「皇帝陛下のおなーりー」
その言葉と同時に、場にいる全ての者が一斉に頭を下げ、これから出てくる人物に平伏する。
皇帝劉宏……一刀が知っている限りでは暗愚な王であり、酒や女に溺れていたという人物だ。
特筆すべきことは”売官”という賄賂を助長する政策であり、これで国力が一層の衰退をみせることになる。
それは十常侍達宦官の台頭を、更に許すことにもなった要因である。
少なくとも……王として、愚かな人物が目前の玉座に座っている。
あの”暴君”董卓が、あのようなかわいらしい人物の世界なのだから、この人物も変わっているのかと思ったがそうでもなかったようだ。
ただ1つ、一刀から感想を述べると、暗愚というよりは単純に政治に興味がない。
そういう人物に見えた。(ちなみに男性)
春蘭が華琳の働きを報告しても、ふ~ん……といった感じで、ちゃんと聞いていない。
そして、あの上座にいる者達が十常侍達なのだろう。
__うわぁ、悪そうな顔してるなぁ~。
この場には、あらゆる街の代表達がいる。
次々に代表達が皇帝に挨拶をしていく中、一刀は気になる名前を耳にしたときは、その人物達の顔を覚えていくようにしていた。
袁紹は金色の髪を豪勢に、クルクルというよりグルグルと両脇でカールさせ、(華琳比8倍くらい?)金ぴかの鎧をきている。
外見だけでもどんな人物か予想はつくが、彼女の話を聞いていても予想通りの期待を裏切らなかった。
自信家で高飛車というか、台詞のところどころに、霊帝への賛辞の言葉と自分は名家という言葉が鼻につく。
そしてその後ろに控えているのは、恐らく文醜と顔良あたりだろうか。
次に出るのは、その袁紹を小さくしたような袁術だ。
あのちっこさでぴょんぴょんと落ち着きの無い様は、ちょっと癒される。
__あ……後ろの青髪と白のような銀髪のお姉さん達も、そんな顔で悦ってるな。
まぁ気持ちはわかる。
だが、そのさらに後ろに控えている、褐色の美人さん達はどうにも雰囲気が違った。
特にその中の1人から滲み出る迫力というべきか、覇気が圧倒的だ。
袁術にあれほどの人物がいただろうか?
__……あ、そうか。
あれが、孫堅か……流石、江東の虎は伊達じゃなっ?!
「…………ゴク……」
不意に孫堅と目が合う。
間違いなく、一刀の視線に意識して、向いてきている。
__……気づかれたと、いうのか?
背中から重く、不快な汗が伝っていく。
ニコ
!!
視線は外れてはいない、それを笑みをもって返された。
「どうした北郷?」
春蘭の声にハッとした一刀が、また孫堅へ視線を向けると、既に孫堅は前方を見据えていた。
__完全に……空気に飲まれてしまった。
掻いた汗が気持ち悪い、だが一刀は平静を装いつつも、残りの主要な諸侯の観察を続けた。
__白馬長史と謳われた公孫讃と西涼の代表である馬騰、2人とも有力な騎馬戦力を有している勢力だ……もうどうでも良くなってきたけど、ここも女性。
好々爺なお爺さんに見える古参の陶謙。
董卓……月達と目があうと、皆笑って返してくれた。
そんなこんなで、一刀としては十分な意味がある会合であったのだが、議場全体として意味があるのかどうかがちょっとわからない会合は、恙無く行われていき無事に終わった。
劉宏が退屈そうな顔を隠しもせずにその場を後にすると、十常侍達が解散の号をかけ、各々が退出していった。
「おい、私達もいくぞ?」
春蘭に促された一刀は、謁見の間を後にする。
そしてしばらく城内を歩いていくと、柱の影から小さな女の子が、トテトテと近づいてきて一刀の服の裾を掴んだ。
「ちょっと来てくれぬかの?」
服を掴まれた一刀はとりあえず腰をおろすと、綺麗で真っ直ぐな黒髪を携え、上品な佇まいをしている少女と視線を合わせる。
背丈が季衣や流琉よりも、1回り小さい少女だ。
「どちら様かな?
