No.964187

真・恋姫†無双 異伝「絡繰外史の騒動記」第三十一話


 本当にお待たせしました!

 襄陽に滞在を続ける一刀達に忍び寄る

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2018-08-19 13:18:57 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:3710   閲覧ユーザー数:2924

 

 ~劉焉軍の陣にて~

 

「焔耶!孫策殿はまだ戻って来ぬのか!?」

 

「はい…八方手を尽くしてはいるのですがまったく…州境まで探索は広げてはいるのですが」

 

 厳顔の問いに魏延は沈んだ顔でそう答える。

 

 襄陽から打ち上がった火のような物(花火)を見たと同時に孫策が姿を消してから二日が

 

 過ぎていたが、厳顔達はその行方を掴む事が出来ずにいた。

 

「それじゃ、やはり孫策殿は州境を越えて荊州…襄陽に行ったって事になるのかしら?」

 

「姿を消す直前に呟いたという孫策殿の言葉から考えるに、そう考えるのが自然という事か」

 

「確かに襄陽の方を睨みながら『そこにいるのか』みたいな事を仰ってましたが…でも、孫

 

 策殿は一体何の目的で襄陽に…元々我らの所に来たのは劉焉様が董相国に対抗しているか

 

 らだと聞いておりましたが…今、襄陽に行っても相国はいませんよね?」

 

「ああ、さすがに相国本人が来ているなら儂らの耳にもとうに入っておろうからの」

 

「それでは、孫策殿は何の目的で襄陽へ?確か孫堅殿は董卓軍との戦の最中に命を落とした

 

 はず…相国本人の所在を確認したのならともかく、一部の軍勢が入っているだけの襄陽に

 

 用があるとは…」

 

「戦に参加していなかった私達は噂や間諜の報告程度でしか知らないし、孫策殿も詳細につ

 

 いては教えてくれなかったものね…結局の所、孫策殿が何をしに行ったのか本人が戻って

 

 来ないと何とも分からないという事になるわね」

 

 三人はそう言ってため息をつくだけであった。しかも、そう言いながらももう孫策は此処

 

 には戻って来ないだろうという一種の確信も持っていたので余計にそのため息は強くなる

 

 ばかりであった。

 

(そんな…ようやく雪蓮様と接触出来ると思ったらもういないなんて。しかも、襄陽へなん

 

 て…まさか、そこに七志野権兵衛が?)

 

 そしてその陰に潜んでいた存在に気付く事も無かったのであった。

 

 

 

 ~襄陽の城内にて~

 

「そう、そのまま進めて…よし、水が湧いて来たぞ!」

 

 俺は劉琦様に頼まれて城内にある井戸の再掘削を行っていた。何でも、数ヶ月前に急に水

 

 が枯れてしまったとかで、井戸の底をもう少し深く掘れば新たな水脈に当たるらしいのだ

 

 が、少々岩盤が固いらしくそれまでうまくいかなかったので、俺に依頼が舞い込んで来た

 

(正確にはそれを劉琦様から聞いた恋が『一刀なら大丈夫』と言ったらしいのだが)のであ

 

 った。

 

「ありがとうございます!これで離れた井戸まで水を汲みに行かなくてすみます!!」

 

 水が湧いて来たのを見た城の人達はそう言って皆喜んでくれる。やはりこういう生活に直

 

 結する事で貢献出来るのは嬉しいものだ。出来ればこういう事ばかりやっていきたいのだ

 

 けど…現状ではそういうわけにもいかないか。

 

「…一刀様、陳宮様がお呼びです。相国様から新たな命令がとの事で」

 

 そこに輝がやってきてそう告げる。月様から新たな命令…無茶な事で無ければ良いのだが。

 

 ・・・・・・・

 

「劉焉軍に攻撃を仕掛ける?」

 

「正確には劉焉軍の近くに脅しのような一撃を加えろとの仰せなのです。しかも敵味方が驚

 

 くような衝撃を与える位の物であれば尚良いと月様からの書状には書かれていたのです」

 

 そんな無茶な…と言いたい所ではあるのだが、出来ない事は無い。基本的には身内にしか

 

 見せていなかったが、やはり月様の眼は欺けないという事か。本当はあれを使用しないま

 

 ま洛陽に帰りたかったのだが、敵味方共々に衝撃を与えろというのならばあれを使う事以

 

 上の物は今の俺には思いつかない。襄陽の混乱が収まった時にさっさと劉焉軍が退いてく

 

