「ふぅん、なるほどねぇ~…」
先端技術医療センター。ゲーム病を患った男性は一部の関係者しか知らない専用の病室へと運び込まれ、ベッドに寝かされて眠りについている。その一方で、屋上では看護師のステラ・ジートは鉄柵に肘をついたまま、自身の隣に立つ少年―――ディアーリーズに興味深そうな視線を向け、ディアーリーズは気まずさからステラに向けられる視線から逃げるように視線を逸らしていた。
「これはビックリだ。まさかこんな形でOTAKU旅団の一員で、しかも仮面ライダーでもあったなんてねぇ。また1つ面白い情報を手に入れてしまったよ」
「…僕を捕まえるつもりですか?」
「いやいや、そんな事はしない。というかする訳ないじゃないか」
「へ…?」
しかしステラの口から返って来た一言は、ディアーリーズを更に困惑させる。
「いや、でも僕はあなたにとって敵なんですよ? 捕まえようと思うのが普通なんじゃ…」
「立場上はね。けど、君がゲーム病の事を知っている理由を聞いて何となくだけど理解は出来たよ……少なくとも君は悪人ではないだろう?」
「…何を証拠に?」
「仲間を救いたくてバグスターに挑み、その結果とある仮面ライダーに魔力を全て奪われた……文章だけで表してみるなら、非常に間抜けで無謀も良いところだね」
「ゲフッ!」
サラリと吐かれる毒舌で、ディアーリーズの心にダメージが入るも、ステラは気にせず話を続ける。
「…悪人なら、そんな愚かで無駄なマネはしないよ。君の人間性を図る為の判断材料はそれだけで充分さ」
「ステラさん…」
ステラが見せる小さな笑み。それは先程までのような含みのある笑みではなかった。
「…まぁ最も、悪人ならもっと上手い演技をするだろうからねぇ。その点、君は演技が下手糞だね」
「グガフッ!?」
そしてディアーリーズを弄る事も忘れないステラ。その場に膝を突いて落ち込むディアーリーズを見たステラは再び含みのある笑顔に戻る。
「…まぁ実際、魔導師の中にもいるんだよ。今の管理局の在り方に対して、疑問を抱いている人間がさ。僕もその1人だからね」
「え?」
「ウルティムス君。僕が何故、仮面ライダーガーディアンとして活動しているか分かるかい?」
「? 患者を救う為じゃないんですか…?」
「それもあるけど、僕の場合はもう1つある……特衛隊を潰す事だ」
「特衛隊…? ステラさん、それって一体…」
「ここから先は、そこで盗み聞きをしてる人達も交えて話すとしようか」
「へ?」
ステラが振り返った先の階段……そこから上がって来たのはokakaと桃花だった。2人の顔を見たディアーリーズは思わずうげっと表情を歪ませる。それに対し、okakaは一瞬でディアーリーズの目の前まで接近し…
「こんのアホタレが」
「げぶふぅ!?」
ディアーリーズの顔面に、強烈な飛び膝蹴りを炸裂させた。突然過ぎる一撃に倒れたディアーリーズをokakaが無理やり掴み起こす。
「おいコラ、何をアッサリと自分の素性を晒しちゃってんだテメェはよぉ? 俺達ゃ管理局から追われてる身なのを忘れたのか? ちったぁ犯罪者としての自覚を持ったらどうなんだ? なぁオイ?」
「ず、ずみまぜんでじだ…!!」
「一城様、首を掴んでは彼も喋りにくいかと」
「まぁまぁ君達。こんな所で争わないでくれたまえ。屋上とはいえ、ここは病院なんだよ? ここで働いている看護師の身としては、ここに騒ぎを持ち込んで貰うのは勘弁して貰いたいな」
「…たくっ」
「ぷげ!?」
okakaはディアーリーズを乱暴に放り捨て、ステラと向き合う。
「…アンタもアンタだ。このアホにわざわざ情報を与えようとするなんて、一体何を考えてる?」
