霞「やっぱ、時間かかるんやなぁ南陽まで」
洛陽を出て三日、南陽への道のりも終盤。
風「それはそうですよ。洛陽からは900里以上はありますし、それに馬を飛ばしていたとしても一日ではつきませんしね」
霞「そんなに遠いんか、もっと近いと思っとったわ」
商人「すいませんねぇ、私がいるばっかりに時間が掛かってしまいまして」
霞の言葉に反応が返ってきた。
霞「何言うとんねん、おっちゃんの護衛で来てんねんからおっちゃんが悪いわけないやん」
風「そうですね、おじさんが悪いんじゃなくて、わがままを言う霞ちゃんが悪いんですよ」
霞「むっ、別にわがままなんてゆうてへんのに」
商人「はははっ、そういっていただけるとは嬉しいかぎりですな」
宝譿「まっ、おっちゃんが気にすることなんてないってことだぜ」
霞「そういうこっちゃ」
その言葉に二人の気づかいを感じた。
商人「でも、どうして南陽に行かれるのですか?」
霞「あっ、それはな・・・」
風「この前の襲撃事件のことについてですよ」
風が霞の言葉を遮った。
商人「はて?そんなに被害はありませんでしたが」
風「いえ、被害のこともありますが、襲撃された時の状況や警備兵の現状、襲撃を防げなかった理由など・・・調べることはいっぱいあるのですよ」
商人「はぁ、やっばり上に立たれてる方々は考えることが違いますなぁ」
風「これも文官としての務めですから」
風の言葉に感心している商人であったのだが、
霞が小声で話し掛けてきた。
霞「なぁ、風っち。なんで魏光っちゅうやつのことは言わなかったん?」
宝譿「ったく、そんなこともわかんないとは、困ったもんだぜ」
風「こら、ホウケイ。霞ちゃんだから仕方ないんですよ」
霞「なんや、どちらにもバカにされてる気がするんやけど」
風「まぁまぁそれはおいといて、さすがに南陽の方にその話はできませんね~」
霞「なんでなん?」
風「仮にも南陽を救った人物を私たちは引き抜きに行くわけですから、あまり街の人には話したくはないですね」
霞「そんなもんやの?」
風「えぇ、誰だって頼りになる方がいなくなるは嫌なものです。霞ちゃんだって凪ちゃんや秋蘭ちゃんがいなくなるのは嫌でしょう?」
霞「当たり前やん」
風「その気持ちと同じことですよ」
霞「おぉ、それならよう分かるわ」
風「それに、華林さまも“絶対に連れてこい”なんて言っていませんでしたからね」
霞「せやな、華林にしては控えめな言い方やったしなぁ」
風「だから、大っぴらにする必要はないんですよ」
霞「分かった、そういう事なら誰にも話さへんわ」
今回のことをしっかりと理解した霞、
そして、小声で話しをするのをやめた。
霞「でも、魏光ってどんな奴なんやろな」
商人「魏光殿ですか?そうですな・・・見た目は頼りになる感じではありませんな、お優しい方ではありますが」
霞「強いんか?」
商人「お強いと思いますよ」
風「思います、ですか?」
おじさんの言葉に少し引っ掛かっていた。
商人「えぇ、いや盗賊の一人を一撃でのしていたのでお強いのはわかったんですが何しろ一瞬だったもので」
霞「へぇ、一瞬かぁ。なら、うちとどっちが速いんやろなぁ」
霞の言葉におじさんが反応をした。
商人「うーん」
風「どうしたんですか?」
商人「いや、その・・・たしかに速くはあったのですが、なんだか張遼様の速さとは違うような」
霞「?」
風「“速さ”ではなく“早さ”もしくは“疾さ”だったということでしょう」
霞「何言うてんねん風っち?大丈夫かいな」
少し呆れながら、
風「まぁ、会ってみればわかるというものです」
南陽へと馬をすすめた。
李淵「はっ、てやぁ」
一刀「よっ、ほっ」
李淵の木刀を簡単に受け流して、
一刀「ていっ」
すかさず、頭に軽い一撃を入れた。
李淵「あてっ」
少し痛そうに頭を抑えた。
一刀「まだ、隙が多いな李淵は」
笑いながら、木刀を腰に戻した。
李淵「そういったって、魏光さんは隙しか見つけてこないじゃん」
少しだけ、不機嫌な言い方をして、
一刀「まぁ、ごもっともな意見だけど」
一刀も同意した。
李淵「よし、魏光さんもう一回お願いします」
