ナタの調合した解毒剤を飲んでルークは目を開けられるようになりました。アークは自宅のタイプライターで書類を手早く作成しています。
「まずテオドール国王の許可を得ないといけない。時間がないから文書にしておく」
「明日までに間に合うのかな…」
「僕が議長や総帥だったらこうはいかなかったよ?下っ端の議員だから替えがきくんだ」
「改行がやたらと多い文書だね」
「ルークは速読が得意だから改行が少ない方が読みやすいだろうが、ごく普通の一般人は速読ができないので、このような箇条書きが読みやすいと感じるようだね」
「魔導書は大体、ギュウギュウ詰めにビッシリ書いてあるから慣れちゃったよ」
「僕も同じだ。ギュウギュウ詰めにビッシリ書いてある方が読みやすいと感じる。改行が多いと逆に読むのがしんどい…」
「でも世間一般的には改行が多い方が良いみたいだから合わせないとダメなのか…」
「ああ、少数派の意見より多数派の意見の方が重要視される。我々は少数派だからな…」
誤字脱字なく文書を作成し終わると、台本に目を通し始めます。
「うーん、この台本は余白が多いから暗記するのに時間がかかりそうだ…」
「確かに…。無駄に余白があるから、ページめくるのが面倒だし、もうちょっと詰めて書いて欲しいなって、僕も思ったよ?」
「台詞に何の脈絡がないのも覚えるのに苦労する。何らかの因果関係があれば、記憶しやすいのだが…。意味のない会話が多過ぎるな」
「僕もそれ思った!お父さんと僕はやっぱり似てるんだなぁ。今まで似てるって言われても自分ではわからなかったけど」
「どうやら徹夜するしかなさそうだ。人間になった今の身ではキツいよ…」
無駄に分厚いだけで、中身がスカスカの脚本を丸暗記すると、朝を迎えていました。アークは一睡もしないまま、まずアラヴェスタ城に出勤します。
「朝一で私に用とは何かな?ルシファー」
「実は昨日、うちの息子がアカデミーで少々、揉め事を起こしまして…。自宅で謹慎処分を喰らいました」
「ふむ、男の子はそのくらいワンパクな方が良いよ?」
「今日の公演が中止になると、騒ぎが起きそうなので僕が代役に出る事にしました。詳しくはこの書類に記載してるので、目を通してください」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第41話。