「言っただろう? 特衛隊を潰す為さ。その為に利用出来る者は利用した方が効率が良いからね」
「…なら、その特衛隊について話してくれるとでも言うつもりか? 話が上手過ぎて疑ってしまうな」
「信じるかどうかは君達次第だ。まぁもちろん、ただで話すつもりは無いよ。話す条件として…」
-ピピピピ!-
ステラが身に着けている聴診器―――ゲームスコープが反応する。
「…そうだね、せっかくだから、君にも手伝って貰おうかな? バグスター退治をね」
「ほう? 何故俺が、バグスターと戦えると思ったんだ?」
「残念だけど、誤魔化そうとしても無駄だよ」
ステラがスーツの胸ポケットから取り出した1枚の写真。それを見たokakaは表情が一変し、すぐに引き攣った笑みを浮かべる羽目になる。何故なら…
「ちなみに、これとは別に他の証拠も確保してるから。引き受けてくれるよね♪」
「…ちょっと、okakaさん?」
「…言い逃れ不可ですね、一城様」
「ッ……アサシンとしては最大の屈辱だな、これは…!」
その写真には、仮面ライダースニークと並び立ち、プロトディケイドライバーにエグゼイドのカードを装填しようとしているokakaの姿がバッチリ映ってしまっていたのだから。
『グ、ググググ、ググ…!!』
「いやぁ!? だ、誰か助け…ッ…!!」
ゲーム病患者である男性の実家と思われる、大きな一軒家の中庭。そこでは患者の妻と思われる女性がコラボスバグスターの襲撃に遭っていた。大声で近所の住民に助けを求めようとした女性だったが、コラボスバグスターに首を掴まれてから強く首を絞められ、女性は意識を失いその場に倒れ伏す。そこへコラボスバグスターが更に攻撃を加えようとしたが…
≪ダ・ダーン!≫
『ググゥッ!?』
「させるかよ、馬鹿が」
≪ステージ・セレクト!≫
コラボスバグスターを追ってやって来たスニークが、ガシャコンカービンで狙撃した事で失敗。銃撃でコラボスバグスターが倒れた直後、スニークは即座にゲームエリアを選択し、一軒家の中庭ではなく何処かの教会跡地らしき場所へと強制的にコラボスバグスターを移動させる。
「さて、
『グググ…!!』
≪ハイドロレスキュー!≫
「! レベル3のガシャットか」
≪ガシャット!≫
「戦る気か、上等だ…!」
≪サイレントホロウ…!≫
何処からか取り出した橙色のガシャット―――ハイドロレスキューガシャットを頭部の挿し込み口に装填したコラボスバグスターは姿が変異し、背中にタンク、両腕に放水用ノズルを装備したレスキューコラボスバグスターへと強化を遂げた。それに対しスニークもサイレントホロウガシャットを起動し、ゲーマドライバーのレバーを閉じてからサイレントホロウガシャットを装填する。
≪アガッチャ! 彷徨う亡霊…! ホロ・ホロ・ホロウ…! サイレントホロウ…!≫
「さぁ、来いよ…!」
『ググググ!!』
ホロウミッションゲーマーレベル3となったスニークは左肩のスピリットランプを手に取る中、レスキューコラボスバグスターは両腕のノズルから高圧水流を放ち、スニークはホロウゲーマの力で幽霊のように浮遊し高圧水流を回避する。
「! もう始まっていたか…!」
彼等が戦闘を開始する中、バグスター反応を察知して来たステラ、ディアーリーズ、okaka、桃花の4人も現場に到着した。ステラは既に仮面ライダーガーディアン・ディフェンスゲーマーレベル2に、okakaは仮面ライダーPDエグゼイド・アクションゲーマーレベル2に変身を完了している。
「さて、戦闘データの収集と行こうか。君達の分もついでにね」
「チッ、可愛い顔して腹黒い女だぜ…!」
≪ガシャコンシールド!≫
≪ガシャコンブレイカー!≫
