で誰も信じないないし、俺だって仮に言われても、信じるか?と問われれば答えはNOだ
「ところで、お兄ちゃんの着てる服はなんなのだ?凄いキラキラしてるのだ!」
「このような服は私も見たことがありません。見たことのない服に加え、先ほどの桃香様の”奇行”に対して怯える素振りも無い…。」
「解かった!お兄さんが管路ちゃんの予言に出てた”天の御使い”別名”北郷天使”さんなんだよ!ところで愛紗ちゃん…奇行は人の事言えないんじゃないかな?言えないよね?」
「そんな事はありません。私は至って冷静です。行き遅れの桃香様と一緒にしないで頂きたい」
「はにゃ?お姉ちゃんが行き遅れなら、年が近い愛紗も年増って事になるのだ!」
「り、鈴々、余計な事を言うな」
「そーだそーだ!愛紗ちゃんの行き遅れ~」
急に年増と言い出した彼女たちの止め方が解らん!
俺からすれば、みんな若くて魅力的な女の子なんだけど、この時代と俺の時代じゃ価値観が違うんだろうな。下手に魅力的とか口にしたら、余計こじれそうな気がするから言わない方がよさそう。
”天の御使い”とか”北郷天使”とかツッコミ所満載だけど…触れたら負けなのかなぁ…。でも、聞かないと話進まないよな。
「張飛ちゃん。さっき劉備さんが言ってた天の御使いってどういう意味?」
「天の御使いはさっきお姉ちゃんが言ってた管路って人の予言なのだ!どんな内容までかは鈴々覚えてないのだ!」
3人の中で一番常識人っぽい張飛に答えて欲しかったが、まだ幼さが残る彼女では覚えきれないのも無理はない。劉備と関羽のどちらに聞くしかないか…一刀は覚悟を決めて未だ不毛な言い合いを繰り広げている彼女たちに向けて口を開いた。
「劉備さん、関羽さん、管路が言ってたという予言の内容を教えて欲しい」
話しかけれた事を嬉しがった劉備達だったが、一瞬にしてその緩んだ表情を引き締めて一刀に対する。
「管路ちゃんの言ってた予言はね…大陸が乱れし時に、東方より飛来する流星は私達の知らない知識を携えて飛来し、乱世を治める為に現れる存在って言われてるの」
「私達はその予言に読まれた人物を探して大陸を旅していたんだ。そんな時、明るい空をかき消す程の眩しい光が現れて駆けつけたら…」
「この場に俺が居たって事か」
「はい。私達はこの乱れた世を正そうと立ち上がったのでが、私達3人ではできる事なんて高が知れている…そこでどうすればいいか悩んでいる時に管路に出会い…」
「初対面で私達の都合を押し付けちゃうのは解ってます。でも、私達には北郷さんの力が必要なんです」
なるほどね。なんの因果か俺が大陸を治める使者に選ばれたのか。正直、なんで俺が選ばれたのか解らないし、平和な日本で暮らしていた俺に、この戦乱の世を生き抜いていけるかどうかも不透明だ。
そんな俺が彼女たちが求める”天の御使い”としての役割を担うには力不足だが…俺がこの時代に連れてこられたことにはきっと意味がある
どのみち、俺はこの世界で生きていくしかないんだ。ならば俺の持てる力全部使って駆け抜いてやろうじゃないか!
「…解った。俺がどこまで力になれるか解らないけど、その天の御使いって御輿を引き受けるよ」
「本当…?ありがとう、北郷さん!」
「りゅ、劉備さん!む、胸が当たってるから!」
「当ててるんだもん~♪一刀さんなら好きに触っていいんだよ?」
断れる事も覚悟していた劉備は感極まって思わず一刀に抱き着いた。豊満な胸に挟まれた一刀は嬉しい反面、どうすればいいか戸惑い、劉備から必死に逃げようとするも、劉備は逆にえいっえいっと押し付けて逃がさない。か弱い女の子のどこからそんな力が出るのかと恐怖心を覚えつつ、劉備の傍でわなわなと震えてた関羽が視線に入った。そして一刀は悟った…これは逃げられないと…。
「桃香様、なに1人だけ羨ましい事をしてるんですか!私も混ざりますので場所を開けて下さい」
「にゃはは、お姉ちゃんも愛紗も楽しそうでなりよりなのだ」
最後の砦は助ける気が無いのか、じゃれつく3人を見てにゃははと笑うだけ。彼女たちが満足するまで一刀は揉みくちゃにされ続けてた。
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お久しぶりです。約1年ぶりの恋姫SSを書きました…
貞操観念逆転した恋姫外史を蜀√で描きます
キャラ崩壊・一刀の性能上げなど苦手な方はご注意下さい