No.958618

愛しい人へ。-嘘つきな君へ-

炎華さん

全てが終わるまで、
見ていることしかできず
聞くことしかできず
その『想い』を想像することしかできず

2018-07-02 13:51:24 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:359   閲覧ユーザー数:359

なぜ、「うん」と言ったんだ?

俺が、君が好きだと言ったとき、

つきあって欲しいと言ったとき、

なぜ、「うん」と言ったんだ?

 

君には他に好きな人がいたのに。

その人を忘れられなかったのに。

 

わかってたよ。

君が、その人を忘れてないこと。

でも、どれくらい先かわからないけど、

俺だけを見てくれるようになると思ってた。

絶対そうしてみせるって、思ってた。

 

君が、その人をずっと忘れないなんて思いもしなかった。

忘れようとしてもいないなんて、思いもしなかった。

 

俺は、君が「うん」と言ってくれたから、

舞い上がっていただけなのか?

そう思い込んでいただけなのか?

 

俺の隣で、楽しそうに笑っていた。

朝の光の中で、「おはよう」と眠そうな声で言った。

あれは、誰だったんだ?

 

あの夜、

君に会いたくて、

君の驚いた顔が笑顔にかわるのを見たくて、

君の部屋を突然訪ねたんだ。

 

君は部屋の前にいた。

俺の知らない男と抱き合って。

 

声をかける事もできず、俺はその場を後にした。

 

そうか、そいつなのか。

君が本当に好きなのは。

俺じゃなかったんだ。

じゃあ、今までの俺は君の何だったんだ?

 

 「パテ、だよ」

昔、友人が言ってた言葉を思い出した。

 「穴を埋めるためだけの。」

 

そうか。

そうだな。

俺はパテだったんだ。

君の寂しさを埋めるためだけの。

なんだ、そうか。

馬鹿だな、俺は。

 

 

 

「見たよ。さっき、君の部屋に行ったんだ。」

電話の向こうの君が、一瞬息をのむ音が聞こえた。

「どうするか、君が決めて。」

それだけ言って、電話をきった。

俺を選んでくれればいいと思いながら。

 

 

 

あれから、どれくらい経っただろう?

久しぶりの君の声が言った。

子供ができた、と。

電波の向こうで、君が言ったんだ。

君と俺の子供ができた、と。

 

なんだよ、パテだなんて。

誰だよ、そんな事言ったの。

君は俺を選んでくれたんだ。

俺、頑張るから。

君と子供のために、頑張るから。

 

「もう、いないの。」

 

「え?」

・・・今、なんて?

 

「手術したから。」

 

なんで?

だって、君と俺の子供だよ?

俺、始末してくれなんて言ってないし、思ってもいないのに。

なんで?

だって、すごく嬉しかったんだよ。

順序は違うけど、俺、頑張るって。

 

「私は!嬉しくない!欲しくない!子供なんて!」

 

・・なんで?

俺の子供だから?

 

「もう、会わないから。」

君が、通話を切った音がした。

君と俺との繋がりを切った音がした。

 

長い間、もうとっくに君に繋がっていない携帯を握りしめていた。

もしかしたら、またかかってくるかもしれない、なんて。

 

再び繋がることは、もうないのに。

 

・・最初から、嘘をついていたね。

 

-嘘つきの君へ-

 

 

 

 

 

                       それでも、愛していたよ・・・・

 


 
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