No.93134

真・恋姫†無双 暁の飛鳥 第六話 死と想い

チャルさん

今回は飛鳥の過去のお話。

主人公の自分語りとか苦手な方はご注意を。

2009-09-03 01:30:12 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:1667   閲覧ユーザー数:1204

前回までの暁の飛鳥

 

 

予定外の自体に、それでもなんとか仲間と共に黄巾党を殲滅した飛鳥。

 

だが、街へ凱旋しようとしたとき、隠れていた敗残兵に朱夏が狙われてしまう。

 

なんとか、身を挺して朱夏を庇うことに成功するが、力の反動で倒れてしまう飛鳥。

 

慈元の屋敷で手当を受ける傍ら、不審がる仲間達に、飛鳥は自分のことを話すことにするのだった。

 

 

 

人物表

 

 

 

飛鳥 この物語の主人公。バカップルの片割れ。チートマン。

 

 

 

桃香 劉備。この物語のメインヒロイン。バカップルの片割れ。おっぱい。

 

 

 

愛紗 関羽。バカップルを止める人。うっかり愛紗。

 

 

 

鈴々 四兄妹では、馬鹿だけど、なにげに一番苦労人で常識的な行動を取っている。虎の髪留めぷりちー

 

 

 

朱夏 麋竺のこと。なにかと黄巾党に狙われて男性恐怖症に。そのくせ、武将として馬術と弓に長ける武闘派。

 

 

 

葉月 糜芳のこと。姉をサポートする名脇役。姉ほどの武勇は無いが、頭の回転が速く、どちらかというと文官に長けている。

 

 

 

 

 

 

真・恋姫†無双 暁の飛鳥 第六話  死と想い

 

 

 

 

 

 

わたしはわるい子です。

 

 

いいこにしていればすぐにかえってくるといっていたのに、おとうさんはかえってきませんでした。

 

 

だからきっと、わたしはわるいこです。

 

 

 

かみさま。

 

 

わたしがいい子にしていたら、おとうさんをかえしてくれますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、慈元は自分の私兵に敗残兵狩りを徹底させたところ、15人近くの賊が残っていた事が分かった。

 

 

夜になって襲ってくるつもりだったのかもしれない。

 

 

 

ここで分かったのは不幸中の幸いだったといえるだろう。

 

 

 

 

屋敷に着くと、俺は応接室へと通され、血にぬれた上着を剥がされて椅子に座らされる。

 

 

 

 

あの後、俺は屋敷に着くまでの間に吐血し、桃香と朱夏が半泣きの状態に陥った。

 

 

 

 

幸い原因が分かっているので心配ないと伝えると、きちんと説明をすることを確約させられて今に至る。

 

 

 

 

応接室には、俺、桃香、愛紗、鈴々、朱夏、葉月、慈元がいる。

 

 

 

 

俺は上半身裸のまま、桶に水を張り、濡れた布で血を落としていく。

 

 

 

 

 

戦場で動き回って熱を帯びた体に、水が心地よい。

 

 

 

 

 

慈元が、最初は侍女にやらせようとしたが桃香が自分がやるといったので任せる事にした。

 

 

 

 

すると、朱夏が自分のせいでもあるからと二人ですることになり、いま、身動きの取れない俺は二人のなすがままに椅子に腰掛けている。

 

 

 

 

 

男が苦手な朱夏は、手に力がはいっておらず本当に汚れが落ちているのか怪しい。

 

 

 

ご主人様なんて呼ばれて、こんな風に女性を侍らしていたら本当にその手の人間の様で居心地が悪い。

 

 

 

 

 

 

愛紗「……女性を二人も侍らせて嬉しそうですね、ご主人様」

 

 

 

 

なにやら、愛紗がトゲのある言い方で俺を責めてくる。

 

 

 

何故だ!?

 

 

 

俺が動けないのを知っている筈なのに、なぜ責められなければいけない!?

 

 

 

 

 

 

飛鳥「愛紗、お前にはそう見えているのか?そう言えば、戦が終わったら二人きりで話をするって約束だったな。体が動くようになったら覚えておけよ?」

 

 

 

 

 

 

戦の前に話していた事を思い出し、そのことを愛紗に告げると、いつかの焼き直しの如く話を変える。

 

 

 

 

 

 

 

愛紗「……ご主人様?そういえばお体の事で説明があるのでは?」

 

 

 

 

 

 

生真面目なくせに、調子の良い愛紗だった。

 

 

 

 

 

飛鳥「誤魔化したな?」

 

 

 

 

 

 

愛紗「ご主人様、約束でしたよね?」

 

 

 

 

桃香「そうだよ、ちゃんと説明してくれないとやだよ!!」

 

 

 

 

朱夏「そ、そうですよ。私と桃香さんを泣かせた罰なんですからね」

 

 

 

 

 

愛紗だけでなく、いつもは味方してくれる桃香や朱夏までも敵に回ってしまった。

 

 

 

どうやらかなり旗色は悪いようだ。

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「えーっと、いつも以上に、本気で、体力の限界まで速度を上げて走ったからというのでは駄目か?」

 

 

 

 

 

 

愛紗・桃香・朱夏「駄目!!(です)」

 

 

 

 

 

 

そう言って俺の簡潔に纏めた説明を一蹴する三人。

 

 

 

 

他のみんなも、ジト目で俺に無言のプレッシャーを掛けてくる。

 

 

それだけ心配されているってことか。

 

 

だとしたら、少し嬉しいな。

 

 

 

 

 

 

飛鳥「……まぁ、皆にだったらいいか。みんな、こんな格好ですまないが話を聞いてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

そういうと、あらかた拭き終わったのか、Tシャツを着せて貰い、桃香と朱夏も手を止めて俺の言葉を待つ。

 

 

 

 

飛鳥「最初に断っておくが、これから俺の身体の事に関して話すに当たって正直耳を覆いたくなるような事も説明しなければ成らない。

 

あまり聞いて気分の良い物でもないし、俺もそう言った事を言って回るつもりは無いから他言無用で頼む。そう言った事が聞きたくないという場合は、すぐに言ってくれ。もし、この段階でそういった話が嫌だと言うのなら部屋を出てくれてかまわない」

 

 

 

 

 

 

そう言って、皆を見回すと真剣な表情のまま、誰も動こうとはしなかった。

 

 

 

 

飛鳥「みんな残ったという事は、話を聞くということでいいのかな?」

 

 

 

 

 

 

愛紗「当然です。先程約束したばかりではないですか」

 

 

 

 

 

さも当然だという感じで愛紗は行ってくる。

 

 

 

 

 

これが単純に身体の問題だけならば、ちょっと話してお小言をもらって終わりだったのかもしれないが。

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「そうだな。でも、それだけ気楽にいえる事じゃないと言うことだけ覚えておいてくれ」

 

 

 

 

 

 

愛紗「……分かりました」

 

 

 

 

 

飛鳥「桃香、こっちへおいで」

 

 

 

 

