結婚前夜、ゲイザーはマルヴェールの夜の街に一人でやって来ました。
「おお、あんた…ゲイザーじゃないか?あんたのおかげで俺は小遣いが五倍になったんだ!今日は俺のおごりだ。どんどん飲め?」
「いえ、酒には弱いので遠慮しておきます…」
「俺はさ、あんたが国王になると思ってたんだが、そっちの予想は外れちまった。せっかく増えた小遣いがまた減っちまったよ…」
「私には国王の座は重荷でしたので、お断りしたんですよ」
「なんで断っちまうんだよー。あんたが国王になれば小遣いが十倍になったのに…ひっく!」
「随分と酔っておられますね…。何か嫌な事でもあったんですか?」
「愚痴、聞いてくれるか?うちの嫁がさー、俺の事を尻に敷いてて、小遣いは減らされるし、毎日暴言は吐いて来るし、家に帰りたくないんだよ…ひっく!」
「未婚の者から見れば、結婚しておられるのは幸せな事だと思いますよ?」
「俺も最初の頃は幸せだと思ってたんだが、結婚なんてな、実際にしてみたら幸せとは限らないんだぜ?」
「なんだか大変そうですね…。私も結婚に対する幻想を抱いていましたが、幸せな家庭が築けるか不安になって来ました」
「おっ?ゲイザーはフラウと結婚するそうじゃないか。あんなにやたらと強ぇ女と結婚したら夫婦喧嘩になった時に怖いぞー」
「そうですね、フラウを怒らせないように気を付けないといけません」
「まあ、なんかあったら、ここに来いや?愚痴くらいならいつでも聞いてやっからさ!」
「本当ですか?フラウと夫婦喧嘩になったら、ここに来ますので、その時はよろしくお願いします!」
ゲイザーとフラウの結婚式には大勢の国民が参列しました。
「やっと二人で暮らせますね。ずっと私のそばにいてください」
「ええ、もう絶対に離れないわ!離さないで」
国民が見守る中、誓いのキスをしました。
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第42話です。