ウィルスはステイシーに目配せして紅茶を下げさせました。ゲイザーがこぼそうと手を構えていたからです。席を外すように指示されて、ステイシーはオフィスのルークのデスクに向かいました。白い粉の入った小瓶をルークの机の上に置きます。
「これは何の魔法薬かわかりますか?ルーク」
「ん?これは…心眼で見た感じ、あまりよくない薬のような気がしますね」
「ウィルス様は女性を口説く前に必ずこれを飲ませるんです。薬を飲んだ女性と宿屋に行かれる事が多かったですね」
「そんな話をどうして僕にするんです?」
「いえ、これ以上は口止めされているのでお伝えする事が出来ません」
「その小瓶を僕に預からせてもらえますか?母に頼めば何の魔法薬か割り出せるかもしれませんので」
「小瓶はまだ使うので渡せませんが、中身を少しくらい渡すのならバレないと思います」
「まあ、ロクでもない薬だって事だけはわかってるんですけどね。ウィルスさんの女性関係なんて僕には関係のない話ですし、余計な事に首を突っ込むと後で困った事になりそうだなぁ」
「そうですね。ただルークの耳に入れておきたかったのです。後で困った事になった際に私を責めると思ったので…」
「その女性の事を随分と心配しておられるようですね。あなたの知り合いの女性なのですか」
「ええ、よく知っています。まさかウィルス様があの人に手を出すなんて思いもしなくて…」
「第一級魔術師は薬で女を言いなりにしてる連中が多いようですね。あなたは薬を飲まされなかったんですか」
「私は元の顔が醜いのを知っているのでウィルス様は興味がないようです」
「ウィルスさんは見る目がないんですよ?もしかして整形後の顔はウィルスさんの好みのタイプにしてあるのかな…」
「ええ、ウィルス様にとびっきりの美人にしてやろうと言われて、この顔にされていました」
「はぁ…、目が不自然に大きいし、可愛くなくなってますよ?」
「他の男性からは美人だと言われるのに、あなただけは美人と言わない…」
「僕は秘書のステイシーではなく、体術サークルのの顧問をしていたステイシー先生の方が好きだったんです」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第324話。