汜水関の緒戦。
それは戦と呼べる代物では無かった。
一方的な・・・・・・殺戮。
「うああ!」
「ぎゃああああ!!」
そこかしこで悲鳴が聞こえる。
「あ・・・・・・ああ・・・・・・」
「桃香様!逃げるんです!早く!!」
「桃香様・・・・・・」
ショックで放心状態の主、劉備に呼びかけ、その手を引く孔明と龐統。
見通しが甘すぎた。
両軍師は後悔しながらも、必死にこの状況を何とかしようとしていた。
一当てして、すぐに下がるつもりだった。
その一当てが明暗を分けたのだ。
敵の先頭でやって来た天下無双と称される、呂布。
一方、劉備軍の先頭は関羽雲長。
まさか一撃で、関羽が馬から落とされるとは思っていなかった。
劉備軍の精神的支柱とも言える関羽のその姿に、動揺が走る劉備軍。
関羽に負傷はなく、すぐ立ち上がって戦線に復帰したが、兵士達の動揺はすぐにおさまるものではなかった。
後退も遅れ、そこをそのまま董卓軍に喰いつかれたのだ。
兵力も少なく、士気も下がった劉備軍は格好の餌食だった。
後ろへ下がってこそいるが、それは後退というより撤退。
陣形も崩れ、立て直しは不可能といっていい。
出来る事と言えば、一刻も早く後方へ退がる事だけであった・・・・・・
劉備軍敗走の報を受け、他の軍も動き出す。
曹操軍は左翼、孫策軍は右翼に展開。
公孫瓚は一刻も早く劉備を救うため、中央を進軍。
その後ろを馬超が固める形で、迎撃態勢を取った。
尚、袁家の二人は・・・・・・
「劉備さんもだらしないですわねえ」
「どうします?あたいらも動きます?」
「どうして私達が劉備さんの尻拭いをしなければいけないんですの?」
「それじゃあ、待機ですか?」
「ええ。私達はいわば秘密兵器!こんな所で動く必要はありませんわ」
「秘密兵器。いい響きっすねぇ」
「でしょう?お~っほっほっほ!」
「いいのかなぁ・・・・・・」
「七乃。妾達は動かなくてもいいのかのう?」
「そうですねえ。無理して動く必要もないと思いますけど・・・・・・後々文句言われるかもしれませんし、少し軍を進めておきましょうか」
「うむ、任せる」
「は~い」
さて、前線では暴威を振るう呂布に対し、各軍の武将たちが次から次へと挑んでいる所だった。
「ぐっ!」
「姉者!」
力負けして弾き飛ばされる夏侯惇と、姉に駆け寄る夏侯淵。
「助太刀するわよ!てえええい!」
「雪蓮!ええい、祭殿!」
「分かっておる!援護しますぞ!」
今度は雪蓮が挑んでいくも・・・・・・
「・・・・・・邪魔」
「きゃっ!」
方天画戟の一振りに打ち負け、態勢を崩す雪蓮。
「策殿!」
間隙を縫って祭の矢が放たれるが、難なくそれらを躱す呂布。
その間に態勢を立て直し、後ろに下がる雪蓮。
「雪蓮!大丈夫か!?」
雪蓮に駆け寄る冥琳。
「ええ。それにしても、とんだ化物ね」
「ああ。言いたくはないが、まともに戦っては勝ち目がない」
「なら、まともに戦わなければいいと言う事ね」
「曹操」
いつのまにか、冥琳の横にやってきていた曹操。
「天下無双の豪傑呂布。噂には聞いていたけれど、これほどとはね・・・・・・」
「本当にね。で、どうするのがいいと思う?」
「簡単な事よ。複数の将による一斉攻撃。もうこれしかないわ」
「そうね。あの化物を止めるには、それしかないわね」
そう言いながら頷く雪蓮。
「決まりね。春蘭!秋蘭!季衣!いいわね!?」
「「「はい!華琳様!」」」
「うちからは私と祭と・・・・・・」
「姉様!私も!」
「駄目」
蓮華に対し即答する雪蓮。
「何故ですか!?私だって・・・・・・」
「実力が違いすぎるのよ。あなたが出て行ったとしたら一瞬で・・・・・・死ぬわよ」
「!?」
「それくらい強いのよ呂布は。思春!あなたが来なさい!」
「はっ!」
「今ここにいるのはこれくらいかしら?」
「我等も混ぜていただこう」
「なのだ!」
「先の汚名、返上させてもらう!」
一度後方へ下がっていた劉備軍の趙雲、張飛、関羽もやってきた。
「それじゃあ行きましょうか。呂布覚悟!」
雪蓮の声と共にまとめて挑みかかる武将たち。
「・・・・・・っ」
わずかに顔を歪める呂布。
いくら振り払っても、次から次へと休むことなく攻撃が繰り返される。
さすがの呂布も攻めあぐねているようだった。
そして呂布が止められた事により、董卓軍の進撃も止まり始めたようだ。
その時、
「恋!撤退や!!」
呂布に向かって駆けてきた張遼が叫んだ。
「・・・・・・こくっ」
頷いた呂布は、一際強力な薙ぎ払いで群がってきていた将達を吹き飛ばした。
「嘘・・・・・・」
その瞬間を目撃した蓮華は、思わずそう呟いていた。
呂布を相手に戦っていた将達も、同じ気持ちだったろう。
兵を引き連れ、汜水関へ戻っていく張遼と呂布。
此度の戦により、劉備軍は壊滅。他の軍も少なからぬ被害を被った(袁家を除く)
こうして連合軍に大きな傷痕をのこし、緒戦は董卓軍の圧勝と相成った・・・・・・
どうも、アキナスです。
緒戦はまあ、予想通りといいますか。
連合はどう立て直すか、董卓軍はこの後どう動くのか?
ではまた次回・・・・・・
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惨劇