次の島、アーカラ島へ
ヨウカがしまキングであるハラに勝利し、メレメレ島の大試練を突破した夜には宴が行われた。
そして夜が明け次の日に時間が移った。
「ヨウカ、なんか元気ないわよ?」
「う・・・うん・・・」
その朝食の席で、ヨウカの様子が少しおかしいことに気付いた母は彼女にそのことを問いかける。
彼女に問いかけられたことにビックリしつつも、ヨウカはずっと考えていたことをそのまま打ちあけた。
「昨日の宴の通りなんだけど、あたし、ほかの島に旅立ってくるよ」
「そうね・・・それで、どうしたの?」
「あのとき、ママはあたしの旅立ちにOK出してくれたよね?
でもパパは、なんていうのかなぁ・・・って気になっとったんよ・・・」
彼女が気にしていたのは、今仕事にでている父親のこと。
彼に断りもなく自分たちだけで旅立ちを決めてしまっていいのかと、ヨウカは思っていた。
だがそんなヨウカの心配は、母の次の言葉ですべて杞憂に終わるのだった。
「それくらいなら、パパにはあたしから言っておくわよ」
「えぇ~、それってええの?」
「ええのええの~!」
ヨウカにたいし母はおおらかに笑いながら、父には納得してもらうと語る。
「パパもママも、昔はポケモントレーナーとして旅をしていたんだもの。
特にパパは途中でもかなり無茶したみたいだし、あなたが旅にでたといっても遺伝だって済ますし済まさせるわよ。
パパは、昔からそんな人だもの」
「わーお」
彼女の両親は、幼稚園の時からの幼なじみだという。
だからお互いにどんな人間かを理解しているのだ、ヨウカのことも面倒をみてきているのだから、娘の考えも両親は理解している。
・・・それは親として当たり前なことだ、と言われてもだ。
「だけど、また元気な顔を見せにきてね。
あなたがどんな人、そしてどんなポケモンと出会って仲間にしたのか・・・ママもニャースも、知りたいもの!」
「にゃー!」
そんな母の言葉と気持ちが嬉しくて、ヨウカはいつもの笑顔を取り戻す。
これからまた、冒険に旅立つために。
「ママ・・・ありがとう!
あたし、これからいってくる!」
「いってらっしゃい!」
そういってヨウカはママとニャースに大きく手を振って、家を飛び出した。
「学校の先生とかイリマさんにも、旅立ちを報告したし・・・あとは町の人に話しかけてーっと」
「お、いた!
おーい、ヨウカー!」
「え?」
突然な前を呼ぶ声がしたのでそちらをむくと、ククイ博士と彼のポケモンであるイワンコの姿があった。
知っている人間だったので、ヨウカは迷わずククイ博士に駆け寄る。
「ククイ博士、どうしたんですか?」
「実は次の島へいくための準備をしていたんだが・・・ここでリーリエとはぐれちゃったんだよ!
ヨウカ、悪いけど手分けして一緒にリーリエを探してくれないか?」
「あ、はい!」
そうしてククイ博士にリーリエ探しを頼まれ、ヨウカは彼女を捜す。
やがて小さな洞窟を発見しそこに足を踏み入れ、そこは短いトンネルだと気付いたときに、ヨウカの視界に黄色が飛び込んできた。
「わぁ!」
そこはメレメレの花畑といわれている場所で、年中黄色い花が咲き乱れている美しい場所だった。
空をみればバタフリーが、視界のはしには黄色い鳥のポケモンが見える。
その美しさに、ヨウカは思わず見とれている。
「綺麗な花畑やねー・・・」
「にゃ!」
「あ、そうだね!
早くリーリエちゃんをみつけなきゃ!
・・・ここにいるのかは、わかんないけど・・・あっ!」
いってるそばから、とヨウカは遠目に唾の大きい白い帽子の、長い金髪の少女を発見した。
その少女が、今ヨウカが探していた少女だ。
「リーリエちゃんいた!」
「・・・ヨウカさん!」
ヨウカの名前をいいながら振り返ったときのリーリエの顔は、また困ったような顔をしていた。
「どうしたん?」
「ほしぐもちゃんが、あんなところに・・・」
「え?」
リーリエの視線をたどっていくと、黄色い花が咲き乱れている先の崖の上にコスモッグがいた。
結構危ないところにいるにも関わらず、コスモッグは無邪気に笑って周囲を見渡している様子だった。
「なんで!?」
「一気にバッグから飛び出して、そのまま風に乗ってあそこまで行っちゃったんです。
ホントなら私が連れ戻したいんですが、野生のポケモンさんが飛び出してきて・・・」
「そうなんやね・・・。
よしまかせて、あたしがほしぐもちゃんを連れ戻してくるよ!」
リーリエから事情を聞いたヨウカはニャーくんとともに花畑に足を踏み入れる。
するとそこから早速キャタピーの群が姿を現した。
「わっ!」
「にゃ!」
「ニャーくん、ひのこで追い払って!」
ヨウカの指示にあわせニャーくんがキャタピーにひのこを振りかける。
むしにほのおは天敵、振りかけられたひのこを見たキャタピー達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「ふぅ・・・火をみてびっくりして逃げてったんやね!
