No.97641

~薫る空~30話(洛陽編)

ついに30台キターヽ(・∀・)ノ と少しテンションのおかしい和兎です。
ようやく連合のが集った後の軍議が終わりました。
後半は少し作者の贔屓が入ってしまいましたが、まぁキニシナイ(`・ω・´)

2009-09-27 15:10:08 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:4684   閲覧ユーザー数:3933

 

 

 

 

 

 

 

 そして、日は明け、二度目の軍議が開かれた。

 

 一度目を経ているのもあり、内容はスムーズに進んだ。いや、進みすぎた。

 

 何かと言うと、軍議は袁紹が放った最初の一言で、すべての結論を出してしまったのだ。

 

【袁紹】『雄雄しく!華麗に!優雅に!猛々しく前進ですわ!!!』

 

 連合の方針が決定した瞬間だった。つまりは各々好き勝手に動けと言う解釈で満場一致となった。

 

 一同が諦め、次に具体的な軍の配置について検討する。まずは先鋒。連合軍の矛先とも言えるこの配置は最も兵の消費も大きい役割だった。その役割を理解し、誰もがそれを拒否する。ただでさえ難攻不落とされる汜水関。そこに先陣を切る部隊など、ほぼ壊滅してもおかしくは無いのだ。

 

 先ほどまでの即決空気が打って変わり、牽制の応酬となっていた。

 

 そんな中で空気を破ったのは、やはり袁紹だった。

 

【袁紹】「劉備さん、あなたの軍にお任せできないかしら?」

 

 一同の視線が劉備へと向けられる。急に注目を浴びたせいか劉備はおろおろとしてしまった。

 

【劉備】「あ、え、え、う、私たちですか…?」

 

【袁紹】「えぇ。劉備さんの軍には優秀な将が揃っているそうじゃありませんか。先鋒を任せられる。とても名誉な事ですわよ?」

 

 袁紹は劉備から目を離さない。その上で、先鋒を任せようとしていた。

 

【劉備】「で、でも…私たちのところでは……」

 

【袁紹】「お任せして、よろしいですわね?」

 

 袁紹は語尾を強め、さらに押す。誰が見ても劉備軍が先鋒を果たせるだけの兵数、装備、兵糧を確保出来るはずがないことはわかりきっていた。それは袁紹も、そして劉備自身も分かっていること。

 

 それでも尚、袁紹が劉備を推す理由はもはやひとつしか考えられなかった。

 

【一刀】「………生贄か」

 

【袁紹】「あら、天の御遣いというのは、ずいぶん物騒な事をおっしゃるのですわね」

 

 不意に呟いた言葉がどうやら聞こえてしまったようだ。隣にいる華琳がばつの悪そうな顔でこちらを睨んでいる。どうやら、またやってしまったようだ。

 

【一刀】「いや、気にしないでくれ。そういう風に見えてしまったんでね。気に障ったなら謝るよ」

 

【袁紹】「ふん。まぁ、いいでしょう。」

 

 袁紹は再び劉備に視線をもどした。

 

 

 

【一刀】「けどさ」

 

 だが、俺はそんな袁紹を呼び止めた。

 

【袁紹】「え?」

 

【一刀】「劉備軍はどうみてもこの中じゃ一番兵数がすくないよな。装備も兵の練度もおそらく一番下だ。そんな部隊に先鋒を任せても大丈夫なのか?」

 

 俺の言葉に、周囲が少しざわつく。劉備にいたってはもはや笑ってもいられない。これだけの人間の前で俺は劉備の軍は一番弱いと言い切ったのだから。

 

【袁紹】「あら、私は劉備さんの軍ならば問題ないと思っていたんですが。では、あなたは反対だとおっしゃるの?」

 

 どう聞いたって嘘丸出しなのだが、俺は話を続けた。

 

【一刀】「俺だって別に反対するわけじゃないさ。ただどうせやるなら、袁紹の所から少し兵を貸してやったらどうだってことだよ。」

 

【袁紹】「な、なぜ、私が!」

 

