No.928680

サイファー詐欺事件

カカオ99さん

以前書いたものを手直しして投稿。ZEROのドキュメンタリー番組放送後に起きたかもしれない詐欺事件についての話。時期は番組放送数ヶ月後、カティーナの前あたり。ベルカのエースたちとは全員戦ったことになっているという設定。ネタバレと捏造だらけなのでお気をつけて。記者と13の出会い→http://www.tinami.com/view/945107  おっさんと弟子の出会い→http://www.tinami.com/view/1002743  犬鷲と啄木鳥の弟子たち→http://www.tinami.com/view/982888

2017-11-04 19:46:36 投稿 / 全19ページ    総閲覧数:917   閲覧ユーザー数:917

   1

 

 二〇〇五年はベルカ戦争が終戦して十年。区切りの良い年なので、多くのメディアがベルカ戦争を特集した。

 OBCもその一つで、一年シリーズの大型ドキュメンタリーを製作した。終戦を迎えた六月には通常番組を休止して、戦争関連番組を流す特別編成もおこなった。

 ブレット・トンプソンは、国の外側にいる傭兵から見た戦争というコンセプトで、番組を作ることにした。

 目を付けたのはウスティオ共和国空軍に雇われた、円卓の鬼神と呼ばれた一人の傭兵。

 元になるのは、情報公開された軍の資料や報道映像。それに当時の上官や同僚のインタビューを加えて構成し、放送は二〇〇五年の冬に決まった。これが最初の予定。

 まずトンプソンはウスティオ空軍広報部に接触したが、返答は「当時のデータは戦時中に紛失したものが多く、残ったものは機密扱いとなっています」とそっけないもの。

 しかも、鬼神が所属したヴァレー空軍基地への取材は拒否。中央政府にも何度も掛け合うが、努力は無駄に追わった。

 取材は最初から詰まったが、ならばとトンプソンは切り口を変え、軍に頼らないことにした。

 彼と直接戦ったベルカ空軍のエースたち、彼の元同僚。まだ生きているであろう彼らにインタビューをして、鬼神という存在を浮かび上がらせる。

 トンプソンは再構成した企画書をもう一度提出したが、上は「ただのゴシップにもなりかねない」と渋った。

 そこをトンプソンは、「彼を直接知る人間を必ず捜し当てて、インタビューを取ってきます」と粘った。

 あらゆる手を使い、トンプソンは細い糸をたぐり寄せた。

 ユージア大陸の小国、デラルーシ共和国。そこに片羽の妖精と呼ばれたラリー・フォルクがいた。鬼神の元同僚。

 彼を見つけ出したことで、もう一度放送枠が取れた。それが二〇〇六年三月二十三日。ベルカ戦争の開戦日は三月二十五日。十一年目を迎えるぎりぎり二日前。

 取材はオーシア政府が眉をひそめるところまで及んだ。そのため、政府から一時的に圧力がかかったが、トンプソンは取引をした。

 鬼神のプロフィールはいっさい出さないこと。政府の不利になる情報も出さないこと。これでなんとか放送にこぎつけた。

 が、いざ放送してみれば予想外。視聴率は終戦関連番組の中ではトップ。反響も一番大きく、思わぬ形となって現れた。

 憶測の後追い記事はいろいろ出たが、本物のサイファー捜しが始まったのだ。面白がって賞金を賭ける番組まで出た。

 そして世間の騒ぎに便乗するように、サイファーを名乗る詐欺事件が続発。

「実は俺、あのサイファーなんだ。今ベルカから追われて困っている。逃げるための金を貸してくれないか」

 そんなことを言って、金をだまし取るというもの。少額なものから高額なもので、被害額は膨れ上がった。

 警察担当の報道局員から、「OBCのお陰で警察大繁盛って、嫌味を言われましたよ」と文句が出るほどだった。

 放送後の数ヶ月間は、「勘弁してよ」がトンプソンの口癖だった。

 

   2

 

「勘弁してくれよ」

 思わずそんな言葉が口に出る。

 今日も「イーグルアイ! サイファーはどんな人だったんですか?」という質問を筆頭に、サイファーを知らない兵士たちから質問責め。俺は士官用ラウンジに逃げ込んで、一息つく。

 ベルカ戦争の勝利の名残として、ヴァレーの主力は傭兵部隊。あまり面子は変わっていないが、十年の間にサイファーを直接知らない人間も増えた。

 サイファーのプライベートはあまり知らない。それが傭兵と付き合ううえでの暗黙の了解。よく知っているのは空の上だけ。

 今日のヴァレーは曇りのち晴れ。どんな天気でも、サイファーはいつも楽しそうに飛んでいた。悪天候に悪態をつくことはあったが、枷になったことはない。

 クーデター事件が解決したあと、いつのまにか消えた傭兵たちは何人かいた。サイファーはその一人。書類上では、きちんと除隊手続きをしたことになっている。

 別れのあいさつはなかった。正規兵たちは騒いだが、傭兵たちは騒がなかった。実際の彼らは寡黙だ。表面上はお喋りだが、肝心なことはいっさい喋らない。

 彼らにとって、今生きているこの瞬間だけがすべて。過去の戦友が未来の戦場で敵同士になっても、すべては承知の上。

 そういえばあの番組スタッフ、ヴァレーまで取材に来なかったな。彼が使ったF-15Cは、まだここの格納庫(ハンガー)にあるのに。

 まあ、サイファーがいなくなってからまったく動かなくなったので、今は整備の練習台になっているが。

 取材に関して、なにか規制があったのは予想できた。上はあの事件を隠したかったのかもしれないが、番組では普通に流れた。

 相変わらず上の思惑をブチ破る奴だ。ここにいた間もずっとそうだった。成功率が低い任務を次々と成功させて、逆に上を戸惑わせた。

 アヴァロンダムでもそう。あそこで流れたクーデター軍の演説は、まさしく魔法の呪文だった。よどみなく語られる革命の言葉に、味方が動揺しているのが無線を通して伝わった。

 まずいと思った瞬間、魔法を(はじ)いたのはサイファー。闇鍋と同じ軽いノリで「国境無き世界? ボコボコにしてやんよ!!」と宣言された時は、席からずり落ちるところだった。この瞬間、砲火がやんだのは気のせいではないはず。

 ()を置いて、無線から吹き出す声がいくつか聞こえた。すぐに「俺を墜とす気か!」という怒声や、「空気読んでかっこいいこと言え!」という罵倒が一斉に来た。

 とにかく形勢は逆転した。連合というより、ヴァレーのペースに持ち込むことに成功。

 世界を救うには格好良さのかけらもない、間抜けな台詞が功を奏したかは分からない。クーデター軍に寝返る兵士が一人もいなかったのは奇跡だった。

「サイファー詐欺に新しい手口です。元ベルカ軍人を脅迫するというもので……」

 つけっぱなしのテレビからは、例の詐欺事件についてのニュースが流れていた。

 よくもまあ、次から次へと思いつく。軽く笑うと、目の前にある書類入りの封筒を手に取った。

 

   3

 

