―――Side 玄崩―――
玄崩「ごきげんよう?劉備殿」
桃香「あ、あなたは!?」
愛紗「玄崩!」
玄崩は、蜀の城の桃香の部屋に現れた そこには、政務をしていた桃香とその補佐をしていた愛紗がいた そして、突然現れた玄崩に驚くがすぐに刃を向ける
玄崩「ああ、助けは呼べんよ 今、この部屋は音が聞こえないからね」
愛紗「何!?」
うそだと思うが、今まで聞こえていた鳥の音などが聞こえていない
桃香「そんな・・・」
玄崩「本来は、一人にしか掛けられんが・・・まあ、何とかなるだろう」
愛紗「何を言っている!」
玄崩の呟きに、不穏な気配を感じた愛紗は玄崩に斬りかかる
玄崩「いや何 君たちの理想をかなえる手伝いをしようとね」
そういって、玄崩は二人に向かい
玄崩「今のままでは、無理だろうからね・・・遠慮や道徳というものを消してあげよう」
手を突き出し、呪文を唱えた すると、二人は糸の切れた人形のようになった
玄崩「于吉は失敗したが・・・まあ、あいつはなんだかんだで甘いからな 思い通りに操るとすぐにばれる このように自我を残しつつ暴走させればすぐにはばれずに、気づいたときが面白い」
そして、目の前でうなだれている二人に向かい
玄崩「さて劉備殿、関羽殿・・・あなた達の理想を邪魔するものを殺してしまいなさい」
桃香「こ、ろす・・・?」
愛紗「邪魔、するものを・・・?」
玄崩の言葉に、夢遊病患者のように返す二人 そして、玄崩は悪魔のような笑みを浮かべながら
玄崩「ええ あなた達の理想は素晴らしいもの・・・しかし、曹操や孫策はそれを理解できない だから、殺してしまいなさい あなたたちは正しいのです」
そして、部屋から荒野に跳んだ玄崩は城を見ながら呟く
玄崩「ククク 現実を見ずに理想を追い求め、それを妄信するものほど御しやすいものはない・・・気づいたときにどのような顔をするか楽しみだ・・・フフフ・・・フハハハハハ!」
そして、玄崩は消えた
―――数週間後 魏の城―――
玉座では、様々な報告が行われていた 雛里が正式に魏に参入し、一人一人の負担が軽くなったので華琳は上機嫌だ ただ、狂骨の取り合いをしているときは機嫌が悪い 自分も参加してみたいが、プライドとかが邪魔をする
華琳「さて、つぎの「失礼します!」あら?」
次の、報告を聞こうとしていたら突然、兵士が入ってきた
秋蘭「今は、立ち入り禁止だ」
秋蘭がそう言うが、兵士は「ですが、一大事です」と返した
狂骨「どういうことだ?」
兵士「はっ!実は、蜀が魏に宣戦布告を致しました!すでに、奇襲を受け国境の城が落とされました!」
その報告に、全員が固まった
桂花「どういうこと!?蜀はまだ、戦争ができるほど国が固まっていないはず」
風「それに、雛里ちゃんの件にしてもちゃんと説明はしましたよ」
雛里が魏に参入したという事は蜀の方に伝えてある もちろん、内容は以前、春蘭たちに説明した内容だ
華琳「とりあえずは、情報が足りないわね・・・蜀に対する防御を固めると共に誰か、蜀に行って情報を集めてきてくれない?」
凪「それなら私が行きます 私なら、そこまで名は知られていません」
秋蘭「だな・・・私たちは、逆に知られすぎているしな」
華琳「じゃあ、凪 無理は絶対しないように・・・危険だったら、情報を手に入れることができなくてもいいわ 必ず戻ってきなさい」
凪の目を見てしっかりと言う華琳 情報も大切だが、「凪」のほうがもっと大切なのだ 情報は、後で入手する事ができる だが、「凪」は一人しかいない
凪「御意!」
狂骨「凪 もしかしたら、呉のほうから同じように将を送っているはずだ その時は協力しろ」
凪「は、はい でも、何故分かるのですか?」
狂骨「あいつならそうする・・・むしろあいつ自身が来そうだな」
―――Side 呉―――