俺とどこかで会ったかい?」
「いいから来てほしいのじゃ!」
そういって服をグイグイ引っ張り続ける少女に困って、春蘭に助けを求めようとすると、春蘭はどうやらこちらに気づかずに先に行ってしまったようだ。
__まぁいいか、直ぐに出発ってわけでもなさそうだし……
そう考えた一刀は、少女に引っ張られるがままについていく。
外まで連れ出された一刀は……なんと、昨夜の倉庫にまで連れてこられた。
「お主はここらにあるものを、知っておるのか?」
目を輝かせて尋ねてくる少女に、ちょっと驚いてしまう。
「え? どうして俺が……」
「昨日ここで、そこらのものを触っておったじゃろ?
お主が随分驚いておったようだから、何か知っているかもと思うたのだ。
……わからぬのか?」
そう可愛らしく言うと、徐々に残念そうな表情になっていく少女。
だが一刀は困ってしまった。
勿論ここにあるものには、勝手に触ってはいけない。
「ごめんね? 俺はここにあるものを勝手にさわっちゃいけないんだよ」
どうにかしてやんわりと断ろうとすると、子供の顔がぱぁっと笑顔になる。
「大丈夫じゃ! ここにあるのは妾のものだからの!
ここにあるのは父上に謙譲されたものなのじゃが、使い方がわからずに困ったものを、妾が貰ったのだ」
__ん?
「ねぇ……君のお父上様は、どなた様かな?」
「皆には皇帝とか劉宏陛下とかと呼ばれておる」
!?
__まさか、皇帝陛下のお子さん!? 脳髄よ、海馬から記憶を捻り出せ! ……え~と……え~と……
どっち?
「あ、あはは……じゃあ君の名前を聞かせてもらえないかな?」
「妾か? ……ホントはあまり言うてはならぬと言われておるのだが……お主には特別だぞ?
妾は劉協という、よろしく頼むぞ!」
一刀の頭が真っ白になる。
__将来の……献帝様じゃないですか?!
一刀は慌てて辺りを見渡し、気配を探る。
幸いなことに人気は無いようだった。
もしこの場を誰かに見つかったら、即刻切り殺されても、文句がいえない状況だ。
「な、なりません! 貴方様のような方が、私のようなものと一緒におられては……」
そこで一刀は、言葉を続けることができなくなった。
目の前の少女がムッカ~といった、目に見えるほどの不機嫌顔になり、しかもちょっと涙目だったからである。
「ど……どういたしましたか?」
一刀はわけもわからずに慌ててしまい、変に声が上ずってしまう。
__なんかいきなり、ヤッバイ感じに陥っている!
「……イヤじゃあ! どうしてお主まで、そのように妾を扱うのじゃ!」
少女はポカポカと、しゃがんだ一刀の胸を叩いてくる。
「妾はさっきのように接して欲しいのだ! そのような腫れ物のように……扱われとうない!!」
ポカポカと叩き続ける少女の小さい手。
とにかく一刀は、このまま誰かが来たら不味いにも程があると思い、失礼とわかりながらも劉協を抱き上げて倉庫内へと引っ込んだ。
「っふぇ?」
とりあえず適当なものに劉協を座らせると、事情を聞くことにした。
「……皆、妾を遠ざけるようにしか接してくれんのじゃ……友もできぬし、父上も母上も相手をしてくれぬ。
唯一心を許せるものに……グス……兄がいるが、最近はあまり会うことができぬようになって、しまって……ヒグ」
__それじゃあさっき怒ったのは、俺が急にへりくだったのを避けているように感じたってことなのか……
話ながら思い出してきてしまったのだろう、どんどん泣き出しそうになる劉協を見かねた一刀は、そっと小さい少女を抱きしめた。
「!」
腕の中で少し体が強張る劉協だが、徐々に自分から一刀に頭を押し付けてくる。
__……ま、どうせ見つかったら逃げるしか手はないのだ。
どうせなら、この少女の願いの1つくらい、聞いてやりたいと思う。
「ヒグ……エグ……」
「泣いていいよ。
……寂しかったんだな」