 書類の入った封筒が机の上に置かれた。助手のルカ・フォルフラムに「ありがとう」と礼を言う。フォルフラムはドアまで行くと、「そうだ」と思い出したように言った。

「フレイジャー教授、一番上のお兄さんから電話がありました。今日はディンズマルクにいるから、家族で夕食を一緒にどうか、と」

「適当に断っておいてくれ」

「行くと言っておきました」

 私はドアのほうを振り向き、思いきりにらんだ。助手は悪びれもせず、「五回連続で断り続けているとネタが尽きて、こちらも大変なんです。それでは」と言い残して去る。

 窓の外を見て、小さなため息をつく。今日のディンズマルクは晴れ時々雨。今の自分の気分とそっくりで、嫌な感じだった。

 一番上の兄は父と同じ道を歩み、陸軍士官になった。戦後に父は政治家へ転身。一番上の兄は陸軍に残った。流れに身を任せて出世できるならそれで良し、という人だった。

 兄弟で一番上の兄だけが母に似ていた。家族だというのに、この二人だけは時折理解に苦しむ。

 ある日突然、一番上の兄は「部下が除隊するから世話を頼むよ」と言って、フォルフラムを送り込んできた。そうとしか思えない。まあ、使える人間だから良かったが。

 目の前にある封筒を開ける。中身はオーシアが開示した『戦域攻勢作戦計画4101』。あの番組を見たあとに取り寄せた。

 番組に出た最大の理由はメビウス(ワン)。最強だと持てはやされたのが癪にさわった。自分を倒した相手こそが最強と思いたいのは、世の常のはず。子供じみていると分かっている。

 番組放送後、周囲はさまざまな反応を見せた。それは予測できたから気にしなかった。一番上の兄が言った「あれ、同族嫌悪だろう」という感想は予想外だったが。

 ——お前も鬼神と同じように、運と力でのし上がった。三十路を前にした市民階級の奴が少佐だなんて、当時じゃ奇跡だ。

 正規兵と傭兵の違いはあるし、自分はある程度優遇されていたことも承知している。

 それでも戦場で生き残るには、確かな実力が必要。それだけの力があったと自負している。己の力を信じて戦った。それに誇りを持っていた。

 結果、自分は負け、鬼神は勝った。

 世間をにぎわせているサイファー詐欺事件。本物が現れてくれたらと、はかない望みをいだいた。そして聞いてみたかった。お前は本当になにも背負わなかったのかと。

 だが、今までサイファーと名乗った人間は全員偽者。

 資料をめくると、鬼神という単語が目についた。番組の記者に、「なぜか鬼神の名前はないんです」と言われたのを思い出した。

 疑問に駆られて、資料を急いで拾い読みする。二番機となったパイロットたちの名前はあるのに、鬼神の名前はなかった。データがないといえばそれまでだが、引っかかりを覚えた。

 闇に消えた人間は、時代を探る鍵にもなる。「お前は誰だ?」とつぶやいても、答える者はいない。当たり前だ。

 ため息をつく代わりに、店で買ったコーヒーに手を伸ばした。

 

   4

 

 ブラックコーヒーが入ったカップを手に取ると、「シュミッドさん。今日もあいさつ回りですか?」と店員に聞かれた。あいさつ代わりの問いに「今日はねえよ」と答えて、店の外に出る。

 今日のスーデントールは雨のち晴れ。午前中の天気と打って変わり、午後は快晴だった。天気がいいと気持ちいい。

 あの番組に出て、困ったことが起きた。舎弟のような存在がいつのまにか増えたお陰で、裏で街を仕切っている怖い奴らににらまれた。

 自前のグループを作って、このへんの縄張りを乗っ取ろうとしているんじゃないか。そんなふうに疑われたと知った日は、さすがに肝が冷えた。

 それ以来、無害で堅気だとアピール。軍に入る前はチンピラをやってたが、戦後は真面目に働いていた。雇われ店長でも、ちゃんと働けば結構な稼ぎになる。おふくろ一人くらいは養えた。

 あの取材は最初から受けるつもりだった。それで謝礼を取って、話は適当にする。

 でもマジで話そうと思ったのは、「鬼神の名前は偽名らしいんです」と記者に教えられたから。

 鬼神も俺と同じように、うさん臭い人間だった。きっと奴も、血と泥の汚れを取らない。それこそが生き残った証し。与えられる賛辞と勲章に勝る誇り。

 奴の戦果は傭兵にしちゃ派手過ぎる。それでも排除されなかったのは、上の指示通りに動いて、予想以上の戦果を挙げたから。指示したのは上。そこからはずれていないのがミソ。

 それを何度も繰り返して、居場所を確保する。グリューン隊も同じことをしたから分かる。

 今流行ってるサイファー詐欺だって、予想以上の戦果ってやつだ。

 奴はきっと姑息なことはしない。狙うなら大物。あの番組が放送されて、慌てふためく奴らを見て大笑いしてるに違いない。そう思うとさらに楽しかった。

 上に逆らわないのは当然。だけど従順な犬ってのはつまらない。時々は鼻を明かさないとな。

 昔の空軍の最大派閥だった貴族どもがそうだった。奴らいわく、野蛮な連中を手懐けるのは簡単。それなりの地位と給料で十分だと、なめてかかりやがった。

 だから最大の戦果を挙げて、生き残ることでこっちの矜持を見せた。

 最後に勝つのは生き残った奴。空軍に入った時に教訓みたいなのを教えられた。

 戦い抜くことは誇り。たとえ敗北しようと我らに降伏はありえない。最後に必ず勝利する。敵に我らが生きて勝利するさまを見せよ!

 こんな教訓。俺より教養があるほとんどの奴は、意味をはき違えた。この国の成り立ちを見れば、違うと思うけどな。そいつらは最後まで連合に逆らった。

 戦争で思いきり負けた今でも、この国は好きだ。いつの時代でもベルカはベルカだった。泥を()ってでも生き残ろうとする。生き延びる機会をひたすらにうかがう。俺たちと同じ。

 きっと今の時代だって変わらない。そう思う。貴族の連中が嫌った野蛮さが、この国にはある。根っこに今でも残っている。

 頭上でかすかに轟音が響いた。空を見上げると、そこには旅客機。

 

   5

 

 旅客機は定刻通りに着いた。そのあとは用意された車に乗る。窓から外を見ると、今日のリヒテンブルグの空は青く美しい。

「社長。屋敷のベルカ公お出迎えの準備は、大方整ったそうです」

 秘書の報告に「分かった」と答える。

 ハインリッヒ家の屋敷に、公務中のベルカ公が立ち寄る。それが伝えられたのは数日前。侍従長である長兄から突然の連絡だった。

 会社の宣伝にもなればと思い、あのドキュメンタリー番組に出たが、放送後はいそがしさが倍になった。予想以上。そんな中、ベルカ公に会う時間をなんとか作り出す。

 急な立ち寄り決定のため、周囲も慌ただしい。泊まることも考慮して、屋敷は準備に余念がない。

 長兄からの連絡内容は、ただ「ベルカ公がそちらに行くから、よろしく頼む」とだけ。あとは日程のみ。

 相変わらず口数が少ない人だと思った。あれでは逆に仕事に支障をきたしそうだが、うまくやっているらしい。感心する。

 車内に用意された新聞を広げた。軽く目を通す。社会面にはサイファー詐欺事件について載っていた。番組はすぐにベルカでも放送され、詐欺事件もあっというまに流行った。

 広告欄には、今月発売される本の広告が載っている。おそらくあの番組がきっかけで、ベルカ戦争に関する本が次々と出版されていた。

 鬼神に関する本も多い。あまりにも完璧に、綺麗に消えたので、人々の想像力に火を()けた。お陰でいろいろな説が浮上した。

 今のところ、有力なのはメビウス(ワン)説。ほかには黄色の13(イエロー・サーティーン)説。陰謀系ではオーシアが送り込んだ工作員説。あるいはユークの工作員説。義憤に駆られたベルカ貴族説。女性説もあり、今でも増え続けている。

