メリッサの背中に貫通していたジンの右腕は、メリッサの心臓が燃え尽きると同時に、腐って焼け落ちました。
「メリッサを倒したから、メリッサの魔力を失ったのか…」
ジンは片手だけで鎧を着ると奥の部屋から出ました。ハーレムの女たちに話しかけます。
「この中に元王国騎士団だったディル・イノンドの元恋人はいるか?いたら返事をしてくれ」
「ディル・イノンド?確かそれってセルフィーユ王子のフィアンセのお姫様が連れて来たルバーブの騎士団長じゃない?」
「ルバーブだって?セルフィーユの次に大きな国じゃないか…」
「あの醜男に恋人なんていたのかしら?」
「醜男は言い過ぎだろ?顔は老けてるが良い男だと思うぞ」
「ディル・イノンドはメリッサ様に逆らったから、騎士団をクビになったはずだけど?」
「あんな優秀な騎士をクビにするなんて、よっぽど国王は無能なのだな?魔剣士と対等にやり合えたのはイノンドだけだ」
「勇者様、右手はどうなさったんです?左利きでも右手がないと困るんじゃ…」
「ルバーブのお姫様はどこにいるのか教えてくれ」
「ユーカリ姫なら城の一番天辺の小部屋に幽閉されてるわ」
ジンは城中央にあった階段を昇って、一番上の小部屋にたどり着きました。ドアの前に見張りが立っていましたが、英雄の勲章を身に付けていたので、敬礼されて部屋の中へ通されます。
「お前がユーカリ姫か…。ディル・イノンドを知っているだろう?」
「ディルがどうかしたの?」
「俺のパートナーだ。お前を助けに来た」
「右腕を怪我してるみたいだけど…大丈夫?」
「右腕の事は気にするな。早くここから逃げよう」
「ダメよ?私が逃げたりしたら、ルバーブが経済制裁を受けて国民が苦しむの。ディルにはまだ愛してるとだけ伝えてちょうだい」
「本当にそれで良いのか?」
…つづく
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処女作の復刻版、第43話です。オオカミ姫とは無関係のオリジナル小説ですが、これを掲載する前に書いていた、オオカミ姫の二次創作とかなり設定が酷似しています。