小さい体が腕の中で震え始め、その肩の動きが大きくなっていく。
「……ひぐ……うぐぅ…………う……うわぁぁあぁああん」
「…………………………」
一刀は何も言わずに、劉協の背を優しく撫でていた。
__長い間ここにはいられない、だけどせめて………………今ぐらいは、な。
しばらく泣き続けた劉協だが、ようやく落ち着いてきたようで、気恥ずかしそうに一刀の腕からおずおずと離れる。
「恥ずかしいところを見せた。
……その……召し物を汚してしまい、すまない」
「気にしないでいいよ。
そんなことより大丈夫か? ……劉協」
「え!」
一刀が名前を呼んだことで、パァッと花開くように可愛らしい笑顔になった劉協は、目尻に残っていた涙をゴシゴシとこすると、うん!って元気に返してきた。
「さて! そういえば劉協は、ここで俺に何をして欲しいんだっけ?」
その言葉に何か思い出したのか、劉協は倉庫の中をテッテッテッテと走り回り、そこいらのものを取り出してきては、次々に一刀に見せてくる。
「これらの物は妾は非常に気になるのだが、誰も使い方を知らなくての……お主なら、何か知っていると思うたのだ」
かわいい笑顔でそういわれれば仕方がない。
劉協が持ってくる物を、1つ1つ丁寧に説明していくと、全部を理解できたわけではないようだが、興味深々といった顔で聞いてくれる。
昨夜は気づかなかったが、倉庫の奥の方まで行くと、グランドピアノや携帯……PS2……御祭りのキャラもののお面……まだまだ様々な物が溢れ出てきた
__これを全部っていうと、説明が難しいなぁ。
それでもなんとかわかるように説明をしながら、劉協と手を繋いで倉庫内を歩いていく。
「ほう! ここらのものは楽器なのか!」
劉協の手には、あのヴァイオリン。
「そうだよ、といっても誰も弾けないだろうけどね」
不思議そうな劉協が、見上げながら首を傾ける。
「主はできぬのか?」
__できるけど……う~ん……ここで弾いて、誰か聞きつけて来ないだろうか?
だが、視線を落とすと劉協の瞳はうるると潤んでおり、小動物のように一刀を見上げている。
__月といい、劉協といい……反則だ!
諦めた一刀はヴァイオリンを受け取ると、少し音を鳴らしてその状態を確かめていく。
__問題は無し、か……これだけ状況が揃っていて、弾かないわけにもいかないな。
何より一刀自身、久しぶりに弾いてみたいという衝動がある。
劉協はわくわくとした面持ちで適当なものに座っているので、彼女の前に立つと1礼し、楽器を構えた。
曲は長い交響曲など弾いても仕方がない、わかりやすく、耳ざわりが良くて、短めの曲となると……
「それでは、1曲弾かせて頂きます……お嬢様」
努めてジェントルメンに、そして笑顔で。
その一刀の振る舞いに、劉協の顔がちょっと赤くなった。
曲名は、エト○リカ。
そのヴァイオリン部分を集めてアレンジした、オリジナル・バージョンだ。
目を瞑り、弦に神経を集中する。
~~~♪~~~~~~~♪~~~~~~~♪♪~~~~
お世辞にも整理されているとはいえない薄暗い倉庫に、優しい旋律が奏でられる。
劉協はあまりの音の美しさに、鳥肌が立った。
~~♪♪~~~♪♪♪♪~~~~~~~♪♪~~~~
心に響く音色に、劉協は奏者を見上げる。
真剣になって弾くその表情……彼の手から紡がれる、美しい音色。
~~~~~~♪♪~~~~~~♪♪♪~~~~~~♪~~~
劉協は自分の体温が上がってきたのを感じる。
……少女は、その音楽に酔いしれた。
~~~~♪~~~~~------・・・・
5分程の曲が終わりへと向かう。
5分……けれど、劉協は確かに幸せだった。
曲を弾き終わり、わずかばかりの静寂。
一刀は残心を解くと、また丁寧に一礼した。
頭を上げた一刀の優しい微笑みと、劉協は目がばっちりと合う。
ボンッ!
