イノンドがオロオロしているのに、一度言い出すと聞かないジンとルリはセルフィーユにとんぼ返りし始めました。妖精界のゲートの番人は手を振って見送っています。
「ディル・イノンドはついて行かないのか…。お前は勇者を助ける者だろう?」
「なぜこんな事に?私の事などほっておけば良いでしょう」
「それはあいつが勇者だからさ?勇者とは自分の為ではなく、他人を幸せにする為に動ける者の事を言うんだ」
「しかし先程のジンジャー殿は、どちらかと言うと自分の為に動いていらっしゃるような…」
「そうなんだよなぁ。あいつは自分の為にしか動かない奴だった。でも今は不思議な事に誰かの為に動く事がある。愛する者を失ってから変わったんだよ?」
「なるほど、愛する者を失う事で多くのものを得られたのですね。私もジンジャー殿を見習わなくては…」
セルフィーユに戻ると、ジンやイノンドの手配書が破り取られていました。イノンドも追いついています。
「ありゃ、俺たちの手配書が剥がされてなくなってるぞ?」
「きっと懸賞金が取り下げられたのでしょう」
「そっか!結構たくさん殺しちまってたから、もうダメかと思ってたよ?」
「ジンジャー殿には殺意はなかったですし、メリッサのテンプテーションが原因でしたので、当然の処置かと思われます」
右腕を失ったジンは騎士団の詰所に行くと、救護班が手当てをしてくれました。肩には英雄の勲章も付けたままになっています。これを付けている者は騎士団長と同格の地位が与えられるのです。
「私もまた雇ってもらえる事になりました。チャービル卿の懸賞金はセルフィーユ国王の口利きで取り下げたとの事です」
「なかなか話のわかる王様で良かったぜ」
「しかしユーカリ姫を返せなどと言うのはやめた方がよろしいかと…」
イノンドの反対を押し切り、ジンはセルフィーユ王子にお目通りを願い出ました。王子も会いたがっていると言うのですぐに謁見の間に通されます。
「メリッサを倒してくれて感謝しているよ?あの女のせいで父上がおかしくなっていて、余も困っていたんだ」
「王子はおかしくならなかったみたいですね」
「余は女に興味がないからな。ユーカリ姫との婚姻も父上が勝手に決めた事だよ?」
「と言うことは王子はユーカリ姫を愛してはおられないのですかね?」
「あの女はなかなか面白い。先見の明は素晴らしいよ?勇者ジンジャーが来るのも予知していたし、あの気の強いところも悪くない。嫌いではない。むしろ好きだと言っても良いかな?」
…つづく
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処女作の復刻版、第49話です。オオカミ姫とは無関係のオリジナル小説ですが、これを掲載する前に書いていた、オオカミ姫の二次創作とかなり設定が酷似しています。