No.954483

【にか薬】触らぬ神に【掌編】

朝凪空也さん

#薬研受け版深夜の真剣創作60分一本勝負
お題「童話」
に投稿した作品です。
不思議のにか薬。

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2018-05-31 13:58:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:475   閲覧ユーザー数:475

 町で用事を済ませ歩いていた少女は、ある二人連れに目が釘付けになった。一人は緑青色の長い髪を頭の高い位置で結い上げ肩からは白装束をなびかせた青年、もう一人は短いが艶やかな黒髪に透けるような白い肌をした少年。明らかに常人ならざる様子に、しかし町の人々は彼らを気に止める様子はない。少女は不思議に思いまじまじと二人を観察した。どちらも一目で男性とわかる体つきをしていたが、その顔立ちはまるで精巧な人形で、魅入られるように美しかった。実際魅入られてしまったのかもしれない。少女はいつの間にかふらふらと二人の後を付いて歩いていた。

 

 どれほど歩いただろうか、ふいに低い歌声が聞こえて少女ははっと足を止めた。

 

 

“Twinkle, twinkle, little bat !

(キラキラ光るコウモリさん

 

How I wonder what you’re at !

いったいお前は何してる

 

Up above the world you fly,

この世を遥か下に見て

 

Like a tea-tray in the sky.”

 

お盆のように空を飛ぶ)

 

 

 耳慣れない異国の歌に聞き入っていて気が付くと目の前を歩いていたはずの二人が居ない。急に不安で胸がいっぱいになり立ちすくむ。ここはいったいどこだろうか。私は何をしていたのだろうか。そのとき不意に背後から声を掛けられ少女はひぃと小さく悲鳴を上げた。

 

 

「うさぎ穴でもお探しかな?可愛らしいお嬢さん。」

 

少女の顔を覗き込んでそう声を掛けてきたのは緑青色の髪の男だった。この声、先程の歌声はこの男のものか。

 

「驚かせてすまねえな。だが嬢ちゃん、良く聞きな。過ぎた好奇心は身を滅ぼす。気を付けたほうがいいぜ。」

 

黒髪の少年が言ったのを確かに聞いたと思った。

 

 

 気が付くと少女は町のはずれに一人で立っていた。

 

どこを探してもあの美しい二人連れは見つからなかった。

 

少女が見たものは果たして夢か、それとも。

 

 

 

 

 

 

出典 ”Alice’s Adventures in Wonderland”


 
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