 

そう呼ぶと、俺の後ろからすぐ横へと移動してくる。

 

 

 

 

 

 

桃香「何?ご主人様」

 

 

 

 

 

飛鳥「これから俺の話をするにあたって桃香の前世の話をする場面がある。それを覚悟しておいて。例え前世でも自分の最期の話なんて気持ちの良い物では無いから。どうする?」

 

 

 

 

 

桃香は俺の問いに暫く悩んだ後、大丈夫といって椅子を持ってくると俺の横にすわり、手を握った。

 

 

 

 

 

桃香「もし、私の事を話すときはずっと握っていてね?」

 

 

 

 

 

 

飛鳥「ああ、分かった」

 

 

 

 

 

 

 

桃香が椅子に座ったのを機に、部屋の中で立っていたみんな各(おのおの)腰掛ける。

 

 

 

 

 

 

飛鳥「さて、前置きが終わったところで、俺の身体のことについて話そう。まず、簡単に言ってしまえば、俺の今の状況は、思い切り走ったから疲れたというような話のものではない」

 

 

 

鈴々「んー?じゃあ、お兄ちゃんはどうして倒れたのだ?」

 

 

 

 

 

 

まさか本当に、そんな風に思っている人がいるとは思わなかったので鈴々の返答には少し笑ってしまった。

 

 

 

 

 

 

愛紗「それをこれから聞くんだぞ、鈴々」

 

 

 

姉らしく妹を注意している愛紗。

 

この姉妹はいつもマイペースで和むな。

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「まず、俺の身体の話をする際に、俺の家系、一族の事を話さなければいけない」

 

 

 

 

 

 

朱夏「飛鳥様の一族ですか」

 

 

 

 

 

 

飛鳥「そうだ。俺の家は代々不動明王という神を祀る武家だった。不動明王については話せば一日以上かかるから省くが、簡単にいってしまえば、悪魔を降伏させ、皆の安全を確保するために力尽くにでも相手を正しき道に引き入れるという神様の中でも特に怖い顔をした武闘派の神様だ。民からはお不動さん、お不動様なんて親しまれている。そしてなにより、俺をこの地に遣わした張本人であるな」

 

 

 

 

 

慈元「なんと、ならば我らもそのお不動様に感謝せねばな。飛鳥殿のおかげでこの街はこうして平和になったのですから」

 

 

 

 

 

桃香「私が、こうして飛鳥と再開できたのもその神様のおかげだね♪」

 

 

 

 

 

 

飛鳥「俺も小さい頃はお不動様が格好良くて憧れていたけれど、実物は滅茶苦茶軽薄な感じだったぞ?俺がこの地に御遣いとして用事を頼まれたときも、本人は声だけ飛ばして実家の今で転がってゲームしていたらしい」

 

 

 

 

 

 

葉月「げーむってなに?」

 

 

 

 

 

 

飛鳥「そうだな。物語の主人公になりきったり、物語を体験しながら遊ぶ玩具だと思ってくれればいい」

 

 

 

 

 

 

鈴々「神様なのに、玩具で遊ぶの?」

 

 

 

 

 

 

飛鳥「俺の世界の玩具はものすごく発展していて、大人でも楽しめるようなものが沢山あるよ」

 

 

 

 

 

 

 

愛紗「つまり、そのお不動様は、自分は遊びながら片手間にご主人様を遣いに出したと?」

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「しかも、自分の家族の仇を、相打ちであったが何とかとって、やっとみんなの元に逝けると覚悟して再び起きたら、そんな巫山戯た状態だったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

一同「……」

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「考えても見てくれ。みんなが俺の立場だったら……むかつくだろ?」

 

 

 

 

 

 

皆は自分に当てはめているのかしばしの沈黙ののち首肯した。

 

 

 

 

 

 

一同「……確かに」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺のその言葉に、場の空気が静まりかえる。

 

 

そりゃそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程まで霊験あらたかな雰囲気があったのに、それが一気に霧散した。

 

 

 

 

 

 

 

『へっぷちっ!?』

 

 

 

どこかの空間で、神がくしゃみをしたとかなんとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「あまりにむかついたものだから……」

 

 

 

 

 

 

 

葉月「ものだから?」

 

 

 

 

 

 

飛鳥「渡されたばかりの神具で思わず殴り掛かった!!」

 

 

 

 

 

 

葉月「神様殴っちゃった!?良く天の御遣いになれたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葉月のいうことも尤もで、神をなぐる天の御遣いなど後にも先にも俺くらいのものだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「な?みんながあれだけ信じている天に居る神なんてのはそんな奴なんだぜ?その御遣いである俺の程度もしれたものだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

桃香「そんなことないよ。飛鳥は立派に人助けをしてるもん」

 

 

 

 

 

 

 

 

朱夏「そうです。現に私は二回も飛鳥様に救って頂きました。神様がどうであろうと、私を助けてくれたのは飛鳥様です。だから、私は飛鳥様を信じています」

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、なんか荒んでいた心が癒されていくようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「っ……桃香ぁ!朱夏ぁ!二人は本当に良い子だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は感動のあまり桃香の頭を撫でまくる。

 

 

 

 

 

飛鳥「ちなみに、今俺は自力で移動できないので、撫でて欲しかったらここまで来てください」

 

 

 

 

 

冗談半分でそう言ってみると、予想外に朱夏は俺の反対側の席に座り直し、大人しく俺の撫でを受けていた。

 

 

 

 

 

何故か鈴々も来たのでついでに撫でておいた。

 

 

 

 

本当にこの三人は、呼べば駆けつけてくる飼い犬のようで可愛いな。

 

 

 

 

 

ふぅー、癒されるなぁ。

 

 

 

って、そう言えば朱夏は男性恐怖症だったのではなかろうか?

 

 

俺と仲良くなったから大ジョブになったとか?

 

 

 

まぁ、改善したならそれでいいか。

 

 

 

 

 

 

 

愛紗「って、ご主人様!!話が脱線しています」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「おお、そうだったな。つまり俺の家はな、特殊な血を引く家系だったんだ。どう特殊かというと、迦楼羅と呼ばれる神を先祖に持つなんて言われている」

 

 

 

 

 

 

愛紗「迦楼羅といいますと、ご主人様が名乗ってらっしゃる名前ですよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「ああ、そうだ。代々神足家の当主が受け継ぐことになっている名前でな。この迦楼羅という神は、元々は神の王を背に乗せて空を高速で飛ぶ金翅鳥と呼ばれる神獣とされている。竜を餌とするためその天敵とされていて、片方の翼だけでも八万里、一説では全長で三百万里以上なんて言われる程の大きさがあると言われる巨大な金色の鳥なんだ。三千年に一度大空を割って飛ぶと言われている」

 

 

 

 

 

 

 

 

葉月「なんていうか、壮大な話ね」

 

 

 

 

 

