No.950813

ノーマネー ノーゲーム

らんびーさん

漂流教室の関谷が登場します。生徒はオリジナルです。ちょっと自分の妄想に走っています。時代の考証が雑なのはご了承ください。

2018-05-01 23:56:06 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:736   閲覧ユーザー数:736

 

「ノーマネー ノーゲーム 1」

 

20xx年。もし、札束がおケツをふくだけの紙になりさがるような時代がやってきたら・・・

遠藤冴子の「マネーです!」の箴言も無意味となる。

しかし、人類はまだ生きていた。

 

予想だにできなかった大惨事。それは明日起こるかもしれない。でも、僕たちは知るすべなどない。

とりあえず、僕たちはぷよぷよ(フィーバー2)に興じて盛り上がっていた。

僕は大和小学校の5年生。佐藤圭。なんか名字といい地味な名前だ。

で、僕ん家にぷよぷよをやりに来ているのが信州一醸(しんしゅういちジョー)。同級生にすごい名前の生徒がいるもんだ。

僕たちはドスケベだ。お互いにぷよぷよでお気に入りのキャラで妄想にもふけっていた。僕は乳のでかそうなアコール先生が大好きだ(本当に乳がでかいかわからないけど)。

ジョーはロリコンで、アミティのことをアミさんじゃなく、アミちゃんと呼んでいる(5年生でロリコンというのも変だけど。アミティにはランドセルが似合うとか思ってるんだろう)

 

ジョー「圭ちゃん、5連鎖以上は無理っス!」

圭「僕だって、配牌が悪かったら5連鎖は失敗しちゃうよ」

ジョー「うーん・・・どうやったらガモウ君みたいに6連鎖以上いけるのかな?」

圭「ガモウ君は積み込みのスピードも速いもんね」

 

ガモウ君は、同級生なんだけど、IQが180以上あるといわれる天才少年だ。優秀な学業成績を鼻にかけることもないし、円形脱毛症も気にすることもない大らかでいい奴だ。

 

圭「ちょっとテレビでも見て気分転換しようよ」

ジョー「あっ、今日は『マネーのライオン』の再放送見れるじゃん」

 

この番組は子供が楽しめるようなものではない。チャレンジャーが投資してもらうために、「あほんだらっ!」とか「全く投資の対象外なんです!」とか罵倒されるのだ。僕たちは小学生にして大人の世界のパワハラの恐ろしさを垣間見ていた。

 

司会であいさつするのは、元総理大臣にしてノーベル賞を獲得して引退したおっさんだった。元総理が芸能界入りするというのもすごい話だ。

 

司会「佐藤栄作です。今回は複数のライオンが吠えました。」

 

ジョー「圭ちゃん!」

圭「ええっ?!」

 

今回のチャレンジャーを見て、僕たちは絶句した。学校の給食のおじさんではないか!

「関谷久作 39歳」とテロップが出ている。

向こう側の出演者を紹介すると・・・なにかとシビアな丸の内社長(丸Q)。悪意のあるカメラマンが不細工に見える角度だけから映そうとする、中華の大御所『与野本町王将』の与野社長。パワハラ指導の鬼、大林社長。エンターテイメントの大御所、鷹橋我也(がなり)社長。前回の番組では、とんじき(おにぎりの一種?)の開業資金を希望していた

チャレンジャーが鷹橋社長に対して「野茂英雄・・・ホモビデオ」とかしょうもないギャグを飛ばして叱責されていた。

 

栄作「いくらを希望しますか?」

関谷「2000万円で!」

栄作「その使い道は?」

関谷「中浦和で流行歌の似合う居酒屋を開きます」

 

ショーンコネリーにそっくりの白髪と白ひげのおっさんが、つっこみを入れている。

大林社長「関谷さん・・・あんた、だいぶ老けこんでますな。39歳だって?私もYoutubeのコメント欄で『44歳ではなく74歳だろ?』とか書かれたりしますが、私の場合は年の功ってやつなんですよ」

関谷「はあ・・・」

 

一瞬殺意の湧いた表情をするが、カメラを意識してわざとおとなしい表情をする。

おじさんの出した企画書?は折り目が付いていて見た目が悪かった。

鷹橋社長のメガネの奥が光っている。

 

鷹橋社長「この内容で2000万円ってどういうこと?店舗兼自宅を購入するつもりなの?」

関谷「いえ、自宅というか、2階で宴会を開くことができるのでは、と思いまして」

鷹橋「適当な言い訳は見苦しいからやめなよ。あんたさあ、ごっつい体格だけど、なんか卑屈というか、屈折しているんだよね」

 

ここで、ジョーのやつがしょうもない突っ込みを入れる

 

ジョー「セックス?」

圭「くっせつ、だろ?とうちゃんに聞かれるとやばいって・・・」

 

鷹橋「それを隠すために、就活の本の指南よろしく、僕の目をまっすぐ見ているつもりなんだろうね。でも、あなたの場合さ、ガンをとばしているようにしか見えないんだよね」

関谷「・・・」

鷹橋「そして、このふざけた企画書。小学生のらくがきのレベルだよね」

 

突然鷹橋社長は、企画書をまるめて投げ捨てる。憮然として立ち上ると退席してしまった。踏みつけられる企画書。なんかおじさんかわいそう。

 

鷹橋「あんた、投資の資格ない!経営者になれるオーラもパワーも全くないし、不器用ながらも必死にまじめに生きようとする健気さも感じられない。気が付きな!39年間なにやってきたんだよ?」

 

涙目でうつむくおじさんに大林社長が追い打ちをかける。

 