 面白おかしく語られるさまざまな説が彼の名誉を傷つけたかといえば、そうではない。ますます輝かせ、人々を魅了した。

 自分の名を使ってだます事件。自分を書き記した本。どこかでまだ生きているはずなのに、歴史上の人物にされてしまっている奇妙な現象。

 それらを彼はどういうふうに見ているのか。もしかしたら、苦笑しているかもしれない。

 上の指示かどうかは分からない。ベルカ戦争中の彼は、(おおやけ)になにも語らなかった。残したのは神懸かった戦果だけ。沈黙の名誉だった。

 かつてベルカ空軍の上層部には、貴族の末裔が大勢いた。高貴なる者の義務が果たされているかと問われれば、そうではなかった。

 彼らの貴族ゆえの特権は、先祖から受け継いだもの。それを、さも自分が勝ち取ったかのように語る。

 騎士といえど形ばかり。彼らにとって戦場とはパーティ会場であり、そんな社交界の軍人たちに嫌気が差して、私は前線へおもむいた。

 まさかそこで、騎士らしい騎士に出会うとは。

 本来示すべき騎士の名誉を身をもって示したのは、傭兵であるはずの鬼神。騎士の言葉は剣が語るものであり、口で語るものではないと。

 傭兵こそがもっとも騎士らしかったとは、なんという皮肉か。

 今見ている新聞を閉じて、脇に置く。次の新聞を手に取った。

 

   6

 

 古い新聞を開く。三面にサイファー詐欺事件の関連記事があったので切り抜いた。

 机にはライナー・アルトマン様と書かれた封筒が山積みで、編集部気付で送られたものもある。中身はベルカ戦争に関する雑誌のバックナンバーや資料ばかり。

 あのドキュメンタリー番組の記者に、鬼神との戦闘を細かく話した。それによって、自分があの戦闘で恐れをなしたのだと悟った。

 ベルカ空軍には多くのエースがいたが、神とまで呼ばれた者はいなかった。理解不能な存在に対して真っ先にいだく感情は、畏怖。

 だが、番組を見て鬼神の印象が変わった。傭兵であっても、戦友と戦う葛藤はどれほどのものだったか。

 動揺したかもしれないし、逆に楽しいと思ったかもしれない。なにかしらの感情はいだいたはず。彼もまた人間なのだと気づいた。

 最初はあの番組に出るのを渋った。記者が話してくれたエーリッヒ・クリンスマンの話をきっかけに、出ることを決めた。

 彼はイェーガー隊長や私からSu-37の扱い方を教わった。ゲルプ隊と同じカラーリングは駄目だったので、似たカラーリングにした。憧れた対象に真っすぐな感情を向ける青年だった。鬼神に対してもそう。

 ゲルプ隊はディレクタスでガルム隊に墜とされた。彼は私たちの仇を討つと言って、逆に円卓で鬼神に墜とされた。

 そんな彼は、鬼神ともう一度戦うのを夢見ていたという。復讐ではなく、純粋に一人のパイロットとして。

 根も葉もない噂だけを頼りに、ひたすら追いかけた。最終的にユージアの大国エルジアに渡り、エースになった。そこで始まった大陸戦争。出会ったエースはISAF(アイサフ)のメビウス(ワン)

 運命なのか皮肉なのか。十年後、彼は時と場所を越え、ディレクタスの空を再現した。

 ゲルプ隊と同じように遅れて首都にやって来て、夕暮れの空で戦って墜とされた。相手は青いリボンを付けたメビウス1。機体はF-15Cの後継機F-22。奇妙な符号。

 黄色の13(イエロー・サーティーン)と呼ばれたエーリッヒ。十年前は無名だった。鬼神ともう一度戦うために、あそこまで強くなった。

 自分にとって畏怖の対象だった鬼神が、彼にとっては憧憬の対象。一つの存在に対して、人々は異なる側面を見る。詐欺事件も似たようなものだった。

 あの番組はいろいろなきっかけをくれた。鬼神の伝記を書くという目標もその一つ。

 謎に包まれた一生、ベルカ戦争での活躍、今回の事件の騒動。いつか鬼神本人に会って感想も聞いてみたい。そんな日が来るか分からないが、生涯の目的としては悪くない。

 彼を追うことで、自分の中であの戦争を客観視できる。そう思った。

 歴史的にベルカ戦争は終わっているからといって、個人の中の戦争までは簡単に終わらない。ようやく自分なりの戦争の終わらせ方を見つけた気がした。

 今日のディレクタスは雨。そんな天気とは裏腹に、気分は晴れていた。

 記事の整理を進めていると、下の階から妻が呼ぶ声がした。「今行く!」と答えると立ち上がり、ドアに向かった。

 

   7

 

 ドアを勢いよく蹴って開けると、運んでくるよう頼まれた人間を放り込んだ。「ズボフ。ドアの修理代は天引きだ」とあきれた顔で依頼主に言われる。「ご自由に」と答えて、俺は部屋をあとにした。

 建物の外へ出る。今はオーシアの某所。今日の天気はいいらしく、陽射しが厳しい。

 あの番組放送後に、鬼神捜しというブームが起こった。賞金を懸けるところまで現れる始末。

 結局出てきたのは偽者ばかり。目立ちたがり屋、一発儲けようとする奴、誇大妄想の奴。その中には裏のルールを破る奴がいる。最近の仕事はそいつらを運ぶのがメイン。

 番組の記者から接触があった時は驚いた。どこからつかんだのか。意外にもあの銀色の犬鷲経由。「元情報部のラインハルト・ダールという方が、あなたのことを教えてくれました」と言われた日には、鼻で笑った。

 引退して牧場をやってるらしいが、食えない野郎だ。こっちの尻尾を今でもつかんでやがる。

 ダールはツバメのプロデュース以外にも、督戦部隊の設立に一枚噛んでいる。次世代の英雄は犬鷲同様、平民出身の奴。エスケープキラーは、傭兵の外人やブラックリストに載っているベルカ人兵士。綺麗に分けた。

