「なんて・・・ことだ・・・」
「ナイスだよ、ミミちゃん!」
代表であるルザミーネの元へ向かうためにエーテルパラダイスの内部を進んでいたヨウカ達は、その部屋へ続く扉の前で待ちかまえていたエーテル財団の職員とザオボーに遭遇し、先へ進むために彼らとポケモンバトルをしていた。
その結果、ヨウカ達が勝利した。
「・・・まさか、あんたがはめてたなんてね!
知ったときにはもー、怒りバクハツなんだから!」
「さぁ・・・カギは貰っていくぞ!」
そう言ってグラジオはザオボーにたいしガンを飛ばして、それにたいしザオボーは自分ではなすすべが無くなったことを実感してしまい、彼に鍵を譲った。
「ハウくんもすっかり、スランプじゃなくなってるね!」
「えっへへ!」
「くっそぉぉぉ!」
エーテル財団の職員と戦い勝ち、ハウは自分に調子が戻ってきているのを感じて笑う。
彼と一緒に戦っていたペリッパーも、嬉しそうだ。
「クッ・・・クゥゥゥウ・・・!
エーテル財団の支部長であろうワタシが、こんな失態を犯すなんて・・・!
支部長らしく待ち伏せをして一気に叩き潰そうとしたのに・・・」
「・・・やっぱりちょっとうるさいよ、このオジさん」
敗北したのがよほど悔しかったらしい、ザオボーはブツブツと支部長であることを入れながらつぶやき続けている。
そこでハウは、あることに気付きにっと笑った。
「ってゆーかー!
ここで自分がカギを持ってるなんて言わずにずっと隠れていればー、おれたちにボコボコにされなかったし、カギだって盗られる心配もなかったのにねー!
そうすればーずっと足止めできてたよねーっ!」
「・・・!!!」
ハウの満面の笑みから出てきたその言葉に、ザオボーはショックを受けて口を大きく開けて立ったまま硬直する。
「ぷぷぷ・・・あっははははは!
ハウくんサイコーッ、まじせいろーんっ!」
「フッ・・・」
「確かに、今のはいい事言ったな・・・」
ヨウカは大爆笑をし、一緒にいたグラジオとセイルも笑みを浮かべた。
それにたいしザオボーは顔を憎々しくゆがめていき、叫び声をあげながら走り去っていった。
「あぁぁぁぁっ!!
だからワタシは、子供がキライなのですよぉぉぉお!!」
「あ、走って逃げてった」
「・・・今はそれよりも、こっちだ」
そう言ってグラジオが鍵を開けた先には、大勢のスカル団が待ち受けていた。
「スカル団!?」
「ッ!」
「あ、グラジオくん!」
率先して、グラジオが動き出し、スカル団をかき分けながら先へ進んでいった。
「ヨウカ、グラジオをおっかけよーよ!」
「うん!」
ハウに言われてヨウカとセイルはスカル団の軍勢の中につっこんでいった。
「ヤトウモリ、ベノムショック!」
「ミミちゃん、かわしてシャドークローッ!」
途中でスカル団の下っ端に勝負を挑まれることもあったが、ヨウカは怯まずに迎え撃つ。
「ライライは10まんボルト、キャキャはぼうふうだー!」
そして、完全に調子を取り戻しているハウもまた、スカル団と戦っていった。
「みんなの笑顔を奪うなんて、そんなのちっとも楽しくなんかないよー!」
そう叫ぶハウの目は真剣そのものだった。
「ゆけ!」
セイルもまた、ボールからヤドキングを出し、ハイドロポンプを指示して相手のゴルバットを倒す。
「ヨウカ、お前はグラジオのところへゆけ!