鈴々「じゃあ、お兄ちゃんもそんなに大きく変身するのー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

葉月は、竜を喰らうとか、八万里なんていう途方もない話にため息をつき、鈴々は興奮したように尋ねてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「だったらいいんだけどな。迦楼羅は俺のいた国に伝わるころには迦楼羅王といって頭は鳥、身体は人間の姿へ変えていた。おそらく俺の一族に血が入っているとしたら、迦楼羅王の分霊だろうな。人の身に神の力は大きすぎるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛紗「それで、その迦楼羅王の血は、どんな恩恵をもたらしたのですか?」

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「簡単に言ってしまえば、身体能力や学習能力が恐ろしく向上した」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慈元と朱夏はなにか思い当たったのか発言する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慈元「では、馬に併走して走るあの俊足も、敵をなぎ倒す怪力もその恩恵ということですか?」

 

 

 

 

 

 

朱夏「私を矢から庇ってくださった時もそうなんですね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「そうだ。そのほかにも、意識して感じることで五感が恐ろしくさえ、遠くの足音や、匂い、あとは鳥の習性からか眼が異様に良くなった。そして、神足家は神から武を授けられる代わりに、子々孫々にわたって神の眷属として世の悪を武力で罰するという使命を負った。俺を、この地に遣わしたように神というのは人間界に無闇に介入してはいけないとされており、俺の一族のように人間を介さなければならない」

 

 

 

 

 

 

 

 

桃香「でも、ご主人様みたいに強い力を授けて居る時点で充分に介入している気がするけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「神の世界にも建前というものがあるらしく、反則すれすれのところだな。まぁ、とにかく迦楼羅の血は神足に多くの恩恵をもたらしたが、その中でも一族を繁栄させるのに役だったものがあった。それは、先祖の研鑽した力の才を、子に引き継ぐというものだった。親が剣の達人であれば、恐ろしい程の努力が必要だが、子供も、元服の頃には親に並ぶ事が可能になる。そういった才能を普通の人間よりも血を介して色濃く伝えていく」

 

 

 

 

 

 

 

愛紗「なんと!?では、飛鳥様もその身にご先祖の武の才能を引き継いでいるということですか?」

 

 

 

 

葉月「でも、そんなに才能だけ受け継いでも、全部を習得するなんてできないんじゃない?」

 

 

 

 

 

 

俺の話に、二人が質問を投げかける。

 

自分でもつくづくチートだと思うがな。

 

 

 

 

 

 

飛鳥「ああ、だから神足の子供は生まれたときから既に厳しい訓練を強いられる。幼少期に一通り、武芸十八般と呼ばれるものを慣わされ、そのなかで特に自分に適正のあるものをいくつか伸ばしていく」

 

 

 

 

 

 

 

桃香「ぶげーじゅーはっぱん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

愛紗「現在の主立った武芸のことですよ、桃香様」

 

 

 

 

 

 

 

 

桃香の疑問、そっと教えてあげる愛紗。

 

そっか、ここは中国だったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「そうだな、この大陸では愛紗のいうのが一般的な十八般と呼ばれるものだ。だが、俺の故郷で言われていたのは少し違うんだ。

 

 

俺の家で教えていた武芸十八般は弓術、馬術、槍術、剣術、水泳術、抜刀術、短刀術、十手術、手裏剣、含針術、薙刀術、砲術、捕手術、柔術、棒術、鎖鎌術、もじり術、隠形術をさす」

 

 

 

 

 

 

 

朱夏「私たちの考えているものと随分と違うんですね」

 

 

 

 

 

 

 

慈元「飛鳥殿はどんなものが得意だったのですかな?」

 

 

 

 

 

 

飛鳥「俺は父が、隠密、体術、手裏剣、短刀術、母が、薙刀と馬術の名人だった。だから、主にそれらを訓練した。もっとも、まともに覚えられたのは薙刀と短刀だけだったが……」

 

 

 

 

 

 

 

愛紗「何故その二つだけだったのですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛紗が尤もな疑問を持つ。

 

長い前置きだったが、ここからが核心だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「……そうだな。その前に、少し話をしよう。先程言ったように、神足は神の血をひき、その才能を色濃く受け継ぐ特性を持っていた。

 

 

神足の庇護下い入るということは、神の庇護下に入ると言うこと。

 

また、才能を受け継ぐこともあり自分たちの流派の可能性を託して、様々な武芸の名家が神足と婚儀を交わし、本家を除く十七の分家筋となった。

 

 

本家である神足は体術、つまり柔術の家だったから、残りの武芸の名家を分家に迎えることで十八般すべてを覚える環境を手に入れた訳だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慈元「まさに戦う者にとっては理想的な環境ですな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「確かにそうだろうな。だが、そんな神足の繁栄も影を落とす。時代は戦乱の世を終え、平和な世の中へと移行していった。

 

特に、俺の居た国は世界でも一、二を競うような平和な国だった。

 

飢えること無く、小さな喧嘩はあっても国内に戦争は無い。そんな国で武芸で栄えた神足の活躍の場は公には無くなっていった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朱夏「とても良い世界だったのですね、天の国は」

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「表向きはね。平和になっても裏の世界では神足は活躍した。国の帝を警護したり、国家転覆を企む者を暗殺したりな。

 

だが比較的平和な世の中になり、神の眷属としての血は、世代を重ねる事に薄れていき、ついに神の声が聞こえなくなり、神足は人間にしては優秀な武家の名家となり果てた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葉月「でも、飛鳥様は滅茶苦茶強いじゃないですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「俺が特別なのさ。血の薄れた神足は次第に社会へと適合し、武のみで生きるのではなく、学問や芸能の世界にその血を使うようになる。

 

 

次第にその世界では神足は有名になり、神足の人間も武を精神と体の鍛練、護身として学ばせ、平和を生きていく事を喜んだ。

 

だがそんな時、一人の異端児が生まれる。最初はちょっと肌の色の薄い子供だったが、成長していく内にその異様さは際立っていく。

 

その子供の髪は山吹色に輝き、体は特別な訓練を施さなくても引き締まり、戦闘に特化していた。

 

その姿は、初代神足が迦楼羅王との間にもうけた子供と同じ特徴であったという。

 

その子供が、金翅の血を持つ先祖返りであるということに一族の人間は驚き、そして恐れた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋の中に、無言の空気が漂う。

 

だが、その空気を打ち破ったのは意外な事に朱夏であった。

 

 

 

 

 

 

朱夏「……その子供が、飛鳥様なのですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「そうだ。先祖返りとして俺は分家の一部の者には極端に恐れられた。

 

本家の人間は神足が神の庇護下にいる証だと喜んだが、俺を恐れる人間は、再び戦いの種を持ち込むのではないか、神の眷属としての力が必要な事が起こるのではないかと口々にささやいた。

 

本家の人間は俺に、皆が学校、此方で言う私塾のようなところで学問に励む間、ひたすら修行場で武芸の稽古を受けさせた。

 