 ——それから、ダール氏からあなたに伝言があります。出たほうが生き残れる、だそうです。

 ベルカで一番平等な組織は情報部だった。あの灰色からもしっかり距離を置いた。情報を扱う立場上、そうなのかもしれない。

 敗戦確実になると、シュヴァルツェ隊を真っ先に消そうとしたのは、灰色の中でも過激派な奴ら。あそこも一枚岩というわけじゃない。それなりに派閥がある。

 そこを「今まで役目を果たしてくれた礼だ。ただし、捕まるなよ」と言って、逃がしてくれたのがダール。

 灰色が活気づいてきたってことか。密輸業という職業柄、バレるのはまずい。

 そこをあえてテレビに出る。もし出演後にあやしい死に方をすれば、格好のゴシップネタ。背後関係を洗えば、いろいろやばいネタが出てくる。

 どうやらベルカ国内の事情に、さりげなく巻き込まれているらしい。ガキだったベルカ公が成人したせいだろう。

 ダールはさらに恩を売ってなにをする気か。とりあえず逃がしてくれた恩返しをするために、番組に出た。

 記者に、「鬼神は偽名らしいんですが、まだどの国も正体をつかめていないようです」と教えられた。そんな英雄様の放送をオーシア政府が許可するなんざ、なにかあったのか。

 番組には最後まで名前が出なかった。それなりの圧力があったのは分かる。これを機にいぶり出して、正体を知りたかったのか。

 残念なことに、用心深い鬼神はまったく出てこない。影も形もない。

 よくもまあ、十年近く逃げ続けられるもんだ。実はもう死んでいて、今は墓の下かもしれないが、奴がそう簡単に死ぬとは思えない。

 やっぱりあれは敵がいい。どうしても味方にというなら、共闘だな。

 口笛を吹きながら近くの本屋に入る。置かれていた航空関係のチラシを手に取った。

 

   8

 

 配布用のチラシの整理を終えて、事務の人間に手渡す。「こちらの雑用を任せてしまって、すみません」と申し訳なさそうに言われた。

「君たちもいそがしいんだろう? こういう時はおたがいさまだよ」

「ヒレンベランドさんもいそがしいでしょうに」

「今は奇跡的に暇なんだ。それじゃ」

 最近の養成学校はいそがしかった。OBCのドキュメンタリー番組放送後に体験入学希望者が増えたため、事務仕事も増えた。チラシの整理も楽じゃない。

 自分の机に戻ると、息抜きにネットのニュース記事を見る。今日もサイファー詐欺事件が世間をにぎわせていた。

 学校に通う生徒の中にも、被害者になりかけた人がいて驚いた。

 ——この前、二、三度しか会ったことのない人から言われましたよ。実は俺、サイファーなんだって……びっくりしました。

 意外にも、事件は身近な所で起きるらしい。

 鬼神自身はこの詐欺事件をどう思っているのか。彼は戦いの空を楽しんでいた。おそらくこの事件さえも、楽しんでいるに違いない。

 ブラインドの向こうから見える空。今日もジャクソンヒルは快晴。

 ここは平坦な大地が続くせいか、空が広い。その広さが寂しい時がある。もう一度でいい。あのせまい空を感じたかった。

 どこを飛んでもあの鬼神がいる。蜘蛛の糸で巻き取られていくように、自分が飛ぶ範囲をせばめられていく。

 気づけば、自分たちのものだと思っていた空は彼のものになっていた。誰かが完全に支配する空。あんな体験をしたのは、あれが最初で最後だった。

 当時、世界最高峰の呼び声も高かったベルカ空軍には、才能あるパイロットが大勢いた。彼はそのパイロットたちを次々と破った。

 この世には、まだ強い敵がいる。生まれながらの戦いの申し子のような、戦いの女神に愛された人間がいる。

 あの時覚えた嫉妬と高揚感。ここの空と心に()いた穴の広さは、同じだと感じる。それを家族に言ったことは一度もない。そんなことを言えば悲しませる。

 だが、あの番組で思わず口をついて出た。番組放送後の翌朝は、家族に会わせる顔がなかった。妻は「知っていたわ」と悲しいのか嬉しいのか、曖昧な微笑みとともに言った。

 ——だって、いつも気づくと空を見ているんだもの。気づかないはずないでしょ。

 そう言われて、妻にはかなわないと思った。さすが。俺をよく見ている。

 以前、軍にいた時に所属していた師団のトップに、「ほんとお前、俺より飛ぶのが好きだな」と言われたことがある。ラーナー・マインツは今も軍に残って、再建に努めている。再びベルカの鳥たちが空を飛べるように。

 空を見る。この広い空のどこか。鬼神は必ず飛んでいるはず。鳥は空を飛ばなければ生きていけない。飛ばないことは死ぬこと。

 だからこのまま飛び続けていれば、いつかきっと出会える。ぼんやりした希望だが、そんなことを信じていた。

 電話が鳴る。おそらく体験入学希望者の電話だろう。気分を休憩から仕事に切り替えると、電話に出た。

 

   9

 

 別れのあいさつをすると受話器を置く。電話の相手は空軍時代の上官。「うちにも例のサイファー詐欺がかかってきて驚いたよ」という、ごく普通の会話。

 以前なら軍関係者の電話は、できるだけ出ないようにしていた。今は違う。

 そんな私の態度の変化に、家族が一番驚いた。当たり前だろう。取り次ぐなときつく言っていたのだから。

 あのドキュメンタリー番組を見て、一つのことに気づいた。記者には憎むなと言ったが、自分は悲しみから逃げていたのだと。

 失われた多くの命と敗北した祖国。その悲しみをすべて受け止めるには、つらい年齢になっていた。故郷の牧歌的風景は戦場と正反対。

 今日のビルネハイムは晴れ。いい天気だった。

 農村出身の自分の最終的な階級は中佐。マインツの英雄ともてはやされ、勲章をもらっても、貴族出身でなければ出世には限度がある。

 それ以上を望むなら派閥に入ればいいが、コネと世辞とパーティで成り立つ世界は苦手だった。自分はそんなに口が達者ではない。

 同じように、その世界を苦手とした同僚がいた。金色の啄木鳥の異名を取った彼は、現役を引退すると兵器開発の道に進んだ。

 自分はアカデミーで生徒たちに飛行技術を教えた。派閥や出自はいっさい問わなかった。

 せめて空では自由になってほしいと願ったが、望む方向へ行く者はわずか。多くがしがらみに捕らわれた。

 努力が水泡に帰すのを見続けた同僚は、「愚直過ぎるんだ。諦めろ」と言った。そんな彼はおそらく世界を諦め、最後にはクーデター軍の首謀者となった。

 上流階級とそうでない者たちとの純然たる差をうまく利用したのが、情報部のラインハルト・ダールだった。

 市民階級出身で才能とやる気に満ちた華やかな若者、デトレフ・フレイジャーを広告塔に起用した。ダールは彼を使い、戦争の主役は国民だと訴え、特に平民は熱狂した。

 彼の手腕に連合軍も注目した。戦後はオーシアに厚待遇で招かれたはずだが、断っている。ダールも自分同様、田舎に引っ込んだ。今は政治的に目立つ場所にはいない。

 彼は牧場を持っているので、品評会で会うこともあった。

 ——断った理由? 単純な話さ。ふと先のことを考えたら、家族と一緒にいたいと思ったんだ。そういう年になった。

 そう言ったダールの顔には、年相応のしわが刻まれている。意外に本音かもしれない。

 牛舎での仕事をする前に、机の上に置いた雑誌を見る。特集はウスティオ空軍について。

 ダールが「本当に好き勝手に引っかき回してくれて参ったよ」と言った鬼神。「どうやら連合の一部も、傭兵が活躍し過ぎたのは計算外だったようだ」とも言った。

 彼と片羽との戦いは、歩む道が分かれた自分と同僚を見ているようで不思議だった。

 片羽はインタビューの最後に、「ありがとう戦友。またな」と言った。あの一言を導かせた鬼神とは何者か。興味を()かれた。

 雑誌のページをめくる。外青と赤い片羽のF-15Cが写っているモノクロ写真が大きく載っていた。

 

