「そういうお前が、私は大好きだ」
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マイ「艦これ」「みほ2ん」
第71話<イッショー・ケンメー>(改2)
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その後、実家では艦娘と私で何がどうなっていたのか? ……ゴメン、正直覚えていない。
普段から、お酒を飲まない私は誓っても良い。決して、酔い潰れたわけじゃない。でも……気付いたら、いつの間にか深夜になっていた。
「えっと……」
顔を上げた私。
居間の時計を見ると、02:20。要するに午前二時だ。
上半身を起こす。
「痛たた……」
妙に全身がだるい。筋肉痛と言うよりも何だろう? 緊張が解けた後の倦怠感みたいだ。
自分が板の間に横になって居ることを確認した。周りを見ると、多くの艦娘が昨夜の状況を保ったまま「轟沈」したようだ。
山城さんは机に突っ伏しているし、利根は……ほとんど浴衣が肌蹴ているな、危ない奴。
取り敢えず私自身は変な状態になっていなかったことに安堵する。
「こんな心配……普通の軍隊なら有り得ないよな」
そんな自分に苦笑した。
母親は当然、自室で寝ているだろう。祥高さんと日向は、和室に敷かれた布団で休んでいるようだ。
(いちいち確認するのも憚(はばか)られるので想像だ)
取り敢えずザッと全員の無事を確認した私はトイレに用を足しに行く。
そして戻ると台所の机に誰かが居るのに気付いた。
「……お父さん?」
私の言葉に彼は顔を上げた。久しぶりに父親をまともに見た気がする。
「寛代?」
そう、父親の向かい側には駆逐艦の寛代が居た。
思わず私は言った。
「お前、寝なくて大丈夫なのか?」
すると父親が言う。
「あの秘書艦に言われて、もう一人の艦娘と交代で、徹夜で警戒するそうだ」
寛代も無言で頷く。
「そうか……」
さすが祥高さんだ。だが実家に居ても彼女たちは軍隊なのだから当然か。改めて納得する。
私もテーブルに腰をかけた。
「この子じゃ、話し相手にならないよね」
だが父親は微笑んだ。
「いや……頷いてくれるだけでも十分だ。それに、この子の反応を見て、お前も鎮守府で、しっかりやっている事が分かったから」
「……」
私は面映い気持ちだった。
グラスを傾けて父親は言った。
「今日は楽しかったよ。いつかは艦娘たちと話をしたいと思っていたんだ」
「へえ」
それは意外な。
「お前も、いつの間にか大きくなったんだな」
私に視線は合わさずに彼は言った。その言葉は私の内面のことを指すのだろうかと想像した。
「お前が艦娘部隊の指揮官……こうなるのも運命なのだろうな」
意味深なことを、ぼそっと呟く父親。
その言葉に深い背景があることに気付くのは、ずっと後になってからのことだ。そのときの私には敢えて父親に突っ込んで聞く余裕は無かった。
私は二人に言った。
「じゃ、休ませて貰うね」
「ああ……そうしろ。この子は3時に交代するそうだ」
「うん」
私は和室の端に空いていた畳の上で軽くタオルケットを羽織って横になる。近くを見ると……北上と日向が寝息を立てていた。
業務(軍務)での関係しかない男女が同じ部屋で寝るなんて普通は有り得ないことだ。もっとも艦娘は厳密には人間ではないのだから女性(異性)ではない。
だが私は、こういう状況でも不思議と艦娘たちに変な感情意識は抱かなかった。それは異性と言うより同じ志を持つ同志に近い。人間で言えば兄弟姉妹という関係だろう。
そんなことを考えていたら、意識が遠退いていく。
『司令』
ふっと艦娘の声がしたようだ。いや、これは夢だろうか?