廃れていた神足の武芸を復興させるためにと分家の人間に修行をつけてもらう時は自らの不安を消すために八つ当たりの様に嬲られた。

 

そして決まってこう吐き捨てる『戦うことしか出来ない野蛮な子供』と。

 

家では親たちに学の無い人間と居ると悪影響がでると禁じられているのか、子供は俺を無視するので友達も居なかった。

 

賢くないのがいけないのかと、夜は学校に行けないかわりに寝る間を惜しんで本を読み、勉学にいそしんだ。

 

いつしか、学校に通う子供よりも賢くなっていたが、それがさらに周囲の反感を買った」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朱夏「……酷い。飛鳥様はなにもしていないと言うのに」

 

 

 

 

 

 

愛紗「そうです!!学問を学ばせずに、それを非難するとは大人のやることですか!!」

 

 

 

 

 

慈元「優れた血が、嫉妬と恐怖の対象となったのですな」

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「まぁ、そのいじめの様な修行のおかげでここまで生き残っているから皮肉な者だ。

 

そんな孤立無援の状態の中、親以外に俺を普通の子供として接してくれる人たちが居た。それが桃香、お前だった」

 

 

 

 

 

 

 

 

桃香の名前を出した瞬間、ギュッと手を握られた。

 

 

 

 

 

 

 

桃香「わたし?私が飛鳥の味方だったんだ。良かったぁ」

 

 

 

 

 

 

『飛鳥に味方がいて本当によかった』と我が事の様に安堵する桃香。

 

本当に、お前のその優しさに何度救われたか分からないよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「桃香の家は、本家の次に発言力のある剣の武家だった。桃香の母親は剣聖と呼ばれるほど腕の立つ武人だったが、それと同時に慈愛の心をもつ人だった。

 

 

神足の分家の中でも最初に、もう現代に剣は必要ないと言っていた人間だった。

 

だから、桃香にも剣を教えては居たがそれは体幹や精神を鍛える意味合いが強く、それ以上に舞踊を習わせていたな。

 

 

俺の親や、桃香の家の人間だけで花見をしたときなんかは、俺が笛を吹き、桃香が剣舞や舞踏を舞ってとても評判が良かったんだぞ?

 

 

俺も舞って居いる時の桃香が生き生きとした笑顔で好きだったよ」

 

 

 

桃香「本当に?うう……、なんか前世の私の方がしっかりしている気がするよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「俺からしてみれば、同じ桃香なんだけどな。まぁ、そんな風にして俺と桃香は知り合い、そしてお互いに惹かれていった。12歳の時、お互いの親も俺たちの交際に賛成してくれ許嫁として、二人は恋人同士になった。それから二年間は俺の人生の中でもっとも幸せだった。

 

親が居て、桃香がいて俺を支えて、笑顔にしてくれた。毎日の修行は辛かったが、桃香と過ごす時間だけは取ることを許された。だけど、そんな日々も唐突に終わりを迎える。

 

14歳の時に、ある組織が神足の血を狙い襲撃を駆けてきた。その日は一族の寄り合いがあり、本家へと多くの人間が集まっていた。突然の敵の襲撃に会い、大人達は殺された」

 

 

 

 

 

 

 

愛紗「それほどの、武人たちが集まってやられてしまうとは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「勿論、すぐに対応に移った。事実、40人の人間で、200人近い敵の先発部隊を壊滅させて、後続の部隊の八割を倒したらしい。でも、周囲を包囲され、アサルトライフル…百発近く連射の聞く弩の様な物で一斉に撃たれて壊滅。目の前で親を殺された俺達子供は我を忘れて、敵へ向かう。

 

数人を倒す事に成功したが金翅の先祖返りといえども所詮は子供。敵の血だまりに足を滑らせてしまった。その隙を突かれて撃たれる瞬間、桃香が間に入り、背中から撃たれてしまった。

 

戦場で碌な治療ができることなく、桃香は俺の無事を確認すると、微笑みながら息を引き取った。……これが、前世での桃香と俺の別れだ」

 

 

 

 

 

 

 

桃香のほうを見やると、俯いていて顔が見えない。

 

 

 

 

 

 

 

桃香は泣いていた。

 

 

 

 

堅く膝の上でつないだ俺の手の甲に落ちる暖かな雫がそれを物語っていた。

 

 

 

 

 

 

 

桃香「……ずっと、ずっと、何か大切な物が欠けていたような気がしてたの。

 

飛鳥と再会したとき、知らないはずなのに、飛鳥と理不尽な理由で引き離されたって……私は理解していた。

 

 

……なんで、なんでこんな大切な事をわすれちゃっていたんだろう。

 

 

……私の、お母さんは、私を庇って死んじゃったんだ…あんなに好きだったのに、両親のことを忘れるなんて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

止めどなく溢れる泪を拭うおうともせずに、桃香は思い出した記憶に泣いていた。

 

 

 

 

そっと、肩を抱き寄せて顔を隠してやる。

 

 

 

 

胸を濡らす、彼女の暖かな涙は母親に対する後悔によるものか、自分の死に際の恐怖や、無念さ故の物なのか。

 

 

 

 

10分ほど、ずっとそうしていただろうか、桃香はもう大丈夫だからといって赤い眼をこすりながら俺に続きを促した。

 

 

桃香が泣いている間、誰も文句を言わずに待っていてくれたことに感謝したい。

 

 

 

皆にとっても、気軽に口をきける状況じゃなかっただろうが。

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「親を亡くした俺たちは、敵に捕まり組織の研究施設に連れ去られた。

 

そこで行われたの研究と言う名の拷問、虐殺だった。

 

 

連れてこられた子供達は、その神の力や、才能の継承がどのような仕組みで行われているのかを調べる為に、ある者は生きたまま解剖され、ある者は耐久性を測るといって理不尽に死ぬまで暴力を振るわれた。

 

 

そんな悲惨な状態の中で、俺だけが薬を使われて逆らえないにようされただけで、能力の把握のみで済んでいた。

 

金翅の先祖返りは一人しかいない。

 

他の実験体で試してから、様子を見よう。

 

 

それだけの理由だった。

 

 

他の分家の子供は、代わりがいるからと使い捨ての様に日に日に殺されていった」

 

 

 

 

 

 

 

朱夏「……そんな」

 

 

 

 

 

葉月「酷いよそんなの!!本当にそいつら人間なの?」

 

 

 

 

 

 

慈元「天の国と言っても、どうしようもない下衆というのはいるのですな」

 

 

 

 

 

 

 

麋家の三人が憤って声を上げる。

 

黙って話を聞いている人間も唇を噛みしめ、手をきつく握っている。

 

 

 

 

飛鳥「そしてついに、俺だけになったとき、通された部屋には、今まで死んでいったはずの分家の子供がいた。

 

俺の居た世界では、体の一部から、その人間にうり二つの人間を作り出すクローンという技術がある。

 

 

生き物に使うのは禁忌とされていたのだが、そこに居たのは禁を破ってその技術で作られた人間だった。

 