ガーディアンはガシャコンシールドを、PDエグゼイドはガシャコンブレイカーを召喚。スニークとレスキューコラボスバグスターの戦闘へと介入していく。その様子を見ていたディアーリーズは歯痒そうな表情で桃花と共に戦闘を見ていた。
「…やっぱり、僕は参加出来ないんですね」
「当然です。あなたはゲーマライダーではなく、医療知識もありません。参加しようものなら、私が強制的に止めさせて貰います」
「…あの、それは分かったんですけど桃花さん。何故に僕の右肩を掴んでいらっしゃるんでしょうか?」
「あなたを逃がさない為です」
「いや、別に逃げはしませんって…ちょ、痛ダダダダダダダ!? と、桃花さん、握る力がどんどん強くなって痛ダダダダダダダダダダダダダダダ!!?」
≪ジャ・キーン!≫
「どらぁ!!」
『グゥ!?』
「!? テメェ等…!」
「ごめんね、そこのお兄さん。僕達も介入させて貰うよ…っと!」
「…面倒な」
PDエグゼイドとガーディアンはと言うと、まず跳躍したPDエグゼイドがガシャコンブレイカー・ブレードモードでレスキューコラボスバグスターに斬りかかり、反撃して来たレスキューコラボスバグスターの放水攻撃をガーディアンがガシャコンシールドで防御する。突然割って入って来たPDエグゼイドとガーディアンの存在を見たスニークは厄介そうに呟いてから、ガシャコンカービンでレスキューコラボスバグスターを狙い撃つ。
「大体テメェ等、またあの餓鬼を連れて来やがったのか。あんな奴、いたところで足手纏いなだけだぞ」
「彼は僕の助手だ。今後も僕が色々とパシッて行くからよろしく」
「!? おい待て、そんな話は聞いてないぞ!! 一体どういうつもり―――」
-ドガガガガァンッ!!-
「「ぐぁあっ!?」」
「!?」
直後、スニークとPDエグゼイドの背中に謎の銃撃が命中し、2人は同時に吹き飛ばされる。何事かとガーディアンは銃撃が飛んできた方向を見据える。
「ッ…チタニウム!? どうして奴が…」
『……フン』
銃撃を仕掛けて来たのは、あの銀色の装甲を纏ったロボット型のバグスター怪人だった。ガーディアンから“チタニウム”と呼ばれたそのバグスターは、指先から煙が噴き出ている左手を下ろした後、背中に装備していた身の丈サイズの大剣―――メタルザッパーを手に取り構えてみせた。
「ッ……んの野郎!!」
『フッ…!!』
起き上がったスニークはチタニウムバグスターの姿を見るや否や、忌々しげな感情を全く隠そうともせず、スピリットランプを振るい青い人魂を放出。チタニウムバグスターは振り下ろしたメタルザッパーで飛んで来る人魂を掻き消した後、その場から駆け出しスニーク目掛けて勢い良く斬りかかり始めた。
「!? おいおいスニーク、患者の治療が先だろ!!」
「アサシン君、彼を止めるんだ!!」
「何…!?」
「奴はチタニウム!! ロボット操縦アクションゲーム『メタルライドソルジャーγ』のデータを取り込んで誕生したバグスターだ、レベル3で勝てる相手じゃない!!」
「レベル3で勝てない……となるとそれ以上のレベルって事か、面倒なのが出て来たな…!!」
『ハァッ!!』
「うぉわっ!?」
「!? スニーク、大丈夫か……っと!?」
ガーディアンの懸念通り、チタニウムバグスターが振り回したメタルザッパーでスニークが吹き飛ばされ、PDエグゼイドのすぐ近くまで転がって来た。そこへチタニウムバグスターが飛びかかり、左手の指先に仕込んだ光線銃フィンガーズ・ガンマから光線を何発も放ち、PDエグゼイドを襲撃。PDエグゼイドは間一髪で光線を回避しガシャコンブレイカーでメタルザッパーの斬撃を受け止める。
「チタニウム、だっけか……アンタの目的は何だ?」