こう表現するのが適当だろう。
劉協は熟れたトマトのように、真っ赤になった。
ずっと孤独に苛まれていた彼女の寂しがりな心にとって、一刀の笑みの中にある頼もしさや優しさは、非常に安心をもたらしてくれる。
早くなっていく動悸に頭をぼ~っとしながら、劉協はパチパチパチパチと拍手を送った。
「ありがとう」
ちょっと照れくさがるその笑顔。
はっきりと言えば、劉協にとって一刀は初めて魅力的に思える異性であった。
人、それを初恋という。
年齢など関係はない。
ボボン!!!
「きゅう~~~……」
ドサ
「ちょ?! おい、劉協! 大丈夫か!!」
湯だった彼女を、慌てて起き上がらせる一刀だった。
「も……もう大丈夫だ、世話をかけるの」
劉協が目を覚ますと、視界が傾いているのに気づいた。
どうやら自分は膝枕されていたらしい。
体を起こすと、また笑っている一刀と目があった。
体温が上がる、というより血が駆け巡るが、今度は倒れたりはしないようにと踏ん張った。
「とても素晴らしい曲だった。
弾いてくれて……その、感謝する……ありがとう」
一刀は劉協の滑らかな髪に優しく手をおいて、丁寧に撫でた。
「どういたしまして、劉協に気に入って貰えて良かったよ」
そうやってしばらく2人が笑いあっていると、外から声が聞こえてきた。
「劉協様~~!! どこにおられるのですか~~~~!!!」
どうやら劉協がいないことに気づいたのか、城の者が捜索にきたらしい。
ぎゅっ
劉協が一刀の袖を強く握り締めた。
__賢い子だ。
もうお別れだということを、ちゃんとわかっているのだろう。
「……ごめんね、劉協。
もう俺も”協じゃ”……ん?」
一刀の声をさえぎる劉協。
「妾の真名は、その……伴侶になるもの以外に、教えることができんのだ。
だから妾のことは協と呼んでくれ。
……これは妾の気持ちじゃ!」
照れながらそう告げる協に、一刀は正直ときめきました。
「そ、そうだ! お主の名は!?」
「北郷一刀。
俺にはあいにく字と真名がないんだ。
だから協、俺のことは好きに呼んでくれないか」
「そ、そうなのか? ……か……一刀、また会えぬか?」
懇願するような表情の協は、きっと心が不安で一杯なのだろう。
「会えるよ、きっと。
いや……こういう言い方は、良くないよな」
そう答えると一刀は協の肩をそっと掴んで、瞳を覗き込むように視線を合わせた。
「協……俺はまた、協に会いにくる」
「! ……わかったのだ!