ニャーくん、またポケモン出てきたらさっきの調子でよろしくね!」
「にゃあ!」
肩に乗ったニャーくんにそう呼びかけ、ヨウカは花畑を奥へと進む。
途中でまたキャタピーやチュリネが飛び出してきたが、さっきと同じようにニャーくんが細かくひのこを振りまいて追い払っていく。
そのおかげで野生のポケモンへの被害も少なく、ヨウカも順調に奥へ進むことができ、コスモッグの元にくることができた。
「えい!」
「ぴゅい!?」
「ほしぐもちゃん、つーかまえたっ!」
ヨウカはしっかりとコスモッグを抱きしめながらリーリエのもとに戻るのだった。
そうして無事にリーリエのとこに戻ってきたヨウカは、コスモッグをリーリエに引き渡す。
「大丈夫、リーリエちゃんにほしぐもちゃん」
「はい・・・ほしぐもちゃん、迷惑かけてごめんなさいって言ってください」
「ぴゅ・・・」
「ああ、ええよええよ!
あたしは迷惑だなんて全然おもっとらんもん!
あなた達が無事なのが一番やし!」
「ヨウカさん・・・」
ヨウカはにっと笑いながらリーリエの手を握った。
「さ、いこ!
ククイ博士がハウオリシティの港で待ってるって言ってたよ!」
「・・・はい!」
リーリエは、ヨウカの手に引かれながらメレメレの花畑を後にした。
ハウオリシティの港に向かう途中、ヨウカとリーリエは隣に並んで歩きながら会話をしていた。
「次の島に行くってことは、この海を越えるってことなんやね」
「そうだロト、たしかツギにめざすはアーカラじまというバショだロト!」
「アーカラ島かぁ。
そういえばパンフレットで見たよ、アローラって4つの島にわかれとるんでしょ?」
「はい、ククイ博士もおっしゃってました。
今私たちがいるのがメレメレ島、そして次に向かうのがアーカラ島。
ほかにもウラウラ島とポニ島があるそうです。
その4つの島の島を総称して、アローラ地方と言うんです」
「へぇ」
あと3つの島に行くのかとヨウカは思った。
このメレメレ島と同じようにほかの3つの島にもそれぞれにキャプテンがいて、しまキングがいる。
どんなポケモンやトレーナー、人がいるのだろうと、ヨウカはこの島巡りという名の冒険に期待を膨らませていた。
「この冒険・・・あたし、大事にしたいなぁ」
「え?」
「だって楽しみばかりだもん、そしてこの楽しみを無駄にしたくないもん!
だからいっぱい、色んなものを楽しみたいよ!」
「・・・ふふっ」
ヨウカの素直な言葉を聞いたリーリエは小さく笑う。
そのリーリエの笑みに、ヨウカはさらに大きく笑う。
そうして笑いあっていると、視界にあるポケモンの姿が入ってきた。
「うん?」
視界にはいったポケモンは2匹、桃色のポケモンが水色のポケモンから必死に逃げていた。
それをみてヨウカは直感でやばい、と感じて焦り出す。
「あれって!?」
「サニーゴさんとヒドイデさんです!」
「あれは、サニーゴのツノをねらってヒドイデがおそいかかってるんだロト!」
「襲いかかってる!?
