No.96432

夏の出来事 蜀ver

南風さん

恥ずかしながら帰ってきました。この作品は夏に投稿したかたったはずのネタですので季節はずれです。また一話完結で、なおかつ時間軸といった設定もありません。読者の方々の想像にお任せしたいと思います。キャラ崩壊がありますので苦手な方は申し訳ございません。

最後に応援メッセージをくれた方々に感謝の意をここで申し上げます。こんな私を待っていてくれて本当にありがとうございます。

2009-09-20 20:52:42 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:9779   閲覧ユーザー数:7946

夏の出来事 蜀ver

~日消月詠~

 

 

 

 

 

きっかけは朱里の一言だった。

「日食があと数日で起こるかもしれません。」

天文の書物を読んでいたら偶然気づいたそうだ。

 

 

 

 

 

 

だから俺は、日食を見るためここ数日中庭で仕事をしている。

「う~ん、これは・・・・・・・・・なぁ、詠。」

「なによ?」

「これなんだけどさ・・・・・・・・・。」

「あぁ、これね・・・・・・・・・。」

 

 

 

二人が一緒に仕事をしているところを見ていると心が和むんです。

最初は素直になれなかった詠ちゃんもご主人様と仲良くなれたって実感します。

二人はとってもお似合いで、ちょっと嫉妬もしちゃうけど・・・・・・・私はそれでも良いんです。

詠ちゃんが幸せで、ご主人様が笑顔なら私も嬉しいから。

「月、お茶もらえるかな?」

「はい。」

政務のことは私にはわからないけど、私は私なりにご主人様をお手伝いできれば良いから。

私は幸せなんです。

 

 

 

「ちょっと!こんな事もわかんないの!」

「・・・・・・・・ごめん。」

こいつは本当に馬鹿!

国頂点のくせに知らないことは多いし、色々と甘いし。

性欲以外に取柄が無いのかしら?

でも・・・・・・・・月を笑顔にしてやれるのはこいつだけ・・・・・・・・・。

何でこいつなのって思うけど・・・・・・・・・・・・・・はぁ~~~。

僕も人のことは言えない。

でも、月が幸せでいられれば僕はそれで良いの・・・・・・・・それで・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

「お茶がきれちゃったのでいれてきますね。」

「あぁ、ありがとう。」

「僕も行くわ。」

「詠ちゃんはご主人様のお手伝いをしてあげて。私は一人で大丈夫だから。」

「・・・・・・・・・わかった、気をつけてね。」

「うん。」

月の背中を見送る詠。

「詠?」

「なによ?」

「寂しいのか?」

「はぁ!?」

「いや、だって何かそわそわしてるだろ。」

「っ~~~~!!それのどこをどう見れば寂しいって思うのよ!!この馬鹿!!」

そんなわけ無いでしょ!!この鈍感!!

詠の蹴りが一刀の頭に容赦なく降り注ぐ。

「痛い!痛いって!・・・・・・厠なら。」

ドスッ!!

「イデッ!!」

詠のかかと落しが一刀の頭に綺麗にきまる。

「死ねっ!!!!」

 

・・・・・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・。

 

 

 

 

この馬鹿のご機嫌取りに免じて、許してやったけど・・・・・・・・・。

本当にこいつは鈍感なんだから!!

全身‘ピー(放送禁止用語),のくせに!!

 

けど、そんな時だった。

辺りが暗くなりだしたのは・・・・・・・・。

「お、始まったかな?」

嬉しそうに空を眺める馬鹿。

・・・・・・・・・ふん。

「へ~本当に日が欠けてきたわね。」

何かを意識するように一刀の隣に並ぶ詠。

詠の顔は少し紅くなっている。

「凄いだろ?」

「まぁね。月が日を遮るんだっけ?」

「詳しく言うと違うけど、その通りだよ。」

「じゃあ、詳しく説明しなさ・・・・・・・・。」

「どうした?・・・・・・・・・詠?」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・え?

 

 

 

 

 

何?これは?

 

 

 

 

 

どういうこと?

 

 

 

 

 

何で・・・・・・・・・

 

 

 

 

こいつの・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

足が無いの・・・・・・・・?

