No.96493

身も心も狼に 幕間『故郷は…』

MiTiさん

連休利用してどんどん投稿!
今回は文章がかなり短く、話の場面の境界線みたいな感じの話ですので、幕間という形で投稿いたします。

2009-09-21 01:10:57 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:8930   閲覧ユーザー数:7948

人間界にあるとある遺跡、発見されてから数年がたった今では、

3つの種族が当然のように行き交っている。

 

”門”

 

それは、遺跡の最深部で発見された遺産。

人間界、魔界、神界。三つの世界をつなぐ扉。

 

今そこを一人の少女と一匹の狼、そして数人の大人たちが通り抜ける。

 

少女の名はリコリス。ユグドラシル計画の為に生み出されたクローン体。

クローン元は、現魔王の一人娘、ネリネ。

今回の人間界の視察には本来であれば魔王が赴く筈であった。

だが、病弱であるネリネの容態が悪化したことにより急遽変更になった。

しかし、視察には魔王家に縁のあるものが行くことが決まりとなっている。

王妃セージも、娘のことを心配して自分も残ると希望する。

ならば今回の視察はどうするのか?

そこでリコリスが自分の名を出してきたのだ。

魔王の娘のクローン体であるならば、と言うことで今回の視察に彼女が抜擢された。

 

狼の名はルビナス。人間界にて土見稟の家族として共に暮らしていた。

彼と一緒に散歩中、公園でリコリスに出会う。

リコリスと、彼女と一緒に人間界に来ていた白衣の人物達から、

故郷の匂いを感じ、着いていけば故郷の森にいけるかもしれないと考え着いてきた。

 

再開の約束を遠くから眺めていたリコリスは、

何故そんな悲しい思いをしてまで自分についてきてくれるのかは分らなかったが、

人間界で出来た友達が魔界でも一緒にいてくれることに喜んでいた。

 

 

人間界と同様、遺跡の中の遺産”門”を通り抜ける。

今では公共施設とまでなっている遺跡を出ると、そこには二台の馬車が待っていた。

 

前方にある馬車は豪華であり、王族縁のものが乗るものだ。

後方の馬車は質素なもので、これには白衣の者達が乗り込むもの。

 

ルビナスを抱きかかえながらリコリスが馬車に乗ったのを確認すると御者は馬を走らせる。

 

馬車の窓から外を眺めているルビナスは、不安になっていた。

親と、故郷と離れてしまってから、ルビナスは稟と共に暮らしていた。

稟との暮らしは楽しく暖かかった。それが自分にとって当たり前のものと思えるほどに。

窓の外に広がる町並みには、自分が知るものが一切見当たらない。

 

本当に…本当にここは、この世界には故郷の森があるのだろうか?

そんな考えが頭の中に出てくるが、それは杞憂に終わった。

 

街から離れていくと、だんだんと家などの建物の数が減ってきて、代わりに木々の数が多くなってきた。

それと同時に、懐かしい故郷の森の香りも強くなってくる。

 

これから両親に合えるかもしれないという期待と、今どうしているかという不安で心を満たす中、

馬車は森のそれなりに奥のほうにある白い建物、研究所に到着する。

 

 

馬車から降りたリコリスに抱えられながら、ルビナスは周囲を見渡す。

この場所には見覚えがあった…

かつて住処にしていた場所から母親に生きる術を教えてもらうために、森のいたる場所へ連れて行ってもらった。

川が流れている場所、獲物が住み着いている場所、危険な場所…

目の前にそびえ立つ白い建物は知らないが、それ以外は自分の記憶にある場所であった。

 

それを確認した途端、ルビナスはリコリスの腕から抜け出て、森の中へと走っていく。

稟との再開の約束を見ていたリコリスは、ここで離れてはいけないと思い、慌ててその後を追っていく。

 

ここに群生している花は、以前おいしそうな匂いを漂わせていたので思わず食べそうになったが、

その直前に母親にそれは毒をもっていると教えられたものだ…

 

この川は、水浴びするにも魚を獲るにも最適で、両親と一緒によくきていた…

 

辺りの景色一つ一つを思い出しながら、両親と共に過ごしていた住処に向かって駆ける。

木々の間を縫い、岩を飛び越え、駆ける。

 

懐かしく感じるものが一つまた1つと増えていく。

それは、自分が住んでいた住処に近づいている証拠だった。だが…

 

住処があった場所は森のかなり奥の方であったはず。なのに…

進むに連れて何故か明るくなってくる。

木々が生い茂って、日の光がそれほど通らない場所が何故こんなにも明るくなっていくのか?

 

その答えは、絶望と共に訪れた…

 

 

目の前に広がっているのは、椀型に削り取られた大地…

 

木が生えていない…

 

川が流れていない…

 

草花が生えていない…

 

生きて…いない…

 

「ハァハァ…ど、どうしたの?ルビナスちゃ!?」

 

やっとの思いでリコリスは追いついてきたが、ルビナスはそれに構わず削られた大地の近くを駆け回る。

だが、いくら駆け回っても、そこに森はない。住処はない。両親は…いない…

 

「ゥウォオーーーーーーーーーーーン……」

 

死を、両親との永遠の別れを受け入れた途端、ルビナスは空に向かって吠えた。

 

啼き吠えることを抑えられなかった…

 

「ゥウォオーーーーーーーーーーーン……」

 

泣き嘆くとこを我慢できなかった…

 

 

「ゥウォオーーーーーーーーーーーン……」

 

母親に、父親に会えなくなっていた…

 

「ゥウォオーーーーーーーーーーーン……」

 

稟に…会いたかった…

 

 

身も心も狼に幕間『故郷は…』いかがでしたでしょうか?

 

魔界に着て早々、ルビナスには悲しい思いをさせちゃいました…

 

物語上、こういう展開にはならなくちゃいけないと考えてはいたんですが、

 

改めて書いてみると、自分で書いておきながらこんな天界しか思いつかなかった自分に…OTZ

 

だが、これ以上悲しいことは今後は…多分無い!

 

気を取り直して、次回からは魔界編の始まりだ!!

 

今後もよろしく。


 
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