じゃあ捕まったらあの子は・・・」
「まちがいなく、ヒドイデのエサにされてしまうロト!」
エサにされる・・・それはすなわち。
その結末を想像したヨウカは身を震わせて走り出す。
「させてたまるもんかぁ!」
「ヨウカさん!?」
「えぇーーーいっ!」
ヨウカは勢いのままにモンスターボールをサニーゴめがけて投げ、ボールが命中したサニーゴはそのままモンスターボールに吸い込まれて入っていく。
直後にヒドイデはモンスターボールに飛びかかったが、こちらからはなにもできないと知ったヒドイデはモンスターボールを解放して海に戻っていった。
「モンスターボールにだったら、さっきのポケモンも手出しできんかったみたいやね!」
「どうするロト?」
「そうだロトム、あのモンスターボール拾ってきて」
「エーっ!?」
「はやく!」
ヨウカがそう言うのでわかったロト、とロトムは答えサニーゴの入ったモンスターボールを拾いヨウカの元へ持ってくる。
持ってきてくれたロトムにありがと、と告げるとヨウカはこのサニーゴをどうするかをロトムやリーリエに告げる。
「この子、成り行きになったけどこのままあたしが連れてくよ!」
「えっ!?」
「このまま逃がしたらさっきのヒドイデってポケモンにいじめられちゃうし・・・ゲットしちゃったからにはあたし、ちゃんと責任もって連れて行かなきゃあかんしね」
「・・・そういうつきあい方も、トレーナーの仕事なんですね」
「・・・うーん?」
それはどうなんやろ、とヨウカは小さくつぶやく。
そんなことがありながらも、ヨウカとリーリエは無事に港につくことができた。
するとそこには、銀髪に眼鏡の少年がいた。
「あ、セイルさん!」
「イリマに聞いたぞ、次の島に行くんだな」
「はい!」
どうやら、ヨウカとハウを見送りにきたらしい。
イリマは今別件でこられないから代わりにきた、と告げるセイルはこれからのことを説明した。
「前も言ったとおり、俺はほかの島にいくこともある・・・。
そのときはお前達のフォローをさせてもらうから、よろしくな」
「はーい!」
「おれたちもー頼りにしてるよー!」
「あ、ハウくん!」
気付いたらハウが、彼女たちと合流してきた。
「おれもねー、かーちゃんにほかの島に行ってくるっていったんだー!
そしたらー、がんばっといでって言われてー、思いっきり背中をたたかれたよー!」
「おぉー、闘魂注入ってやつやね!」
「うん、なんかねー気合い入ったよー!」
「そういうものなんですか?」
「そういうもんやろっ」
ハウとヨウカとリーリエがそんなやりとりをしていると、そこにククイ博士が合流してきた。
「お、役者がそろったか!
リーリエも、ちゃんといるな!」
「博士、途中ではぐれてご迷惑をおかけしました・・・すみません」
「なーに、キミが無事ならいいさ!」
途中ではぐれたリーリエの無事を喜んだ後、ククイ博士はセイルの姿があることに気付き彼にも声をかける。
「セイル、見送りにきてくれたのか?」
「ええ」
「そうか、これからヨウカとハウが別の島に向かうからな!
旅先でであったらいつものように、てだすけを頼むぜ!」
「はい、わかっています」
彼にも好意的に接するククイ博士に対し、セイルはクールに対応する。
そのやりとりのあとで一行はセイルと別れ、ククイ博士が船を止めている港に向かう。
だがそこにあったのは、継ぎ接ぎだらけの帆に古い船体を持つヨットだった。
一同ジェットエンジンを搭載しており電子的な操縦席を持っているようだが、その外装に対しハウは笑顔を浮かべたまま博士に問いかける。
ちなみにヨウカはといえば、顔が少しひきつっていた。
「はかせー、これだいじょーぶなのー?」
「みてくれとかいろいろ古いが、動きには問題ないぜ!」
「クラシックデザイン・・・というのでしょうか・・・。
私は好きですけど・・・」
「むー、リーリエがそういうならー」
リーリエの言葉を聞いたハウは渋々同意して船に乗り込む。
後に続いてヨウカも、ククイ博士の船に乗る。
全員が乗ったことを確認したククイ博士はノリノリで操縦室にはいる。
「さぁ、アクアジェットで吹っ飛ばしていくぞ!」
「おー、こうなったらやけくそやぁ!」
「やけくそ!?」
4人を乗せたヨットはスピードを上げて海をかけていく。
「「うーーーみーーーっ!!!」」
ハウとヨウカは船頭に身を乗り出して同時にそう叫ぶ。
そこには、船に乗る前の不安はいっさいなく、それはすべて吹っ飛んでしまったかのようだった。
「そんなに身を乗り出すと、船から振り落とされて海の藻屑になってしまいますよ!」
「うん、リーリエの帽子も大きいからー!
このままじゃとばされちゃいそうだよねー!」
「・・・もうっ」
ハウの言葉に、リーリエはどこかしょうがないなと言いたげな笑みを浮かべ、ヨウカはまっすぐに船の向かう先を見つめた。
そのときの彼女の紅い目は、水面に反射した陽光を受けて、輝いていた。
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