この雑魚はオレとハウがすべて、蹴散らす!」
「はいっ!」
セイルに言われてヨウカは奥へとすすんでいく。
「クッカカカカカ・・・どうだこの、ブッ壊してもブッ壊しても手を抜かなさすぎて嫌われるグズマ様の力は!」
「くっ・・・」
一方、グラジオはグズマ相手に苦戦を強いられていた。
「ヌル、ブレイククロー!」
「シザークロス!」
ブレイククローとシザークロスが衝突する。
「・・・全てを見捨てて強さだけ求めていただけの親不孝者だよなぁ、お前は。
用心棒にするのは簡単なはずだぜ」
「ッ!」
その言葉にグラジオは動揺させられ、言葉を詰まらせる。
それが原因でタイプ:ヌルに指示を出すのを少し遅れてしまい、タイプ:ヌルはシェルブレードを受けて大ダメージを受けてしまった。
「ヌルッ!!」
グソクムシャが追撃をしようとしたそのとき、グラジオはタイプ:ヌルを庇うようにタイプ:ヌルに覆い被さる。
「だったらてめぇも、ブッ壊すぜ!」
「・・・!」
「ガァァウォォォ!!」
ニャーくんがDDラリアットを繰り出しながら突っ込んできて、その衝撃でグソクムシャは吹っ飛ばされる。
彼らの間に割ってはいったニャーくんは大きく雄叫びをあげた。
「ガオガエン!?」
「あんだぁ!!?
アリアドス、ナイトヘッド!」
「ミミちゃん、アリアドスにでんじは!
ニャーくんはグソクムシャにもいっぱつ、DDラリアット!」
ポケモンにそのまま技の指示を出し続けながら、ヨウカが姿を見せた。
「ヨウカ・・・!」
「大丈夫、グラジオくんっ!」
「俺よりヌルを・・・」
そう言いヌルの顔を見て、その仮面にヒビが入っていることに気づきグラジオは悔しそうに顔をゆがめる。
「・・・俺の2年間は・・・結局すべてが、無駄だったのか・・・」
本来なら自分がここでグズマを倒さなければならなかったのに、できなかった。
自分は強くなっていないのでは、弱いままなのでは・・・とグラジオは自分を責める。
「自分を、責めちゃだめだって・・・さっきいったよね」
「・・・」
そんなグラジオにたいしヨウカはそう言うと、立ち上がってグズマとにらみ合う。
「あたしがこのまま、相手をするよ!」
「・・・出てきやがったか・・・壊しきれねぇてめぇが、気にいらねぇから出てきてくれてちょうどよかったぜ」
「言いたいことは、それだけ?!」
「あぁ!?」
ヨウカの挑発的な一言にグズマが眉をつり上げると、ミミちゃんがアリアドスにたいしシャドークローを放って倒していた。
さらにグソクムシャを押さえていたニャーくんも、そのまま力ずくでグソクムシャを投げ飛ばし、そこにだいもんじを打ち込んで倒した。
「・・・な、あぁ・・・!?」
「・・・グズマさん。
あたし、ポータウンであんたに言いたいことがあるんよ」
ポケモン達がヨウカに歩み寄り彼女が差し出したボールに戻る。
そしてヨウカはグズマの前にたつ。
「あたしはあんたと違う人生を歩んでる・・・。
だからあんた達スカル団の気持ちなんてわかんない・・・わかんないけど」
ヨウカはさめた顔でグズマを見つめながら、言葉を突き刺す。
「・・・そんなに同情がほしいなら、あたしもスカル団で一緒に暴れてあげるよ?」
「・・・っ!」
その言葉にグズマの顔は凍り付き、膝から崩れ落ちた。
そんな彼をそこに置いていき、ヨウカはそのまま奥の代表の部屋にはいっていった。
「グズマァァァァァ!!
なにやってんだぁぁぁぁ!!!
あんな言葉に動揺してんじゃねぇよぉぉぉ!!!」
「・・・」
グズマは頭をかきむしりながら、叫ぶ。
「・・・あいつは、俺達よりずっと強いんだ。
ポケモンバトルも、そして心も・・・それだけだ・・・!」
グラジオはタイプ:ヌルの傷をいやしながらグズマにそう言った。
「・・・」
扉を開けて入ったルザミーネの私室。
そこにはやはりルザミーネの姿があり、彼女の目の前には一人の少女がいた。
「・・・あら、ヨウカさん・・・お久しぶりね?」
「・・・!」
その名前を聞いて少女・・・リーリエは振り返りそこにいたヨウカにたいし目を丸くした。
リーリエの姿を見たヨウカはすぐにリーリエに駆け寄る。
「リーリエちゃん!」
「・・・そんな・・・まさか・・・信じられません・・・。
ヨウカさんが、助けにきてくれるなんて・・・!」
「当たり前じゃん、友達だもん!」
「・・・ヨウカさん・・・」
彼女が駆けつけたことが嬉しくて、リーリエは目をうるわせる。
そんな彼女達にたいし、ルザミーネは言葉を続けた。
「ふぅん・・・お友達なの・・・。
ヨウカさんのようなトレーナーとリーリエが仲良くなるなんて・・・」
ふぅ、とルザミーネは落胆したようなため息をついた。
「ワタクシは、がっかりです」
「・・・ルザミーネさん・・・」
ヨウカはすぐに気付いた。
今の彼女は初めてあったときの穏和さなどない、冷たい空気に包まれている。
それはまるで、彼女の態度を表すように。
そのことを言おうとしたとき、リーリエは自分から口を開いた。
「ッ母様の許しなどなくても、今の私達には関係ありません!