雪蓮「じゃあ、刑天と明命が行くのね?」
刑天「ああ」
呉のほうでも、蜀のおかしすぎる動きに疑問を持ち刑天と明命を偵察に出す事に決定した
刑天「もし、これなら見つかったとしても俺が囮になる事で、情報はこちらに届く」
亞沙「ですけど・・・」
亞沙だけでなく全員が心配している もう回復しているとはいえ、一度倒れたのだ
刑天「心配するな 無理はしないさ・・・それよりも」
冥琳「はい・・・とりあえず、蜀の動きには警戒しようと思います」
刑天「祭、七乃 もしもの時のために軍をいつでも出せるようにしておけ」
祭・七乃「「了解」」
刑天「行くぞ」
明命「はい」
そして、刑天たちは蜀に向かった
―――Side 蜀―――
蜀の玉座の間では、険悪な雰囲気が漂っていた
星「で?何故このような事になっている?」
愛紗「どういうことだ?」
星「魏に宣戦布告するのは構わんよ いずれ、戦う事になっていたからな・・・だが、国が固まっていない今!なぜ、城を落とした!?」
桃香と愛紗を睨みつける星 後ろにいる、紫苑や桔梗も難しい顔をして成り行きを見ている 朱里や鈴々たちは不安な顔で両方を見ている
桃香「星ちゃん・・・納得していなのは分かるよ?でも、相手もそう思っている今なら勝てると思うんだ」
星「魏には、反董卓連合の折に汜水関の門を壊し、恋以上の実力を持つといわれる狂骨がいるのですよ?・・・勝てるとお思いか?」
愛紗「だが、恋と直接戦ったわけではない 恋以上といわれるが、違うかもしれないぞ?」
星「だが、他にも猛将はたくさんいる!」
言い合いは平行線をたどる
星「(これではまるで・・・桃香様たちが嫌っている民のことを考えていない奴らではないか)」
目の前にいる桃香たちが、その桃香たちが嫌っている人間たちに見えた星
愛紗「とにかく、すぐに戦の準備をするのだ!」
―――Side 蜀の街―――
凪「ふう・・・意外と早く着いたな」
凪は、早馬を使い二日前に蜀の街に到着した そして、宿屋を確保し情報収集を行っていた
凪「ん?あれは・・・呉の・・・刑天殿だったか?」
目の前から、少女を連れてくるのは自分の師である狂骨が「親友」といっていた刑天だった そして、凪は狂骨から「刑天が来ていれば協力しておけ」といわれていたので歩み寄った
凪「お久しぶりです」
刑天「ん?・・・ああ、これは鳳麗殿」
突然話しかけられ、振り向くと楽進がいた だが、下手に名前を言うとばれる可能性があるので、わざと別の名前を出した もちろん、目での合図も忘れない
凪「お元気そうですね・・・玄進殿・・・そちらは?」
刑天の意図が分かった凪はそれに乗る事にした そして、傍にいる明命のことを尋ねた
刑天「ああ、こいつは娘ですよ ほら、蘭 挨拶しなさい」
明命「えっと・・・蘭です よろしくお願いします!」
明命も、二人の意図が分かったのでそれに乗る
刑天「積もる話もあることですし、そこの店で話しませんか?おごりますよ」
凪「では、お言葉に甘えましょう」
そして、店に入り一番奥の席に陣取った この席は、声を潜めれば会話の内容がばれる事はない
凪「しかし、師匠の言う事が当たるとは」
せっかくなので、注文をしてお茶や肉まんを食しながら、そう言う凪
刑天「ま、互いの行動はある程度読めるからな」
明命「は~凄いですね・・・」
肉まんをハムハムと食べている明命に、ドキッとした凪
刑天「それで?どこまで掴んでいる?」
凪は、自分が手に入れた情報を渡すかどうか迷ったが、この状況では少しでも協力者が欲しかったので、情報を渡す事にした
刑天「なるほど・・・数日前から劉備と関羽の様子がおかしくなった、か」
凪「はい・・・まるで別人になったようだと」
明命「確かに・・・そういわれればそうですね・・・」
刑天「ふむ・・・魏に宣戦布告したのもそれが原因か・・・」
