窓に手をつく。
ひやりと冷たい感触が指先に広がる。
雨粒が窓を叩いている。
息を吐くと、少し窓が曇った。
雨音に耳を澄ます。
それは静かに心に染みこんで、さみしさという染みを付ける。
─ときどき、怖いんだ。
彼女は窓の外をぼんやりと見つめたまま呟いた。
─何が?
彼はソファーに腰掛けたまま、彼女の方を向いて聞いた。
─君がいてくれることとか、全部がね、幸せすぎて、怖くなる。
本当は、私はとうの昔に狂っていて、何もかもが妄想なんじゃないかって。
ある日突然気がつくの。一人ぼっちの自分に。
彼はそっと立ち上がって彼女を抱きしめ、そのやわらかな髪に口づけた。
─ここにいるよ。
ずっと一緒にいる。
彼女は黙って両手で彼の頬を包んだ。
冷えた指先から彼の体温が伝わる。
─うん。
…うん。
彼女はほっと息をつく。
このぬくもりは本物だ。
雨は静かに降り続いた。
了
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