「フフ、夏ですし浴衣ですから」
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マイ「艦これ」「みほ2ん」
第61話 <浴衣娘>(改2)
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「盆踊り会場は市内各所にあるのですね」
日向が改めて確認してくる。
「ああ……」
別に作戦でも何でもないんだが、こういう細かいところが律儀な彼女らしい。
「では皆さん、宜しいですか?」
秘書艦が艦娘たちに確認をする。
一)地図があるとはいえ、あまり遠くへは行かないこと。
一)お小遣いはあるが、無駄遣いしないこと。
一)人間の男性に声をかけられても相手にしないで断るか逃げること。
……いろいろ諸注意をしている。
なんだか、このノリはやっぱり女学生だな。さしずめ祥高さんは生活指導の先生になるか? それも妙に似合っている。
最後に彼女はまとめる。
「何よりも帝国海軍の兵士であることを決して忘れないよう。各自、心得て下さい」
『はい』
艦娘たちは敬礼をする。
この台詞には父親も私も感心していた。思わず私たちは顔を見合せた。
「良いものだな」
「うん」
祥高さんの締めは艦娘にはしっかり効きそうだ。
母親は「お風呂に入ってから出かければ良かったけどねえ」と言っていた。気持ちは嬉しいけどお母さん、この人数でウチの風呂では無理でしょう。
でも改めて考えてみたら、ちょっと惜しい気持ちもあった。
(湯上りの艦娘(美人)か……)
ゾロゾロと玄関で草履に履き替えた艦娘たちは、皆が実家の玄関から表に出た。
祥高さんが改めて玄関前で軽く点呼を取った。それから駅前を往復するルートでは不必要にわき道に逸れないようにとか電探を持っている艦娘は、その電源を落とさないように、といった注意をしていた。
(艦娘の生活指導も大変だな)
私は思わず苦笑した。
今は夏の夕方だから空はまだ明るい。
ただ、この時間になると気温も下がって過ごし易くなる。
「司令は、駅前へ行かれますよね」
背後からボソッと聞いてきたのは日向。
「ああ、そのつもりだが」
別に他に行くところもないし。
「あの……差し支えなければ」
急にソワソワと目を逸らして恥ずかしそうな表情をする日向。
ドキッとした。ちょうど夕日を浴びた彼女の上半身が影になっている。
陰影があるうえに浴衣を着ているから普段の彼女とは、またガラリと印象が違う。
(今のところ、私に声をかけてきたのは日向だけだから……一種のデートか?)
と、妄想をしていたら、いきなり邪魔が入った。
「Oh、テートク!」
その声は金剛か。
「盆踊り私にも教えっ……」
「は?」
私が振り向いたときには彼女の姿が視界から消えていた。
「あれ?」
直ぐに視界の下の方から『シット』という声が聞こえた。
「お姉さま、大丈夫ですか?」
比叡が来て金剛を助け起こした。
その状況を見た私は悟った。
(ははーん。これは草履が原因だ)
海外から来た金剛は浴衣だけでなく草履だって履いたこと無いだろう。
(しめた! 今夜の金剛姉妹は低速だぞ!)
面倒なことになりそうだったら即逃亡だ。
「司令……」
ちょっと得意になっていた私は、そのひと言で思わず寒気がした。
思わず振り返る。
「ああ、山城さん」
彼女はウルウルとした瞳で訴えてくる。
「私も……ご一緒して宜しいでしょうか?」
「あ、ああ」
別に断る理由もない。日向、恨めしそうな顔をするなって。
しかし山城さんは金剛とは違って草履は履き慣れているな。
もっとも彼女の場合、仮に振り切ったとしても別の意味で怖い。後から出てきそうだ。
気付くと私たちの足元のほうから『チッ』という舌打ちが……早くも、混戦状態か?
そこで落ち着いた声がする。
「艦隊で……いえ、皆で行くのが楽しいですね。司令……」
「あれ?」
そこには、とても落ち着いた女性が立っていた。
「あれ? ……どなたでしょうか」
「あら、嫌ですわ司令」
ちょっとムッとした表情をしたので、やっと分かった。
「赤城さん!」
(まさか……)
ポニーテールで浴衣を着ていると一瞬、分からなかった。
「いや近所の誰かかと思ったよ」
そんな私の視線に彼女は恥ずかしそうに言った。
「フフ、夏ですし浴衣ですから。ちょっと後ろで結んでみました」
そう言いながら後ろに手を当てている赤城さん。
(うん、正直、見違えました)
「それで、お櫃(ひつ)を抱えなければ最高だと思います」
つい口が滑った。
「あの、何か仰いましたか?」
あ、ちょっと彼女の顔が引きつった。
「いや、何も言ってない」
でも普段の戦闘とは違って街角での彼女は、さほどしつこく追撃して来ない。ホッとした。
「あらぁ素敵。お姉さま」
近寄ってきた龍田さんも赤城さんを持ち上げた……いや、龍田さんも独特で妖艶な雰囲気です。
「ウフフ……浴衣って良いわねえ」
しかし長身で美人揃いの艦娘たちが実家の前に勢ぞろいする光景。これは、かなり人目を引く。
案の定、実家の前を通る人は、ほぼ全員が立ち止まったり振り返ったりしている。かなり注目の的だ。
「はい、せっかくだから撮りますよ」
青葉さんが数枚、撮影していた。
気のせいか周りの通行人は彼女たちが芸能人か何かと勘違いしているようにも思えた。
……頼む青葉さん、その写真を、後で焼き増ししてくれないかな?
そんな私の気持ちを察したのか、彼女は撮影後に私の方を向くとウインクしていた。
(えっと……それは、どっちのウインクかな?)
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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司令の実家で各自、浴衣に着替えた12人の艦娘たち。その艶姿は実家前を通り過ぎる人にも思わず注目の的だった。