妖精のルリがヒラヒラと子供の目の前に飛んで来ました。子供は目を丸くして口をポカーンと開けると、妖精をじっと見つめています。
「喉の炎症が見えます。熱はないようなので、どうやら風邪ではなく喘息のようですね」
「苦いお薬だと飲むのを嫌がるので、苦くないお薬にしてもらえませんか?クレス先生」
「甘い薬を調合します。しばらくお待ちください」
クレスが薬を調合していると、ハチミツの瓶の縁にルリが掴まって、縁から垂れるハチミツを指で掬うと、ペロッと舐めます。
「君のおかげで助かったよ?君の事はルリと呼べば良いのかな」
「うん!その名前気に入っちゃったから、そう呼んで欲しいな」
「人間のルリがいなくなって困っていたんだ。君がいてくれると助かるよ」
「先生は良い人っぽいから、ボクここで一緒に住んであげても良いよ?あのムカつく剣士は悪い奴っぽいから嫌い!」
「ジンは口は悪いけど良い奴だよ?誤解しないでやってくれ…」
「ふーん、先生がそう言うならあいつは良い奴なのかな…。ボクにはわかんないや」
こうして妖精のルリがマスコットキャラクターとして、この診療所の人気者になりました。あの子供の咳が治ったので口コミで噂が広まり、子連れの母親の患者が多く訪れたのです。子供たちは妖精を見て大喜びでした。
「妖精さんがいるー。可愛いー」
「チャービルの病院は高いばっかりで一ヶ月以上治らなかったのに、クレス先生のお薬を飲んだらあっという間に治っちゃったわ」
「喘息はストレスが原因の場合があります。風邪薬や回復魔法では治らないので、チャービルの医者には難しかったのかもしれません」
「第一級魔術師免許を持ってるから優秀とは限らないのですね」
「お子さんの心のケアを大切にしてください。薬は一時的に痛みを抑える効果しかないので、お子さんが泣いていたら抱き締めてあげると良いでしょう」
「ありがとうございます!また何かあったらよろしくお願いしますね」
「先生、大人気だねー」
「ルリのおかげだよ?いつもありがとう」
「えへへ!ボクも先生の役に立てて嬉しいよ」
…つづく
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昔、知り合いが某少年漫画に持ち込みして、編集の人にこき下ろされまくった作者の原作の小説。復刻版の第9話です。