第3話 国際警察、ハンサム
最初のポケモンとしてヒコザルをナナカマド博士から受け取ったクウヤは、コウキやヒカリとともに次の町コトブキシティに向かった。 ジュンはといえば、もう待ちきれなかった様子なので先に行ってしまったと彼の母親は語っていた。
「にしても、親に報告だけして先に行っちまうなんて、ジュンってせっかちなんだなぁ」
自分もどこか人のことを言えない彼の個性のことを言うと横からコウキが苦笑いしつつジュンのことを話す。
「確かにジュンは韋駄天のようでせっかちで慌て者でドジで、気も短いし、どこか頭も悪いよ」
「そこまで言うのかよ!」
「いつものことだし、事実だしいいよ」
「あ、そーなのか・・・」
爽やかな笑顔を浮かべつつ友達の短所を容赦ない様子でペラペラと語るコウキを見て、なんかこいつを敵に回しちゃいけないのかもしれない、とこの時クウヤは思った。
「それでコウキ、おれにオススメのアイテムってなんだ?」
「それはね・・・ああ見つけた、あれだよあれ!」
そう言ってコウキが指さしたのは「ポケッチカンパニー」という企業の看板だった。 そこではポケッチと言うものを宣伝していた。
「ポケッチ?」
「そう、ポケモンウォッチ、略してポケッチ! シンオウ地方のポケモントレーナーの必需品のようなもので持ってるととっても便利なんだよ!」
「へぇ、それってコウキも持ってるのか?」
「ああ、ほらみて!」
そういってコウキは腕についているものをクウヤに見せた。
「へぇ、かっこいいな!」
「でしょ、だからクウヤくんもこのチャンスにゲットしちゃおうよ! 今ならこのポケッチがタダで手に入るイベントもあるんだよ!」
「イベント?」
とりあえず、クウヤとコウキはポケッチカンパニーのある場所に向かった。
そこではたくさんの旗が立っておりその旗には「ポケモンバトルミニ大会! 優勝者にはポケッチプレゼント!男の子は青、女の子はピンクだよ!」と書いてあった。
「ポケモンバトル大会!?」
「ね、いいでしょ」
「へぇ、ポケッチも手にはいるしポケモンバトルも楽しめるな!
おもしろそうだしおれもやってみよう!」
「それじゃあエントリーするかい!」
「もち! ・・・っておまえはいいのかよ?」
「僕はポケッチ持ってるからね」
「ふぅん」
というわけで、クウヤはバトル大会にエントリーし、ポケッチをかけたポケモンバトルをすることになった。 もっとも、クウヤはポケッチよりもバトルの方が楽しみなのだが。
こうして始まったポケモンバトルの小さい大会。 クウヤの初戦の相手はケムッソを使う少年だった。
「ケムッソ、たいあたり!」
「ヒーコ、ジャンプしてかわして、ひっかく攻撃!」
ケムッソのたいあたりを回避して真上からひっかく攻撃をくらわして、さらにひのこを浴びせて相手のケムッソを倒した。
「一回戦、勝者はクウヤくんです!」
「へへ、やーりぃ!」
事前にヒーコの技を知っていたクウヤはうまくヒーコに指示を出して順調に勝ち進んでいった。
「ひのこ!」
「みずでっぽう!」
次に出てきたのが相性の悪い水ポケモンのキャモメでも怯まずうまいタイミングで指示を出して勝ち、いよいよ次が決勝戦だ。
「うわぁ・・・あっという間に決勝戦かぁ・・・。 クウヤくん強いね!」
「えっへへ」
「次で勝てば、ポケッチゲットだよ!」
「おう、ここまできちゃったからには勝ってやるぜ!」
コウキとそう会話を交わし、決勝に対し勢いをつけようとしたとき、突然その会場にアナウンスがながれた。
「緊急放送です、優勝商品のポケッチが、何者かに盗まれてしまいました!」
「えっ!?」
「取り急ぎ予備のポケッチをご用意するので決勝戦の時間をわずかに延長させます、お待ちください」
というアナウンスが終わったあとでクウヤはぽかんとし、コウキは辺りをキョロキョロしはじめた。
