ポケモンバトルを終えたヨウカ、ハウ、リーリエの3人は、マハロ山道を上っていって、戦の遺跡にたどり着いた。
このメレメレ島の守り神、カプ・コケコに語りかけるために。
「・・・これでいいかな、お供えものって」
「いいんじゃないかなー、守り神もポケモンだし、きっと好きだよー」
そう言ってヨウカが祭壇に捧げたのは、色とりどりのポケマメだった。
ポケマメを祭壇におくと、3人は頭を下げて祈りを捧げ、リーリエが語りかける。
「・・・カプ・コケコさん。
あのときあなたが、ヨウカさんとほしぐもちゃんを助けてくれたおかげで、私は彼女と良い友達になれました。
ほしぐもちゃんも、立派な伝説のポケモンに進化して・・・旅立っていきました。
ずっとお礼を言おうと思っていて、すべてが解決した今、こうしてきたのです。
本当に、ありがとうございました・・・!」
「ありがとう!」
そうつげ終えると祭壇が輝きだし、そこに雷が落ちてきて、その雷の中からカプ・コケコが姿を見せた。
「おぉぉー!」
「カプ・コケコさん・・・!」
そこに現れた守り神に、3人は目を丸くする。
まさか本当に姿を現すとは、思ってもいなかったからだ。
ヨウカも驚いていたが、少しずつ笑みを浮かべていき、カプ・コケコの前にたち話しかける。
「・・・エーテルパラダイスを通して知ったよ。
あなたがハラさんと一緒に戦って、ウルトラビーストと戦って・・・このメレメレ島を守ってくれたんだよね!
さっすが、守り神さんだよ!」
「クッククー」
「おれ達もー、エーテルパラダイスでがんばった甲斐があったよー」
「こうしてまた直接会えて、嬉しいです!」
ヨウカもハウもリーリエも、あのときの戦いの話をした。
たとえ気まぐれであったとしても、守り神の使命であったとしても、かまわないのだ。
このメレメレ島が無事なら、それでいいのだ。
「また、ここに遊びに来るね。
あなたともこれから、友達でいたいから」
「クァルルルル・・・コッコー!」
「またねー!」
去っていくカプ・コケコを、3人は見送ったのだった。
メレメレ島に帰還してから、数日後。
ヨウカは家族とともに島巡りの疲れをいやすため、ハウオリシティの自宅にいた。
「ヨウカずいぶんくつろいでるロトね」
「そりゃー、あたしのうちだもん、くつろいだっていいじゃん」
ねーと言いながら、部屋で一緒にくつろいでいたポケモン達に言う。
彼らを両親に紹介したところ、最初は驚いていたが、彼らのことを迎え入れてくれた。
そのことが、ヨウカにとって嬉しいことだった。
「ヨウカー、お昼ご飯ができたわよー!
ポケモン達と一緒に降りてらっしゃい!」
「はいはーい!
さ、みんないこう!」
母親に言われてヨウカは食堂につき、用意してくれた昼食に手を着けていく。
ポケモン用にご飯も用意してもらったので、ポケモンもつれてきて同じ空間で一緒に昼食をとる。
そんなマイペースな姿に母はヨウカ、と一度名前を呼んでから話を切り出す。
「平和で、島巡りを終えた余韻に浸かるのもいいけど・・・明後日にはトレーナーズスクールにまたいかなきゃだめよ?
一緒に冒険していたあなたの友達も、今頑張ってるんでしょ?」
「せやね・・・ツキトくんもセイルさんも、それぞれ自分の夢に向かって動き出してるもんね。
ツキトくんはまた試練サポーターしつつ勉強をして体も鍛えるって言ってた。
セイルさんも、まずは怪我を治すって言ってたなぁ」
「でしょ?」
なのにヨウカはまだ、のんびりしてる。
そう言われる前にヨウカはあわてて、ずっと思っていたことを口に出す。
「でもね、ちゃんとあたしもやりたいことがあるんだよ!」
「やりたいこと?」
「うん!