『…知れた事。我が同胞達を現世に解き放ち、我々バグスターが人類を支配する…!!』
「へぇ、なるほど……ベタ過ぎる目的で少々つまらねぇな!!」
ガシャコンブレイカーのBボタンを連打し、斬撃を強化しメタルザッパーを押し返すPDエグゼイド。しかしチタニウムバグスターは怯まず、左手の指先をPDエグゼイドの腹部に押しつけ、そのままフィンガーズ・ガンマから光線を連射。続けて後方からスピリットランプで殴りかかろうとして来たスニークにも光線を撃ち放つ。
「「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」
「2人共!?」
『グググッ!!』
「く、この…!!」
PDエグゼイドとスニークに助太刀しようとするガーディアンだったが、そこにレスキューコラボスバグスターが高圧水流を放って来た為、思うように2人の援護が出来ない。仮面ライダー側が少々不利な戦況に陥っていたその時だった…
-ブゥゥゥゥゥン…ブゥゥゥゥゥン…-
「「「!?」」」
『『!?』』
「え、何だ…!?」
「これは…?」
突如、彼等が戦っていたゲームエリア全体に謎のエフェクトが広がり、彼等の周囲に赤と青で配色されたカプセル型のフィールドアイテムが設置され始めた。これには離れた位置で戦況を見ていたディアーリーズと桃花も驚きの表情を示し、PDエグゼイドはこの状況を作った張本人を発見する。
「! アイツは…」
≪一城、アレは確か…!≫
「……」
PDエグゼイドが見つけた物……それはレベル1の姿をした謎の仮面ライダーだった。手術衣の帽子とマスクが特徴的なその仮面ライダーは、左手の指先でゲーマドライバーのレバーを弾き、レバーを開いてみせた。
≪ガッチャーン! レベルアップ!≫
≪医術をマスター! 極めろドクター! マスタードクター!≫
「……」
アーマーがパージされ、等身大の人型となった謎の仮面ライダー。ダークブルーのインナースーツ、その上に纏われた白衣のような軟質装甲、黄色の目を持つその戦士―――“仮面ライダーザイエン”は、無言のまま右手に装備しているゲームパッド型の武器―――ガシャコンバグライザーを構える。それを見たチタニウムバグスターは驚愕の反応を示した。
『!? 貴様、何故その武器を持っている…!!』
「……」
≪チュ・ドーン!≫
『!? チィ…!!』
『ググゥ!?』
ザイエンは何も答えない。無言でガシャコンバグライザー・ビームガンモードの銃口からビームを連射してチタニウムバグスターとレスキューコラボスバグスターを後退させた後、ザイエンはガシャコンバグライザーを右手のグリップパーツから取り外し、向きを変えてから再度グリップパーツに取り付ける。
≪ギュ・イーン!≫
「……」
「!? ぐぉっ!?」
「な、くぅ……うぁあ!?」
直後、ザイエンは急に狙いを変えてスニークとガーディアンに襲い掛かり、スニークには擦れ違い様にガシャコンバグライザー・チェーンソーモードの刃で斬りつけた後、攻撃を防ごうとしたガーディアンのガシャコンシールドを強引に跳ね除け、その胸部にガシャコンバグライザーの斬撃を命中させる。
≪な!? 彼は一体どちらの味方なのかね…!?≫
「…アイツには関係ねぇ話だよ。敵も味方も、その両方が奴の実験に巻き込まれるのさ」
「……」
≪スノーマンエクスプレス!≫
PDエグゼイドがそう告げる中、ザイエンは腰のホルダーから水色のガシャット―――スノーマンエクスプレスガシャットを取り出し起動。出現した白銀の蒸気機関車―――エクスプレスゲーマがザイエンの周囲を走る中、ザイエンはレバーの閉じられたゲーマドライバーにスノーマンエクスプレスガシャットを装填、再度レバーを開いた。