「どうした、コウキ?」
「いくら予備があって大会が続くといっても、優勝商品が盗まれるなんてただ事じゃないよ」
「そりゃあそうかもしれねぇけど・・・犯人が分かんなきゃなにもならねぇぜ? 泥棒はいけないことだから、見つけたら懲らしめるけどさ」
「そっか」
クウヤとの短い会話を終えたコウキはまた辺りをキョロキョロしだす。 ふと、コウキの視線は一人の男に目が止まった。
「あの男、どこか動きが変だ・・・」
「え?」
「鞄をあんな風に抱えて視線を泳がせて周囲を気にしているなんて・・・なんだか怪しいよね?」
「まぁ変な野郎だなって思うけど・・・って、コウキ?」
コウキはその男に気づかれないように近寄り、なにかを耳打ちした。 すると男はコウキに驚いてそのまま走り去っていく。 コウキはそれに動じずナエトルを出すと技を指示した。
「ナエトル、たいあたり!」
コウキの指示通りに動いたナエトルはその怪しい男にたいあたりをかましその鞄を空中に放り出す。 ヒーコガそれをキャッチし鞄の中を確認すると、そこには優勝商品の札がついたポケッチが入っていた。
「やっぱりあいつがポケッチ泥棒だぁー!」
「・・・ちぃ!」
コウキの声で辺りは騒ぎだし、犯人の男は舌打ちするとその場を走り去っていった。
「犯人、逃がすもんか! 行くぜヒーコ!」
クウヤはヒーコに呼びかけ肩に乗せると、犯人を追っていった。
「あのヤロー、この洞窟に入っていったよな?」
「ヒコッ!」
犯人を追っていたクウヤたちがたどりついたのは洞窟だった。 この洞窟はクロガネゲートと言い、コトブキシティとクロガネシティを結ぶ道のようだ。
「なんか・・・いつかのデジャブを感じるんだけど」
以前も泥棒を追いかけて洞窟に行き、その泥棒とポケモンバトルをして盗まれたものを取り返したことがある。 そんなことを思いだし苦笑いしながらもポケッチ泥棒の男を捜す。
「君、こんなところでなにをしている!」
「え!?」
声をかけられ犯人の男かと思い警戒しつつ声のした方向をみると、そこには30代か40代くらいの、トレンチコートを身につけた男性だった。
「おっさん、誰」
「私の名は・・・いいや、本名は明かせないな・・・ここはコードネームのハンサムと名乗っておこう!」
「え、よくわかんないけど、わかっておく・・・」
「どっちだそれは」
クウヤの意味不明な言葉にあきれつつツッコミをいれるハンサム。
「とにかく、いくらポケモンがいるとはいえ子供がこんなところでなにをやっているんだ?」
「おれは子供じゃない、おれの名前はクウヤ! ここに泥棒が入り込んでそいつを捜してるんだよ!」
「泥棒!?」
「そうだよ、んじゃあ悪いけど先いくぜ!」
ハンサムにそれだけを言い残して先へ行こうとしたら、奥から叫び声がして、直後こちらに向かって走ってくる男が一人・・・。
「あー、泥棒ヤロー!」
「うぎゃあああ!!!」
「ぐぼっ!?」
泥棒の男はクウヤと衝突して床にも激突、打ち所が悪かったのかそのまま気絶した。
「大丈夫か、クウヤくん!?」
「お、おぅ・・・ってか何があったんだ・・・」
尻餅をつきハンサムの助けを借りつつ立ち上がると、奥からキャアキャアというなにかの鳴き声が響いてきた。
「・・・は?」
その鳴き声の正体を知って、クウヤは目を点にした。 鳴き声の正体は、たくさんのズバットの軍団だった。 ズバット軍団はクウヤとハンサムを敵と見なして襲いかかってきた。
「グレッグル!」
ハンサムは青いからだの蛙のようなポケモン、グレッグルを出してズバットに対抗する。
「ヒーコ、ひのこ!」
ひのこ攻撃で次々にズバットを倒していくがきりがない。
「こいつら、なんで・・・!」
「おそらくこの泥棒男がこのズバットを怒らせてしまったのだろう! この窮地を打開するには全部倒すしかない!」
