夜明け前にやっと長寿の薬が完成しました。ナタは死んだように眠りに就いています。お菓子の実を食べてから、ナタは寝てばかりいたのですが、寿命が尽きかけていたからかもしれません。
「ナターシャ、起きなさい。早くこの薬を飲むんだ!」
「うーん、あと五分…」
「早くしないとお前は死んでしまう!薬を飲みなさい」
「ゲイザー様、私が口移しで飲ませます」
「あ、ああ…その手があったか」
アークは緑色のドロドロとした液体を口に含むと、舌を入れて濃厚な口づけをしました。
「ううっ…苦い…オエッ!」
「吐き出してはダメです!ナターシャ様。全て飲み込んでください…」
残りの長寿の薬を寝ぼけ眼のナタに手渡しました。
「何、これ?前に罰ゲームで飲まされた不味いジュース、そっくり!」
「時間がないのです。一気に飲み干してください」
「長寿の薬なんか飲みたくないよ?」
「今更、何を言ってるんだ!さっさと飲みなさい」
「私、死にたいの。本当はもっといっぱいあの実を食べようと思ったんだけど、途中で気持ち悪くなって食べられなくて、持って帰ったけど全部腐ってて、食べられなかった…」
「ナターシャ、私だっていじめを受けて苦しんでいた。だからお前の気持ちは痛いほどわかるよ」
「おじさんはすごいよ。あんな酷い事言われても平然としてるんだから…」
「私は私を愛してくれる人を悲しませたくないから絶対に自殺などしない」
「どうしてダメなの?死んだ方がラクになると思うよ」
「お前が死んだらお前を愛してる者だけが悲しむんだ。お前を苦しめた者は誰も苦しまない」
「私を愛してる人なんてどこにいるの?」
「ここにいるだろう!私やユリアーノ様、アーク殿、ティターニア様だってそうだ。みんな、悲しむぞ?」
「それは愛してるフリしてるだけじゃない…」
「私はナターシャ様を心から愛しているのに、どうして伝わらないのですか?」
アークはすすり泣きながらナタに抱き付きました。
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第66話です。