 れてさえいればこんな事にはならなかったものを…。

 

 

 

 次の日、俺は工兵部隊と恋・ねねと一緒に襄陽の城外に出ていた。

 

「一刀、劉焉軍に脅しをかけるのなら、もっと兵を連れて出た方が良かったのではないので

 

 すか?」

 

「いや、多くの兵を出せば向こうを刺激する事になるだろう。そうすれば、向こうがこっち

 

 に踏み込んできてしまう可能性もある。そうなれば、完全に戦だ。ねねもそれは避けたい

 

 だろう?」

 

 ねねの問いに俺がそう答えると、ねねは多少は渋るような素振りを見せながらも同意の意

 

 志を示すように頷いていた。

 

「さてと…では、これより新兵器の最終試用を行う。今まで試用に参加していた諸君は存じ

 

 ている事ではあるが、この兵器は取り扱いが難しい上に失敗しようものなら下手を打てば

 

 命に関わる事がある程の物である。この試用が終わるまで努々気を抜く事の無いように…

 

 それでは準備始め!」

 

 俺のその言葉を皮切りに工兵部隊の面々は新兵器の入った箱を開けて中の物を取り出す。

 

 うん、とりあえず今の所は準備作業に遅れも無ければ手抜きも無いようで安心だ。

 

 ・・・・・・・

 

 一刀率いる工兵部隊が準備作業をしている場所から少し離れた林の中にて。

 

「此処からじゃさすがに離れているか…かといってこの距離じゃあそこに踏み込む前に間違

 

 いなく気付かれる。城外に出て来た今が好機と思ったのに…一体こんな開けた場所で何を

 

 する気なのかしら?兵士が持っているあの変な筒は何に使う物なのかしら?」

 

 木の陰に隠れて一刀達の様子を見ていたのは誰あろう孫策であった。彼女は襄陽に来た部

 

 隊の中に工兵部隊らしき者達がいると知るや、その中に仇と狙う七志野権兵衛がいるに違

 

 いないと厳顔の陣を抜けて一人やってきたのであったが、工兵部隊が作業を始めたのが開

 

 けた場所で、身を隠せるのが三町以上離れたこの林だったので、何をやっているのかはっ

 

 きりとは見えず、若干の苛立ちと好奇心が混ざったような表情をしていたのであった。

 

 

 

「いっそ、一気に斬りこんですぐに逃げれば…いや、あそこにいるのは呂布ね…董卓もわざ

 

 わざ手の込んだ事を…」

 

 そして恋の姿を見るや、それが月の指示だと考え、さらに苛立ちを募らせていたのである。

 

 ・・・・・・・

 

「……………?」

 

「どうした、恋?あっちに何かあるのか?」

 

「…何でもない」

 

 恋が頻りに少し離れた林の方を気にしているので、何かあるのかと思ったのだが…何でも

 

 ないなら良いか。

 

「さて、それではこれより新兵器の試射を行う。試射とはいえ、今回の標的は境の向こうに

 

 展開する劉焉軍なので、これは実戦と思って行うように」

 

 俺がそう告げると、兵達の顔に緊張が走る。

 

「あ、あの~…北郷様?劉焉軍へ向かってこれを使った後、向こうがそのままこっちに雪崩

 

 れ込んで来るとかあるのでしょうか?」

 

「おいおい、此処は最前線だぞ。お前ら全員その覚悟があると思っていたのだがなぁ~」

 

 兵の一人がしてきた質問に公達がそう返すと兵全員が苦笑いを浮かべる。

 

「大丈夫…備えはある」

 

 そこに恋がそう付け加えてくれたので、皆安堵の表情に変わる。

 

「それでは…準備開始!」

 

 俺の号令で工兵部隊は新兵器を劉焉軍の方向へ向けて、練習通りに配置を終える。

 

「準備完了です!」

 

「よし…それでは、一番から三番…第一射、放て!!」

 

 

 

 ~同時刻、劉焉軍の陣にて~

 

「桔梗様、小部隊ではありますが敵軍が何やらこちらの近くに展開しています」

 

 魏延からの報告に厳顔は若干訝し気な表情を浮かべながら頷く。

 

「儂からも見えておる…近くとはいえ州境の向こう側、こちらから攻撃を仕掛けるには少し

 

 遠いな…しばし様子見か『ドドォーーン!』…何じゃ、一体何の音…『ドッガーーン!!』

 

 何じゃ、何が起きた!?」

 

 突然響いて来た轟音に驚く間もなく、陣の近くに何かが落ちて来て大量の砂塵とさらなる

 