まだできないから挑めないけど、時がきたらこれは絶対やりたい」
ヨウカはククイ博士から聞いた話を思い出しながら、やりたいことを大きな声で言う。
「ラナキラマウンテンって山の上で、ククイ博士が作ってるってゆーポケモンリーグ!
それが完成したらあたしはそれに挑もうと思うんだ!」
「へぇ、このアローラにも、ポケモンリーグができるのか!」
「そこでね、みんなでバトルをして・・・このアローラ初のチャンピオンを決めるの!
あたしはそれがやりたいんだっ!」
「やはり、チャンピオンを目指すのか?」
父のその言葉に対し、ヨウカは力強くうなずいた。
娘がここまで強い気持ちを持っているのは、ポケモンのおかげなんだなと思いながら、彼女の決意を受け取りうなずく。
「・・・いい目標じゃないか、頑張ってみたらいいよ!」
「そうね!
あなたは島巡りをして、こんなに素敵なポケモン達と出会って・・・ここまで頑張ってこれたんだもの!
パパもママも、あなたがその目標を叶えられるように応援していくわ!」
「・・・パパ、ママ・・・ありがとう!」
改めて感じる、両親の懐の大きさ。
自分を思ってくれてるから、そう言ってくれるし自由にしてくれる。
それが嬉しくてヨウカは大笑いをする。
両親の期待に応えるために、これからまた頑張ろうと決めたとき、家のインターホンが鳴った。
「誰だろ?」
「ガウ」
ニャーくんがその音に気付いてドアを開けると、家の中にハウがはいってきた。
「あわわわわ・・・ヨウカいるーっ!?」
「ハウくん!?」
「あ、ヨウカー!」
ハウはどこか焦っている様子だった。
彼がこんなに焦るなんて珍しいとおもいながら、ヨウカはハウの前にでる。
「あら、ハウくん?」
「どうしたの?」
「おばさーん、おじさーん!
ヨウカちょっとかりるねー!」
「わぁ!?」
ヨウカはハウに腕を引っ張られながら走っていった。
突然のことなのでポケモンをおいてきてしまったが、ハウは想像以上に足が速く立ち止まれない。
そんな中でヨウカは何とかして、ハウになにが起きたのかを問いかける。
「ど、どないしたん!?」
「とにかく急いで港にきてー!
リーリエが、このアローラをでていっちゃうんだよー!」
「・・・えぇーっ!?」
ハウの衝撃の発言にヨウカは驚きの声を上げ、彼に負けず猛スピードで走る。
「・・・バーネットのやつ、意地を張っちゃってるぜ。
あのロフトはこれからも、リーリエのために貸し続けるんだって言ってたよ」
「はい・・・本当に嬉しいです。
バーネット博士にも、よろしく伝えてください」
「あーっ!」
「!?」
ハウとヨウカはハウオリシティの港で、ククイ博士と向かい合うリーリエを発見し滑り込んだ。
彼女が旅立つ前にくることができたことで、ヨウカとハウは荒い呼吸をしながら安堵して、同時に同じ台詞をはく。
「「まにあったぁぁー!」」
「お、でんこうせっかの如く駆けつけたな!」
「ヨウカさん・・・ハウさん・・・!」
友達となった2人が駆けつけたことにリーリエは驚き目を丸くした。
これからアローラに旅立つのに、彼らにあってしまったらここに残り続けたくなってしまうから、何も言わないでいたのに。
恐らくククイ博士が彼らに伝えたのだろうとリーリエが思っていると、ハウが彼女の前に立った。
「リーリエー!
アローラをでていっちゃうなんて、なにがあったのー!?
どうして、急にー!?」
「・・・」
「・・・リーリエちゃん・・・お願い、理由を話して。
そして、あたし達に旅立ちを見送らせて」
「なにも言わないでいくなんて、いやだよー!」
ヨウカとハウの訴えを聞いたリーリエは、戸惑いつつも正直に話すことを決めた。
やっぱり何も言わず別れてしまう方が、ずっとイヤだと思ったから。
「・・・あのあと、私・・・エーテルパラダイスで色々調べ物をしていたのです。
ウツロイドに侵されてしまったお母様を助けるために・・・。
そして、その手がかりがあるかもと思い、カントー地方に向かおうと決めたんです」
「カントーに?」
「はい!