【一刀】「指名したのは袁紹だろ?だったら上手く行くように協力するべきだろう。これは連合軍なんだから。」

 

【袁紹】「だからと言って!」

 

 どうやら俺の言っていることと袁紹が思い描いていた思惑は違っていたようだ。急変した袁紹の態度からそれが読み取れた。だから、俺は昨日のおとりの仕返しもかねて、少し話を続けた。

 

【一刀】「はぁ……袁紹、もし袁紹の兵を借りた劉備が汜水関を突破するとどうなる?」

 

 少し小声で、ささやきかけた。

 

【袁紹】「…え?」

 

【一刀】「劉備軍の兵は実は袁紹軍の兵だ。ならば汜水関一番乗りは袁紹の兵になるだろう?それにもし失敗しても、旗は劉備の軍だ。袁紹の名が落ちることは無い。そうだろ?」

 

【袁紹】「え、え?………そ、そうですわね…。」

 

 自分で言っていて、頭の中では笑うしかなかった。詭弁もいいところで、結局は劉備に兵を貸し与えろと言っているだけなんだから。

 

 結局袁紹は、劉備に兵とその武具を貸し与えることになった。そして、先鋒が決まり、続いて軍の配置が決められていく。

 

 先鋒以外の配置ならばどこでも良かったのか、それからはさっきまでの空気を一変させて軍議は進んだ。

 

【周瑜】「この配置だが、我らとてそこまで兵糧に余裕があるわけではない。袁術殿との距離が少し開きすぎてはいないか?」

 

【薫】「孫策軍はひとつの軍で見ているけど、実質は袁術のところと同軍だし、ここ変えたほうが良いんじゃないの?」

 

 地図上では袁紹、袁術はそれぞれ南東、北東東の方向にかなり後ろに陣取っている。対して、孫策軍は中腹。先鋒である劉備軍に最も近い位置取りとなっている。このままでは伝令を送るにも、兵糧を届けるにも、輸送隊は戦場の真ん中を横断しなければならなかった。

 

【袁術】「大丈夫なのじゃ。いざと言う時はわらわの軍自ら上がるからの」

 

【鳳統】「………。」

 

【桂花】「………。」

 

【周瑜】「……そうか、分かった。」

 

 誰が見ても納得していない。むしろ怒り狂っている。周瑜のもつ黒いオーラが音を鳴らして立ち上っているのが視認できるほどだった。

 

【袁紹】「では、おおよその編成がきまたっところで……」

 

【公孫賛】「おい!」

 

【袁紹】「あら、どうしました、白蓮さん」

 

【公孫賛】「まだ、うちが決まっていないだろうが!」

 

【袁紹】「あら……素で忘れていましたわ。では…この辺で良いですわね」

 

【公孫賛】「お、おい!適当すぎるだろう!」

 

 袁紹はそれこそ適当に地図を指さした。そこは本隊から離れた山道の麓。はっきり言ってまったく戦とも無縁の場所だった。

 

【周瑜】「では、後は各々の裁量で動いてもかまわんな」

 

【桂花】「そうね。そのほうが兵の士気も安定するでしょう」

 

【公孫賛】「え、ええ……」

 

 そして、軍議は解散となる。各自そろぞれの陣営にもどり、これからまた、今度はどう動くかを決めていくのだろう。

 

 最後に袁紹が天幕をでて、公孫賛が残された。

 

【公孫賛】「はぁ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は軍議が終った後、劉備たちと会っていた。なにしろ勝手に袁紹と話を進めてしまったんだから。

 

【一刀】「勝手なことして、すまなかった」

 

【諸葛亮】「い、いえ、私たちの軍に兵が足りないのは分かっていたことですから。助かりましたよ」

 

【劉備】「うんうん。」

 

 俺の言葉に二人は責めるでもなく簡単に許してくれた。

 

【劉備】「でも、あの袁紹さんを言いくるめちゃうなんて、なんて言ったの?………ええと」

 

【一刀】「…?……あ、名前か。北郷だよ。北郷一刀」

 

【劉備】「♪…北郷さん」

 

【一刀】「なんてっていうか…う~ん。普通にお願いしただけだよ」

 

