「お祭りやってないわよねえ」
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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)
EX回:第44話<ブルネイ再び>
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窓から覗く。大型クレーンが見えた。
「確か、あの辺りが鎮守府だったな」
思わず呟いた。
だが未来の自分の「記憶」を手繰るとは何だか妙な心地だ。
二式大艇はブルネイの鎮守府上空を大きく旋回してから管制の指示に従ってゆっくりと着水、水しぶきが上がる。
操縦席からは警報も何も出ていない。今回のゴタゴタでは参ったが味方と認識されるのは当たり前のことだ。
機内の全艦娘たちも前回で懲りたのか、みんな目を覚ましていた。
着水後、再び水面で加速をして埠頭へ向かう二式大艇。
「お祭り、やってないわよねぇ」
龍田さんは窓の外を見ながら楽しそうだ。まぁ今回は祭り以外の楽しみもあるからな。
私も改めて窓から外を見る。時折、機体の横を通り過ぎる内火艇の向こうに煉瓦造りの鎮守府本庁舎がチラッと見えた。
懐かしい感じだが、よく見れば全部、新しい。割と最近、建てられたようだ。
それに埠頭のどこを見回しても屋台もない。そりゃそうだ。今回の模擬演習は、あくまでも我々の任務なのだ。
さすがの技術参謀も今回が実験ということもあってか、どことなく緊張している様子だ。
副長と何か、やりとりをしていた機長が無線を外しながら言う。
「やはり直接、接岸は出来ませんね」
「そうだな」
返事をしながら私も未来のブルネイを連想していた。
「いま先方から内火艇が迎えに来ます」
「了解だ」
この辺りのやり取りは今回の面々は経験済みだ。不思議な感覚だ。
「出迎え?」
呟いた私はブルネイの五月雨を思い出した。
やがて船が近づく水の音がした。ガコン……という鈍い音と共に内火艇が機体に横付けされた。機長は窓から何か指図している。これも変わらない。
気を利かせた日向が立ち上がって機長に目配せをしてから言った。
「開けます」
取っ手を引いた彼女。ガバットいう音がして外気が入って来る。
既に扉の直ぐ外には先方の内火艇が横付けされていた。その甲板上では私たちにとって懐かしい少女が敬礼をしていた。
「ブルネイ泊地鎮守府所属の駆逐艦『五月雨』です。お待ち申し上げておりました」
「おぉ、五月雨! 久しぶ……じゃなくて」
言いかけた私は慌てて訂正した。案の定、五月雨は目を丸くしていた。
(あぁ、バカ丸出し)
我ながら大失態だ。後ろの方からもクスクスという笑い声。まったく以て恥ずかしい。
怪訝そうな表情をする彼女を尻目に私は思わず後頭部に手をやって苦笑した。
すると青葉さんが飛び出してきて、ここぞとばかりに私たちを連写する。
「おい、こんなとこ撮るな! ……ほら彼女(五月雨)も困っている」
「あ、いやいや」
私の制止に青葉さんはカメラを止めた。
「ちょっとテストを兼ねて……ね」
悪戯っぽく舌を出した彼女。
やや気を取り直したように五月雨は言った。
「では……提督は、こちらの操舵席前、艦長席へどうぞ。機体は暫く係留いたしますので機長は無線の指示に従ってください」
てきぱきと、淡々と物事が進む。
(本当に変わらないんだな、五月雨は)
私は、なぜかホッとした。そこだけ変わらないものを感じたから。
私たちは各自、荷物を抱えて内火艇へと移動した。
五月雨は無線で連絡をしていたが何度か頷いて合図を出した。やがて内火艇はゆっくりと出発した。
当然ながらブルネイの港湾内は見事に変わっていなかった。
それに停泊中の艦船や各種の装備類も基本的に美保と同じだ。同じ時代だから至極、当たり前の話だ。
(まあ軍隊なんて、どこも変わらないよな)
鎮守府全体は落ち着いていたが……美保の面々も最初は若干の違和感を覚えていたようだが直ぐに金剛姉妹を中心にワイワイ騒ぎ出す。
その光景を見ながら私は、これがいつもの「みほちん」だな、と思った。
青葉さんは……隠しカメラか? お前も懲りないな。
何となく五月雨が気にしてチラチラ見ているが青葉という重巡相手だから少々遠慮している。
その遠慮がちな姿がまた可愛い。
そのとき私は、あの武蔵様の台詞が頭の中に甦ってきた。
『目に見えない物ほど、永遠に残る』
(……あの武蔵様も、ここに居るのかな? いや、まだか)
ふと見ると龍田さんが海面を撫でながら雫を垂らして手のひらを見つめている。やることは相変わらず同じだなあ。
そして見上げると青い空と白い雲。やっぱり暑い。これも変わらないな。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。
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司令たちは再び……ブルネイの地に到着した。それは懐かしいというのだろうか? 誰もが妙な感覚に陥るのだった。