   10

 

 次のページをめくる。私に雑誌を貸してくれた若い店員は、「マルセラさん。読み終わったら、カウンターの中に戻しといてください」と言うと、店の外に出て掃除を始めた。

 今日のグラン・ルギドは晴れ。ドアから一瞬入った陽射しがきつかった。

 雑誌の巻頭特集はベルカ戦争について。彼が読んでいた雑誌に興味を()かれて借りた。

 OBCのドキュメンタリー番組はサピンでも放送されて、サイファー詐欺事件の流行も早かった。この店も一時的に流行ったけど、今はだいぶ落ち着いている。

 雑誌は今でもベルカ戦争関連の特集記事を組む。出尽くした感はあるけど、読まずにはいられない。

 次のページをめくると、もう一つの特集が始まった。内容は最近のサピン国内のテロ活動について。

 サピンは地方ごとの独立意識が強い。今でも独立を求めて活動している組織がある。テロや政府高官の誘拐事件が時々起きた。

 原因は、民主主義に移行する前の長期に渡る独裁政権。そこで特定地方への弾圧や差別が起こり、今でも火種がくすぶっている。

 アルベルトがあの組織に行ったのは、そんな光景を見続けたせいもあった。私も組織が掲げた理想に賛同できる部分があった。

 でも参加した最大の理由は、一番機であるアルベルト。彼が行く所ならどんな場所でも一緒に行こうと決めていた。

 予想通り、立ちふさがったのは鬼神。パイロットスーツを通してでも、空気の震えが伝わった。太陽を背に急降下で襲ってきたF-15Cの姿は、まさしく狩り。こちらは獲物。

 鬼神の飛び方、癖。鬼神の元相棒のピクシーは、クーデター軍の仲間にそれらをよく問われた。そのたびに彼は簡単に教えたので不思議だった。嫌っているのかと思ったら、そうでもない様子。

 アルベルトは「手の内を全部知ったらつまらない」と笑って、絶対に聞かなかった。

 なぜ簡単に喋るのか。鬼神と直接戦うことで分かった。

 ピクシーは鬼神を試したのか。こんなことでやられる相手じゃないと、元相棒の強さを自慢したのか。

 いずれにしろ、ピクシーは鬼神が墜ちないと確信していた。手の内を知っていても無駄。こちらが三拍ですることを一拍でする。そして教えられた通りに自分たちが墜とされる。

 そんな強過ぎる鬼神に、アルベルトが心を躍らせたのが分かった。革命をこころざす戦士である前に、一人のパイロットに戻る。彼の本当の姿。

 戦闘機パイロットになったのなら、いつかは強い敵と思う存分戦ってみたい。

 叶いそうでいて叶わない彼の小さな望みは、理想に走り過ぎたことで、ようやく望む相手と出会えた。あまりにも皮肉な成就の仕方。

 いずれクーデター軍のことが(おおやけ)になるのは分かっていた。その時、彼がけして理想に狂った人間ではないことを世間に伝えたかった。

 空の戦いに生きた純粋なパイロットだと、知ってほしかった。

「開店準備、手伝ってくれます?」

 若い子が掃除を終えて店内に戻ってくる。「いいわよ」と返事をして、雑誌を閉じた。

 

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 閉じた雑誌を机の片隅に放る。今日のオーレッドは曇りのち晴れ。時々差し込む日差しが強過ぎる。ブラインドを全部下げた。

 今日もまた、「詐欺にあったら保険は効くんですか?」という問い合わせがきた。オーシアでのサイファー詐欺は一段落したが、しぶとく稼いでいる連中がいた。

 あの番組に出て以来、職場での反応はさまざま。営業成績にはプラスに働いている。「担当はアンソニー・パーマーにしてくれ」と言う客が多くなった。まあ、こんなものだろう。

 取材に応じたのはTAC(タック)ネームの通り、役目を果たすべきだと感じたから。伝説では、ベディビアは最後に聖剣を湖に返す。

 ならば自分も見届けたすべてを語り、鬼神を歴史の闇から表舞台という湖へ返すべきだと、そんなことを思った。

 鬼神との戦いは今までとまったく違った。言葉をつむいでも通じない。鬼神は任務を果たすだけで思想を語らない。ただ壊す。

 まさしく神そのもの。人の都合など意に介さない。七発の核と同じ。この世でもっとも原始的な感情である恐怖を与えて、戦いを止める。

 クーデター事件直後に南ベルカに隠れた。人里から遠く離れた山村で、村人たちの生活を見た。彼らは自然の嵐と同じように、戦後の嵐が過ぎ去るのを耐えていた。

 そこで分かった。こちらがなにもしなくても、世界を変えるなにかは現れる。自分たちにできるのは、生き残る準備と耐えることだけ。

 連合軍に発見されたあとは取引をして、一般市民に戻った。就職先は保険会社。クーデター軍の理想と情熱に満ちた人間たちとは、正反対の人間を相手にする日々。人間の本性が見えるこの仕事は好きだった。

 クーデター軍にいた頃は純粋になにかを信じていたが、今は違う。物事には必ず裏がある。けして綺麗なだけじゃない。地に足が着かない理想は鼻で笑われる。

 あの番組で久しぶりにブリストーを見た。顔が映らなかったのは、なにか事情があるのだろう。

 あの事件のあとで、自分は違う道を選んだ。彼は選ばなかった。そのささやかな違いが人生の明暗を分けた。

 どうやら彼は革命という隙間にはさまったらしい。思想という箱庭で、永遠に革命ごっこを繰り返す姿は哀れだった。

 彼の理想にあふれた滑らかな語りは耳に心地良かったが、そんなのは過去の話。

 こうして離れてみると、簡単なことを難しく語る言葉遊びをして、不安と絶望を煽るが、中身は空っぽの詐欺師同然だった。

 ——国境に住む人々は、戦争をするための口実だ。いざとなったら盾にもできる。無力な民間人ほど使えて、強い存在はいない。

 彼が一番国境というものに対して憎んでいた。「戦う機械のような傭兵が英雄など、まがい物だ」と言って、鬼神も一番憎んだ。

 カプチェンコはどちらかといえば、現場を理解しようとしない政治家たちを嫌っていた。

 彼は死亡したらしいが本当だろうか? 出来過ぎているのは気のせいか。

 外回りの準備を終えると会社を出る。道路にいた鳥が一斉に飛び立った。

 

   12

 

 飛び立った鳥たちはホルツ公共墓地の上空を回る。どうやら今日の天気は曇りらしい。

 アントン・カプチェンコの小さな墓にはしおれた花束がいくつか。あの番組放送後、ここは観光地化したと聞いた。

 興味を()かれたので仕事の合間に来てみたが、本当だったらしい。

 オーシア政府はあの番組をきっかけに、鬼神を釣ろうとしたのか。

 だが、サイファーと名乗った人間は全員偽者。サイファー詐欺という言葉まで生まれる始末。

 詳しい個人情報があったヴァレー空軍基地は、XB-0(オー)襲撃の際にデータを一部消失したという。その中には、故意に消したデータがあるに違いない。

 以後、ヴァレーは軍事基地である以上に、ウスティオ政府によって厳重に守られている。アヴァロンの名がついたダムよりもアヴァロンらしい場所になった。

 おそらく、どの国もまだ鬼神の正体をつかめていない。そんな中で気になる存在はいた。

 ユージアで起きた大規模なクーデター事件に、グランダーI.G.は無人機をひそかに実戦投入した。それはユージア同盟軍側のパイロットに墜とされたが、データは無事に収集。