大林「給食用の製パン会社で経営の仕方を学んだとか宣っていましたが、その極意がこの落書きの紙切れですか?」

関谷「ああっ?!」

大林「・・・アップで映そうか?恥ずかしくて生きてかれへんで」

 

おじさんの生返事にムッとした大林社長が意地悪な反応を返す。

 

(ああ、これはノーマネーでフィニッシュだな・・・)この番組では、パワハラに堪え切ったとしても、投資は約束されないんだ。まあ、今回のその後の細かい展開は覚えてないや。

僕たちはかあちゃんが出してくれたおやつに夢中になっていた。ブルボンのシルベーヌというケーキだった。魔理沙に6個出してあげると「ゆっくりしくじり企業」の解説役を引き受けてくれそうだ。

 

魔理沙「今回のしくじり企業は、東・・・・」

霊夢「やめとけ!睡眠薬入りの吹矢が飛んでくるぞ」

魔理沙「シルベーヌ食べたい・・・」

霊夢「わかったわかった。今回は冬季限定いちご味を食わせてやる。解説のかわりに、JRで「浦和」がつく駅名を全部言ってみろ」

魔理沙「浦和、武蔵浦和、西浦和、中浦和、北浦和、南浦和、東浦和」

霊夢「東浦和って、埼玉高速鉄道(南北線)に乗り換える駅だったけ?」

魔理沙「あやふやだな。おまえ、埼玉に数年だけ就職で住みついて、都落ちして田舎に帰ったクチだろう。」

霊夢「うるさい!中田に50mのフリーキック決められるようなしょぼいスタジアムがあるような界隈の人間に言われたくないわ」

魔理沙「あれは、芝生がしょぼいのか?スタジアム全体がしょぼいのか?・・・」

霊夢「やめとけ。それ以上言うと吹矢が飛んでくるぞ」

 

だけど、大林社長の一喝でテレビに引き戻される。

 

大林「その顔、ごっつ腹が立つ!・・・謙虚になれよっ!」

与野「その態度はダメですよー」

関谷「・・・すみません」

 

ジョー「あーあ。やっちまったぁ」

圭「今日の給食のおじさんって、時々怖い顔してなかった?」

ジョー「緊張してたのかな?」

圭「普段は腰の低い優しいおじさんなんだけどね。」

ジョー「うーん。世渡り上手なのかな?そうでもないような・・・優しいというよりは卑屈というか・・・」

圭「そう思う?この前、給食室の前で山科(やましな)先生にめっちゃ怒られていたみたいだけど。何かあったのかな?」

 

番組の最後は制作者の意図なのか、美談で締めくくられていた。

 

関谷「大林社長さん、今日はどうもありがとうございました」

大林「いえ、こちらこそ。夢をあきらめずにがんばってくださいね。・・・関谷さん、何というか憑物が落ちたというか、素直な表情をしていますね。」

関谷「・・・いや、なんとなく、社長さんとはもう会えない気がしましてね・・・」

大林「それが一期一会ですわ。がんばってや」

 

いつも威張り散らしている大林社長が腰を低くしてあいさつをしている。

僕はおじさんの「もう会えない気がして」という言葉に不思議に感動した。

 

ぷよぷよを再開したジョーは、裏技を駆使して「わくわくコース」をクリアした。CPUの難易度はイージーだけど。初心者用の「るんるんコース」ではエンディングが見られないんだ。

アミティのかわいい表情を見ていると、BGMの効果なのかなんか不思議と切ない気がしてきた。

 

ジョー「あれ?おまえも実はロリコン?アミちゃんに見とれちゃって」

圭「おまえと一緒にすんな!・・・でも、エンディングってまた見れるのかな?」

ジョー「え?何言ってるの?一度クリアすれば、オプションで何度でも見られるじゃん」

圭「いや、そういう意味じゃないんだ・・・」

 

オヤジ「こらーーーっ!」

 

その夢のような気分を吹き飛ばしたのがとうちゃんの怒鳴り声だった。サザエさんのナミヘイみたいなオヤジだ。算数のノートを開いて仁王立ちしている。

 

オヤジ「ジョー!この破廉恥な絵はなんだー!」

ジョー「えっ、僕のノート?・・・あっ、やべっ!」

 

ジョーのやつ、ウチに算数のノート置き忘れていきやがった。

算数の時間に、アルルとアミティがチューしている絵を描いてたんだけど、先生に見つかってゲンコツをはられたんだ。

 

ジョー「そんなに怒らないでよー!おじさん!」

オヤジ「怒らずにいられるか?!これって、レズってやつだろ?!おまえだけだろ!ウチの圭にこんな破廉恥なことを吹き込んでいるのは!」

ジョー「僕だけじゃないよ!ドスケベなのは。6年生の女番長なんて処女じゃないんだよー」

 

(ゴキッ!)とうちゃんのゲンコツが飛ぶ。とうちゃんは夜勤明けでめっちゃ機嫌が悪そうだ。

 

オヤジ「バカもーんっ!」

圭「やめてよ、とうちゃん!」

ジョー「痛ててだよー!だって、本当だってばー!」

オヤジ「何を言う?!・・・ジョー!おまえ、親の前で処女とか言えるか?!」

ジョー「ていうか、パパ自身がいつも処女とかセックスって言ってるしー」

オヤジ「バカもーんッ!おまえ、もうウチに来るな!さっさと帰れっ!」

 

ジョーは頭に2つのコブをこさえて帰っていったんだ。

 

・・・そして、ジョーは2度と僕ん家に遊びに来ることはなかった・・・

 

 つづく

 

 

 
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