 

 

 

 

 

「ちょっと!!あんた足が!!」

 

一刀の呼びかけを遮って、今までに無い大声で叫ぶ。

 

それと同時に一刀を掴もうとして伸ばした腕は・・・・・・・・・

 

一刀の体をすり抜けた。

 

 

 

「!!!!!!!!」

 

 

 

「きゃっ!!」

 

予期せぬ出来事に体が反応できず、そのまま倒れてしまう。

 

しかし、直ぐに一刀の方を見る。

 

 

 

 

 

心配そうな顔が僕を見ている・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

何かを言っているのに、僕の耳には届いてこない・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘よ・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

こいつが・・・・・・・・・・消える?

 

 

 

 

 

「ちょっと!!!!!待ちなさいよ!!!!!」

 

 

 

 

 

「なんで!!!!!?どうなってるの!!!!?」

 

 

 

 

 

「何か言いなさいよ!!!!!」

 

 

 

 

 

「月はどうなるの!?あんたの事が大好きなのよ!!捨てるつもりなの!?」

 

 

 

 

 

「僕だって・・・・・・・あんたの事、大好きなのよ!!!!!知ってるでしょ!!!!!!」

 

 

 

 

 

「だから・・・・・お願い・・・・・・・・・・・・消えないで・・・・・・・・・・・・・。」

 

 

 

 

 

詠の叫び声は虚しく響く。

 

 

 

 

 

 

拙なる願いは・・・・・・・・・届かない。

 

 

 

 

 

一刀の体はすでに半分以上が消え、残りは透けている。

 

 

 

 

 

消えかかっている一刀の顔は何故か笑顔だった。

 

 

 

 

 

その笑顔とは裏腹に詠の瞳からは涙が溢れる。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・そして、その時は一瞬だった。

 

 

 

 

 

――消えかかっている一刀の手が――

 

 

 

 

 

――詠の頭に触れた時――

 

 

 

 

 

――最高の微笑と共に――

 

 

 

 

 

――北郷一刀は消滅した――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詠は泣いている。

 

 

 

否。

 

 

 

瞳から涙が流れ落ちている。

 

 

 

瞳は虚ろで光が無く、

 

 

 

口もわずかに開いたまま。

 

 

 

詠は壊れかけていた。

 

 

 

そんな彼女に耳に届いたのは最愛の親友の声。

 

 

 

「詠ちゃん、どうしたの?」

尋常ならざる詠の状態に逆に落ち着こうと頑張って声をかける月。

「月・・・・・・・・。」

わずかに月の方を見る。

「なにかあったの?」

「・・・・・・・・ちゃた。」

「うん?」

「消えちゃった・・・・・・・・・・・・・・あいつが・・・・・・・・一刀が消えちゃった・・・・・・・・・・・。」

月にしがみつき顔を埋める詠。

その手は体は震えていた。

 

 

 

 

 

「詠ちゃん・・・・・・・・・えっとね・・・・・・・その・・・・・・・一刀さんって誰?」

 

 

 

 

 

――その一言は絶望――

 

 

 

――その一言は恐怖――

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・何・・・・・言ってるの、月?」

「月が愛した男でしょ?僕たちを救ってくれて、優しくしてくれた、たった一人の男の名前でしょ?」

詠の震えが大きくなる。

「へぅ・・・・・・・私まだ男の人を愛した事ないよ?それよりも、ほらもうこんなに辺りが真っ暗で・・・・・・・・「ドンッ!!」・・・・・・・きゃっ!!」

月を無言で突き飛ばす。

「お前は・・・・・・・・・月じゃない。」

「詠・・・・・・・ちゃん?」

「お前は僕の知っている月じゃない!!!!!」

そう言い放つと詠は駆け出した。

その場に残された月は、自分から離れていく親友の背中をただ見つめるだけであった。

 

 

 

 

 

詠は城を抜け、街を抜けただがむしゃらに走っていた。

途中会った蜀の武将達ですら北郷一刀の存在を忘れている。

星も・・・・・・翠も・・・・・・・朱里も・・・・・・・・・

あの桃香や、愛紗、鈴々さえも・・・・・・・・・

かえってくる言葉は「知らんな・知らない・それは誰なのだ?・わからないや。」といった言葉ばかり。

そんな状況が怖かった。

そんな場所にいたくなかった。

・・・・・・信じたくなかった。

詠が疲れ果ててついた場所は城から離れた小川。

辺りは日食のため夜のように暗い。

一刀が消えてからそんな時間はたっていないが、詠には永遠の地獄のような時間。

 