一刀「(もう10回目なんだけどな、それにみんなの訓練もしないといけないんだけど・・・)」
そう思い、警備兵の方に目を向けると、
皆にうなずかれた。
一刀「(ありがとう、みんな・・・)おし、かかってこい李淵」
一刀の言葉を待っていた李淵はその言葉を聞き、木刀を構えた。
警備兵A「しかし、李淵はよくやるよな」
警備兵B「あぁ、多いときは一時間ぐらい休憩なしでしてるしな。元気なのはいいことだ」
警備兵C「それに、魏光殿と一対一で訓練が出来るんだ、こんなに嬉しいことはないだろう」
警備兵A「上達も早いしな」
その場にいる全員が同意した。
警備兵B「たしかにな。この前も訓練をかねて手合わせしてあげたが、だんだん勝つのが厳しくなってきたな」
警備兵C「私も、勝つことで一杯一杯だよ」
警備兵A「もう、訓練をしてあげるというか一緒にしているぐらいの力はつけてきただろうな」
警備兵B「あぁ、そうだな」
警備兵C「しかし、魏光殿は簡単にあしらってるな」
警備兵A「むしろ、魏光さんだからできることなんだろうな」
警備兵B「よし、こうしちゃいられん。俺たちも訓練を始めるか」
警備兵一同「おぅ!!」
一刀と李淵に触発され、いい方向に傾いてきた南陽警備部隊、
魏の本隊を除けば、国内では屈指の強さになっていることを彼らは知る由もなかった。
李淵の後頭部に木刀が寸止めされた。
李淵「くっ」
完璧すぎるほど、後ろを取られたことに悔しさの声が漏れた。
一刀「勝負ありだな」
李淵「だぁ!!一本どころかまともに相手すら出来てないよ~」
木刀を引き、
一刀「まだまだだね、といいたいところだけど。俺はそうは思わないけどな」
李淵「そんなお世辞はいらないよ」
一刀の言葉に不機嫌になった。
一刀「う~ん」
考えた後に、一刀は木刀を構え、
李淵「えっ」
ビュン
李淵「うっ?!」
高速の一撃を首すれすれで止めた。
李淵「い、いきなり危ないよ、魏光さん!」
木刀を引きつつ、
一刀「今の一撃でだいぶ成長が見て取れるけどな」
李淵「えっ?」
一刀「俺は、何の前触れも無く李淵に斬りかかった。なのに、間に合いはしていないけどちゃんと木刀に手が掛かって反応は出来てるじゃないか」
自分の行動と李淵の無意識の動きを説明した。
李淵「あっ」
一刀「以前なら、反応すら出来ずにしりもちをついていた李淵がそこまでになったんだ」
李淵「・・・・・・」
一刀「誰でも、自分の成長なんて目には見えないよ。でも、今していることがいつか実ると信じてみんな訓練をしてるんだよ。」
李淵は警備隊のみんなの方に視線を移した。
一刀「自信を持ちすぎる必要はないけど。でも、いままで自分がしてきたことは信じていいと思うよ」
李淵「・・・・うん、わかったよ」
一刀「よし!じゃあもう一か・・・」
気を取り直した時に、
警備兵C「魏光殿!」
後ろから声が掛かった。
一刀「なに?」
少し、真剣な表情で、
警備兵C「はい、ここから北の方角に砂塵が上がっています」
一刀「砂塵?」
城壁にのぼり、北の方角に目を向けた。
一刀「本当だ。どこの部隊だろう」
警備兵C「それが、旗を掲げていないもので・・・・・」
表情が険しくなる一刀。
一刀「怪しいな・・・・数は二百程度かな。」
李淵「魏光さん」
その言葉に頷き、
一刀「街のみんなは?」
警備兵C「はい、すでに他のものが街の方に行き、すぐにでも門を閉じることができる状態にあります」
一刀「うん、みんな。集まってくれ」
いきなりの召集に、一糸乱れぬ動きで警備隊が集まった。
一刀「北方向に謎の部隊を確認した。相手が誰かわからない以上、迎え撃つ覚悟をしておいてくれ」
警備兵一同「はっ!!」
一刀「じゃあ、すぐに準備を終わらせて、俺のあとに続いてくれ」
警備兵一同「はっ!!」
一刀「それじゃあ・・・」
警備兵B「魏光さん」
隊の一人に出陣の声を遮られた。
一刀「ん?どうしたの」
警備兵B「いやそれが砂塵の前方に三人ほど、人の姿が見えるのですが」
一刀「あの集団の一員じゃないの?」
警備兵B「いや、それにしては、距離が離れすぎている気がしまして・・・」
