ゲイザーはアークに案内されて、人気の少ない夜の街の裏路地へ、誘い込まれました。角を曲がると、テオドールが姿を現わします。こちらへ和やかに手を振っていました。
「ゲイザー、久しぶり…だな?」
「テオドール、元気にしていたか?」
「結婚したと言う話を聞いたよ?挙式には私も呼んでくれたら良かったのに…」
「今の私は賞金首だからな。お尋ね者の身では結婚式の招待状は出せないよ?」
「そうか、話を聞いて残念だったよ。お前の嫁さんの顔を見てみたかったからな。かなりの美人だそうじゃないか?」
「そう言うお前には恋人はできたのか?」
「ああ、気立ての良い子だよ。顔はそれほど美人でもないが…愛嬌がある」
「愛嬌がある方が良いよ?美人であれば尚良いが、贅沢は言えないからな」
「しかしお前の嫁さんは飛びっきりの美人なのだろう?どうやって落としたのかギルバートも不思議がっていたよ…」
「ギルバートがなぜ…フラウの事を知っているんだ?」
「フラウと言うのか…。今度、会わせてくれないか?」
「そうだな、ひと段落したら考えるよ。私の母上が騎士団の者に捕えられていると聞いたのだが…。どこにいるかわかるか?」
「ああ、アラヴェスタ城の前で晒し者にされているよ」
「早く助けに行かなくては…。母上は体が弱いので雨風にさらされたら、持病の喘息が出るかもしれない」
「この時間はまだ人目も多くてまずい。暗くなって人目が減ってからにしよう」
夕方から開いている酒場に三人は入りました。ゲイザーは兜を深くかぶって顔を隠します。手配書がコルクボードに貼られていました。
「まさか私の賞金が一億になっていたとは…」
「殺人・強盗・強姦の罪で指名手配中のようだな」
「その罪状に全く身に覚えがありません」
「オズワルド様の兄上をゲイザー様に殺害されたと言っておりましたが…」
「それは…正当防衛だよ?緊急避難に該当するから私は無実だ」
「なるほど、しかしオズワルド様はそれが原因で随分と立場が悪くなったと言っておられました」
「逆恨みですよ。あのビーストテイマーはスライムを使って農作物を荒らして、野菜の価格を高騰させてハイパーインフレを起こしてたんですよ?」
「オズワルド様は外交官をなさっておられたので、野菜を高く輸入するようにと敵国から圧力をかけられていたようです」
「ふむ、それで兄上が一肌脱いだわけか…。謎が解けたよ」
「兄上の方が私の主人より魔力は上だったのですが…」
「ああ、かなり手強かった。賞金が十万では割に合わないので、報酬を上げるように交渉したら、あっさり三十万支払われましたが…」
「それもオズワルド様が裏で手を回していたようですね。もしスライムを討伐する者が現れたら事を荒げずにすぐ報告するように…と」
…つづく
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本編のパラレルワールドをシナリオにしてみました。ストーリー第9話。