そして、ポケモントレーナーになって旅をして、私自身も強くなろうって思ったんです!」
まさかカントーに彼女を救うためのヒントがあるとは、とヨウカは驚く。
その横でハウは涙ぐみ、寂しそうな顔をしながらリーリエに向かって言葉をつげる。
「おれ・・・リーリエがいたから強くなれたところもあったから・・・だから、いなくなるの寂しいよー・・・!」
「大丈夫です・・・ハウさんはもう強い人ですから。
明るくて、優しくて、本当に強い人だから・・・大丈夫です。
私が、あなたを認めますよ」
「・・・リーリエ・・・!」
ハウはこぼれかけた涙をぬぐいとり、その目に少しだけ残しながらもリーリエの顔を見ていった。
「手紙、たっくさんかくからねー!
めっちゃ長いやつ!」
「はい、楽しみにしてます!」
ハウにたいしほほえみをむけて、リーリエはヨウカのほうをむく。
ヨウカも、ハウと同じように寂しそうな顔をしているのに気付いたからだ。
「・・・ヨウカさん」
「・・・カントー、いいところもいっぱいあるから・・・いい冒険になれるよ・・・」
「・・・ええ・・・私も、楽しみです」
リーリエはヨウカをみて、これからの冒険に胸を膨らませた。
彼女がいたから、ポケモントレーナーというものにあこがれを抱いていき、ポケモンバトルの真意にも気付いていった。
どんなことでも頑張れたし、願い事も叶っていった。
コスモッグのことも、母親のことも、これからのことも。
すべてヨウカにもらってばかりだった。
「あ、そうだ!」
そのときヨウカはあることを思いつき、自分の手首につけていた、サンストーンのブレスレットをはずすとそれをリーリエにつきだした。
「これって・・・」
「ブレスレット、交換しよ!
友達のあかしに・・・」
「・・・はい!」
そう言ってリーリエは自分の手首からムーンストーンで出来たブレスレットを外すとヨウカの手首につけた。
「・・・アローラは素敵なところ・・・大切な思い出がいっぱい残ってる・・・。
だから、母様が良くなったら必ず・・・帰ってきます!」
「うん、絶対にまた会おう!」
「約束だからねー!」
「あたし達は・・・ずっとずっと、友達だよ!」
「はい!」
「うん!」
そう話をして、3人は手を重ね合うと、船の汽笛が港中に響きわたった。
リーリエはその船に乗ると、笑顔を浮かべながら港を見つめて手を大きくふる。
「アローラ!」
「アローラァァァ!!」
ヨウカは涙をぐっとこらえながら、大きく手を振りかえした。
リーリエの乗った船が、水平線の彼方に消えていくまで、ずっと。
「・・・ぐずっ・・・」
「ハウくん・・・」
リーリエが乗っていった船が見えなくなった頃、ハウは堪えていた分の涙を一気に出していた。
彼の気持ちはヨウカにも痛いほどわかる。
「ハウ・・・リーリエは、最後まで笑ってたよな。
彼女だって別れはつらい・・・だけど自分のために、強く笑って、前を向こうと頑張っている。
お前も、つらいかもしれないが、同じように頑張らなくちゃ・・・リーリエに申し訳が立たない。
だから、リーリエとまた会ったときに笑っていられるように・・・強くなろうな」
「・・・博士」
「自分のペースでいい、ポケモンやたくさんの友達と進もう」
ククイ博士の言葉を聞いたハウは、気持ちを振り切ろうとしているようで涙ぐみながら立ち上がる。
「・・・おれー・・・じーちゃんに会いたい・・・」
「・・・そうだな、今は会いたいに人に会いに行ったほうがいい。
そうしたらまた、きあいだめした分だけ頑張れるからな」
「うん」
ハウはククイ博士とともに、港を去っていく。
そんな友達の姿を見てヨウカはつぶやく。
「・・・ハウくんなら、大丈夫だよね」
彼ならすぐに立ち直って、明るく無邪気ないつものハウに戻る。
もし元気をなくしたら、何度でも自分が助けになればいい。