「それじゃあキリねぇよ・・・!」
そこでクウヤはあることに気がつき、ヒーコに指示を出す。
「そうだヒーコ、あのズバットにひっかくこうげき!」
「ヒッコォ!」
クウヤの指示にあわせて指さした先のズバットにひっかく攻撃を浴びせ、さらにひのこで攻撃して弱らせる。
「それ!」
そこにクウヤはズバットに向かってモンスターボールを投げてそれをゲットした。 それと同時にズバットの集団は逃げ帰っていった。
「やっぱりこいつがドンだったんだな!」
「むむ、なぜわかったんだ!?」
「こいつが一番でかかったんだもん、すぐわかっちゃったぜ!」
「ほぅ・・・!」
ハンサムはクウヤに素直に感心するしかなかった。 あの一瞬、かつ混乱の中ですべてのズバットの大きさを比べるのはほぼ不可能だというのに、
それをやってのけたのだから。 クウヤの実力を認めたハンサムは泥棒男に手錠をかけ、彼を連行すると言った。
「改めて名乗っておこう、私は国際警察のハンサムだ! それではクウヤくん、またな!」
「あ、お・・・おぅ・・・」
ハンサムは敬礼をして、クウヤの前から去っていった。
「なんか変な人だったな・・・。 でも、警察だって言うから悪い人じゃないんだよな?」
こうして優勝商品ポケッチ盗難事件は幕を閉じた。
帰ってきたときすでにミニバトル大会は終わっていたがクウヤは戦うまでもなく優勝だ、と言われ実力を認められた。 ポケッチカンパニーから感謝の意もこもった優勝商品のポケッチを受け取り、見事ポケッチをゲットしたのだった。 正直機械はあまり得意ではないのだが記憶力はいい方ではあるので説明書の内容を必死に暗記して使い方を覚える。
「でももうちょっとポケモンバトルしたかったなぁ」
「やっぱポケッチよりもそっちなんだね」
「当たり前だろ!」
コウキの言葉に対しクウヤは正直な返しをした。 本当にそう思っていたから否定も言い訳もしない。
「でもコウキすげぇな、怪しい動きをしている男をみただけで犯人だってわかるなんて!」
「はは、僕、昔から人の動きをみるのが得意でね・・・推理とかの謎解きも好きなんだ」
「そうだったのか」
どうやらコウキはミステリー好きのようだ。
「でも知識ならヒカリちゃんの方が上だよ、それにジュンだって結構いいやつなんだ」
「え、でもおまえさっき」
「うん、ジュンの悪口を言ったね」
「自覚あんのかよ」
どうたらあの時のジュンの悪口ラッシュは自覚あって言っていたようだ。
「でもね、ジュンは本当は他人のことやポケモンを気遣える優しい男の子だよ。
どんなに怒ったりしても絶対手をあげたりなんかしないんだ」
「へぇ~」
「幼なじみでいつも一緒に行動してたからわかるんだよ。」
コウキはあくまで正直なのでそこに善悪はないのだ。
彼の性格を理解したクウヤは彼とも、そしてジュンやヒカリともいい友達になろうと思った。
その思いをコウキに打ち明けたら、コウキもクウヤといいライバルになりたいと返事を返す。
「おれ、ポケモンセンターでポケモン回復させたら早速次の町を目指すよ!
おまえはどうする?」
「僕はもう少しこの辺りでポケモンを集めるよ。」
「そっか、んじゃあ先に最初のジムをクリアさせてもらうぜ!」
「かまわないよ、必ず追いついて追い越すから!」
「へへっ」
と、クウヤはコウキとわかれポケモンセンターに向かう途中で、あることを思い出し、一個のモンスターボールを手に取る。
それは先ほど捕まえたズバットが入ったモンスターボールであり、それ手に取って、にやりと笑った。
「仲間も一匹増えたんだったな!
よろしく頼むぜ、ズーバ!」
どうやらこのズバットを旅のメンバーに加えるようだ。
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この小説、ちゃんと続けられるだろうか(突然何!?)