それからはなるべく魔法の薬を飲まないようにしていましたが、ショーンはだんだん年老いていって五年後にはヨボヨボの老人になってしまい、ある日、目を覚まさなくなりました。
「ショーン、起きてちょうだい」
どんなに声をかけてもピクリとも動かず、返事もしてくれなくなりました。
「お願いだから答えて…、ショーン」
アプリィは最後の一個だった小さくなる薬を飲みました。小さくなった体で小人の国へ行きます。樹の中の長い長い螺旋階段を登ってやっと辿り着きましたが、ゴンドラを動かせなくて困っていると、見知らぬ小人の若者が話しかけて来ます。
「そこの綺麗なお嬢さん。あまり見かけた事のない顔だけど、どうかしましたか?」
「私の名前はアプリコットと言います。小人のショーンの妻でしたが、ショーンの事を知っていますか?」
「ショーンと言うと確か小人の掟を破って、異種族と結婚したから追い出されたって話は、聞いた事がありますね」
「はい、私はハーフエルフなのです。薬を飲んで一日だけ小人になっています」
「こんな美人と結婚していたとはね。今はもうあの頃の長老は生きていないけど、別の長老がいるよ。十歳以上、生きられる小人は滅多にいないからね」
「ショーンは七歳で亡くなってしまいました」
「小人の平均寿命は大体八歳だから普通だと思うよ?」
「薬のせいで寿命が縮んでしまってたのかも」
「お嬢さんはいつまでも若いみたいだね」
「私も少しずつ年は取ってるんです。でも人間で言うと二十一歳くらいかな?」
「その若さなら再婚も出来るから、ショーンの事は忘れて幸せになると良いよ」
「そんな!ショーンの事を忘れるなんて私には出来ないわ」
アプリィはやっとチェリーの気持ちを理解する事が出来ました。
「異種族間恋愛はこうなるから禁止されているんだよ」
「掟は守らないといけないのね。こんな苦しい思いをするなら、出逢わなければよかった…」
アプリィは真っ赤な涙をこぼして、小さな宝石がたくさん出来ました。
「なんて綺麗な宝石なんだ」
「それをあげますから、ショーンのお葬式を手伝ってくれませんか?」
…つづく
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昔、初投稿して落選した黒歴史の作品、第27話。