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「改訂版」真・恋姫無双 ~新外史伝~ 第34話

今回は一刀たちは登場しません。各諸侯の動向を書いています。

では第34話どうぞ

2018-03-24 17:00:03 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5448   閲覧ユーザー数:4344

紫苑が呉に向かっている頃……何進の書状は既に有力諸侯に届いていた。

 

~陳留~

 

「新皇帝即位の祝いの為に上洛しろか……」

 

何進からの書状を受け取った曹操は不機嫌な表情をしていた。

 

即位を祝うのは分かるが何故軍勢を出す必要があるのか。ここで軍勢を出すなど正に金と時間の浪費でしかないと曹操は考えていた。

 

「華琳様、このような書状無視しても構わないではありませんか?」

 

「何、言っているのよ!アンタは!あんな大将軍でもその命令を無視すれば、華琳様が報復を受ける可能性があること分かっているの!?」

 

「何だと貴様!!」

 

「ハァ…姉者、それに桂花いい加減にしろ。華琳様の前だ」

 

夏侯淵が姉の夏候惇と軍師である桂花こと荀彧の口論を制止する。この荀彧は極度の男嫌いで曹操の従妹である曹洪と共に曹操軍の男嫌いの双璧であるが、この荀彧は特に酷く自軍の男性文官等に対して悪口雑言を吐くのは当然の事、そして自分の能力が高いが故それを自負するゆえ周りを見下す傾向があるため協調性に欠けるという問題点を持っていた。

 

しかし能力が一流であるため、曹操から「王佐の才」と呼ばれ信用されていた。

 

「華琳様、兵を出すのは仕方無いですが…誰を連れて行きましょうか?」

 

夏侯淵の言葉に曹操は

 

「そうね…行けば恐らく宮廷内の抗争に巻き込まれるのは目に見えているわ。それに多く連れて行けば目立ってしまうから兵の数はそれほど多くなくていいわ。だから連れて行くのは桂花、秋蘭、貴女の部隊と親衛隊だけで行くわ。春蘭、貴女は留守番よ」

 

「華琳様、何故私を連れて行ってくれないのですか!」

 

曹操に留守を言い渡された夏候惇は自分も連れて行く様、懇願するが

 

「春蘭、今回は戦ではないのよ。そのような場所に貴女を連れて行くのが勿体無いだけの話。貴女は陳留をしっかり守って欲しいわ。その代わり、今晩の相手は貴女にするわ」

 

「ほ、本当ですか!分かりました華琳様!!命に代えてもこの陳留を守ります」

 

この言葉に曹操から同じく寵愛を受けている荀彧が嫉妬するかの様に憎悪の表情を浮かべているのは言うまでも無かった。

 

~平原~

 

「どうしよう…朱里ちゃん、雛里ちゃん」

 

劉備は何進の書状を見て困惑の表情を浮かべている。

 

「桃香様残念ながら漢王室から認められたばかりで、ここで行かない選択というのはあり得ません」

 

「ここで拒否すれば漢王室から今後、私たちに何らかの嫌がらせ等受ける恐れがあります……」

 

「くそ!ここに来て間がないというのに……」

 

関羽が怒りの表情をみせる。劉備が平原の相として赴任して間が無いにも関わらず、兵を出して洛陽へ上洛することは金銭的に余裕が無い劉備軍に取って大変厳しいものである。

 

しかし諸葛亮や龐トウが言う通り、漢の末裔として認められた劉備が新皇帝の即位の祝いの命令を拒否することなど当然選択肢としてあり得ない話だ。

 

「仕方ありません……今回は幸い戦ではありません。軍勢としてある程度見栄えさえ良ければいいと思いますので少数精鋭という形で行きましょう」

 

「雛里ちゃんの言うとおりです。取りあえず洛陽に行くのは桃香様、愛紗さん、私で行きましょう。鈴々ちゃんと雛里ちゃんは留守をお願いします」

 

「えー鈴々、お姉ちゃんに付いて行きたいのだ!!」

 

「でも鈴々ちゃん、向こう行ったら儀式とか出るかもしれないし、面倒な事が色々あるよ?」

 

「儀式とかあるのか……じゃ鈴々、遠慮するのだ!!」

 

「ハハハ……」

 

「こら!鈴々!!……全く、取りあえず桃香様、道中必ずお守りしますので気を付けて行きましょう」

 

「うん、愛紗ちゃん。よろしくお願いするね」

 

~冀州・南皮~

 

「何でこのわたくしがあの肉屋風情の大将軍の言うことを聞かなればならないですか!」

 

「麗羽様、気持ちは分かりますがここは何卒…」

 

「いいえ真直(まあち)さん納得出来ませんわ。我が袁家は三公を出した名門中の名門、それがあの成り上がり者に従うなど私の誇りが許しませんわ!」

 

「では麗羽様、麗羽様が最も嫌っている宦官たちに付きますか?」

 

「………」

 

麗羽と呼ばれている金髪ロールと派手な女性はこの地の太守である名は袁紹、字は本初と言い、眼鏡を掛けた女性が名は田豊、字を元皓と言い袁紹の軍師を務めている。

 

