エーテルパラダイスを旅立ったヨウカとハウはウラウラ島に到着した。
「大きいからボリュームたっぷりだけど、おいしかったね」
「そうだねーっ!」
2人は船の中で、エーテル財団の職員であるビッケから貰った大きいマラサダを食べていたのだ。
それを完食した2人は船を降りて、ウラウラ島のマリエシティに到着した。
「ここがマリエシティかぁ~!
なんか、懐かしい香りがするよ・・・!」
「ここはねー、ジョウト地方を参考にした町っていわれてるんだー。
もしかしてヨウカってジョウトにいたことあるのー?」
「うん、5歳から7歳くらいまではね」
ヨウカはカントーの生まれではあるが、親の仕事の都合で各地を転々としている。
それはジョウト地方も含まれており、彼女の言葉遣いはその影響を受けているのだ。
ここ、マリエシティはジョウトの古風な感じを受け継いだ和の世界が広がっており、街灯や建物の作りなどからそれが感じられる。
そんな町の作りに感動していた2人だったが、ヨウカはあることを思いだしハウに問いかける。
「ところでハウくんは、アーカラ島の大試練には挑まなくてもええの?」
「あ、そういえばそうだったー!」
「あのねぇ・・・」
さっきまでわすれてたんかい、とヨウカは心の中でハウにつっこみを入れるがハウは相変わらず脳天気な笑顔を浮かべるだけだった。
「でもまずは、このマリエシティのマラサダショップをチェックだよー!」
「え、さっき食べたばかりだよっ!」
「だいじょーぶー!
まったねーヨウカー、次に会ったらバトルしよー!」
そう言ってハウはマラサダショップを探すために動き出した。
そんなハウの姿を見たロトムはあきれている。
ヨウカも呆れつつも、その顔に笑みを浮かべていた。
「ホントにマイペースロトね」
「あっはは、ほんまやねっ!
でもそれが、ハウくんらしいからそれでいいんだけどね!」
ヨウカは大笑いすると、マリエシティの町並みを歩くため走り出した。
その時、反対方向からきた男性と腕が当たってしまい、ヨウカはあわてて謝る。
「あ、ごめんなさいっ!」
「いや、こっちもゴメンよ」
互いに謝罪しあうと、二人はまた、それぞれ反対方向に移動していった。
「・・・島巡りのトレーナー、か」
男性の方は振り返り、ヨウカのバッグにつけられた島巡りの証をみてそうつぶやいた。
「ククイ博士!」
「おぉヨウカか!」
マリエシティの団子屋でダンゴを食べているククイ博士を発見し、ヨウカは彼に駆け寄って声をかける。
「ライチさんに聞いたぜ、まずはアーカラ島の島巡り達成おめでとう!」
「ありがとうございます!」
まずは大試練達成を祝福してククイ博士はヨウカにダンゴを数本奢った。
ククイ博士に買ってもらったダンゴを美味しそうに頬張りつつ、ヨウカはアーカラ島を旅立ってからウラウラ島にくるまでのことをククイ博士にすべて話した。
その話の中にはもちろん、エーテルパラダイスのことも含まれている。
「へぇー・・・エーテルパラダイスにウルトラホールとウルトラビーストかぁ・・・。
バーネットに見せたら感動するだろうなぁ」
「きっとすぐに調べにいきそうですね」
「そうだな。
まぁでも、そんな存在と遭遇してもよく無事だったのが一番驚きだぜ」
「この子のおかげですよ」
そう言ってヨウカはニャーくんのボールを出して、それを見つめた。
ニャーくんはニャビーからニャヒートに進化してから、すっかり頼もしい存在になっているのだ。
そんなポケモンとトレーナーの関係とその成長をみて、ククイ博士は安堵の笑みを浮かべると、助手のことを思い出しその話題をヨウカにふる。
「そうだヨウカ。
急ぎの旅じゃないなら、図書館に向かったリーリエと合流してくれるか?」
「リーリエちゃんも、この町にきてるんですか?」
「一緒にきていたんだが、図書館に行くと言ったきりなんだ」
「そうdたたんですか、わかりました!」
そこでヨウカは一度、ククイ博士と別れてリーリエを探し始めた。
だが、彼女のことは割とあっさり見つかった。
「あ、ヨウカさん」
「ほむ、ヨウカではないか」
「リーリエちゃん、それにハプウちゃんも!」
そこにはリーリエだけでなく、以前出会ったハプウの姿もあった。
どうして二人が一緒にいるのかを聞くと、リーリエがぎこちなさそうに笑いつつ事情を話し始める。
「その・・・実はついブティックにふらーっと立ち寄ってしまって・・・。
それで、そこで服を思い切って購入しちゃいました・・・!」
「え、それってええやん!