薬で心が潰されているらしく命令されるままに動く人形だと組織の人間は言った」

 

 

 

 

 

 

愛紗「下衆な奴らめ!!」

 

 

 

 

愛紗が憤りを露わにする。

 

 

 

 

 

飛鳥「先祖返りと、分家の子供を比較するためにと、そこで行われたのは殺し合いだった。

 

命令されるままに攻撃してくる相手に戸惑っていると、お前が殺さないなら、そいつを殺して別の奴を用意するだけだといわれた。

 

代わりはいくらでも作れるのだと。

 

 

いくら避けられていたとはいえ、同じ一族の人間がこんな扱いを受けるのを耐えられなかった俺は、せめて自分の手で逝かせるべく相手を殺した。

 

それからは三日に一回の割合で同じ顔をした人間を殺し続けた。

 

 

一昨日殺した筈の人間をまた殺す。

 

 

そんな日が一ヶ月も続いた頃にようやくその生活は終わった」

 

 

 

 

 

 

 

ギュッと、桃香が俺の手を握りしめてくる。

 

 

 

もし辛ければ、自分が居るとそう言うかのように俺の手を両の手で握った。

 

 

 

 

 

 

 

桃香「それから、……どうなったの?」

 

 

 

 

 

 

 

自分も気分が悪いだろうに、悲痛な面持ちで俺に先を促す。

 

強くなったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「それから……、組織の人間は俺の体を徹底的に弄くり回し、俺の力を無理矢理引き出すことに成功した。

 

元々先祖狩りとしてかなり身体能力の上がっていた俺は、常に三重の拘束具つけられ奴らの実験材料として二年間を過ごした」

 

 

 

 

 

 

葉月「力を引き出すとはどういう事ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「火事場の馬鹿力という言葉が俺の故郷にはあったが、人間死にそうになったときは普段以上の力が出せるだろ?

 

実際人間は普段の生活では体が耐えられないらしく本当の力の何割かしか使えてないらしい。

 

俺は無理矢理その力を使えるようにされたわけだ。

 

もっとも無理矢理に力を出すせいで、そのたびに副作用で死にかけていたけどな。

 

金翅の血のお陰で回復だけは早く生き延びたが……

 

 

 

普通の人間でも力を使えば体を痛めるのに、先祖返りである俺が全力で動いたら先に体の方が壊れてしまう。

 

さっき門の前でぶっ倒れて動けなくなったのはそのせい。肉離れ一歩手前の筋肉痛みたいなものだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言って、笑ってみせる。

 

 

 

 

 

桃香「笑ってる場合じゃないよ。そんなんじゃ飛鳥の体がボロボロになっちゃうよ!!」

 

 

 

 

 

愛紗「そうです。ご主人様はもっとご自身の体を大切にするべきです」

 

 

 

 

 

飛鳥「それについては大丈夫だ。ここに来る前、神に体の方を神の眷属として在るべき姿に戻してもらったからな。

 

体の副作用はなくなったし、自分の意志で完全に体の制御を解くが出来るようになってしまっただけだから」

 

 

 

 

 

 

 

朱夏「でも、それでも飛鳥様の体に負担が掛かるのは間違いないじゃないですか。使う度に倒れていたらいつか命に関わりますよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

椅子から身を乗り出して心配げに、俺の体を気遣ってくれる朱夏。

 

 

 

彼女の場合は、自分のせいで無理をさせたことを未だに引きずっているという感じがする。

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「俺の体はもう、神足の人間として理想的な状態になっているんだ。あとは、体の能力に、身体が追いつくのを待つだけ。

 

ちゃんと適応すれば全力で動いても、倒れるような事には成らないって神も言っていたよ」

 

 

 

 

ありがとな、と朱夏の頭を撫でて椅子に座らせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴々「でも、お兄ちゃんの体をそんなふうにしちゃうなんて許せないやつらなのだ!!」

 

 

 

 

 

飛鳥「俺のために怒ってくれてありがとうな、鈴々。でも、連中が、俺の体の制御を取り外していなかったら朱夏を守れなかったのも事実だ。

 

確かに力は強大だし、本気出した後は体中痛いし、諸刃の剣だけれど、使い方次第ではこうやて人を守ることが出来る。それだけは良かったと思ってる」

 

 

 

 

 

慈元「それで、飛鳥殿を捕まえた組織の人間はどうなったのですかな?

 

ここに飛鳥殿がいるということはずっと捕まっていた訳では無いと思うのですが」

 

 

 

 

その一言で、和やかになりかけていた空気が再び張り詰める。

 

 

 

 

 

なにげに空気を読まなかったな、慈元。

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「さすがに、慈元は見逃してくれないか。そうだな、簡潔に言ってしまえば壊滅したよ」

 

 

 

 

 

 

 

愛紗「一体何があったというのですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「敵対組織が責めてきたんだ。ちょうど、幹部の連中を集めたところを爆破されて幹部は死亡。

 

皮肉にもそれは神足本家が襲撃された状況に酷似していた。

 

 

連中は、俺を生きた兵器として解放して敵に差し向けようとしたが、襲撃でその日の分の投薬をされなかった俺は、拘束が解かれた瞬間にその場にいる人間を全員殺して逃亡した。

 

 

その後、俺は、俺と同じ境遇の浚われてきた子供達を助けた。

 

 

 

家族となり、組織の援助をしていた奴らの会社に対抗する組織をつくり、義勇軍のような感じで対抗し続けた。

 

 

 

だが、敵の罠にはまって組織は壊滅。

 

 

最期にはなんとか敵の親玉を倒したが、俺も傷を負わされて相打ちとなって死んだ。

 

その後は、神に命を拾われて、気がつけばこの地に倒れていた。

 

そこからはみんな知っての通りだよ」

 

 

 

 

 

 

ふと、俺の背中に誰かの気配を感じて振り向くと、桃香が背中におでこを当ててくっついてきた。

 

 

 

 

 

 

桃香「飛鳥。辛かったよね?……ごめんね、飛鳥が辛いときに支えてあげられなくて。私だけ先に死んじゃってごめんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あー、まったくこのぽややん娘は、なんでこんなに感受性豊かなんだろう。

 

 

 

 

桃香は優しすぎる。

 

 

 

 

人の痛みを我が事のように受け止め、真剣になって、怒り、悲しむことが出来る人間だ。

 

 

 

 

それこそが彼女の徳であり、魅力なのだが。

 

 

 

 

いつか、その悲しみに潰れてしまうのではないかと、心配になってしまう。

 

 

 

 

俺は、桃香を背中から話し、横に座らせる。

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「いいか桃香?確かに辛くなかったと言えば嘘になる。身を裂かれるように悲しかったさ。

 

でも、確かに桃香は俺を支えてくれたよ。

 

俺が今でも壊れずにこうやっていられるのは桃香のおかげなんだからな」

 

 

 

 

 

 

そう言って俺は、持ってきてもらったコートから銀のロケットを取り出して見せた。

 