一刀はもう一度南の方に視線を移した。
一刀「・・・そうだね、分かりにくいけど少し離れてる位置にいるね」
一刀は目を凝らして、その三人を見た。
警備兵B「追われているのでしょうか」
一刀「さぁ、どうだろう。んっ?・・・・・左にいるのは・・・・・・商人のおじちゃんか!?あとの二人は・・・・・・」
その目には紫色の服と水色の服が映った。
一刀「・・・・・・・」
警備兵B「魏光さん?」
謎の部隊の方を見たまま固まっていた一刀に声をかけた。
一刀「あのロングの金髪・・・・・・それに、袴にあの槍・・・・・」
一瞬、自分の目を疑った。
一刀「風・・・霞・・・」
警備兵B「えっ?」
つぶやいた瞬間、一刀は弾けたように動き出した。
警備兵B「魏光さん!?」
いきなりの出来事に声を上げた。
一刀「みんなは準備ができたらすぐにでも出陣してくれ、俺は先に行く!!」
警備兵B「ちょ、ちょっと!?」
すでに、一刀は走り去っていた。
一刀は馬上で、この状況を悩んでいた。
一刀「(なんで、風と霞が・・・・この前の襲撃のことで南陽に来たのか?それともまた俺関係か。たった二人で来てるんだ、単に南陽の視察ってのもあり得る)」
あれこれと思考が巡っていた。
一刀「(そんなことは今はどうだっていい。今は二人を助けることを考えなくちゃ。あの数に追いかれたら・・・・)」
手綱を強く握り締め、
一刀「二人とも・・・・くっ、間に合ってくれ」
砂塵のあがっている南へと馬を走らせた。
霞「くそっ、あいつら何やねん」
正体不明の部隊に追われ、いらつきを感じる霞。
一人ならば、迎え撃つが、風と商人を守りながらの戦いは分が悪く、危険しか伴わない。
霞「南陽の警備隊はほんまに気付いてくれるんかいな?風っち」
風「たぶん、正体不明の部隊として認識されている可能性の方が高いですね」
霞「えぇ!?なんでなん」
風「それはですね。まず、後方の部隊の一員として捉えられている可能性が高いからです。もしそうでなくても、霞ちゃんがいくら武将として名を馳せているとはいえ、この距離で霞ちゃんを認識できる人はまず南陽にはいないでしょう」
霞「そんなもんなんか・・・・・」
風「それに、被害が少なかったとはいえ、つい最近、襲われたばかりですしね。警戒が強まっていて動きは慎重でしょう」
霞「じゃあ南陽に逃げても意味ないんか?!」
風「いえ、さすがにそれはないんですけど。もう少し近付ければ助けが来るとは思いますが・・・・・」
表情が曇り、
霞「間に合うかどうかっちゅう話しやな・・・・」
その最悪な状況を把握した。
商人「すいません、私がいるばかりに」
風「今はそういうことを言うべきではありませんね」
霞「そうやでおっちゃん。今は誰が悪いとかはないんやから、次そない雰囲気が悪くなることを言うたら、うちかて怒るで」
と満面の笑みで返した。
商人「・・・・・・本当にありがとうございます」
しかし、それは事実だった。
商人の乗っている馬は訓練されてはいなく、霞と風の乗る馬とは走る速度と体力が違った。
その上、多量の荷物を積んでいることもありどうしても遅くなってしまっている。
いち早く、霞が砂塵に気付いたのは良かったが、その距離は見る見るうちに縮まってきていた。
風「(さすがにまずいですね。このままでは南陽に近づく前に追い付かれてしまいますね)」
その顔は珍しく険しかった。
風「(う~ん、どうしましょうかね・・・・・)」
といきなり、霞が声をかけてきた。
霞「風っち!そない怖い顔せんでいつもみたいにのほほんとしときや」
霞のいつも通りの顔、
その顔を見て、風の顔はほころんだ。
風「・・・・ふふ、そうですね。まさか、霞ちゃんに注意される日が来るなんて」
霞「なははは。まぁ、そこはええとして。うちが風っちを注意する日なんてもう一生こんかもしれんで」
宝譿「こりゃ、一本取られたぜ」
風「むむむ、ホウケイの言うとおりですな」
霞の言葉で軽くなった雰囲気、
その場にいた三人の心も軽くなったその時だった。
ヒュ、ヒュン
霞「!?」
ガキィン、ザシュ!