私はコスモッグを、助け出します!」
「母様、だなんて・・・あなたは訳の解らないことを言うのね?
だってワタクシには、娘も息子もいないのよ」
「・・・!」
その一言を聞いたリーリエはショックだったのか体をビクリとふるわせ、そんなリーリエに対しルザミーネは追い打ちをかけるように冷たく厳しい言葉を立て続けに浴びせる。
「ワタクシの愛を受け入れられない子ども達なんて・・・子どもなんて言わないわ!」
「なっ・・・」
なんでそんなことをいえるんだ、とヨウカはルザミーネに対し怒りの感情がうちからわき上がってくるのを感じた。
「あなたは美しさがないわ、リーリエ。
だってあなたにはなにもないもの・・・トレーナーとしての強さも、親を説得する勇気も!
やったことと言えば人の実験材料を盗んだことぐらいだわ!」
「・・・」
「・・・それでもなお、ワタクシのじゃまをするというワガママを通すつもり?」
リーリエは首を横に振って、ルザミーネを見つめて大きな声で訴える。
「ワガママなんかじゃありません、これはお願いです!
母様・・・ほしぐもちゃんをこれ以上苦しめないでください・・・犠牲にしないでください!
ビーストのためにも、アローラのためにも、コスモッグのためにも!
このままウルトラホールが開いたら、ほしぐもちゃんが・・・死んでしまいます・・・!」
「・・・そうね、死んじゃうかも。
だって、コスモッグの力を無理矢理、最大にまで発動させるんだものね!」
「させないっ!」
ヨウカが勇み足でルザミーネに突っ込もうとしたが、そのときピクシーが出てきてサイコキネシスを放ってきたことにより吹っ飛ばされてしまう。
ニャーくんが彼女を受け止めたので軽傷ですんだが、ルザミーネは扉を開けてワープパネルの上に乗ってしまった。
「あなたがホントウに、私の子どもなら・・・言うことを聞いてあげてたかもしれないわ。
・・・なんてね」
そう、ルザミーネは冷たい笑みを浮かべ2人を見下しながらワープパネルでそこから消えた。
ルザミーネの豹変ぶりにヨウカは驚いていたがすぐに我に返るとリーリエと向かい合う。
「リーリエちゃん、大丈夫?」
「よ・・・うかさん・・・」
リーリエはヨウカの顔を見てその双眼から涙をボロリとこぼした。
「嬉しいです・・・ありがとうございます・・・助けにきてくれて・・・!
だけど、ごめんなさい・・・。
私・・・こんな状況でも・・・あなたに、お願いすることしかできません・・・!」
そう悔しそうに涙を流すリーリエの肩をヨウカは支え、彼女に対し笑ってみせる。
「大丈夫、あたしはあなたにお願いされても・・・それをかなえてあげる!
だから・・・今も、あたしにお願いしたいことがあればいっていいよ!」
「・・・!」
そのときリーリエは思い出した。
ヨウカはいつも自分を助けてくれたことを、そして友達だといつもいって笑ってくれていたことを。
彼女を信じることができる、だから頼ることもできる。
その気持ちを思い出しながら、リーリエはヨウカにお願いをした。
「お願いです、ヨウカさん・・・!
・・・私と一緒にあの人を・・・母様を止めてください!