一刀を信じて、待っておるぞ?」
えへへと幸せそうに笑う協、やはり可愛らしい笑顔が彼女にはよく似合うと思う。
「よし! じゃあ指きりしようか!」
「ゆびきり?」
「そう! 俺が暮らしてたところでやっていた、約束を破らないためのおまじないだ」
一刀は協に簡単にやり方を説明して、お互いの小指を結ぶ。
結んだその指の小ささに、一刀は驚いたのと同時に少し悲しくなった。
__こんなに……小さいのか……
「「ゆ~びき~りげんまん、嘘ついたら針千本飲~ます! ゆびきった!」」
指きりが終わった2人は互いに元気な笑顔で向き合う。
協を呼ぶ声が近づいてきた、もうすぐにこの辺りにも人が来るだろう。
一刀達はこっそりと蔵の外に出て茂みに隠れ、迎えの人が来るのを確認してから協は1人で出て行った。
「劉協様! 心配しましたぞ……昨晩といい今日といい」
迎えに来た人についていく協。
少女はしばらく歩いて行くと、最後にそっと後ろを振り向いて、右手の小指を立てながら笑っていた。
帰り道、協から譲られたヴァイオリンを眺めて一刀の心が温かくなる。
そろそろ部屋につくという時……
ゾクッ
猛烈な寒気が一刀を襲った。
「どこへ行っていた……北郷!」
やはり春蘭が鬼の如く怒っていたのは、言うまでもない。
「おかえりなさい」
華琳の政務室へ報告をしに来た一刀達を迎えたのは、いつものメンバーであった。
「洛陽への旅路、ご苦労様。
それで何かあったのか、早速報告してくれるかしら?」
「はっ! 洛陽への報告自体は何も問題はありませんでした。
ですが、洛陽の荒廃振りは以前にも増して進行しているようで民達に活力はなく、治安が更に乱れており、後は……」
__おお、春蘭が普通に報告しとる、けどちょっと抜けてないか?
「そう……一刀からは何かあるかしら?」
「大まかには春蘭が言った通りだよ。
だけど春蘭、一つ報告し忘れだ。
洛陽についた俺達は街の偵察をしていたんだけど、街の外でちょっといざこざにあってね。
その時董卓という娘達を助けた」
「董卓? どこかで……」
「北西の方の一太守です華琳様」
桂花の言葉に華琳は思い出し、どのような人物だったかを聞いてきた。
「董卓は実質的な能力というよりも、その人柄で人を引き寄せるって感じだ。
その傍らにいた軍師も十分優秀だと思う。
彼女達のところにいた2人の武官については、言わずもがなって感じだな。
俺の見立てだと、2人とも春蘭と張るだろう」
「何! 私はそんなやつらに負けはせんぞ!」
春蘭が一刀の言に怒って、胸倉を掴んでくる。
「……春蘭が地力で負けてるとは思わない。
だけど、体調や心情1つで結果は逆転してもおかしくないってことだよ。
だから春蘭がいつも通りに闘えるなら、もちろん勝てるさ」
「そ……そうか? まぁそれがわかってるならそれでいい」
「春蘭、あなたの武は私の絶対の誇りなのよ。
そんなことで怒る必要などはないわ」
春蘭は華琳にそう言われると、途端に笑顔になり借りてきた猫のように大人しくなった。
秋蘭がその姉の姿を見て、顔がニヤついているのは見なかったことにしよう。
「報告ご苦労様、疲れたでしょう? 2人には明日休暇をあげます。
ゆっくり休んで街でも散策してきなさい。
それに今日は、お風呂も沸かせたわ。
それと…………春蘭、今日は閨にきなさい」
__エロスきたぁぁあああ! 春蘭ソッチ側確定だぁ! 帰って早々にですか?
チラっと一刀が横を見ると、季衣は何も気にしていないようだが、流琉が顔を赤くしていた。
__はぁ、2人の情操教育に悪いので、そういうことはもっとこっそり言って下さい。
春蘭はその言葉に元気よくハイ!っと応えると、部屋からご機嫌な足取りで出て行った。
秋蘭も流琉と季衣を風呂へ連れて行こうと、2人を促して外へ出て行く。
桂花もその後をトコトコとついていったのだが、部屋を出る瞬間……一刀に一睨みをきかせることだけは忘れなかった。
「……さて、何で残されたのかはわかるわよね?」
優雅に椅子に座る華琳が妖艶に笑っている。
「中々、大変だったけどね……とりあえず危険なのは袁術だな」
「袁術? あの子に何があるというの?」
一刀の言葉に意外そうな華琳。
「袁術の客将の孫堅……アレは凄いな。
流石は”江東の虎”ってところなんだろうね。
孫堅自身もそうだけど、その仲間達も相当な武を持ってるよアレは」
「そう……噂には聞いていたけれど……孫堅だけじゃあないようね」
「将の武の水準を比べれば、かなり質が高いのは董卓と馬騰だ。
俺が見たのは張遼・華雄・馬騰・馬超……全員かなりの武を持っているのは間違いない。
水準を春蘭で考えても、ほんとに互角だと思う」
「春蘭は負けないわ」
「そうかもね……でも連中がそれだけの力があることを、知っておいて欲しいだけさ。
正直……今の秋蘭だと厳しいと思う。
