イザベルは自分の家で比較的くつろいでいた。
なぜか、書き物をしながら、情報屋(特殊な職業柄、取材をする)アニスの取材を待っていた。
その内容はこうだ。
”神は知っておられる。現実をば。神は知っておられる。人間をば。なれば、神の奇跡は地上にきっとある。”
”そして”・・・
そう書きつづったところをベルが鳴る。来客のようだ。
イザベルが受話器を取ると、
「おはようございます。クリスティーンです。今日は取材に来ました。上がってもよろしいでしょうか。」
情報屋アニスの情報屋のようだ。
「今、ドアをお開けしますから、もう少しお待ちください」
落ち着いた調子で話すイザベル。
予告通り”ドアをお開け”したイザベルに、クリスとこんとんの両名が反応して彼女を見る。
「どうぞお上がりください。イザベルと申します。」
と、彼女は二人を家へ上げようとする。
家へ上がった二人は、意表を突かれたようにしばらくたたずむ。
自分達が何をされたのか、理解できないようだった。
「どうぞ奥の部屋へ。いかがしましたでしょうか?」
「い、いえ。今行きます。」
と、かろうじてクリスが反応する。
「こんとん様、大丈夫ですか。」
「かろうじて。動けます。」
ぎこちない言葉遣いでこんとんが答える。
「では、取材をお受けいたします。」
と、イザベルが申し出る。
「まずは、こんとん様。お願いしますね。」
ちょっと卑近な笑みをクリスは浮かべる。
「え? えっと、まずは・・・。」
「・・・シリル! ・・・そう、シリルさんはご存知ですよね?」
クリスに振られて、こんとんはちょっと挙動不審になりかけたが、なんとか質問する。
「はい。あなたの知っているシリルと私は友人です。」
彼女・・・イザベルはそう反応する。
「漢字はお得意ですか?」
「はい。”中学漢字”くらいは分かります。」
”そう、この人は丁寧すぎるだけなのだ。”
と、こんとんは違和感の謎に気付く。
「クラスメート・・・そう、シリルさんとはクラスメートでしたか?」
「いいえ。」
こんとんはよくよく、イザベルを観察する。
”若い。二十台、ひょっとすると十台かもしれない。”
と、こんとんは思う。
「お若いようですが、’いくつ’か聞かせて頂いてもよろしいでしょうか?」
”いくつ”と聞かれてイザベルは、
「失礼ですが、それは取材に関係することなのでしょうか? ・・・ちなみに19です。」
「あぁ、失礼しました。では、彼の妻のコンスタンスさんはご存知でしょうか?」
「そのお方は、取材内容に関係するお方ですね。彼に奥様がいることは存じております。」
”彼”とはシリルの事だ。
「あぁ・・・、えと・・・・。」
言葉に詰まるこんとん。
「コンスタンスが失踪しました。」
それを見てクリスが助け舟を出す。
「・・・そうなのですか?」
と、イザベルが驚く。
「”そうなのです”。」
まるで、イザベルの台詞をくりぬいたかのような言葉で追随を許さない。
”この女が厄介なのは、文と文の間を読ませる能力だ。・・・そして、話し相手の頭をオーバーヒートさせる。”
と、クリスは話し方の特徴について考察する。
”この女と積極的に関わっていたとすれば、シリルは相当に頭が良かったに違いない。”
と、またもクリスは推理脳を働かせる。取材対象イザベルに対して。
「さて、次のご質問は無いでしょうか?」
と、調子を変えるイザベル。
「では、えーっと。なんでしたっけ、クリス?」
馬鹿みたいな質問を(取材対象を差し置いて)するこんとん。
「目的は取材です。そして、カーチス夫妻の娘カミラに関する事ですよ。こんとん?」
こんとんに対して、そう返すクリス。
「そのお方は、”こんとん”とおっしゃられるお方ですか?」
「はい、こんとんと言います。」
こんとんは彼女のしゃべり方を真似してみるが、丁寧にも知的にも聞こえない。
「そのお方、”カミラ”でしたか。そのお方も存じております。」
ここで、こんとんは確信した。この人が絶対に犯人だと。
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殺人ミステリー