【劉備】「えぇ~」

 

 どうにも信用してもらっていないようだ。このキラキラした目は「何か弱みを握ってささやいたんでしょ?」と輝いていた、。リアルにこういう目をする人間を見たのは生まれて初めてだ。

 

【関羽】「桃香様~」

 

 話していると、遠くから関羽の声が聞こえてきた。

 

【劉備】「愛紗ちゃーん、こっちだよ~」

 

 劉備も手を振ってそれに答える。

 

【関羽】「あ、こちらでしたか。………!」

 

 劉備の存在に気づいて近くまで駆け寄ってきた関羽だが、俺の顔を確認すると、表情が一気に不機嫌になった。琥珀との会話を邪魔したことを怒っているんだろうか。だったら、ここで謝るべきなのだろうが、なぜそんな気がおきなかった。

 

【劉備】「愛紗ちゃん、どうしたの?」

 

【関羽】「あ、いえ。我々はそろそろ移動を始めないといけませんので…」

 

【劉備】「あ、そっか先頭だもんねぇ。それじゃ、北郷さん、またね~。」

 

【諸葛亮】「し、失礼します」

 

 劉備はこれから家に帰るような口調でそういった。相変わらず諸葛亮は挙動不審のままだった。

 

【関羽】「………。」

 

【一刀】「…?」

 

【関羽】「いえ…」

 

 関羽はそれだけ呟いて、踵を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 華琳の天幕に戻ると、そこには予想g……いや、予想以上に人が多かった。

 

【薫】「あ、一刀」

 

【春蘭】「なんだ、北郷か」

 

【桂花】「なんだ、変態じゃない」

 

【一刀】「お前ら仲いいなぁ……。」

 

 中に入ったとたんにコーラスで落胆されてしまった。

 

【華琳】「ふふ。……まぁ、それはいいとして」

 

 華琳は微笑みながら、俺のほうを見た。

 

【華琳】「桂花、薫。私達はどう動けばよいか、なにかあるかしら。」

 

【桂花】「我が軍は幸いにも本陣と先鋒軍の丁度中央に位置します。どちらにも対応できる位置にありますから、とりあえずは様子見するのがよろしいかと。」

 

 俺達の位置は桂花の言う通り、丁度真ん中。孫策のほうにも劉備のほうにも、本陣にも向かえる位置にある。

 

【薫】「ただ、それだけに常に状況先読みしていかないと、戦局に追いつけないのも事実だね」

 

 二兎を追うもの。というわけではないが、入ってくる情報が多ければ混乱の可能性が生まれてしまう。対応できたとして、優先させる順を間違えれば、今回の連合に参加した意味すらなくなってくる。

 

 困難な位置。だがそれ故に得られる報酬は大きい。

 

【桂花】「劉備が上手く敵軍を引き出して、打ち破ることが出来そうなら、前へと進め、汜水関を落とす。」

 

【薫】「劉備が失敗しても孫策が受け止められそうならば、それに乗じて、やっぱり前進。孫策ですら対応できないならば。」

 

【桂花】「本陣毎巻き込んでしまえば良いわ」

 

【一刀】「黒いなぁ…」

 

【薫】「ちょっとあの袁紹はイラっときたしね。………ただ、唯一不安と言えば不安なのが」

 

【秋蘭】「飛将軍・呂布というわけか」

 

【桂花】「えぇ。最強と謳われているけど、実際にどの程度の武なのか。汜水関まで上がってきているのか。何も分からないわ」

 

 化け物じみた武力なのだろうが、うちにも似た様なのはいるわけで。

 

【春蘭】「…………。」

 

【季衣】「…………。」

 

【琥珀】「…………。」

 

【凪】「…………。」

 

 作戦の話になったとたん黙ってしまったが。しかし、この連中を見ているとこれ以上の武力と言うのが想像できないのが事実。最強と言われたところで俺にはあまり実感はなかった。

 

【華琳】「ふむ…。ならば、呂布の事は春蘭達に任せるわね。うちが無理に相手する必要は無いけれど、火の粉が降りかかるなら払わなければならないわ。」

 