 

 

 

シンプルな作りのロケットで、ドッグタグ程度の、銀色の薄い直方体の形をしており、開けると二枚写真が入るようになっている。

 

 

 

表面はヘアライン加工がされており、四隅にだけ黄銅の金具で装飾されている。

 

 

 

華美な装飾もないが、その分頑丈に、中の写真をある程度の事では劣化しない様にしている。

 

これもオーダーメイドだったが、滅茶苦茶高くなったのを覚えている。

 

 

竜宮の街、特に北区では物資が回らないため、基本的に欲しい物は裏にいる職人に頼むしかないのだ。

 

 

 

 

 

 

桃香「これは、首飾り?」

 

 

 

 

 

朱夏「あ、あの時の」

 

 

 

 

 

飛鳥「ああ、朱夏は一度預かっていてくれたんだよな。中は見たか?」

 

 

 

 

 

朱夏「中ですか?ただの銀の首飾りではないので?」

 

 

 

 

 

 

どうやら、この時代にロケットはないようで(写真がないから当たり前かもしれないが)、中身は見ていないらしい。

 

 

 

 

 

 

飛鳥「これはロケットといって、親しい人の写真、こっちでいう絵姿なんかをいれて持ち歩く首飾りだ。桃香、見てみな」

 

 

 

 

 

 

 

俺はそういって、ロケットと、チェーンをつなぐ金具の部分を押し込むと、開いたロケットを桃香の前へ差し出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桃香「わー、すごーい!!綺麗な絵だね」

 

 

 

 

 

葉月「本当、まるで生きているみたいね」

 

 

 

 

慈元「これは見事なものですな」

 

 

 

 

 

いつの間にか集まっていた他のメンバーが桃香の背後からのぞき込んでいる。

 

 

 

 

 

 

飛鳥「いや、映っている人物を見て欲しいんだけど」

 

 

 

 

 

鈴々「あ、右の男の人と一緒にいる人、桃香お姉ちゃんに似ているのだ」

 

 

 

 

 

桃香が、ロケットの右半分を指さしながらいう。

 

 

 

 

 

飛鳥「そうだよ。これは向こうの世界での14歳の時の俺と桃香の姿。髪の色こそ違うけれどな。

 

この写真があったからずっと頑張れたんだ。桃香はずっと俺を支えてくれたよ」

 

 

 

 

 

 

桃香は、安心したのか、ちょっと赤くなりながらもじもじしている。

 

 

少し気障だったろうか?

 

 

 

でも、あの写真に助けられたのだって事実だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

慈元「となりの写真は、どなたですかな?」

 

 

 

 

 

慈元がそう尋ねてくる。

 

 

 

 

商売人の性なのか、珍しい、目新しい物に目が無く、天の国の言葉なども積極的に会話に使ってくる。

 

なんだか、この時代の人間が、横文字や、この時代にない言葉を話していると少し違和感があるな。

 

一回で説明が済むのはいいんだけどさ。

 

 

 

 

もう半分の写真には「アカツキ」のメンバー、つまり俺の家族の集合写真が映っており、左右から香奈と澪に抱きつかれている。その三人を囲うように他のみんなが並んでいる。

 

 

 

 

年長組の女性だけ何故か中心に寄っているのは偶然などでは決してない。

 

 

 

 

 

 

愛紗「ご主人様……、やっぱり女性を侍らせるのが好きなんじゃないですか?」

 

 

 

 

葉月「あはは、飛鳥様、これはちょっと援護できないかなー」

 

 

 

 

 

 

 

ジト目の愛紗と、苦笑いの葉月。

 

 

 

愛紗はどうしても俺をそういう方向の人間にしたいみたいだな……

 

 

 

 

 

 

飛鳥「それが向こうの世界での家族だよ。愛紗、もっと人の話を聞くように言ったろ?」

 

 

 

 

 

 

愛紗「……すみません」

 

 

 

 

 

 

慈元「真ん中にいるのは飛鳥殿と、奥方と、ご息女ですかな?」

 

 

 

 

 

 

だめ押しとばかりに慈元が聞いてくる。

 

 

 

ノリが良いのも考え物だな 

 

 

 

 

 

 

桃香「……そうなの飛鳥?」

 

 

 

 

 

クイクイっと服の端を引っ張って俺に問いただす桃香さん。

 

 

 

まぁ、別に悪いことをした訳じゃないし、正直に話しておく方が誤解がなくていいか。

 

 

 

 

 

 

飛鳥「まぁ、その女の子、香奈って言うんだが、その子からしてみれば似たようなもんだったかもな。

 

その子は最年少の子供だったんだけど、俺の家族は結構小さな子供の時に捨てられる子が多くてな。

 

最年長の俺と、俺に抱きついている澪が女性の最年長でみんなの父親と、母親代わりだったんだよ。

 

小さな子にはどうしても親の温もりが必要だからな」

 

 

 

 

 

 

慈元「はは、まさにその通りですな。それにしてもその若さでよくご存知で」

 

 

 

 

 

飛鳥「回りがどんなに敵ばかりでも、親が味方してくれるだけで違うものだってのは身をもって知っているからさ。

 

さっきも話したとおり、俺の街は、子供が生きていくには厳しすぎる世界だったからさ、せめて仮の両親でも俺たちがいるってのを教えてあげたかったんだよ。

 

言っておくけど澪とは関係を持ってないからな?」

 

 

 

 

 

 

 

明らかにそう勘ぐって来ているので、あらかじめ牽制しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

葉月「ふーん、そうなんだ。意外かも。

 

どう見てもこの澪って子は飛鳥様にべた惚れだし、飛鳥の回りの女の子もそうっぽいけどなぁ」

 

 

 

 

 

 

そうつぶやく、葉月に、俯く桃香。

 

 

 

 

 

朱夏「ど、どなたかと付き合ったりしなかったのですか?」

 

 

 

 

桃香「ううっ、そうだよねぇ。飛鳥の回りって女の子ばっかりだもんね。黙ってても女の子から告白されそう」

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「そうだな。付き合ったのは……短い間だったが一人だけいる。

 

 

葉月のいうように、家族の女の子からは告白されたことがある。澪からはなんども告白されたよ。

 

当時は、桃香が死んでしまってから既に七年がたっていたけれど、俺の心の中にはずっと桃香がいた。

 

 

 

勿論、澪の事は好きだし、家族として愛していたけれど、付き合ってくれと言われてもすべて

 

断っていたよ。

 

でもな、澪が死ぬ前の日に、告白されたとき自分が、自分で思っている以上に彼女達に想われていることを知ったし、あの竜宮の街でしか生きたことのない澪達を幸せにできるのは俺しか居ないと言われた。

 

だから、無事に街から脱出したら俺から告白しようと思って、それだけをいって待って貰っていたんだ」

 

 

 

 

 

愛紗「そんな、それでは澪さんは……」

 

 

 

 

 

 