 驚いたのは、かつてモルガンと呼ばれた機体、ADFX-02がベルカ戦争後に起きたクーデター事件で収集したデータと似ていたこと。

 戦った相手は鬼神本人か、同じ教えを受けた仲間か、鬼神の教え子か。そのパイロットは事件が終わると同時に、どこかへ消えた。

「ドーキンス博士。そろそろ時間です」

 私をここを案内してくれたアンドリュー・ベリーに声をかけられたので、腕時計を見る。

 今の名前はオーシアが用意してくれた。本物はとうの昔に死んだ外国人。表向きはオーシアへの亡命者として、経歴を取りつくろっている。

「今日はありがとう。息抜きになったよ」

「まだあの会社に関わるつもりですか。灰色、お嫌いでしょうに」

「モルガンを作った責務を果たしたいんだ」

 アンドリューは「そうですか」と残念そうに言った。別れのあいさつを済ませ、帰りの案内を断る。一人でゆっくりと帰りたかった。

 あのクーデターで、最低でも無能な政治家どもを道連れにする気だった。そのため、各国の重要人物と繋がっている痕跡を残した。

 敵も味方も中身は同じ。安全な場所にいる者たちが、現場にいる兵士たちを平気で使い捨てる。

 特に旧ラルド派は、ベルカをむしばむガン細胞だった。敗色濃厚となるや、連合へすり寄った変わり身の早さには感心した。

 それにあれは、賭けであり実験。真に未来を築けるのはどちらか。核を手にして世界を壊す力を得た自分たちか、戦争に勝って世界を変える力を得た連合か。

 結果は後者の勝利。連合というよりは、核を絶対に撃たせないという愚直な思いが未来を得た。かつて銀色の犬鷲と呼ばれた同僚が求めた姿そのもの。

 同僚はこの世界を諦めていなかった。そこで生きる人々のことも、諦めることはなかった。

「君の粘り勝ちだな」

 飛んでいった鳥たちが戻ってくる。地上に羽根が一枚落ちた。

 

   13

 

 鳥の羽根が落ちてきた。運動場の片隅で空を見上げたが、鳥の姿はない。今日のオーシア連邦刑務所の天気は晴れのち曇りらしい。

 刑務所は世相を反映する。最近の新入りは詐欺師が多い。あの番組放送後にサイファー詐欺が流行ったせいだった。刑務所内で会った詐欺師に、「あんたがジョシュア・ブリストーか?」とつきまとわれたこともあった。

 組織や仲間について調べる捜査官たちに言った。まがい物のこの国が鬼神を捜し出せたら喋ろうと。それであの番組を流したか?

 逮捕後に「V2(ツー)の情報は事前に流れていた」と聞かされた。流したのはすぐにカプチェンコだと分かった。彼は「これで今の世界の姿が分かる」と言って、V1(ワン)の時も情報を流した。この世界を諦めてなどいなかった。

 結果は七発の核。確かに、あの愚かさは仲間を集めるいいきっかけになった。

 取り調べでは、実質的指導者はカプチェンコで、彼に誘われたかしつこく聞かれた。手筈を整えてくれた彼が、影の指導者というのは間違いではない。

 先に捕まったパーマーの証言だけでは不十分だったのだろう。彼らは私から決定的な証言を欲しがり、取引を持ちかけた。

 彼らはすべての罪をカプチェンコになすりつけようと必死だった。どうやらあの革命の結末は、一部には不満だったらしい。

 革命にはリスクが付き物。裏切られるのは覚悟している。だからといって自分は裏切る気がないので、沈黙を貫いた。

 この国はなにも変わらない。紛争のきっかけを得るため、国境近くに生きる民間人の犠牲を無視するように。核査察の証拠としてV1の起爆を待つように。自分たちに都合の良い方向へ持っていこうとする。

 子孫を残そうとする本能と同じ。血だけでなく、名も残したいという望み。領土拡大と資源確保は、名を残すのに手っ取り早い。

 だから彼らが欲するものを壊し、教える。真価が分かるのは死んだ時。価値ある死者だけが名を刻める。

 生きている間に名声を得た者は信用できない。特に英雄は。生きている限り、堕落する可能性がある。

 鬼神はまがい物だと思っていたが、今のところ本物らしい。

 開発者のカプチェンコが適任だと言い、ピクシーが立候補したのもある。かつての二番機が敵なら揺さぶりをかけられると思い、ピクシーをモルガンのパイロットにしたが、奴は見事撃墜した。

 任務を達成して生き残り、報酬を得る傭兵の姿勢は、最後まで揺らがなかった。傭兵という立場を越えた言動も取らなかった。当時は腹が立ったが、今では感心する。

 奴は誰もが欲する名声も、英雄の座も、自ら捨てて消えた。

 本物は己を犠牲にして全に尽くす。活躍を自ら吹聴することもない。その間にまがい物が栄誉を奪い、手柄としてしまうので、報われることもない。それこそが真の英雄。

 鬼神。生きているか。まだ生きているなら、貴様はこの世で唯一尊敬に値する人間だ。

 だが現れたら最後。貴様も腐った生ゴミと同じ。

 突風が吹き抜ける。塵を飛ばしていった。

 

   14

 

 突然の強風に身をすくめる。今日のデラルーシは快晴だが、風が強いのが難点。いいことは大きい戦闘がないらしいこと。

 ここでも例の番組が流れた。しばらくの間は仲間内でからかわれたが、黙って耐えることはしない。

 そういう時は、ピクシーの名にふさわしい悪戯という復讐を果たした。そんなのは当然。さっきもからかった奴のコーヒーに塩を入れてきた。

 それ以外にも、相談事が持ち込まれるようになった。相談者たちの共通点は同じ。知人から「自分はサイファーだ」という電話がかかってきたこと。

 だから彼らは、本物のサイファーはどんな声で、どんな喋り方をするのか知りたがった。

 一足早く放送されたオーシアでは、サイファー詐欺が流行った。その波が遅れてデラルーシにも来たらしい。意外に引っかかる人間が多かったのは笑うしかない。

 本物はこれといった特徴がない声だし、喋り方も普通。相談者には、むしろ犯人の真似をして笑う奴だよと答えた。最後に「結構うまいだろ?」と冗談を言うに違いない。

 そんなあいつは、ただ絶対ともいえる力だけを示した。戦場こそが故郷。生きる意味と希望のすべて。敵は誰だろうと倒す。嘆きはしない。だから鬼神。

 そんな神が、愚かな戦争をなんとかしてくれると期待した。それが甘いと気づいたのは七発の核。鬼神といわれても結局人間。限界がある。自分たちでなんとかするしかない。

 あいつは一つの答えをくれた。強い力があれば世界を変えるきっかけになれると。ならば核でも世界を変えられると本気で思った。

 おそらく連合にとって絶望的だった、クーデター軍との戦い。

 あいつは当たり前のように、「イーグルアイ! 司令部にお財布握り締めて待ってろと言っとけ!」と帰投後のことを言って、ヴァレーの奴らもいつも通り晩飯を賭けて無駄口を叩いた。撃墜数を競った。

