No.964899

Under Of World ZERO 第9話-迫る脅威-

matuさん

新たな展開の序章。

ゼロ視点でお送りします。

2018-08-26 01:33:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:394   閲覧ユーザー数:394

 広いドックには、十数人余りの作業員と数多の工具や機材がズラッと並んでいた。奥には真紅と紺碧の機体も見える。俺達はハーミットさんに案内され、ドックの一角に辿り着いた。そこには、形状からして人が装着するであろう機械があった。腕と脚の側部を覆う様にフレームがあり、背部で繋がっている、都市で作業員がよく身に着けるパワーアシストスーツによく似ていた。

「これってアシストスーツですか?」

「配送の人とか使ってるやつっすよね」

 俺達がハーミットさんに尋ねると、どこか嬉しそうに話し始めた。

「ああ、基本は同じだが、こいつは軍事用だ。一般のものはあくまで重い物を持ち上げるのが目的になる。対してこいつは、跳ぶことや走ること延いては、戦闘に至るまで様々な動きをアシスト出来る。要は機体の超簡易版歩兵武装ってとこだな。勿論レベルは随分落ちるし、攻撃をもろに受ければ終わりだ」

「当たらない様に避けて戦えって事ね」

「そうなるな。数段速く動ける様になるぞ、儂が保証する。それにある程度なら腕の装甲で受ければ衝撃を緩和できる」

「流石ハーミットだね。私の注文より良いものに仕上がってるよ」

「機体を造るのには資源が足りねぇんだ。間に合わせだが無ぇよりマシだろ」

「キング、手前が言うな。造ったのは儂らだ」

「マシだなんて、そんな事ないですよ。俺達が少しでも戦力になれる訳ですから」

「だな。これがあれば今よりうんと戦えるってもんすよ」

「ほお、自信たっぷりだな。そいつを付けてリベンジしてみるか?」

「駄目だよキング。速攻でスクラップにする気かい?」

「本当にそうなり兼ねないから笑えないわね」

「はっはっは。愉快な新入り達だな。随分と儂らの空気に馴染んだもんだ」

「それで、ハーミット。これが完成したって事は作業はひと段落着いたんだよね?」

「ん? そうだな。今の物資じゃもう何も作れんからな」

「それじゃあ、明日は皆オフにしよう。必要な物資のリストアップだけ頼むよ」

「それなら大方は上がってる。少しまとめたら直ぐに提出しよう」

「オッケー。そうゆう事だから、三人も明日は好きに過ごしな。明後日からは当分物資を掻き集めに行くからね」

 ジャックさん達は何やら打ち合わせがあるそうで、その場で解散になった。俺達三人は取り敢えず自室に戻ることにした。

「オフだってよ。お前らどうすんだ?」

 確かに急にオフと言われても、特にする事が思い浮かばない。

「俺はまだ何も考えてないな」

「私は部屋でゆっくりする。身体を休ませる暇も無かったし」

「確かにあちこち痛ぇわ」

「はは、そうだね」

「じゃあ、二人ともいい休日を」

 いつも以上に素っ気なく言うハングからは言葉通り疲れが感じられた。

「うん、また明後日」

「おーう」

 そうして、俺達は軽く挨拶を交わし、各々の部屋に戻った。シャワーを浴びると、明日が休日という気の緩みも相まって眠気に襲われ、倒れる様にベッドに潜った。

 

 鳴り響く大きな音に俺は目を覚ました。この音は……アラート? 緊急の招集を示すアラートだ。やっと状況を理解し、直ぐに隊服に着替え部屋を飛び出した。何が起こったんだ。一抹の不安を胸に作戦室に駆け込むと、ジャックさんとキングさん、ハングの姿があった。次いでレンジも部屋に飛び入って来ると、ジャックさんが話し始めた。

「悪いね皆。おちおち休んでもいられなくなってしまった。早速だけど状況を説明するよ。今から十数分前、基地から北東に百キロ地点でセルが複数確認された。進路は同じく北東五十キロの市街地、つまりは昨日の試験地に向けてだ」

「試験地って、すぐそこじゃないすか」

「そもそも確認って、どうやって確認したの」

「都市周辺にはカメラを仕掛けてあるんだ。どうしても有線になるから距離は限られるけどね。そして最悪な憶測が二つある。一つは奴らが群れを成している可能性、もう一つは試験の騒ぎを確認しに来た可能性だ」

「今まで奴らは単体での活動しか確認されて無えんだ。何にせよ、どっちか片方でも当ってりゃ相応の知能を持つ個体が現れた事になる」

 殺気立った様子でキングさんが補足した。

「まあ、行くしか無いんだけどね。一応都市から気持ち程度の援助は受けているし」

「ふん、帰ってきたら絞れるだけ絞ってやる」

「ということだから、皆十分で準備してリフトに集合しよう。行動開始!」

「「「了解!」」」

 俺たちはドックに走った。ドックではハーミットさんが歩兵ユニットを準備して待っていた。

「やっと来たか。さっさと着てけ」

「ありがとうございます」

「一丁、かまして来るっす!」

「死なない程度にね」

「いいか、お前達。儂たちが汗水垂らしてこんなもんを作ってるのは、外に出ていく馬鹿共が生きて帰って来れるようにだ。それを忘れるな」

「はい、行ってきます」

「任せといて下さいよ」

「ハーミットさん、見た目にそぐわず優しい所があるのね」

「馬鹿なこと言って無いでさっさと行け」

 リフトに着くとトラックが二台止まっていて、ジャックさんとキングさんが俺達を待っていた。

「遅えぞ、お前ら」

「揃ったね、私達が運転するから三人はこっちのトラックの荷台に乗ってね」

 ジャックさんが運転席に乗り込んだトラックの荷台に入るとリフトが動き出した。

「今回は私達も奴らがどう動くか予想がつかない。最悪の場合は各員、自分の命を最優先で動いて欲しい」

 ジャックさんのその言葉に改めて覚悟を決めた。生き抜く覚悟を。緊迫感に満たされた荷台に俺達を乗せたトラックがゲートをくぐり、走り出した。

 


 
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