『司令、ずっとお守りします』
その声は日向のようでも、秘書艦のようでもあった。
(きっと夢だな)
何となく私が横になったことを認識している艦娘が数名、居るような気がした。その姿勢に私は『忠誠』という言葉を連想していた。
気が付いたら、もう朝だ。
癖という物は恐ろしいもので、いつも起床する05:30には自然に眼が覚めた。実家だから、もっと寝ていたい気持ちもあったが……そうだ、今日は艦娘が居るんだ。そう思うと私は上体を起こした。
台所の方から炊事をする音が響く。見ると既に秘書艦の祥高さんと日向は起きていた。
そして母親の後ろ姿もあった……二人の艦娘は母親の家事の手伝いをしているらしい。
私の周りでは、その二人の艦娘以外は全員寝ているようだ。
ただ、そうやって安心して寝ていられる艦娘たちの緩んだ雰囲気に私は何故か逆にホッとするのだった。
(私の実家も一種の『母港』だよな)
そんなことを思いながら立ち上がって自分の帯を締め直す。
ゆっくりと和室にある座卓に腰を降ろした。それに気付いた日向が声をかけてくる。
「おはようございます司令。すぐ、お茶を入れます」
「ああ」
昨夜、あれだけバカやっても押さえるところは、きっちりするんだな。私は彼女の芯の強さに改めて感心した。それは彼女の隣に立っている祥高さんも同様だろう。
結局こういう日常の些細な部分から指揮官は兵士たちの任務遂行の信頼度を量るのだ……と兵学校で聞いたような覚えがある。
艦娘といえども軍人に違いは無い。それは一種のサムライ……あるいは志士というべきか。
(サムライか)
そういえば、この二人は艦娘の中でも特に真っ直ぐだな。
今後、美保鎮守府は、この二人を基軸に進んでいくのかも知れない……いや大淀さんも思い出した。すると三人か。
「あ……お早うございますぅ」
のそのそと北上が起きてきた。
「おは……」
思わず絶句した私は目を見張った。彼女の頭(髪の毛)は爆発している。そういえば髪も結んでいないから一瞬、別人かと思った。
しかも帯が緩んでいるらしくユルユルの浴衣は、彼女自身の肩を見せている。気だるそうに座卓の私の対面に座った北上。浴衣の帯を締め直しながら頭をボリボリかいている。寝起きでまだ緩んだ口元からは……ヨダレか。
「おいジュルって……お前、女学生か?」
つい思ったことが口から出た。
「えぇ? 別にぃ」
この屈託の無さも彼女らしい。舞鶴の頃から変わらないな。
「まあ良い」
私は呆れながら言う。でも、こういう態度が許せるのは彼女との付き合いが長い証拠でもある。
北上は、おもむろに話し出す。
「あの深海棲艦さあ、昨日の夜、私の所に来てさ、言ったんだ。『サイドイッチ美味しかった』って。アタシが昔よく作っていた頃のまんまの味だって……」
「昔……」
私は軽く絶句した。それじゃ、やっぱりあの敵は?
そんな北上は窓の外を見た。
「嬉しかった」
涙は見せなかったが心では泣いているのだろう。そうか……こいつも、いざとなったら信頼できる志士の一人かもな。
日向が私と北上の、お茶を持ってきた。
「ありがとう」
「あ、どうも」
北上も頭を下げている。
お茶を置いた日向は何故か、お盆を抱えたまま座卓の横で中腰のまま静止。
「ん?」
……お茶をすすりながら私も止まる。
彼女は、ちょっと思い詰めた目になった。
「司令……昨晩は大変、失礼なことを申し上げたような気がするのですが……」
「なんだ? 覚えていないのか」
私は、何気なくそう言った。
その反応に、ちょっと狼狽の色を見せる日向。
「すると、やはり?」
私は否定して答えた。
「いや、別にお前からは何も聞いてないよ」
……昨夜は相当飲まされていたんだろう。その善し悪しはともかく酒の席は無礼講だ。
それでも彼女は、まだ納得いかない様子で、お盆を抱えたまま硬直している。
(こんなところまでも一途なんだな、この娘は)
私は湯飲みを机に置いて改めて言った。
「お前は、お前らしく常に全力で一生懸命に前進し続けてくれれば良い。そういうお前が、私は大好きだから」
「……あ」
「へ?」
ほぼ同時に妙な反応をする日向と北上。
(あ、しまった!)
……最後の一言は言い過ぎだな。
案の定、彼女はまた真っ赤になった。
「失礼します」
ちょっとフラフラしながら立ち上って、そのまま台所へ戻っていく日向。
(ごめん。からかったつもりは無いから)
「それよりも……」
私は振り返る。
(青葉や金剛は聞いてないよな?)
向こうからは寝息のみ。人が動く気配は無い……大丈夫そうだ。
ホッとした。
「……でもさあ」
北上が割って入る。
「艦娘は、みんな一生懸命。一蓮托生ってね……それで良いんだよね? 司令」
「ああ」
意外に、この子には何を聞かれても大丈夫なんだ。
私が安堵して、応えるや否や背後から声だ。
「Oh! それネっ、私もイッショー・ケンメーフンコツ何とか、やるネー!」
(グリグリ)
「あ痛ぁ!」
やっぱり金剛は覚醒してきたか。もっともタイミングはズレてたので日向への私の一言は聞かれずに済んだらしい。
(助かった)
「お・お・お姉さまはぁ」
寝ぼけ眼(まなこ)の比叡も、しっかり覚醒してきた。この二人は放って置いても一蓮托生姉妹だな。
金剛に擦り付けられた電探のヒリヒリを感じながら思わず微笑む私だった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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結局、実家で朝を迎えた艦娘たち。でも、彼女たちは朝からパワー全開だった?