 理想を語らない代わりに見せたのは、絶望の中を一歩ずつ前進する意志と日常。核を絶対に撃たせない。ただそれだけ。

 それを見た連合の兵士たちは戦う理由を見つけた。一斉にダムの制圧を目指した。まさに理想の軍隊。

 なぜあいつは力がありながら、既存の枠内に(とど)まったのか。あれから長い時間が流れて、なんとなく分かった気がした。

 世界を変えることは簡単じゃない。少しずつ積み重ねて浸透させていくしかない。強引にやろうとすると反発される。それは奇跡も悪事も同じ。

 相棒、お前は意志の力を信じたか。積み重ね続けた小さな思いは必ず突破すると。

 遠くで轟音が響く。ISAF(アイサフ)の戦闘機が哨戒任務に出ていた。

 大陸戦争は終わったが、残党がしぶとい。最近動きが目立つのは自由エルジア。近く掃討作戦がおこなわれるらしい。久しぶりにメビウス(ワン)の勇姿を拝めるか?

 最初、メビウス1はあいつかと疑った。違うと判断したのは、メビウス1が最終的に選んだ機体。狩人向きのF-22は、喧嘩を派手に売り買いする戦場荒らしには向かない。

 轟音が近づく。戦闘機が駆け抜けた。

 

   15

 

 頭上を駆け抜けた戦闘機を見る。ノースポイントの晴れ渡った青空が目に染みた。だから顔をしかめてるわけじゃない。

「あれさ、告白大会みたいだったと思わないか? リアルで茶を吹いたよ」

 携帯電話の相手は笑いながら言う。話の前振りで、あの番組を話題に出した。真面目な番組も、おっさんにかかるとお笑いになるらしい。

 バカ話が続きそうだったので、「そういえばさ」と話をさえぎった。

「ゲルプ隊は黄色中隊と関係あるのか?」

「さあね。なんなら直接聞いたらどうだ。メビウス(ワン)と言えば答えてくれるかもよ?」

「サイファーのほうが答えるんじゃないか?」

 おっさんは「どうせ詐欺だと思って電話切られるって」と笑う。

「でも、詐欺のお陰でサイファーの名前が地に落ちてまいったよ。上げる方法ない?」

「一度捨てたのをどうやって上げるんだよ。エルジアの残党を叩いてみるか?」

 即座に「ああ、自由エルジア?」と問われたので、「たとえばな」と言葉を濁す。

「お前、ISAF(アイサフ)から誘われてないのか?」

「……力を貸してくれと言われてる」

 実は今、基地の前。ついさっきオメガ11(イレブン)に「なーにあやしい人やってんだ」と言われた。

「残党の悪あがきは、黄色の13(イエロー・サーティーン)の最期を汚しているように見えるけどな。彼はエルジアの誇りと強さの、最後の象徴みたいなものだし」

 海を渡った鬼神という神の手を取った時、俺の運命は決まった。死神という神の座を継いだ代償は大きい。

 女神様は、(いと)し子が活躍するのにふさわしい場所を用意する。愛し子がなにを思っていようが関係ない。女神様の愛は一方的だ。自分の愛し子が輝くためだったらなんだってする。

 たとえ尊敬に値する敵が現れても、その人は死ぬ。生き残ることは、俺を愛する死の女神が絶対に許さない。必ず死ぬ。

 鬼神は戦いの女神に愛されている。戦場の空では絶対に死ねない。おっさんは七つの核が爆発した日の空で、そんなことを悟ったらしい。それと同じ。

 自由エルジアを叩く作戦に参加するのは構わなかったけど、戦う一番の理由が死んだ敵のため。そこで二の足を踏んだ。誰かに肯定してほしかった。

 こんなことを打倒エルジアのために戦った戦友たちに言うのは気が引けた。そこで不真面目な師匠に電話。詳しいことはまだなにも言ってないのに、この答え。…こんにゃろう。

「エルジアのことは心配するなと言うために、行ってこい。メビウス1」

「……墓もない相手にどう言うんだ」

 明快に「空を飛んでる時に言え」と言われたうえに、「ほら、早く基地に入りな」と電話を切られた。……こんちくしょう。

 覚悟を決めて基地に中に入る。まずは愛機にあいさつ。俺的に順番は間違ってない。格納庫(ハンガー)に着くと扉は閉まっていて、そこにいたのは笑顔のスカイアイ。……激しく嫌な予感。

「この野郎、バカ師匠に頼みやがったな」

「君の腰が重過ぎるんだ。だが、口の悪さが相変わらずで嬉しいよ。メビウス1」

 ガコンという音がして扉が開き始めた。

 

   16

 

 格納庫(ハンガー)の扉が完全に開く。そこにあったのは白い機体。どうやら翼には赤いラインがある。子供たちは顔を輝かせると、すぐに機体のそばへ近寄った。「お母さんすごい!」と同時に言う。

 彼の部下から「少し遅れるそうです」と言われた。そこで案内されたのが、この格納庫。

 かつて彼が使ったXFA-27という機体。特別のはからいで座席が開放されて、子供たちが代わる代わる乗る。

 子供たちは初めて海を渡った旅行にはしゃいだ。それに名付け親の彼に会うことも、楽しみにしていた。

 あのクーデター事件が終わって、あの人の遺体が見つかったあと、彼にあの人の子供がお腹にいることを告げた。あの人にはそれをまだ話していなかったことも。

 できれば名付け親になってほしいと頼んだ。あの人は、「もしだよ。もし子供にサイファーの本名を付けたら、すごいパイロットになるかな」と話したことがあったから。

 彼はオーケーしてくれたけど、翌日消えた。残されたのは、綺麗な文字で用件だけが記された手紙。

 男の子ならパトリック・ジェームズ。女の子ならパトリシア・ジャクリーン。最後に「父親とともに在るように」と書き()えられていた。どちらも意味は同じ。あの人の名前。

 生まれてきたのは男女の双子。父親の名前を継がせることに、あの人の家族も喜んだ。

 その後、彼と会うことはなかったけど、子供たちの誕生日や入学式、卒業式といったイベントでは、必ずプレゼントをくれた。

 それが、突然会いたいという連絡。ただしこちらからは諸事情で会いに行けないので、来てくれというもの。行くと答えると、チケットをすべて手配してくれた。

「やあ久しぶり。旅はどうだった?」

 とても懐かしい声。調子は変わっていない。隣に立った彼に、「ファーストクラスなんて初めてで、びっくりしました。子供たちは上機嫌でしたよ」と答える。

「今はなんと呼べばいいんですか?」

「呼びやすいのでいいよ」

 彼の名前もTAC(タック)ネームも、十年前と違う。それでも変わらないのは、エースであるということ。

「不思議です。世間じゃ詐欺事件で大騒ぎしているのに、本物がそばにいるなんて」

「詐欺事件の犯人の真似、結構うまいよ?」

「本物がやったら、しゃれになりません」

 二人で笑い合う。子供たちはこっちを見ると手を振った。

 どうやら私の隣に誰かいると気づいたらしく、機体から降りる。こちらへ駆け寄ってきたので、子供たちのうしろに回った。

「さあ、ごあいさつなさい。この人があなたたちの名付け親よ」

 いつもならハキハキ喋る子供たちが黙っている。なにかを発見したような顔つきで、じっと彼を見ていた。不思議に思って、私も彼のほうを見た。きつい西日のせいか、彼の灰色の目が銀色に見えた。