飛鳥「愛紗、前に桃園で話しただろう?俺の家族で一人だけ俺が戻ったときに生きていた奴がいたって。

 

 

それが澪だ。澪は俺に、みんなの最期を伝えると、俺に、過去に囚われずに今と向き合って生きろと誓わせて逝ってしまった。その近いの前に、深いくちづけを一度だけ交わした。

 

 

その時、初めて俺は桃香以外の女性、澪を恋人として受け入れた。

 

恋人としていれた時間は少しだけだったけれど、澪は間違いなく俺の恋人と死んでいった」

 

 

 

 

 

 

 

先程までの茶化すような言葉はなく、みんなは目を瞑りただ、俺の家族の冥福を祈ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「ごめんな桃香。お前以外に彼女を俺は受け入れた。でも、分かって欲しい、俺は桃香を愛している」

 

 

 

 

真っ正面から、桃香を見つめて俺は想いを口にする。

 

 

 

 

飛鳥「やっぱり怒っているか?」

 

 

 

 

桃香「ううん。先に飛鳥を遺して死んじゃった私は何もいえないよ。

 

七年も思い続けてくれただけでもそれだけ飛鳥に想われているって分かって嬉しかった。

 

それに、澪さんだって、飛鳥が辛い時に支えてくれたんでしょ?

 

私はちょっと嫉妬しちゃったのかな。私が出来なかったことを飛鳥にしてあげれた澪さんに」

 

 

 

 

少しだけ苦笑いをしながら、許してくれる桃香。

 

 

 

 

 

 

飛鳥「……桃香」

 

 

 

 

桃香「……いいよ、澪さんも恋人で。私が死んだ後も飛鳥の恋人だったように、澪さんもずっと恋人のままなんだよね?」

 

 

 

 

 

飛鳥「——!!」

 

 

 

 

桃香「分かるよ、私は飛鳥の恋人だもん。飛鳥は自分の身内を大切にするから、澪さんの事を忘れられるなんて思わないよ」

 

 

 

 

 

 

飛鳥「ありがとうな、桃香」

 

 

 

 

桃香「それにこの世界は身分の高い人なら重婚だって出来るんだよ?天の御遣いなら、世間的にもそうなったとしても可笑しくないしね」

 

 

 

 

 

クスリと悪戯な笑顔を見せてそういう桃香をみて、桃香って結構凄いんだなと思った。

 

 

 

 

 

 

あわや修羅場という場面を、余裕で回避して見せた二人のバカップルぶりに、回りの人間も苦笑を漏らす。

 

 

 

 

 

さて、戦で疲れたから解散しようかと思ったとき、部屋の外から声が掛かる。

 

 

 

 

慈元「どうした!何事か」

 

 

 

 

 

ドアを開けて、侍女を迎え入れる。

 

 

 

 

侍女「それが街の者が御遣い様にお話があると言っていまして、大広場に来て欲しいそうです」

 

 

 

 

 

慈元「どうなさる飛鳥殿。体調が優れないから後日になさるか?」

 

 

 

 

 

 

飛鳥「いや、行こう。屋敷に入ってこないということはそれなりに大事なんだろう」

 

 

 

 

 

俺は桃香に大広場への支えを頼もうかと思って声をかける。

 

 

 

 

 

 

 

桃香「ごめんね、ご主人様。桶とか片付けていくから朱夏ちゃんと私は後で行くね」

 

 

 

 

 

そう言って、返事を返すま間もなく桃香は朱夏を連れて部屋を出て行ってしまった。

 

 

 

 

飛鳥「愛紗、葉月、広場まで肩貸してくれ」

 

 

 

 

そういうと、俺は両肩を支えられながらKO負けしたボクサーの様に広場へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街の大広間に出ると、そこは異様な緊張感で満たされていた。

 

 

 

勝利を祝い、浮かれる者もいれば、父親が帰ってこないと泣いている女の子と、夫を失った悲しみと、街や子供を守れた安堵とで複雑な顔をする母親もいた。

 

 

 

 

ズキリと、胸の奥が軋んだ。

 

 

 

 

彼女が何故泣いているのか、その悲しみがいたいほどよく分かるからだ。

 

 

 

 

そして、その父親を失うきっかけを作ったのも、自分の出した作戦と、命令だった。

 

 

 

 

 

悲しいよな、理不尽に家族を奪われるのは。

 

 

 

 

ごめんな、父ちゃんを帰してやれなくて。

 

 

 

 

 

ふと、もう少し良い作戦が立てられたのであればあの子から父親を奪わずに済んだのではという思いがわき上がる。

 

 

 

 

 

 

 

巫山戯るな!!

 

 

 

俺はあの時、確かにその最善を行ったはずだ。

 

 

 

 

天の御遣いなどと祀られて、万能の神にでもなったつもりかよ。

 

 

 

 

なんて傲慢な考えだ。

 

 

 

 

こんな考えでは、俺を御遣いと信じ、策に殉じた人間に対して無礼じゃないか。

 

 

 

 

 

受け入れよう、この罪を。

 

 

己の無力さを。

 

 

 

これから俺の歩む道は、これ以上の多くの犠牲が出てくるのだから。

 

 

 

その多くの犠牲の上に、理想を打ち立てて盤石の体制をもって平和な国を作るのだから。

 

 

 

 

屍山血河の上を歩き、その理想を実現させなければ成らぬのだから。

 

 

 

 

すべては、大願成就のその日まで、後悔をすることを辞めよう。

 

 

 

 

 

 

グッと、力を込めて握り拳を作ると、その拳を暖かな温もりが包み込んだ。

 

 

桃香の手だった。

 

 

 

見れば、朱夏も来ており此方を心配そうに見ていた。

 

 

 

 

 

桃香「ご主人様。そんな怖い顔してどうしたの?」

 

 

 

 

 

飛鳥「……この戦いで亡くなった人たちの事を考えていた」

 

 

 

 

そういうと先程から泣いている女の子に目線を戻す。

 

 

桃香達も俺の目線を追いその意味を理解する。

 

 

 

 

 

 

 

桃香「お父さんを奪っちゃったのが辛い?」

 

 

 

 

 

 

飛鳥「正直、辛くないと言えば嘘になるが、俺は天の御遣いだ。

 

それを悔いるのは、すべてが終わった後にすると先程決めていた所だ」

 

 

 

 

 

朱夏「あの…、でも、それでも疲れてしまう時があると思います」

 

 

 

 

 

桃香「そう思ったときは、私に言ってね。私も半分背負うから」

 

 

 

 

朱夏「わ、わたしもです」

 

 

 

 

 

 

 

いつの間に仲良くなったのか、二人は十年来の親友のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「……分かった。その時は甘えてもいいか?」

 

 

 

 

 

桃香・朱夏「はい!!」

 

 

 

 

 

 

暫く三人で雑談していると、慈元が街人を連れてやってきた。

 

 

 

 

慈元「飛鳥殿、この者達が話があるとのことで」

 

 

 

 