【春蘭】「はい!」

 

【華琳】「ふふ」

 

 俺達の行動が概ね(?)決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は色々あって、少し疲れたのか、頭が妙にぼーっとする。俺は頭を冷やす意味でも天幕の外に出る。

 

 外に出れば、いつの間にか空は夜になっていた。兵達も休んでいるのか、外はずいぶん静かだった。適当に歩いて、俺は落ち着ける場所を探した。すると、向かった場所には先客がいた。

 

【薫】「………。」

 

 天幕を支える杭の上に腰を下ろして、地を見つめていた。

 

【一刀】「何してるんだ?」

 

【薫】「――?…あぁ、一刀…。ううん、別に何も」

 

 こちらを振り向いて、薫は笑ってみせた。――上手くはなかったが。

 

【一刀】「……何か不安なのか?」

 

【薫】「え?」

 

 どう見てもそう見える。そんな薫に俺は話をしようと思った。

 

【薫】「あぁ…不安っていうわけじゃないんだけど…」

 

【一刀】「じゃ、どうしたんだよ」

 

 そういえば、街を発ってから薫と話をするのは久しぶりな気がした。

 

【薫】「あたしってさ、前に賊の討伐で盛大に失敗しちゃったじゃない?」

 

【一刀】「あ~、呉にはいっちゃってメイドしてた時期ね」

 

【薫】「う、うるさいな……。それはいいんだよ」

 

 そういえばめいど服を作ると言ったまま忘れていたことに気づく。帰ったら早速職人でも探すか。

 

【薫】「またあの時みたいに失敗したりしないかなってね」

 

 世間では一般的にそれを不安と呼ぶのだよ薫さん。

 

 しかし、薫の悩みは本気のようで、その顔は暗いままだった。思えば薫と話をする時はいつも薫は暗い顔だった。彼女にも何かしらあるんだろうけど、俺にはそれを知る術も権利もない。だからこそ、俺はその表情を許せなかった。

 

【一刀】「そんなに気にするなよ。薫には初めての出撃だったんだしさ。」

 

【薫】「初めてだから!……許せないっていうか……ぁぁ…」

 

 俺の中で薫の印象が少し変わったきがした。普段が普段なだけにもっと緩い奴だと思っていた。だけど、今目の前にいるこの子は、自分に対する責任感で押しつぶされている。あれからずいぶん時間が経っているにも関わらずこれだ。

 

【一刀】「だったら、次の汜水関で」

 

【薫】「…ん」

 

【一刀】「手柄でも立てちまえよ。前の分帳消しにしてお釣りが来るくらいの。」

 

【薫】「それが出来れば――」

 

【一刀】「出来るよ。お前は華琳が認めてる軍師だからな」

 

【薫】「………見習いだけどね」

 

 苦笑い。だけど、さっきの作り笑いよりはよっぽどいい笑顔だった。

 

【薫】「なんであんたなんかに相談したんだろ」

 

【一刀】「お前も何気に毒舌だよな…。」

 

【薫】「桂花方面は遠慮するけどね」

 

【一刀】「ははは」

 

 夜風が吹く中で、体はそれほど寒いとは感じなかった。笑えることが、いいことだと思えるようになったのは、こっちへ来たおかげだろう。

 

【華琳】「一刀」

 

 二人して話していると、後ろから華琳の声が俺を呼んだ。

 

【一刀】「華琳、どうしたんだ?」

 

【華琳】「今から少し付き合いなさい。」

 

【一刀】「え、お、おい。華琳」

 

 華琳はそういうと踵を返し、歩き出す。

 

 俺は薫と顔を見合わせて、頭の上にクエスチョンを浮かべる。

 

 

 

 

 結局訳が分からないまま、俺は華琳についていった。何故か薫も一緒に。

 

【華琳】「このあたりでいいかしら」

 

 華琳が俺をつれてきたのは、陣中から少し離れた場所。周りには何もなく、広い空間が広がっていた。

 

【一刀】「おい…。何のつも―――」

 

