こんなところでも、風は吹く
たとえソレが、すべてを滅ぼす灼熱の風だとしても
「ぼちぼち代わろーかぁ?」
「え? もうそんな時間か」
真は左腕の時計を確認して、身体を大きく伸ばす。こんなところでも、ずっとしゃがみこんで作業していれば疲れる。
そんな様子を見て、チャックはガラス越しにもわかるほど口元を歪めた。
「ヘイ、ここで一番の若造がそんなオッサンくさくてどーするよ。アンやメイが見たらガックリして愛想つかしちまうかもしれないゼ?」
「うっさいなー。疲れるモンは疲れるんだよ! 第一、アンジェやメイリィは関係ないだろ!」
「やれやれ。そうやってすぐカッとなるのはチェリィな証拠だぜ? ボーイ」
ムキになって声を荒げた真に対して、大げさに肩をすくめてみるチャック。
そうやっていがみ合いながらも、手は止めず作業の引継ぎを進めている。
「……で、進み具合はどうよ?」
「貫通してる穴はふさいだけど、装甲板で止まってるような小さいのは無視してる。あとはミラーの補修だけだと思う」
「ふむ。まぁマコトがそう言うなら大丈夫だろ。オマエは一番下っ端のクセに、そういうところは一番しっかりしてるから、なっ!」
肩に手を回して引き寄せ、腹をボスボスと殴る。
「ちょ、やめ、足が離れるって!」
「この程度で安定をなくすようじゃまだまだだなぁチェリィボーイ?」
「だからチェリーいうな!」
陽気な笑い声を上げるチャックと、本気で嫌そうな真。そんな二人の動きを止めたのは、突然鳴り出したアラームの音だった。
「!? 異常か?」
反射的にコクピットへ通信を繋ごうとするチャックを、真の申し訳なさそうな声が止めた。
「すまないチャック。今のは僕の時計だ」
「なんだ、脅かすなよボーイ……いったい何なんだ?」
「すぐにわかるさ。あっちだ」
そう言って真が指差した方向に見えたものは。
漆黒の闇の中に浮かぶ、色がわからなくなるほどの輝き
焔を吹き上げ、灼熱の風を産み、恵みと滅びを共に放つ星
「ジーザス……」
「この時間に活動が活発になるってレポート見つけてさ。
……船外作業引き受たんだから、このぐらいのボーナスがあってもいいよな?」
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あー……
またもオリジナルですみません……
一応、亀の歩みではありますが、第四話も進めてはいますのでお許しくださいorz
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