No.951469 真・恋姫†無双~黒の御使いと鬼子の少女~ 54風猫さん 2018-05-06 22:52:34 投稿 / 全3ページ 総閲覧数:865 閲覧ユーザー数:831 |
そのあと、泣き止んだ雛里を含めて少し雑談をしてから当初の目的、孔明と張飛にあいさつに行こうとしたのだが……
(あー、まずいな……)
なんだかんだで時間を喰ってしまった。こうなると二人がどこにいるか見当がつかない。
(どうするかな……)
今から西側に行っても、孔明の頭であればある程度の候補を考えて城に戻っている可能性もあるしな……
「玄輝さん」
名前を呼びながら雛里が外套の裾を引っ張っていたので視線を向ける。
「ん? どうした、鳳、じゃない雛里」
「ひゃうぅ……」
「……そう、恥ずかしがられるとこっちも釣られるのだが……」
まぁ、と言われても雛里の性格からして難しいのは分かっているのだが、やっぱりこっちも恥ずかしくなるのは色々と、その、しんどい。悪い気持ちじゃないんだが……
「え、えっと朱里ちゃんと鈴々ちゃんを探しているんですよね?」
「ああ」
「多分、二人なら今は南の出店が多い所にいると思います」
「え、そうなのか?」
この時間に南にいるってことは、先に西を見ていたってことか?
「えっと、朱里ちゃんの事だから、鈴々ちゃんがお昼ご飯を食べて元気な間に西側に行って、ちょっと疲れたところで南の出店に行って活力を入れてると思います……」
「あ~、なるほど」
確かにあり得そうだ。
「じゃあ、南に行ってみるか。ありがとうな」
「……一緒に」
「ん?」
「………ても……」
小さい声だったので聞こえず、俺は屈んで近くで聞けるようにする。
「どうした?」
「わた、私も、一緒に行っても、いいですか?」
「え、あ~……」
思わぬ提案に思わず言いよどんでしまう。
「……ダメ、ですか?」
「…………あ~、いいのか?」
その問いに彼女は小さくうなずく。
「……じゃあ、一緒に行くか」
返事を聞くやいなや彼女の顔がパアァと明るくなる。誰が見ても分かるほどに。
「ぷっ」
ほほえましすぎて思わず笑ってしまった。
「な、なんですか……?」
「いや、何でもない。行こうか」
「……はいっ!」
なんとも明かるげな笑顔でそう答える彼女。
「じゃあ、私たちは城に戻りますね」
「ああ。気をつけてな二人とも」
「ふん、僕がいる限り月には誰も触れさせないわよ」
……その誰もの中には色々含まれているような気がするが、まぁ気にはすまい。
「じゃあ、またあとでな」
「はい」
と、月だけが返事を返して二人は城の方へと戻っていった。
(さてと)
思わぬ事がありはしたが、当初の目的である南の方へ向かう。
歩くこと30分弱、目的地に着いた俺たちは出店の合間を縫うようにして二人を探す。
「う~ん、見つからんな……」
「……………」
「え~と、雛里? 大丈夫か?」
「だ、大丈夫れふ」
うん、あんまり大丈夫じゃなさそうだな。
(この人混みじゃあな……)
と、そこで妙案が浮かぶ。
「雛里、ちょっといいか?」
「はい?」
「いや、お前さんを今から持ち上げるから上から探してもらおうと思ってな」
「ふぇ?」
一瞬、何を言っているのか分からないのか彼女としては珍しい間の抜けた表情になるが、すぐに顔が真っ赤に染まる。
「あ、あわぁ……」
帽子を目深にかぶって嫌々と横に振るが……
「とは言っても、上から探してくれた方が見つけやすいだろうし、なんだかんだで大変だろ? というわけで」
「へ?」
「問答無用」
そう言って彼女の両脇に手を回して体をあっという間に持ち上げ、左肩にのせる。
「……あ、あわわ!」
肩の上の雛里は慌てて俺の頭を掴む。
「んじゃ、よろしく」
「……重く、ないですか?」
「んな訳ないだろ。それに、こういったのは雪華で慣れてる」
そう言って俺は再び二人の捜索に戻る。が、あいつの名前が出たところで雛里に言わなければいけないことを思い出せた。
「……そういや、雪華が世話になったな」
「あ、いえ……」
そう、俺の部屋を出た雪華が世話になっていたのは雛里と孔明の部屋だ。
「その、あいつが何か迷惑かけなかったか?」
「だ、大丈夫です。お部屋の掃除とか、服をしまってくれたりしてくれたので……」
「……そうか」
それを聞いて安心した。
「しかし、ああも逃げられるとな……」
自業自得と言えばそうなんだが、やはり色々と思うところはある。
「………玄輝さんは、雪華ちゃんの事をどう思っているんですか?」
「…………雪華のことを?」
言われてみると、全く考えたことがなかった。
「……守る、対象か?」
「本当にそうですか?」
「……そう言われると自信がなくなるな」
ならばどんな存在なのか? 自身に問いかける。
(……とりあえず、ただの守護対象はもう違うな)
となると……
(いや、それだけはちが、)
そこで、愛紗の言葉が浮かんでくる。
“あなたは、たくさんの人を守ってきたではないですか! 雪華を、私たちを、兵を、民を! あなたは守れます!”
“だから、だからどうか自分を信じてください!”
(……たく、ここで思い出しちまうか)
空いている右手で頭を掻いて、盛大に溜息を吐く。
「……情けねぇ。ビビり癖でも付いちまったのかね」
「玄輝さん?」
「……妹だな」
「え?」
「雪華だよ。あいつはもう、妹みたいな、もっと大きく言えば家族みたいな存在になってる」
そう、なんだかんだで2年以上も共に過ごしている。そして、何時ぞや俺が夢で苦しんでいるときに助けを呼んでくれたような相手を家族と呼ばずに何という?
(まぁ、そんな相手を傷つけたわけなんだが……)
後悔先立たず、してしまった以上はその痛みを少しでも軽くしなければいけない。
「……そうですか。ならよかったです」
「雛里?」
「それは、ちゃんと雪華ちゃんに言ってあげてください」
「……そのつもりだよ」
まぁ、会えればの話になってしまうのがなんとも……
「ん?」
そんなとき、見慣れた矛先が見えた。
「なぁ、あれって」
「あ、多分そうかと」
少し駆け足で近づくとその蛇矛の持ち主が眠そうに寄りかかっていた。そしてそこから少し離れた場所には子供と話す孔明の姿があった。
みなさん、おはこんばんにちわ。作者の風猫です。
GW最後の夜の更新となりました。皆さん、はこのGWいかがでしたか?
自分は、まぁ、うん。そこそこでしたね、うん。
それなりに楽しいGWでした。
うむむ、あまり話すことが浮かびませんのでここらで失礼させていただきます。
何か間違い等があればコメントの方にお願いいたします。
それでは、また次回。
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オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話です。
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