 と言いかけて、俺は言葉が出せなかった。

 

 華琳が、鎌を俺に向けていたから。

 

【華琳】「武を磨けと言ってから、まだそれほど経っていないけれど。時間は待ってはくれないわ。今のあなたの力を見せてもらうわよ、一刀」

 

【一刀】「は?」

 

【華琳】「構えなさい。………殺すわよ」

 

【一刀】「―――!」

 

 最後の言葉を期に華琳の殺気が膨れ上がる。抜かなければ、殺される。本能がそう認識した時、俺の右手は既に太刀を抜いていた。

 

 正眼の構え。両手で持ち、体の中心に剣をおく。俺にはやはりこれが一番なじむ。

 

【華琳】「琥珀との鍛錬は見ていたわ。琥珀相手にあれだけやれるならば、それなりに評価できる。」

 

【一刀】「だったらなんで」

 

【華琳】「琥珀が本気でないどころか、むしろあなたに攻撃させていたように見えなければ、すでに軍を任せていたでしょうね。」

 

【一刀】「―――っ」

 

 話している間も華琳の殺気が収まることは無い。恐怖が足を支配しようとする。それと抗いながら、俺は華琳と会話していた。

 

 琥珀が本気でないことは知っていた。攻撃はせず防御に徹していたのだから、そんな事は分かっている。あいつがどちらかに専念しなければ戦えないことも以前知った。だけど、だからと言って今俺の実力を知って何になるのか。

 

【華琳】「では、いくわよ。」

 

 俺の思考を遮るように、華琳は短く言い放った。

 

 ―――同時に、目の前に鈍色の軌跡が走る。

 

 真正面に構えた太刀の内側を通るように、それは入ってくる。一瞬捉えた筋を頼りに、太刀を右へと流す。ガギンと鈍い音がその場に響いた。

 

 

 

 耳に振動が伝わるとほぼ同時、腹部へ”何か”の影が突っ込んできた。

 

【一刀】「ぐっ…ぁ…」

 

 突き抜けるような打撃が腹部を貫通する。俺の腹に華琳の足が入っていた。

 

【華琳】「はぁっ!」

 

 足を引くと、華琳は体を捻り、鎌にさらに力を込める。ギリギリと太刀と鎌の刃がこすれあい、嫌な音がその場に生まれる。

 

【一刀】「はぁ………くっ」

 

 華琳にあわせて力を込めれば、その瞬間に鎌は太刀の前にはなかった。回転させ、逆手に持ち替えていた華琳はそのまま下段から切り上げる。

 

 普通の剣と違い、鎌は横に向かって刃が伸びる。それ故に刃が体に到達するまでの時間が速い。

 

【一刀】「胴は得意なんだ……!!」

 

 腰から捻り、自分の一番得意な型で相手の鎌を受けにいく。

 

【一刀】「だぁぁっ!!」

 

 金属同士が摩擦する。

 

【一刀】「……っし!」

 

 鎌を内側から防ぐ。つまり俺は、間合いの中に入った…!

 

【華琳】「はぁぁぁ!!」

 

 華琳の体が高速回転する。受け止めていた鎌の感触が消え、次に気づいた時、俺は柄の部分で腹部、しかも今度は鳩尾に入れられていた。

 

 

【一刀】「……がっ…は…ぁ…ぁ」

 

 あまりの衝撃に俺は膝をついてしまった。

 

【薫】「一刀!?」

 

 近くで見ていた薫も心配になったのか、駆け寄ってきた。

 

【華琳】「……………。」

 

【薫】「華琳…やりすぎじゃないの?」

 

【華琳】「こっちも少し危なかったのよ。最後は余裕がなかったわ」

 

【一刀】「ぁぅ……どう、なんだ…?」

 

【華琳】「まだ、だめね。結果次第で一軍を任せようか考えていたけれど、もう少し保留にしておくわ。」

 

【一刀】「はぁ…あぁ、そうしてくれ」

 

【薫】「はぁ……あたしなんかよりこっちのが心配だ」

 

 最後にそう薫の声が聞こえて、俺の意識は落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 


 
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