んで、着ないの?」
「えぇっと・・・気合いが入らないと、着れないようなものだったので・・・今はまだ着れません・・・!」
「どんな服買ったの、それ」
気合いが入らないと着れない服とは一体どんなものなのだろうか、とヨウカは首を傾げつつ、リーリエと一緒にいたハプウに視線を向けた。
「それでこのハプウさんに、マリエ図書館の場所を教わったんです」
「せやったんかぁ」
「久しぶりじゃの、ヨウカ!」
「うん、ハプウちゃんも元気そうだね!
その調子だと旅も順調かな?」
「当然じゃ、そなたも元気いっぱいで安心したぞ」
ハプウとヨウカがふつうにそう会話しているのに疑問を持ったリーリエは二人が知り合いなのかと思い質問する。
「お2人は知り合いだったのですか?」
「ほむ、少しな」
「旅の途中であったんだよ。
店をおそっていたスカル団を、ハプウちゃん一人で相手して全部追い出しちゃったんだよね」
「すごいトレーナーさんなんですね!」
「ふふんっ」
自分の実力を感心されたハプウはフンとどや顔をした。
「・・・さて、わらわには行かねばならぬ場所がある故、ここで失礼させてもらおうかの」
「そうですね、私も行きたい場所がありますし・・・。
ここまで案内、ありがとうございました!」
「また旅先で会おうぞ!」
「うん、またね!」
そこで一度ハプウと別れ、ヨウカはリーリエの手を握り歩きだし、図書館の中に入っていく。
「じゃ、いこ!」
「はい・・・!」
リーリエに協力しようと意気揚々と図書館に入ったヨウカだったが、中に入った途端にクラリと目眩をおこしかけた。
「うひゃぁぁ~~~図書館だけあって本がたくさんだよぉ~」
「うふふっ・・・」
ヨウカは本が少し苦手であるため、本に囲まれているこの建物の中に入った途端にクラクラしはじめた。
だがリーリエのためを思い気持ちを持ち直すと、ヨウカはリーリエと一緒に2階へ向かった。
2階には歴史の本がたくさんあるという、図書館の職員のアドバイスを参考にしたからだ。
「なにか本を探してるの?」
「ほえ?」
2人で本を探していると、声をかけられた。
声をかけてきたのは、継ぎ接ぎのようなデザインのワンピースを着ていて、どこか古さのある腕輪をつけた、紫の目と髪の小柄な女の子だった。
突然声をかけられたことで戸惑いつつも、リーリエは自分が探している本のことをその少女に告げる。
「え、えと・・・大昔の・・・。
例えばアローラ王朝が栄えていた時代について詳しく書かれている本があればいいなって思ってたんです」
「なるほどなるほど・・・じゃあっ」
リーリエの話を聞いた少女はどこからともなく本を取り出すと、それを机の上に置きページを開く。
「これがオススメだよっ!」
「うわっ古そう!」
ヨウカはその本をみた第一印象をそのまま口に出した。
紙はヨレヨレで黄ばんでおり、シミもついている。
文字自体は、非常に濃いインクで書いたらしいので読めるのだが、その書体も少し古さを感じる。
「貸してあげるから、是非読んでみて!」
「ありがとうございます・・・それじゃあ、読んでみますね」
「うん」
リーリエはその本に綴られている文章を、そのまま読み始める。
「なにもない空、突如として穴があき、獣が姿を現す。
2匹の獣、島の守り神を従えアローラの王を敬う」
「そのもの、日輪をかざす太陽の化身なり。
太陽を食らう獣と呼ばれる。
獣光り輝き、持てるすべての力を放つ。
アローラの王朝を明るく照らし、自然の恵みをもたらす」
「そのもの、月輪をかざす月の化身なり。
月を誘いし獣と呼ばれる。
辺りを暗く染め、持てるすべての力を放つ。
アローラの王朝に闇をもたらし、正を終えた命導く」
「月の獣、太陽の獣。
交わり新たな命呼ぶ。
島の守り神、命見守るとする・・・」
「アローラの王朝。
祭壇にて2本の笛を吹き、音色ささげ、感謝の気持ちを表す。
太陽の獣、ソルガレオに。
月の獣、ルナアーラに。」
リーリエはすべてを読み終えると、ふぅ、と一息つく。
「こんな歴史が綴られた本を読むのは、初めてです」
「スゴいでしょ。
これね、お父さんが持っていた本なんだよっ」
「えっ・・・!?」
「でもこれって・・・本当にふるーい本だよね?」
少女の言葉をきき、ヨウカとリーリエは驚きつつその本を改めてみる。
そんな2人のリアクションがおもしろいと感じたらしい、少女はクスクスと笑いつつ説明する。
「うん、アセロラは昔スゴかった一族の末裔なの。
お父さんがその血筋の人間でね、その本を受け継いだの」
「あー、それやったらお父さんの本というのも納得いくなぁ」
アセロラ、と名乗ったその少女はヨウカのバッグについた島巡りの証に気付き、ヨウカにその話題をする。
「ねぇ、アナタってもしかして、島巡りのトレーナーだったりする?」
「うん、そうだよ」
それがどうかしたの、とヨウカが問いかけるより早く、アセロラが口を開いた。
「うふふふ、実はアセロラね、キャプテンでもあるんだ!」
「ほぇ、そうなの!?」
「そうなの!」
まさかこの少女がキャプテンだったとは。
よく見てみると彼女の髪につけられた髪留めに、今まで出会ったキャプテンがつけていたのと同じ、キャプテンの証がついている。
「・・・じゃあ、あたしがあなたの試練が行われる場所へ向かったら・・・試練、受けさせてくれる?」
「いいよっ!
