No.938329

Oxymoron 2

リュートさん

オオカミ姫の二次創作ストーリー、第二話です。

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2018-01-21 06:35:06 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:338   閲覧ユーザー数:338

「今度の休日、町外れにある森の遺跡に三人で探検に行こうぜ!」

 

アカデミーの建物で一番高い場所にある時計塔の天辺で、カースとゲルスとクラリスの三人は集まって談話をしていた。

 

「危険だから近づいちゃダメだって大人たちが言ってたよ?」

 

「大丈夫だって!俺と兄貴がいれば、モンスターなんか、ちょろい、ちょろい」

 

「ゲルスは一度言い出したら聞かないからな…」

 

呆れ顔のカースが溜息を吐きながら、やれやれと言う表情をしている。

 

「俺の剣はどんなモンスターでも切り裂けるし、兄貴の盾はどんな攻撃でも防げるんだぜ?」

 

「じゃあ、ゲルス君の剣でカース君の盾を攻撃したら、どうなるの?」

 

「えっ、それは…。兄貴、なんとか言ってくれよ?」

 

カースに助けを求めるように、ゲルスは目で訴えていた。

 

「クラリスに一本取られたな。なんなら今から試してみる?」

 

「兄貴とやり合うなんてごめんだぜ?」

 

「二人とも、ケンカしちゃダメだよ?」

 

結局ゲルスの提案を断れず、休日に三人は森の奥にある遺跡に向かっていた。遺跡の入口には〝危険!立ち入り禁止〟と大きく書かれた看板が立っている。

 

「ねぇ、本当に行くの?やめようよ…」

 

「待ってくれよ!ここまで来て引き返すのか?」

 

「二人だけで行って来たら?私がいると足手まといになるだけだし…」

 

「クラリスが来ないなら、意味がないじゃないか…」

 

「ゲルスはただクラリスにカッコいいとこを見せたいだけだろ?」

 

「兄貴ッ!な、な、な、何を言って…」

 

ゲルスは手をバタバタさせて、言葉がしどろもどろになっている。

 

「でも私がいるとゲルス君、魔法失敗しちゃうでしょ?」

 

「だから剣を持って来たのさ!魔法なんかなくてもなんとかなるって」

 

ゲルスは腰に携えた剣を得意げに引き抜いた。カースは腕に盾を付けている。正面の入口は厳重に封鎖されていたので、遺跡の裏側に回って探索していると、鬱蒼とした茂みの中に盗賊が掘ったと思われるトンネルを発見する。

 

「ここから中に入れそうだな…。行ってみよう」

 

ゲルスを先頭にして、クラリスが続いて中に入り、最後尾をカースが続いた。トンネルの中は真っ暗闇で何も見えない。トンネルを抜けると、天井からチラチラと光が差し込む大広間に出た。

 

「怖かった…。ここまで来ればもう大丈夫だよね?」

 

大広間の真ん中まで来た途端、床の底が抜けてガラガラと崩れ落ちた。ゲルスはクラリスをお姫様抱っこして、ひらりと宙に浮かび上がった。床の下には鋭い棘が何本もあり、髑髏や骨が散らばっている。

 

「翼がないピプル族ならヤバかったな」

 

「ううっ…、もう帰ろうよ?」

 

「心配するなって!俺がクラリスを守るからさ」

 

カースも翼でふわふわと大広間を浮遊しながら、周りを見渡している。少し先にある通路の方へ飛んで行ったが、狭くて徒歩で進むしかないので、二人の近くに戻って来た。

 

「ちょっと見て来たが、この先の通路も行き止まりのようだ」

 

「待てって!この隙間を通り抜けられるかもしれない…」

 

ゲルスは人一人通れるかどうかと言う狭い通路に身をよじって進んで行く。クラリスも付いて行ったが、途中でゲルスが動かなくなった。

 

「挟まった…。身動きが取れない」

 

「えっ!ゲルス君、大丈夫?」

 

「初歩的な罠だな。だんだん狭くなって通り抜けられずに挟まる仕掛けだ」

 

「兄貴、罠だとわかってたんなら先に言ってくれ…」

 

「言っても聞かないだろう?」

 

クラリスがゲルスの腕を引っ張って、クラリスの胴をカースが引っ張り、挟まったゲルスを救出した。

 

「ゲルス、さっきからクラリスにカッコ悪いとこばかり見せてしまってる」

 

「兄貴…もしかしてわざとやってる?」

 

恨めしそうな顔をするゲルスにカースは知らんぷりを決め込んでいた。

 

「どうする?これ以上、先には進めそうもないな…」

 

その時、クラリスの耳にどこかで聞き覚えのある声が聞こえて来た。今にも消え入りそうなほど、か細い声だ。

 

「…クラリス…こっちだよ」

 

「えっ…。今、誰か私を呼んだ?」

 

「いや、誰も呼んでないが…」

 

「でも今、誰かに呼ばれたの」

 

クラリスが呼ばれた方へ歩いて行くと、レリーフの施された扉があった。男と女の形をした窪みがある。

 

「これが鍵になってるみたい。この窪みに男の子と女の子が同時に体を嵌めると扉が開くんだって」

 

「なんでそんなことわかるんだ?」

 

「さっき、私を呼んだ声に教えてもらったの。二人には聞こえなかった?」

 

「クラリスにしか聞こえないなんて、気味が悪いな…」

 

カースはなんとなく嫌な予感がしていたが、ゲルスが窪みに体を嵌めたので、クラリスも窪みに体を嵌める。次の瞬間、クラリスの嵌ったレリーフが反転して、クラリスだけ扉の向こう側へ行ってしまった。カースは慌てて扉を叩いたが、頑丈な扉はビクともしなかった。

 

「クラリスーーーッ!!」

 

to be continued


 
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