後は、報告にもあったけど、やっぱり漢王朝の権威は大分下がっているな。
十常侍達の雰囲気は尋常じゃあなかったよ。
何より皇帝が政に興味がないのが、間違いない上に致命的だな。
あれが華の都だなんて…………はぁ、悪い夢みたいだったよ」
「そうでしょうね。
私が前に赴いたときよりも、更に酷くなっているのでしょう」
「…………それと」
「ん?」
「最近、黄色い布を旗印にした、盗賊連中が出てきているらしい。
しかも勢力が日に日に増しているみたいだ。
こっちではそういう報告はあがっていないか?」
「そう、やはり問題になってきているの……先週程かしら、秋蘭達が何度も討伐に向かっているわ。
ここにある……この黄色い布を身につけているらしいわね」
華琳が机の中から取り出した黄色の布を置く。
それを手にした一刀は、心中で黄巾党の時代が来たか、と考えていた。
思索にふける一刀だが、わずかな間ボーっと意識を手放してしまう……油断していたといっていい。
ふと視線を感じて、反射的に顔を上げると……華琳がまるでこちらを観察するかのように、机に身を乗り出しながら、一刀の顔を覗きこんでいた。
「……ねぇ」
華琳がそのまま体勢を進ませ、一刀へと近づいてくる。
「…………あなたは」
ゆっくり……だけど確実に……距離が……
「………………一体」
2人の鼻先がつく位まで顔を……寄せて……
「……………………何を」
互いの吐息が感じる程の距離で……もう、華琳の蒼い瞳しか……見えなくて……
「隠しているの?」
一刀は顔を真っ赤にして、勢いよく後ろへと振り向いた。
__少し……触れた。
「……今日はご苦労様、報告の内容には満足したわ。
ゆっくり休んで頂戴。
休暇が明けたら、あなたにも賊退治に参加してもらうから」
平然とした面持ちの華琳は、いつの間にか椅子に座りなおしている。
「…………」
一刀はちゃんとした返事を返すこともできずに、部屋を後にした。
「入っていいわよ」
華琳の声に、湯浴みをしてさっぱりとした顔の春蘭が入ってきた。
「華琳様ぁ」
猫なで声の春蘭は、華琳がいる布団のもとへ近寄ると、やはり猫のように体を擦り寄わせる。
「? ……華琳様。
お顔が何やら赤いのですが、どうかしたのですか?」
華琳はもう何度も春蘭と閨を共にしているので、今更この程度で顔が赤くなることなど、ないはずなのだが……
「! ……なんでもないわよ。
ほら、そんなこと気にしていないで、こっちにきなさい。
今夜はたっぷりとかわいがってあげるわ」
優しい手招きに、まるで吸い寄せられるように近づく春蘭。
「華琳様ぁぁ~~~~」
夜は長そうだ。
どうもamagasaです。
応援ありがとうございます!
皆さんからたくさんのコメント、応援メールも頂きまして嬉しいです!
励まされます……体調まで気遣って頂いて恐縮です。
え~……今回洛陽編も終わりということで多分……色々と突っ込みどころが多いかと……
まず、一刀君が弾いたエト○リカは自分が好きな曲です。
耳に残ってテンポも軽快ですのでいいかな、ということで。
そして次は……原作にいない方達を、たくさん出してしまいました。(まぁ基本的に皆さん敵側ですので、ほとんどのオリキャラは季流√で普段出ないだろうなって思うんですが)
当初出そうとして考えていたのは2人だけだったのですが、話の都合上もう2人が最近増え、後の2人は次作の恋姫で新キャラでいたらいいなぁ……と自分の趣味で増えました。(どなたがどれなのかは内緒ということで、しかも内1人はまだ出ていないです)
あまり有名でない人物を出すと、イメージが伝わりにくいと思い、原作恋姫で出てもおかしくない、三国志&三国志演義で誰でも知ってるような、キャラの濃い方達を選んだつもりです。(陶謙は微妙かもしれませんが……)
このオリキャラ達の説明文は入れるかどうか迷っておりますが……入れないかもしれません。
ただ、作中に出てくる時にはわかりやすく書くよう頑張ります。
そして洛陽編が終わったので漸く黄巾党がきます。
えぇ……ようやくです……ごめんなさい、ここまで長かったですよね。
次話は自分にしては珍しいと思う、ギャグパート?っぽい……拠点のような……そんなユラユラした話を予定しています。
パロディ風に仕上がればいいなぁ。
何か作品に対して御意見・御感想があればどんなことでも構いません。
お知らせ頂けると嬉しいです、お待ちしております!
それではまた……
一言
大食い……ラムチョップ130本……総計5.2キロだと……?
でも……………………………………………………お腹が出ないのは、何故?
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洛陽編の続きになります。
様々な勢力が……
たくさんの御支援、ありがとうございます!