≪ガシャット! ガッチャーン! レベルアップ!≫
≪医術をマスター! 極めろドクター! マスタードクター!≫
≪アガッチャ! 凍って走れ!(カチンコチン!)進めよ! スノーマン・エクスプレス!≫
エクスプレスゲーマが変形し、ザイエンの上半身と両足に装着される。白銀の胸部装甲、機関車の煙突を模した左肩の迫撃砲、両足に装備された機関車の車輪、そして機関士の帽子を模したヘッドギアパーツなどが特徴的な強化形態―――エクスプレスドクターゲーマーレベル3となったザイエンは、左肩の迫撃砲から冷凍弾を放ち、周囲の地面を次々と凍らせ始める。
『貴様ッ!!』
チタニウムバグスターが左手のフィンガーズ・ガンマから光線を連射するも、ザイエンは両足の車輪を高速回転させて凍った地面の上を走り、光線を全て華麗に回避する。そして凍った地面を滑りながら移動するザイエンはチタニウムバグスターのメタルザッパーをガシャコンバグライザーの斬撃で弾き、車輪が回転した右足でチタニウムバグスターの胸部を削るように蹴りつけた。
『グオォッ!? お、おのれ…!!』
『グググッ!!』
「……」
≪ガシャット! キメワザ!≫
今度はレスキューコラボスバグスターが高圧水流を放つも、それを見切っていたザイエンはゲーマドライバーからスノーマンエクスプレスガシャットを抜き取り、左腰のスロットホルダーに装填。左肩の迫撃砲で飛んで来る水流を凍結させた後、ザイエンはスロットホルダーのボタンを2回押す。
≪SNOWMAN CRITICAL STRIKE!≫
『!? ググ、ググググググ…ッ!?』
≪会心の一発!≫
「……」
≪GAME CLEAR!≫
迫撃砲から放たれる冷凍弾がレスキューコラボスバグスターに何発も命中し、レスキューコラボスバグスターは全身が凍りつき動けなくなる。そこに両足の車輪を高速回転させたザイエンが迫り、振り下ろされたガシャコンバグライザー・チェーンソーモードの刃でレスキューコラボスバグスターは木っ端微塵に粉砕。ゲームクリアの音声と共に、ザイエンは手元に飛んで来たハイドロレスキューガシャットをキャッチし、それを見たチタニウムバグスターは忌々しげに告げる。
『貴様……この借りはいずれ必ず返してくれる…!!』
そう言って、チタニウムバグスターはその場から一瞬で姿を消す。バグスターがこの場からいなくなったのを確認したザイエンはガシャコンバグライザーを再度ビームガンモードに切り替え、即座にスニークとガーディアン目掛けてビームを放射した。
≪チュ・ドーン!≫
「ぐぅ!?」
「うぁあっ!?」
「!? ステラさん!!」
「……」
ザイエンの攻撃でスニークとガーディアンは変身が解け、それぞれ秋水とステラの姿に戻ってしまう。ディアーリーズがステラに駆け寄る中、ザイエンはその光景を無言で見続けた後、その場から跳躍し何処かへ去って行ってしまう。それと共に、ゲームエリアも解除され一同は最初にいた先端医療技術センターの屋上に戻って来た。
「…あの野郎、引っ掻き回すだけ引っ掻き回して帰りやがったな」
PDエグゼイドも変身を解除してokakaの姿に戻った後、胸部を手で押さえながらフラフラ立ち去ろうとする秋水に声をかけ、秋水はokakaを強く睨みつける。
「おい、スニークさんや。傷の手当てくらいなら出来るがどうする?」
「…お断りだ。誰がテメェ等の治療なんざ受けるかよ」
「あらら、やっぱ連れないねぇ」
「フン…」
それだけ悪態ついてから、秋水はノイズと共にその場から姿を消す。okakaは溜め息をついた後、今度はディアーリーズに支えられながら立ち上がっているステラに声をかける。
