夢を見た―――。
その夢は鬼気迫る状態。
血まみれの女性が、沢山の賊に囲まれて追い込まている状態。
「・・・この私が、こんな奴らに追い込まれるのはな」
女性は自身の未熟さに対してなのかそう呟き笑う。
「死ね!」
賊がそう叫ぶと、一斉に女性に対して剣を突き立てて突進する。
・・・そこで夢は終わる。
反董卓連合編 四話 『孫堅』
江東。
師匠の指示の元に、江東へとやって来た暁人は言われた通りに諸葛瑾を探すことにした。
しかし、すぐには見つからず野宿をすることに。
起きた暁人は頭を抱える。
「・・・最悪だ」
暁人にとって、もはや珍しくもない夢だが一番困る夢でもあった。こういう漠然とした見知らぬ場所で、見知らぬ人間が殺される夢。
対処など不可能に近い。
「・・・ああ、今日も誰かが殺されたのかな」
もはや諦めに近い状態で溜息をつき、もう一度寝ようとした矢先。
「がぁぁぁ・・・っ!!」
突如、後方から大声を上げた女性が転がりこんできた。
「・・・っ!!」
しかもその女性は先ほど夢で見た女性。
こんなことあり得るのかと目を疑いたくなる出来事に驚きながらも、暁人はその女性に近く行く。
「し、しっかりして下さい!!」
抱きかかえるとすぐに手や自身の服は血に塗れる。それだけ、彼女が重体であるという意味でもあった。
「・・・そん・・けん・・・」
「え・・?」
かすかに漏れた彼女の声に耳を疑う。
彼女は今なんと言った。『そんけん』といわなかっただろうか。
「炎蓮!!!」
そして、三頭の馬が暁人達に駆け寄って来るのだった。
炎蓮と名乗る女性を結果的に、助けた暁人はある玉座へ来ていた。
一応ここに来るまでにいくつか尋問されたり手合わせしたりしたが、襲撃した者ではないと判断されてここにいる。
「まずは妻を助けてくれたことに感謝する、暁人殿」
彼女の夫、つまり「そんけん」と呼ばれていたご本人である『孫堅』に感謝された。
「あ、いえ・・俺は何も」
孫堅に感謝され少し照れくさい暁人。
しかし、もっとも驚いたのが接触した人物達が『呉』の武将達だったことに驚いてしまう。
結果的に江東においての最重要人物達に接触することになってしまったのだから。
「それで、あの彼女は・・・」
孫堅は笑顔でこう答えた。
「問題ない。見た目ほど重症ではなかったようだ」
「・・・よかった」
安堵する。助けたのに助けられなかったいうのは寝覚めが悪い。それに結果的に夢の出来事を回避できたのだから。
・・・いや、このケースの場合は夢の出来事の後に彼女がやって来たと受け取ってもいいかもしれない。
「それで、君はここに仕官したいんだったね?」
「はい、ぜひ仕官させて下さい!」
ここに来るまでに、色々と尋問されているため詳細内容はすでに孫堅には伝わっている。
後は、彼が暁人の採用を承諾するかどうかだ。
「構わんさ。君を歓迎するよ暁人殿」
孫堅は承諾してくれた。
「あ、ありがとうございます!」
暁人はお礼を言うと孫堅は少し苦笑いをしながら話を続ける。
「それで君の配属は我が娘の孫策隊だ」
「え?」
耳を疑った。
孫策隊といえば、孫家や江東において孫堅に次いで2番目に最強の部隊。大将の孫策を含め副官の周瑜や太史慈といった強豪ぞろいでしかも戦場においては激戦隊ともいえる部隊である。
ただ、暁人にとってこれまでいくつもの修羅場を潜り抜けた人生経験があるため、そんな激戦隊であっても驚きはしない。
驚いたのは『孫策』の部隊に配属になったことだ。
「あはっはっは、やっぱりいきなりアイツの部隊が配属先と聞かされたら驚くか?」
「あ、いえ・・・」
動揺を隠せない暁人を他所に孫堅は豪快に笑い、パチンと指を鳴らすと今まで二人の会話を挟むまいと黙っていた孫堅の部下達が一斉に動ごき、その一人が孫堅の傍に近づく。
「彼を娘の所へ連れてやってくれ」
「はっ!」
兵士はうなずくと暁人に「こちらへ」と一声かけて玉座を後にし、暁人も孫堅に一礼すると慌ててその兵士について行った。
「・・・さて」
やがて、暁人が去って数秒後に一度深呼吸をし孫堅の表情は厳しい顔になる。
「黄蓋・・・報告を」
「あいよ~」
黄蓋と呼ばれた女性はだるそうな口調で答えつつ、孫堅に礼をすると求めている報告する。
「炎蓮を襲った者達はどうやら董卓の手の者だったよ。捕らえた者の所持していたものや尋問にてそれは判明した」
「董卓以外の可能性は?」
「現在は調査中だが、可能性は低いと思うよ?」
「ふむ・・・」
孫堅は懐から巻物を取り出し、それを広げる。
「炎蓮のこともあり、今回の袁紹殿の招集に少し気が引けていたが・・・」
目を通して改めて書状の内容を確認をする孫堅。
「この反董卓連合の参加、やはりするべきなのかもしれないな」
孫堅は今回の件も含めて、董卓打倒を決意するのだった。
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炎蓮さんは情報ないので、現在はイメージ対応。