飛鳥「話?どのような内容かわからないが、話してみてくれないか?」

 

 

 

 

そう俺が答えると、街人の一人が前に出てくる。

 

 

 

 

 

街人A「御遣い様。どうかあんたにこの街の県令になって貰いたいんだ」

 

 

 

 

飛鳥「な!?県令って確か、国の役人がなるものじゃないのか?」

 

 

 

 

そうだよな?と、愛紗に確認したところ、そうですと首肯が帰ってくる。

 

 

 

 

街人A「俺たちはもう役人なんかにこの町をまかせられねぇ」

 

 

 

 

 

 

街人B「税金ばかり重くして、いざとなったら街を捨てて逃げて行きやがる。

俺たちは、共に命をかけてこの街をまもってくれたあんただからこそお願いしたいんだ」

 

 

 

 

 

街人C「そうだよ。国の奴らなんかに任せておけるかい。劉備の姉さんの優しさに、関羽の姉さんや、張飛の嬢ちゃんの武力に、そして天の御遣いであるあんた達となら、この街を守っていける。そう思えるんだ」

 

 

 

 

必死になって懇願する街人達の目は真剣で、力強く光っている。

 

 

 

飛鳥「役人以外ならば、慈元がいるじゃないか。彼は武に恵まれた豪商だし、皆のまとめ役でもあるのだろう?」

 

 

 

 

 

慈元「それは無理だ、飛鳥殿。私は麋家の家督を持っている故、死ぬまで商人ですよ。それに私も街人達に賛成です。飛鳥殿ならきっと立派な県令殿になるであろうよ」

 

 

 

 

 

 

 

ここまで申し出てくれるのであればと思うが、俺の一存では決められない。

 

 

 

 

 

 

飛鳥「そういう事だが、三人の意見を聞かせくれ」

 

 

 

 

桃香「私は賛成かな。もうこの街の人たちは知り合いだもん。ここで見捨てていくなんてできないよ」

 

 

 

 

愛紗「そうです。あれほどの大規模な戦闘を行ったのです。我々がここを出て行けば、さらに巨大な黄巾党の軍団に狙われてしまうでしょう」

 

 

 

 

鈴々「せっかく、朱夏や葉月とも仲良くなったもんね。鈴々は賛成なのだ」

 

 

 

 

 

 

満場一致で賛成がでた。

 

 

 

 

 

飛鳥「そうか、俺もこの提案を受けようと思う。まだ、この世界の事で分からない点が多く迷惑を掛けるかもしれない。ついてきてくれるか?」

 

 

 

 

 

 

桃香・愛紗・鈴々「もちろん(です)(なのだ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、振り向くと街の人々が此方を伺っていた。

 

 

 

 

 

 

飛鳥「天の御遣い 神足迦楼羅。 これよりこの町の県令に就かせて貰う。この世界について分からないことも多いので、皆を頼らせて貰うこともあるだろうがどうか助けて欲しい。そして皆に言っておく。

 

俺が県令なるからにはこの街は家族も同然。お互いに助け合いこの町を栄えさせていこう」

 

 

 

 

 

 

 

その言葉の直後、歓喜の声が空に突き抜ける。

 

 

 

 

 

街人A「やった!!これでこの街を守っていけるぞ」

 

 

 

 

 

街人B「みんな、この街を洛陽にも負けない立派な街にしようぜ!!」

 

 

 

 

 

皆、明日からの不安も消えて、喜びに満ちている。

 

 

 

 

 

叫び声が止むと、俺は街のみんなに告げた。

 

 

 

 

 

 

飛鳥「みんな聞いてくれ!!これよりこの街の県令となって初めての令を出そうと思う。皆にお願いすることは二つ。

 

 

一つ、この広場の隅に、税で慰霊碑を建てさせて欲しい。此度の戦いでこの街を守り散っていった人々を慰め、この平和の影に彼らの犠牲があったことを忘れないために。

 

 

二つ、これより、宴を開く。皆、酒や食い物をもって広場に集まれ。これから毎年、今日という日を忘れぬ為に、この日を慰魂の祭りの日とし、夜明けまで宴をする。

 

 

 

家族や恋人を失って失意の者もいるだろう。だが、忘れるな、散っていった英傑達は、皆の平和と笑顔を望んでその身を犠牲に散っていったのだ。

 

 

 

泣くなとは言わない。大切な人を失う気持ちは俺もよく分かる。この日ばかりは何に憚ることも無く思い切り泣け、失った人を惜しみ、悲しめ。

 

 

 

だが、世が明ける頃には必ず笑っていろ。散っていった者の話をし、笑いながら朝を迎えろ。

 

 

我らの今は、そして明日からの平和の日々は、彼ら英傑の血肉によって成り立っているのだ。皆の平和と笑顔を祈った彼らの思いを穢す事だけはするな。

 

 

 

以上だ。何か意見のある者はいるか」

 

 

 

 

 

 

俺は令を言い終えると、街人を見回すが、ときに意見もでずに静まりかえっている。

 

 

 

 

飛鳥「ではこれより、慰魂の祭りを始める。各人、大いに泣き、大いに飲み食いせよ!!すべては明日を笑顔で過ごすために!!」

 

 

 

 

 

俺の号令と共に、街人達は騒ぎながら各人準備に取りかかった。

 

 

 

 

 

飛鳥「慈元、いいか?」

 

 

 

慈元「なんですかな?」

 

 

 

飛鳥「私兵団の者に交代制で見張りを頼みたい。昼間の敗残兵の事もあるから用心に越したことはない」

 

 

 

慈元「お安いご用です。なに、飛鳥殿を県令に推した手前、協力は惜しみませんよ」

 

 

 

 

そういうと慈元は早速指揮に向かった。

 

 

 

成り行きではあったが県令となってしまった。

 

 

 

これからなんとしてもこの街の人々を守らなければ。

 

 

 

背負う命はあまりにも思い。

 

それを背負う覚悟もした。

 

 

 

だけど、出来るならあの女の子の様な存在を出したくないと、切に願わずにはいられなかった。

 

 

 

街は喧噪に包まれ、天には星が輝き始めている。

 

 

 

 

空に浮かぶ望月が、ただ優しく街を照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<後書き>

 

 

 

 

へーい。

 

 

ということで六話の後書きです。

 

 

今回はひたすらに飛鳥の自分語り。

 

 

 

人によっては苦手な人がいるかもしれませんね 苦笑

 

 

 

いよいよ、義勇兵編も終了して、ようやく次からは県令編です。

 

 

すこしはほのぼのとした話になってくれるといいのですが……。

 

 

 

そのまえに、一度番外編を挟むかも。

 

 

 

今回のテーマは、そのまま対峙と成ります。

 

 

 

過去との対峙、責任との対峙、己の罪との対峙。自分の心との対峙。

 

 

 

誰が、なにに対して向き合ったのか。

 

 

 

そんなお話でした。

 

 

 

 

コメント頂いた皆様ありがとうございました。

 

 

 


 
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