霞は後方から来た矢を飛龍偃月刀で打ち落とした。
しかし、もう一本放たれた矢は風の馬に直撃した。
ヒヒ~ン!!?
馬がその痛みから体勢を崩して倒れこんだ。
風「なっ!?」
ズサーッ!!ガンッ!!
風「うっ」
風はそのまま地面に放り出された。
霞「風っち!!」
商人「程昱様!!」
二人の声が響く、
と同時に再び、後方から数本の矢が飛んできた。
ガキッ、ガキガキィン
間一髪のところで霞が風目掛けて打たれた矢を打ち落とした。
霞「(くっ、あの距離でこの精度・・・・・・妙ちゃん並みの腕前があるかもしれんな)」
的確な攻撃に少しあせりを感じ、
霞「(もうあかんか・・・・・)」
そう思い、商人に向けて声を出した。
霞「おっちゃん!先に行き!!」
商人「しかし!お二方をおいて先になど・・・」
霞「戦いの邪魔やねん!それぐらいわかるやろ!!」
あえてきつい言葉を選び、事態の悪さを訴えた。
その心意が伝わり、
商人「・・・・・・すみません。お先に南陽で待っています。どうかご無事で」
その言葉を残し、馬を走らせた。
霞「あぁ、任しとき。風っち!あんたも先に行き!」
しかし、その言葉に返答は返ってこなかった。
霞「風っち?」
倒れている風に目を向け、風が気絶していることに気が付いた。
霞「落馬したときかいな?!」
放り投げだされたときに打ち所が悪くその場で気絶してしまっていた。
霞「あんの武将がいてるだけで、うちだけでもきついのに・・・その上、風っちを守りながら戦わへんといかんのか・・・・・」
一粒の汗が流れ落ちた。
もうすでに、目と鼻の先に来ている謎の部隊、
霞「風っち・・・・あんただけでも・・・・・」
馬から降りて得物を強く握り締め、覚悟を決めた。
霞「世に歌われた張遼が神速、とくと味わいや!」
鬼神の如く覇気をだし、地を揺るがすほどの怒声を荒野に響き渡らせた。
・・ ・ 雑 談 ・ ・ ・
みなさん、おはよう
こんにちは
こんばんは
でございます。
いやはや、皆さんには一言申し上げないといけないことがありまして・・・・・
・・・
・・・・・・・
更新遅れてすんまっせん!!
いや、ちょっと全うな理由があるんですけれども、
それを言っては周りの小説家の方々も理由がありながら更新しているんですから、
自分だけ特別OK!みたいな自己中な雰囲気を出してしまいますので、
謝らしていただきます!!
えっ?
じゃあ、↑3行書くなよって?
・・・・・・
いやそこは突っ込まないでください。
まぁ、ようやく話が進んでいるかのような雰囲気をかもし出してきました。
李淵君はなんと一刀君に稽古をつけてもらっていたのです!!あの日から警備の方々と一緒に。
まぁ、魏光(一刀君)をかなり慕っていたから、当たり前の流れだったんだな。
意外と成長の早い李淵君、
それはなぜかというと・・・・・
いやそれは本編で話そうと思っているからここでは書けません。
まぁ、そんなにすごい設定ではないんですけどね^口^;
そういえば、洛陽から南陽の距離を900里以上にしていますけど、
何かで調べて、400KMぐらいというのを見つけて、
なおかつ一里=415mで計算したら963里ぐらいになったんであの距離にしました。
まぁ、ん?と思われた方がいたらいけないので補足です。
というのはおいといて、
なんともピンチな張遼さんと程昱さん!
なんでこんなことに!?
(まぁ、自分が設定してるんですけど・・・・)
そんなこんなで皆さんもお分かりの通り次回、ようやく一刀君(魏光)がお二人と接触します。
どう接触するかは次作ということで。
作中に気になったことや聞きたいことがあったらいつでも聞いてください。
答えれる範囲内(話しても大丈夫な話、作者の能力が足りる話題)でお答えします。
それと一つ気になっていたのですが、
更新情報というのは、書いた方がよろしいですかね??
書いている方といない方がいたのですが、読んでくれている方からしたらどっちがいいのかなって思いまして。
よかったらそこんところにも反応を!!
いつも、支援、コメント、閲覧してくださってる方ありがとうございます。
それではまた次のお話でお会いしましょう (・ω・)ノシ
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こんにちわharutoです。
・・・・・・いやぁ、言い訳はしません!
すいません!!
熱読してもらえれば光栄です^^