 人ならざる者がそこにいる。そう思った。人の形をしたなにか。私も彼のことをじっと見た。あの人が言ったことを思い出す。

 ——サイファーのそばを飛んでいると、よく分かるんだ。神様は本当にいるって。

 

   17

 

「神様がいる!」

 双子は男を指差すと、声をそろえて言った。不思議そうな顔で男は「神様? どこ?」と振り返るが、西日がまぶしかったらしい。「うお、まぶし!」と手で光をさえぎる。

 我に返った母親は男に「ごめんなさい!」と謝ってから、「ほら!」と双子をうながす。ようやく双子は「初めまして」とあいさつした。

「パトリック・ジェームズです!」

「パトリシア・ジャクリーンです!」

 双子は名前を同時に言って、手を差し出す。母親は大きなため息をついた。

 男は必死で笑いをこらえると、双子の目線に合わせるためにしゃがむ。「初めまして」と言ってから名乗り、握手をした。

 双子は戸惑いつつ、「あの、傷痕は?」と聞く。男は「ここに傷痕がある」と右目の上の薄い傷痕を指差した。双子は「それはスカーフェイスじゃないです!」と非難の声。

「世の中そんなにカッコ良くできていないのさ。じゃあ、サイファーというのはどうだ」

 今度は「サイファー詐欺!?」と驚く。男はひと通り笑うと、「それで、XFA-27は気に入ったか?」と聞いた。双子は「もちろんです!」と嬉しそうに答えた。

「あれ、造った人は誰ですか?」

「あれ、型は一つだけなんですか?」

「造った人はジェームス・ドーキンス博士。すでに亡くなっている。型は一つだけだ」

「それなら僕が手直しするよ。色はお父さんのように灰色にしよう。パティ」

「それなら私がそれに乗るよ。メビウス(ワン)あたりを捕まえて操縦習うから。パット」

 双子はそう言い合ってから、同時に男のほうを見る。

「あの機体、また見てもいいですか?」

「もう一度乗りたいんです!」

 男が「どうぞ」と言うと、双子はまた機体に向かう。男はちらりと母親を見た。

「あの子たち、父親が見た空を自分たちも見たいそうです」

「うちの不肖の弟子と同じことを言う」

「もしあなたが良ければ、不肖の弟子を増やしていただきたいんですが」

 男が「君はそれでいいのか?」と問うと、母親はしばしの間、無言になる。

「……気づいたんです。私があの人に恋をしたのは、空を飛んでいた時だって」

 今度は男が無言になった。双子がはしゃぐ声だけが響く。

「だから私は、あの子たちの翼を折る真似をしたくないんです」

「……あの子たちに教えるのは、俺よりも不肖の弟子のほうが適任かもな。同じ道を歩んだぶんだけ、うまく教えられると思うよ」

「その方、部下なんですか?」

「いや、ISAF(アイサフ)に出稼ぎ中。あとで紹介するよ。きっといい師匠と弟子になると思うね」

 男はニヤニヤしながら言う。こういう時はたいてい良からぬことを考えていると、母親は過去の経験から知っていた。十年前と変わっていないらしい。母親はまだ見ぬパイロットに思わず同情する。

「…なんで私たちを呼んだんです?」

「あの番組を見て、生きてるうちに知ってることを伝えようと思ったんだ。それに、時効を迎えた内緒話もあるだろ?」

 そう言うと男は笑った。

「先代が以前、オーシアにいた時に少年にまとわりつかれて、喋り疲れたと言ったことがあった。その少年の口癖が、まあいいや、さあ行くか、だってさ」

「じゃあ、親子二代で傭兵部隊の隊長から薫陶を受けるんですね」

「薫陶ってほどでもない。父親がどう飛んだか教えるくらいだ。性格通り真っすぐで、恐れを知らない。ハヤブサみたいに鋭い機動で飛んでいたことをね」

 母親は顔を一瞬そむけた。男が「対地攻撃は駄目だったけど」と言うと、笑い声をもらす。涙目の笑顔を見せた。

「本当は……誰があの人を撃墜したか、知っていたんです」

 そう言われても、男は微動だにしなかった。

「でも、あなたやみんなはとても優しくて、優し過ぎて、誰も本当のことは教えてくれませんでした」

 母親は何度も目元の涙をぬぐう。顔を上げて鼻をすする。そのたびに笑顔を作った。

「だから、それに甘えたんです。聞く勇気がありませんでした」

「俺も話す勇気がなかったよ。……たとえば、あいつが君の婚約指輪を選ぶのに、なぜか丸一日付き合わされたこととかもさ」

 ようやく母親は、作り笑顔ではない笑みを浮かべた。それを見た男は安心したように微笑む。それから機体のほうへ歩み寄った。

「さあPJたち、おいで! お父さんの話をしてあげよう」

 最初、双子は戸惑った。

 だが、意を決するとタラップから飛び降りる。まだ名残惜しげに機体を見たが、すぐに前を向いた。

「まあいいや。さあ行くか!」

 いつもの口癖を言うと、双子は駆け出した。

 

END

 

   備忘録

 

脇キャラの解説です。ここで特に記されていないキャラはオリジナルとなります。

 

ベルカのエースたちの家族:ZERO公式サイトWORLD NEWS 12「ベルカン・エアパワー 第一部前編」とZERO攻略本「巻末付録:エースパイロットプロフィール」で存在のみ判明。

 

PJの恋人:ZERO攻略本「巻末付録:エースパイロットプロフィール」で存在のみ判明。

 

フェニックス1:エースコンバット第1作の主人公。ZERO攻略本「巻末付録:エースパイロットプロフィール」で記されている「とある国で英雄として称えられているパイロット」を彼にしています。

 

ルカ・フォルフラム:ZEROミッション09で登場。アサルトレコードNo.066。

 

アンドリュー・ベリー:ZEROミッション16ソルジャーで登場。アサルトレコードNo.148。

 

ジェームス・ドーキンス博士:ZEROアサルトレコードNo.148「アンドリュー・ベリー」で名前のみ登場。

 

ラインハルト・ダール:ZERO公式サイトWORLD NEWS 12「ベルカン・エアパワー 第一部前編 デトレフ・フレイジャー少佐」で名前のみ登場。

 

ラーナー・マインツ:ZERO公式サイトWORLD NEWS 18「ベルカン・エアパワー 第一部後編 エリッヒ・ヒレンベランド」で名前のみ登場。

 

   後書き

 

サイファーはムービーに出てきたベルカのエースたちとは、全員戦ったことになっている設定です。彼らはどこかで生きて、なにかが繋がっていて、それぞれの日常が続いていたらいいなと思いました。


 
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