刑天は一つの可能性を思い浮かべる それは、玄崩の能力
刑天「(確か、幻術を応用した人心操作ができたはず)」
考えられる事は、玄崩が桃香と愛紗に何かをした
凪「とりあえずは、こんなところですね」
凪からもたらされた情報は有用だった まず間違いなく玄崩が噛んでいる そして、おそらくはこのまま戦争に入る その事を伝え、凪と別れた刑天たち
明命「どうしましょうか・・・」
刑天「とにかく・・・ん?」
前からやってくるのは蜀の兵 だが、警邏のようには見えない すると、囲まれた
刑天「・・・何か?」
兵「城まで来てもらおう」
そして、二人とも城に連れて行かれた
―――Side 城・玉座の間―――
玉座の間まで連れてこられた刑天と明命は桃香たちの前に後ろ手に縛られていた ちなみにここに居るのは桃香、愛紗、朱里である
刑天「さて・・・何か用でしょうか?」
愛紗「貴様が、密偵だという事は分かっている・・・何を調べていた?」
刑天は、愛紗と玉座に座る桃香の目を見て確信した
―――玄崩に術を掛けられている―――
だが、それにしては自我を持っている という事は、人心操作だろう
刑天「はあ・・・やはり、玄崩に付け入られたか・・・」
愛紗「何を言っている?」
愛紗たちは理解していなかったが、朱里は虎牢関での刑天の台詞を思い出していた
刑天『巧みな話術や、幻術で相手の心の隙間に入り込む―――』
確かにそういっていた そして、おそらくあの男に入り込まれたのだ そして、刑天はもうひとつのことを考えていた
刑天「(潔癖、そして現実を見ないのが付け入る隙を与えたか?)」
桃香や愛紗は刑天から見ると、潔癖すぎた 理想を掲げるのはいい だが、そのために払う犠牲を認めないのはいただけない 例えば、仲間が殺されれば誰もが悲しむし、殺した相手を憎む だが、華琳や雪蓮たちは自分がどういう立場にあり、暴走すればどうなるかをしっかりと分かっているので、憎んだり怒りはするが落ち着いて行動する だが、桃香たちは仲間がやられたらすぐに報復を仕掛けるだろう それでは、王や武将としては二流、いやそれ以下だ
『自分を律する事を忘れるな』
これは、狂骨や刑天が常々思っていることである いくら仲間がやられようと、暴走してはいけない 二人も、仲間がやられれば怒るが自分を抑えることを忘れない そのような覚悟がなければ、乱世に飛び込む資格などない
刑天「(だが、このままというわけにもいかんな・・・)」
愛紗は刑天をにらみつけ、どうするかを考えている すると―――
刑天「ハアァ!」
突然、刑天が縄を怪力で引き千切り、明命の縄も引き千切った そして、囲んでいる兵士を殴り飛ばした
愛紗「な!?」
刑天「逃げろ!明命!建業に戻り、この事を伝えろ!」
明命「し、師父!「行け!」・・・か、必ず助けに来ます!」
刑天の命令に戸惑った明命だったが、自分のやる事を思い出し必ず助けに来ると誓い走り出した
愛紗「貴様!」
愛紗は、刑天を睨み付け兵士に明命の追撃を命ずるが―――
刑天「ここは、通行止めだ」
立ちふさがる刑天に邪魔をされた
刑天「(さて・・・狂骨がいるなら心配はないか)」
そして、刑天は時間稼ぎをするために向かってくる愛紗たちに走り出した
「舞台裏」
狂骨「急展開だな」
刑天「そして、俺はいつも殿とかなんだな?」
だって、刑天の能力は「拠点防衛特化型」でしょ?殿にぴったりじゃん
刑天「まあな」
狂骨「玄崩・・・えぐいな」
刑天「于吉以上とは」
まあ、ね
刑天「では、次回お会いしましょう」
狂骨「さて、しばらくはシリアスなのか・・・」
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11話です
とりあえずは、玄崩が動きますw