なぜ、「うん」と言ったんだ?
俺が、君が好きだと言ったとき、
つきあって欲しいと言ったとき、
なぜ、「うん」と言ったんだ?
君には他に好きな人がいたのに。
その人を忘れられなかったのに。
わかってたよ。
君が、その人を忘れてないこと。
でも、どれくらい先かわからないけど、
俺だけを見てくれるようになると思ってた。
絶対そうしてみせるって、思ってた。
君が、その人をずっと忘れないなんて思いもしなかった。
忘れようとしてもいないなんて、思いもしなかった。
俺は、君が「うん」と言ってくれたから、
舞い上がっていただけなのか?
そう思い込んでいただけなのか?
俺の隣で、楽しそうに笑っていた。
朝の光の中で、「おはよう」と眠そうな声で言った。
あれは、誰だったんだ?
あの夜、
君に会いたくて、
君の驚いた顔が笑顔にかわるのを見たくて、
君の部屋を突然訪ねたんだ。
君は部屋の前にいた。
俺の知らない男と抱き合って。
声をかける事もできず、俺はその場を後にした。
そうか、そいつなのか。
君が本当に好きなのは。
俺じゃなかったんだ。
じゃあ、今までの俺は君の何だったんだ?
「パテ、だよ」
昔、友人が言ってた言葉を思い出した。
「穴を埋めるためだけの。」
そうか。
そうだな。
俺はパテだったんだ。
君の寂しさを埋めるためだけの。
なんだ、そうか。
馬鹿だな、俺は。
「見たよ。さっき、君の部屋に行ったんだ。」
電話の向こうの君が、一瞬息をのむ音が聞こえた。
「どうするか、君が決めて。」
それだけ言って、電話をきった。
俺を選んでくれればいいと思いながら。
あれから、どれくらい経っただろう?
久しぶりの君の声が言った。
子供ができた、と。
電波の向こうで、君が言ったんだ。
君と俺の子供ができた、と。
なんだよ、パテだなんて。
誰だよ、そんな事言ったの。
君は俺を選んでくれたんだ。
俺、頑張るから。
君と子供のために、頑張るから。
「もう、いないの。」
「え?」
・・・今、なんて?
「手術したから。」
なんで?
だって、君と俺の子供だよ?
俺、始末してくれなんて言ってないし、思ってもいないのに。
なんで?
だって、すごく嬉しかったんだよ。
順序は違うけど、俺、頑張るって。
「私は!嬉しくない!欲しくない!子供なんて!」
・・なんで?
俺の子供だから?
「もう、会わないから。」
君が、通話を切った音がした。
君と俺との繋がりを切った音がした。
長い間、もうとっくに君に繋がっていない携帯を握りしめていた。
もしかしたら、またかかってくるかもしれない、なんて。
再び繋がることは、もうないのに。
・・最初から、嘘をついていたね。
-嘘つきの君へ-
それでも、愛していたよ・・・・
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見ていることしかできず
聞くことしかできず
その『想い』を想像することしかできず