・・・そして・・・ほしぐもちゃんを・・・」
「うん・・・わかった!」
ヨウカとリーリエはともに、ルザミーネの後を追ってワープパネルに乗った。
だが、ルザミーネの後を追っていった先、ワープパネルで転送された先の部屋をみて2人は愕然とした。
「ここって・・・」
「ど・・・ういう・・・こと・・・」
この部屋にはいくつものショーケースが設置されており、そのケースの中には眠っているポケモン達がいた。
異様な光景、その中心にいるルザミーネはほほえみを浮かべていて、この部屋の不気味さを一層ひきたてていた。
「ようこそ、ここはワタクシのプライベートルームよ・・・」
「コレクション・・・って、これって・・・まさか本物のポケモン!?」
「うふふふ・・・そうよ・・・」
ルザミーネはうっとりしたような笑みを浮かべながら、ポケモン達が閉じこめられているショーケースを撫でていった。
「ワタクシの気に入ったポケモン達を、こうしてコールドスリープさせて、永遠にその美しさを保ちながらここに永遠に飾っておく・・・。
どう、すてきでしょう?」
「こんなの・・・こんなのってないっ!」
「まぁ、理解できないのね」
「したくもないよっ!」
ルザミーネはヨウカの叫びに対し、だから醜いのよあなたはと答える。
「・・・あとは、ウルトラビーストだけよ・・・そうすれば・・・ワタクシのコレクションはさらに美しさを増すわ」
「そんなこと・・・許せない・・・!」
そのとき、ワープパネルから2人の少年がでてきた。
「ヨウカに、リーリエー!
無事だったんだね、よかったー!」
「ハウさん!」
まずはハウ、そして続けて姿を見せたのはグラジオだった。
グラジオの顔を見たリーリエは驚き、グラジオはルザミーネと向かい合って彼女に向かって叫ぶ。
「俺からも頼む!
ビーストを暴れさせるなんて、狂ったことをしないでくれ!」
「母様・・・!」
リーリエとグラジオは真剣にルザミーネを見つめていたが、ルザミーネは彼らに対し目つきを鋭くさせて怒鳴る。
「コスモッグを盗み出す娘にタイプ:ヌルを盗み出す息子・・・!
ワタクシに逆らって自分勝手な行動を起こしておきながら、今更戻ってきてなにを言い出すかと思えば!」
「・・・!」
「えー、娘に、息子ー!?」
ヨウカは地下のラボでみつけた写真を思い出し、そのことを叫ぶ。
「やっぱり、あんたとリーリエちゃんとグラジオくんと、家族だったんだ!」
「正式には元・家族よ・・・。
だってその子達はワタクシに逆らって、出て行ったんだもの・・・」
「それだけで家族じゃないなんて、そんなのルザミーネさんのワガママだよー!」
「ワガママなのは、その子達でしょ」
「うー・・・この人ぜんぜん人の話を聞く気ないよー!」
ハウは不満げにそう言うと、ルザミーネはあるものをつきだした。
金属の箱のようなものであり、それをみたリーリエは焦り出す。
「あれは!」
「どうしたの、リーリエちゃん?」
「あの中に、ほしぐもちゃんが・・・!」
「なに!?」
ルザミーネは不気味な笑みと笑い声をあげながら、そのケージを高く掲げた。
「ウルトラビーストって、時々このアローラに現れては行く場所もなくてさまよってしまって・・・かわいそうでしょう?
だからね・・・あの子達のためになにかできないかと思っていたのよ・・・。
そしてその結論が、でたわ!
このアローラにみんなを呼び寄せて、好き放題に暴れさせてしまえばいいと!」
「な・・・なんだって・・・!?」
ガシャン、と大きく音を立てながらルザミーネはそのケージを揺らす。
そのときぴゅいー、とコスモッグが悲鳴に近い鳴き声をあげた。
「さぁコスモッグ、あなたのその能力でウルトラホールを開くのよ!!
そして・・・ウルトラビーストちゃん達を、アローラにたっくさん誘い込みなさい!」
「ぴぃゆぅぅうぅぅう!!!」
「ほしぐもちゃぁぁぁん!!」
コスモッグは甲高い、痛々しい悲鳴を上げた。
その声を聞いたリーリエが悲痛に叫ぶと、そのケージからは煙のようなものがあふれ出てきた。
その煙はこの部屋の中心に穴をあける。
「ウルトラホールが・・・開く・・・!」
「そんな・・・!」
その穴がウルトラホールだった。
そのウルトラホールから、少しずつ、一匹のポケモンが姿を見せようとしていた。
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昨日の台風による停電騒動により、投稿があやうまれていましたが、こうして無事にできました。