 

 

一人、小川のそばの樹の根元に蹲る詠。

 

 

 

どのくらいの時が過ぎたのだろうか・・・・・・・。

 

 

 

「―――――――。」

 

 

 

遠くで誰かが僕を探してる。

 

 

 

「詠――――。」

 

 

 

これは幻聴よね・・・・・・・

 

 

 

「詠ーーーーー!!」

 

 

 

僕は、何してるんだろ・・・・・・・・

 

 

 

幻覚まで見えてきちゃった・・・・・・・・・

 

 

 

詠の瞳に映るのは白く輝くもの。

 

 

 

耳に聞こえるのは幻聴。

 

 

 

瞳に映るのは幻覚。

 

 

 

だが、しかし・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

この温もりだけは・・・・・・何があっても忘れない・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

「詠・・・・・。」

「・・・・・・・・馬鹿。」

「ごめん。」

「・・・・・・・・心配したじゃない。」

「ごめん。」

「・・・・・・・・他にも何か言いなさいよ。」

「好きだ。」

「・・・・・・・・本当に馬鹿なんだから!!」

一人の少女は好きな男の胸に抱かれ静かに泣いた。

男の存在をしっかりと確かめながら。

空に輝く太陽の光の下で・・・・・・。

 

 

 

 

 

「泣き疲れちゃったんですね。」

一刀の部屋の寝床で、詠は静かに寝ている。

詠自身がそれを望んだためだ。

「あの時、何が起こったんでしょうか・・・・・・・。」

「・・・・・・俺もわからない。日食が始まったら、詠の前から消えて気づいたら今度は月の前に戻ってきた。」

「私も何でご主人様の事を忘れたのかわかりません。ただ、詠ちゃんに酷いことを・・・・・・。」

「その事なら詠から許してもらっただろう?」

月の頭を優しく撫でる。

「へぅ・・・・・・・・・でも、もしかしたら私が悪いのかなって・・・・・・・・・・・・。」

「何が?」

「私が月だから・・・・・・・・。」

日食とは月が太陽を隠してしまうものだ。

「空の月と、俺の前にいる月は似ているけど違う。」

「・・・・・・・・・。」

「似ているところは優しく皆を照らしてくれるところ。違うところは、月はこんなにも温かくて可愛いところだ。」

「っ!!」

一刀の言葉に、頬は紅くなり手で顔を隠しながら、オロオロする月。

「月は何も悪くないから。悪いのは詠に悲しい思いをさせた俺なんだよ。」

「・・・・・・・・・はい。でも、ご主人様だから詠ちゃんを救えたんです。それも忘れないでください。」

「うん、わかった。」

静かに見つめあう二人。

そして二人の唇が・・・・・・・・。

 

 

 

「ちょっと、僕の月に何してるのよ。」

「「!!」」

「おはよう、詠。体の方は大じょ・・・・・・・ぶへっ!?」

詠の足が一刀の顔にめりこむ。

「大丈夫じゃないのはあんたの頭よ!!この全身‘ピー(放送禁止用語),!!」

 

 

 

最初はただポカンとしてた月。

だが、目の前の事に自然に笑みがこぼれる。

何故なら・・・・・・・・

詠がこんなにも幸せそうなのだから。

 

 

 

 

 

「痛いって!だから悪かったってば!!」

「そんな心の篭ってない謝罪なんて聞きたくないわ!!」

「だったら、殴るのと蹴るのをやめてくれ!!」

「殴られながらでも蹴られながらでも誠意の篭った謝罪をしてみなさい!!」

「んな無茶な!!」

 

「詠ちゃん、ほどほどにしなきゃ駄目だよ。」

詠ちゃん・・・・・・・・ご主人様・・・・・・・・・大好きです。

 

「月!?」

「月がそう言うなら仕方ないわね!!あと百発でやめてあげるわ!!」

「助けてくれ~~~~~!!」

 

 

 

 

 

おわり

 

 

 

 

どうも作者です。

夏に起きた皆既日食を見て、ぱっと考えた作品です。

なので、他の方の作品と似ているかもしれませんが、真似したなどと言う事は一切ありませんので、そこのところをご容赦ください。

また、あいかわらずの駄文です。

読みにくかったと思いますが、そういった点は指摘していただけると幸いです。

この作品を読んでくださりありがとうございました。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
88
10

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択