ハウのことを信じながら、ヨウカは歩き出す。
「あっ・・・グラジオくん!」
その時、ヨウカはグラジオを発見して彼に声をかける。
ヨウカに気付いたグラジオは、ここから妹が旅立っていったのを知っているので、そのことでヨウカにたいし口を開く。
「・・・リーリエを、見送ったのか・・・」
「うん」
「・・・お前には、感謝してもしきれないな。
あのリーリエがあそこまで前向きで行動力がある性格に変わることができたのは・・・お前達がいたからだ。
母親も、俺も、妹も・・・みんな救ってくれた・・・どれだけ感謝しても・・・返しきれないかもしれない」
「いいんだよ、あたしも、いっぱいもらったから!」
「もらった?」
「嬉しいって気持ちだよ!」
ヨウカはリーリエと初めて会ってから、さっき別れるまでのことを思い出していた。
「・・・あたしはリーリエちゃんに会えて・・・友達になれて・・・よかったから!」
「・・・そうか・・・。
リーリエも、お前達と会えてよかったと言っていた・・・俺も・・・お前と会えたことは後悔しない」
そう言ってグラジオは少しだけ笑って見せた。
そんな彼の表情がヨウカにとってはどこか嬉しいものになり、明るく話を続ける。
「あたしね、みんなとこのまま仲良しでいたいなって思うんだ!
ハウくんとも、ツキトくんとも、セイルさんとも!
イリマさんにスイレンちゃんにマオちゃん、カキさんにマーマネくんにアセロラちゃん、マツリカさんと、友達として仲良くなりたい」
もちろん、リーリエちゃんとグラジオくんもねっ!」
そう明るく言うヨウカにたいし、グラジオは少し目線を落としつつ、語り出す。
「仲良し、か・・・」
「え?」
「俺達は・・・仲良しと言うよりは・・・悪くない関係だと思う。
それも、いいんじゃないか」
「・・・」
「・・・じゃあな」
そう言い残して去っていくグラジオを見つめていたヨウカは、
「うん・・・これから、仲良くなればいいよね!」
ハッキリ言って、グラジオがなにを伝えようとしたのかはヨウカにはわからなかった。
だが、一歩ずつでも彼には近づいていけたらいいなと思っていた。
「ガァ!」
「わっ!?」
家に近づいたとき、家においてきてしまったポケモン達がヨウカの元に駆けつけた。
どうやら、彼女を迎えにきたらしい。
そんなポケモン達に触れて、そのポケモン達への思いをハッキリと口に出す。
「・・・ニャーくんも、タツくんも、サニちゃんも、カリちゃんも、サンくんも、ミミちゃんも!
みんなみんな、大好きだよ!」
一緒に頑張って旅を続けてくれたポケモンに、ありったけの思いを告げて一緒に家に帰っていく。
これからも彼らがいれば、絶対に大丈夫という気持ちを胸に秘めて。
家の前では、彼女の両親が娘の帰りを待っていた。
娘の姿を見て2人は笑顔を浮かべ、娘の名前を大きな声で呼ぶ。
「ヨウカー!」
「はーい!」
自分を待っている人たちの呼び声にたいし、ヨウカは元気に笑ったのだった。
輝く笑顔が、皆を、そして自分自身をさらに輝かせる。
皆が笑って過ごせる、会えてよかったという気持ちになる。
人を信じるから、頼ることもできる。
それを実感して、己の意志を主張し、自分の足で一歩でも踏み出せたとき。
誰でも、自分を越えることができるのだ。
CosmosEpic
完
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これで、この長編はおしまいです。
読んでくださった方々、ありがとうございました。
TINAMIの小説投稿があと少し改善されれば、また投稿するかもしれません(こら)
今後はたまに、イラストを投稿しようかと思います。
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