「さて、ステラさんよ。さっきの話はどういう事だ? ディアーリーズをパシるだとか何だとか言っていたが」
「…言葉通りの意味だよ。彼にはしばらく、僕の為に色々と働いて貰うつもりさ」
「そんな事―――」
「拒否権は無いよ? この証拠映像が特衛隊に渡るのは君だって嫌だろう?」
「―――チッ」
ニコニコ笑みを浮かべるステラに、流石のokakaも今回ばかりは悔しげに舌打ちする。これ以上、敵側に少しでも情報が渡るのはokakaも避けたいと思ったようだ。
「す、すみませんokakaさん、僕のせいで…」
「いや、もう良い。俺も人の事言える立場じゃなくなったからな……あぁ分かったよ。しばらくそいつを存分に扱き使うと良いさ。その代わり教えて貰おうか。特衛隊についてな」
「…ん、分かったよ」
ステラはディアーリーズに手を離して貰い、鉄柵に背を預けてから語り始める。
「特殊衛生隊……通称は特衛隊。バグスターウイルスの治療法や、兵器としての有用性を調べる為に設立された実験部隊の名称さ」
「…設立者は誰だ?」
「エーリッヒ・マウザーさ」
「「!!」」
それはokakaとディアーリーズも聞き覚えのある名前だった。エーリッヒ・マウザーはmiriがかつて所属していた反管理局組織を裏切って壊滅させた事で管理局上層部の幹部となり、篝親子が暮らしていたイルヴィーナが壊滅する切っ掛けを作った張本人。ディアーリーズにとっても非常に因縁深い人物だ。
「マウザー…ッ…!!」
「…あの男、随分と恨まれているようだね」
「まぁ、そいつにとっては敵のような存在だからな……それで? 奴は特衛隊なんぞ設立して、一体何を企んでやがるんだ?」
「おっと、今回はここまでだ」
「「は?」」
-ガキィィィン!-
「!?」
「え、ちょ、はいぃっ!?」
ステラが会話をいきなり中断した直後、ディアーリーズの全身にチェーンバインドが巻き付けられた。いきなり過ぎる行動にディアーリーズが焦りの声を上げるも、ステラはグルグル巻きにされたディアーリーズを片手で軽々と肩に持ち上げる。
「僕がどれくらい情報を渡すかは、彼の働き次第で大きく変わる……まぁそういう訳で。悪いけど、しばらく彼を借りていくからよろしくね♪」
「え、ちょ、ステラさ―――」
ディアーリーズの返事を聞く事も無いまま、ステラは転移魔法でその場から姿を消す。結果、屋上にはokakaと桃花の2人だけが取り残されたのだった。
「…自由なお方ですね、彼女」
「…取り敢えず言えるのは、あんなのに弱み握られた過去の自分を殴りたいって事くらいだな」
木枯らしの吹く音だけが、その場に空しく響き渡るのだった。
場所は変わり、
「博士、如何でしたか? ゲーマドライバーの性能は」
パソコンのキーボードを打ちながらイーリスがそう告げると、彼女のすぐ近くに立っていた仮面ライダーザイエンはゲーマドライバーからマスタードクターガシャットを引き抜き、変身を解除する。
「…素晴らしい、その一言ですよ」
変身者―――竜神丸はマスタードクターガシャットを眺め、楽しそうに笑みを浮かべる。
「私の性能テストは完璧です。さぁ、次はあなたの番ですよ? イーリスさん」
「…了解しました」
イーリスは椅子から立ち上がり、ゲーマドライバーを腰に装着。そして白衣のポケットからはライトグリーンのカラーリングが施されたガシャットを取り出した。
≪ボンバースタント!≫
「仮面ライダーイグニス、性能テストを開始します」
See you next game…
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