 轟音が上がる。

 

 さすがの厳顔も何が起きたのかすぐに理解出来ない。

 

「厳顔様に申し上げます!今のは敵軍より放たれた物のようです!!」

 

「そのような事は分かっておるわ!それより、こちらの被害は如何程か!?」

 

「被害らしい被害はほとんどありませんでしたが…兵達に動揺が広がっています!」

 

「動揺じゃと?」

 

「桔梗、大丈夫?」

 

 そこに黄忠が駆け付ける。

 

「ああ、身体は何ともない、何ともないが…今のは一体何じゃ?」

 

「分からない…でも、兵達が怯えているわ『雷が落ちた』とか『向こうには雷を操る天から

 

 の御遣いがいる』とか…今はまだその程度だけど、もしこれ以上同じ事があれば…『ドド

 

 ォーーン!』…まさか!?」

 

 黄忠がそう呟いたと同時に再び轟音が響き、今度はさらに陣に近い場所に落ちる。

 

「くっ…本当に向こうには雷を操る者がおるとでもいうのか!?焔耶、軍を一町下げるぞ!」

 

 

 

「えっ…一町だけですか?」

 

「まだ被害らしい被害が出ていないこの状況で撤退するわけにはいかn『ドドォーーーン!』

 

 …何じゃと、またか!?…って、何じゃ!?」

 

 厳顔がそう叫んだ瞬間、彼女の眼に映ったのは丸い形をした何かであった。当然、それを

 

 避ける間もなく…。

 

 ドドドォォォーーーン!

 

 今度は厳顔の本陣が轟音と砂塵に覆われていた。

 

 ・・・・・・・

 

「四番から六番、七番から九番、全て成功です」

 

 監視の兵がそう告げると皆が喜びの声を上げる。

 

「前々からの試し射ちの時から凄ぇなとは思っていたけど、こうやって敵陣に叩きこむ様を

 

 見るととんでもない代物だな、本当に」

 

「…耳がキーンってなった」

 

「確かにこれはもの凄い兵器ですぞ!一刀、これは何なのです!?」

 

「これは大砲という物だな。火薬の力でこれを飛ばして攻撃する兵器さ」

 

「これは鉄ではないですか!このような物があんなに飛ぶのですか!?」

 

 俺が直径15㎝位の鉄の弾を見せると、ねねは驚きの表情を見せていた。

 

「でも凄い音…まだ耳がキーンってなってる」

 

「ごめん、先に言っておけば良かったかな。工兵部隊はもう慣れているからすっかり忘れて

 

 いたよ」

 

「ううん…もう大丈夫。もう一回するの?」

 

「いや、今の一撃がどうやら向こうの本陣を直撃したみたいで、大分混乱しているようだな。

 

 このまま退いてくれれば良いのだけど」

 

 

 

 

 

 

 でも、向こうの指揮官に何かあったら逆効果になってしまうだろうか?ちょっとやり過ぎ

 

 たかな…陣の手前に落ちる位で良かったんだが。これで泥沼にならなければ良いのだけど。

 

「大丈夫だろう、これなら向こうの大将も無傷では済まないだろうから、一旦は退くはずだ。

 

 少なくとも、向こうは状況が分からず混乱しているようだしな」

 

 俺の顔に懸念の色が浮かんでいたのか、公達がそう言って俺の肩を叩く。

 

 しかし、この時試射がうまく行き過ぎた事で皆の心に緩みが生じていたのか、接近してく

 

 る人影に気付くのが遅れてしまう。恋ですらこの時遅れた事に後々まで後悔する事になっ

 

 ていたのであったが。

 

「七志野権兵衛、覚悟!!」

 

 その声に反応した俺が振り向いた瞬間、眼の前が真っ赤に染まる…これは血?誰の?

 

 

 

                                      続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 三ヶ月近くもかかってしまい誠に申し訳ございませんでした!

 

 何回か書き直している内に時間ばかりが…決してやめるつもりは

 

 ありませんので、温かく見守っていていだけると幸いです。

 

 さて、今回は一刀の新兵器のお披露目と孫策の来襲までをお送り

 

 しました。

 

 次はこの続きから…孫策の襲撃の結末は、厳顔達の動向は如何に

 

 なるのか?

 

 

 それでは次回、第三十二話でお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 大砲の弾は炸裂式ではありませんので。鉄砲は現在鋭意製作中

 

    といった所になります。                     

 

 

 

 

 

 


 
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