今回の何進の書状を見て袁紹は上洛に難色を示し、田豊は今後の事も考え袁紹自ら上洛する様説得しているところであった。

 

袁紹は漢王朝において三公(司徒(現在における総理大臣)、司空(同じく官房長官)、大尉(同じく防衛大臣)という国の要職を司る三役の事)を輩出した名家であるが、ただ袁紹は能力より気位(プライド)が高い人物であり、分かりやすく言えば典型的な貴族のお嬢様でもある。

 

だからこそ成り上がり者の何進を嫌っていたが、更に袁紹がもっとも嫌っていたのが宦官である。何故袁紹が宦官を嫌っているのかと言えば、昔、袁紹の洛陽における私生活の振舞いにおいて宦官の趙忠から叔父袁隗への叱責があり、それから当時の袁紹が叱責を受けたのであった。それ以来袁紹は宦官たちを憎んでおり、今でも宦官嫌いで有名であった。ただ例外として洛陽の私塾において曹操と仲が良かったので、曹操の一族については付き合いがあった。

 

「あっ………そうですわ!今、私は病気に罹りました。ああ、都に行けば皆さんに病気を移してしまうかもしれませんので、今回のお役目を果たす事は出来ません。真直さん、後は貴女にお任せしますわ!!ホホホホホ!!」

 

「れ…麗羽様!………ハァ」

 

出席を渋っていた袁紹は病を理由に洛陽へ行くことを拒否すると言い出し、この場を下がる袁紹を見て田豊は溜息を付くしか無かった。

 

ただ感情に走る袁紹よりこの田豊が政略において冀州袁家を支えていると言っても過言では無いので、後事を田豊に任せた事はまだ幸いだと言えた。

 

「仕方ないわ……麗羽様は病気で祝いに駆け付ける事が出来ない事にする。斗詩、猪々子。貴女たちが麗羽様の代わりに洛陽に行って来て。そして朝廷から何か言ってきたらこちらでは当主が不在で自分たちでは判断出来ませんので南皮に使者を送って確認して下さいと返事してちょうだい」

 

田豊は袁紹が病気で出席できないので、袁紹の名代として袁家の武における「二枚看板」である斗詩こと顔良と猪々子こと文醜が洛陽に行くことになった。ただこの両名、武について問題は無いのだが政略において顔良は何とかこなせる程度で文醜は全く計算できない為、田豊は要らぬ言質を何進や宦官から取られぬ様に二人に言い含めたのであった。

 

「うん、分かった、真直さん。姫の事お願いしますね。今から準備するよ、文ちゃん」

 

「おう!斗詩と一緒なら何処でも行くぜ!」

 

文醜は顔良と一緒であれば良いのか田豊の言葉については余り気にしていない様であるが、袁紹と比較してまだ真面な行動を取るし、盟友とも言える顔良がいるので田豊はその点については気にしていなかった。

 

こうして各諸侯が動こうとしている中、洛陽では何太后と張譲の密談が行われていた……。

 

「何太后様……そろそろご決断を」

 

「張譲よ……どうしても姉を排除するのか」

 

「ええ、このままでは我々の命を奪われかねませんからな」

 

張譲は何太后に姉である何進を切り捨てて、自分たち味方になる様に最終通告を告げに来た。

 

今は仲違いしているとは言え姉を切り捨てるのは忍びないとして何とか張譲の意志を翻意させようと試みるが、張譲も自分たちの命が狙われているので翻意する訳が無かった。

 

「このままですと…何れ誰かが何太后様の事を嗅ぎ付ける恐れがあるかも…」

 

張譲は何太后の不貞をばらすような言葉を暗に告げる。

 

「………」

 

「………」

 

二人の間に沈黙の時が流れる。

 

「……分かった。わらわはお主たちに付こう。だが条件がある、この条件を認めてくれなければわらわはお主たちに付くことはできぬ」

 

「ほう…条件ですか。で、その条件とは」

 

何太后はその条件を張譲に告げる。だがその条件を聞いて張譲は難色を示すが

 

「何太后様、言い分は分かりますが、それはどうかと…」

 

「手筈はこちらでやろう。お主たちはそれを見届ければよい」

 

「ほう…」

 

「そちたちの目の前で姉の見苦しい姿を見れるのじゃ。それに姉を……にすれば文句は無かろう」

 

何太后自ら何進を始末して自分たちの手を汚さずに済むのであればと考えた張譲は譲歩したのか下品そうな笑みを見せて

 

「……宜しいでしょう。お言葉の通り我々も当然立ち合いさせて貰いますぞ」

 

「勿論じゃ。そうじゃなければお主たちもわらわの言葉を信用しないだろう。だが……張譲もし約束を違えたらこちらにも考えがあるぞ。わらわは弁の母親だと言うことをな」

 

「フフ……分かりました。何太后様の演出……期待しておりますぞ」

 

張譲は一礼してから何太后の部屋から退出した。

 

部屋に残された何太后は寂しげな表情で呟いたが

 

「もう後戻りはできないわ……お姉様…私と一緒に……」

 

何太后の最後の呟きは誰にも聞き取るができなかった。

 

新たな戦乱が間もなく開かれようとはこの時誰も想像していなかった。

 

 

 


 
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