あたしは、カプの村を越えた先にある家で生活してるから、そこまできてねっ!
じゃあねー!」
アセロラはヨウカを試練に誘った後でその場を立ち去っていった。
アセロラが立ち去った数分後、ヨウカとリーリエも図書館をでた。
「まさかアセロラちゃんがキャプテンだったなんて、ちょっとビックリだよ」
「そうですね。
・・・だけど、今回あの方のお陰で、アローラの歴史・・・アローラ王朝の話に迫ることができました」
「でも、リーリエちゃんもなんで、そんな古いことを勉強しよーおもたん?」
「それは・・・ほしぐもちゃんを元の世界に返してあげるという願いを果たすためです」
「え?」
どういうこと、とヨウカが疑問を抱き首を傾げたのをみて、リーリエは自分の推測を打ち明けた。
「・・・ほしぐもちゃんことコスモッグは、アローラ王朝の栄えていた時代にその存在が語られているんです。
この子の仲間・・・もしくは祖先かもしれない・・・。
だから、手がかりがつかめるかもと思い、私は調べていたのです」
「ほぇー・・・そうやったんかぁ・・・。
リーリエちゃんも、がんばっとるねぇ」
「ふふっ」
ヨウカがリーリエの頑張りをほめ、それにたいし少し照れながらリーリエがほほえみかえしたそのときだった。
「ぴゅ!」
「あ、あなたはまた・・・!」
コスモッグは再びリーリエのバッグから飛び出したかと思えば、ヨウカの持っていたタマゴケースに飛びついた。
すると、タマゴケースに入ったタマゴがさらに強い光を放った。
「あ、タマゴ・・・!」
「これは、もうすぐうまれるショウコだロト!」
「えぇ~!?」
「ぴゅ!」
コスモッグが飛びついた瞬間に、タマゴが生まれそうになる。
その一連の流れであることに気付いたリーリエは、コスモッグを見つめて問いかけた。
「・・・もしかしてほしぐもちゃん、それを知らせたくて・・・?」
「ぴゅい」
だがコスモッグはそう短く鳴いただけであり、
ヨウカは急いでタマゴケースからタマゴを取り出し、ゆっくりそのタマゴを見守る。
「・・・!」
彼女達が見守ってる前でタマゴはひび割れのような模様を描きつつ光を強く放ち、そこから一匹のポケモンの姿を現した。
「生まれた!」
「このポケモンは、サンドだロトッ!」
「サンド・・・」
そのタマゴから生まれたのは、氷の体を持つ白いポケモン。
サンドの、アローラの姿だった。
「これも、リージョンフォーム?」
「そうだロト」
だっこしてみると冷やっこく、つやつやしている。
「くぅぅ?」
「・・・か、かわいいかも・・・!」
くりくりとした青く大きな目はヨウカを見つめ、その目を見たヨウカはあまりの可愛さににやけてしまう。
自分が育ててたタマゴから孵ったのだから、自分のポケモンでいいよね、とリーリエにも確認した。
するとリーリエはもちろんです、と返してヨウカは再び自分の腕の中にいるサンドに向かって呼びかける。
「今日からあなたはあたし達の仲間・・・そして、あなたの名前はサンくんだよ。
サンドの男の子だから、サンくん」
「くぅ!」
「へへっ」
名前をもらって嬉しいらしい、サンくんという名前をもらったサンドはヨウカにさらにすり寄った。
「えっへへ・・・よろしくねっ!」
新しい仲間の誕生に、ヨウカは嬉しそうな笑みをこぼした。
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今回からウラウラ島編をやっていきます。