No.913015

ポケモンDPt 時空神風伝 01

フウイさん

ここでまた、別の場所に掲載していたポケモンの二次創作長編をはじめようと思います。
今回の主人公は前作・トライメモリーズに続いて彼です。
この小説にはオリトレ、オリキャラ、同人設定などの要素があるのでご注意ください。
読むときは自己責任でおねがいします。

2017-07-06 10:52:18 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:630   閲覧ユーザー数:626

第一話 新しい物語の報せ

 

ポケットモンスター、縮めてポケモン。

この世界にいる、不思議な不思議な生き物。

 

そんなポケモンと人間が共存している世界の中にある、

北の地、シンオウ地方。

 

そこには数々の神話が眠っている。

 

特に有名な神話がある。

 

なにもない宇宙からこの世界を生み出したのは、

一匹のポケモンだった。

 

一匹のポケモンは自分の分身として、

まず、世界を形作る2匹の分身を生み出した。

 

その胸に究極の硬度と輝きを持った、

時を司る時の神ディアルガ。

その両肩に究極の真円と光を持った、

空間を司る空間の神パルキア。

 

2匹は3匹を祈りから生み出し、それを「心」の象徴にした。

 

人とポケモンがうまれ、世界に命があふれた。

 

そして、神は最後に、自分の分身として第三の神を生み出し

この世界の調和を守る役割を与え、世界の裏においた・・・。

 

そんな神話が、ここにあった・・・。

 

そして、その神話はこれからの物語に

大きな影響を与える。

 

 

シンオウ地方に向かって進む船があった。

 

「うわぁー!

あそこが、シンオウ地方かぁ!」

 

その船に乗っていた薄い黄色と白の帽子をかぶった短い黒髪の少年が、船の進む方向に見えた大陸をみてその翠色の双眼を輝かせている。

動きやすい軽装とリュック、そして腰にはモンスターボール用のベルトを身につけていることから、旅をしていることがわかる。

 

「・・・シンオウ地方・・・!

おれの新しいポケモントレーナーとしての道が始まるんだ・・・!」

 

この少年、名前は翠風空矢。

かつてホウエン地方を旅してジムバッジを8個集めて制覇し、またホウエンを混乱に陥れた伝説のポケモン同士の戦いを友人やポケモンたちとともに抑えた経歴を持つポケモントレーナーだ。

とても純粋で明るく元気な性格であり、無鉄砲で直情すぎるところもあるが、困っている人やポケモンを放っておけない正義感の強さと熱血さを兼ね備えた勇気に満ちた13歳の少年だ。

 

「・・・アーチ・・・みんな・・・待っていろよ・・・。」

 

かつての自分のポケモンたちのことを思いだし考え、腰のモンスターボールに手をかける。

新品の、どのポケモンも入っていない空のモンスターボール。

これからそこに、どんなポケモンが入り彼の仲間になるのかはわからない。

 

「おれ、必ず帰ってくるから。

新しいポケモンと一緒にうまくやって、シンオウのバッジを全部集めて、またポケモントレーナーとしてレベルアップして帰ってくるから・・・。

だからおっちゃんやセイと一緒に待っててくれ・・・。」

 

なぜ、クウヤがかつて自分とともにホウエンを旅したポケモンを、ルネシティにいる信頼できる人間に預け、新しいポケモンとともにポケモントレーナーとして一から始める道を選んだのかといえば・・・すべての始まりは一週間も前にさかのぼる。

 

 

 

「クウヤ!」

「ん?」

 

ホウエン地方はルネシティ。

クウヤは伝説のポケモン同士の戦いでボロボロになった町の復興も終わったことで平和な日常を送っていた。

自分の側には手持ちのポケモンたち・・・バシャーモ、フライゴン、エネコロロ、ミロカロス、アーマルド、ライチュウがいた。

 

「セイ、どうしたんだ?」

 

そんなクウヤに声をかけてきたのは自分の幼なじみであり義理の兄である冷静沈着で博識な15歳の少年、貴一政だった。

 

「暇なんだろう、だったら今からジムに行こうよ」

「ジムに?」

「ああ、懐かしい人がいるみたいだし」

「懐かしい人・・・だれだろ?」

 

どこか曰くありげに笑うセイの様子が気になりつつクウヤはセイについていってジムに向かった。

ジムの扉を開けた先にいたのは、クウヤとセイのよく知っている男性だった。

 

「おっちゃん!」

「クウヤ、それにセイくんも、いらっしゃい」

「こんにちは、アダンさん」

 

ルネシティのジムリーダーであり、長年クウヤを支えてきた、落ち着きのある優しい性格の男性アダンだった。

だが、クウヤはきょとんとしてしまっている。

 

「セイ、懐かしい人っておっちゃんのことか?

おっちゃんならほぼ毎日会ってるぜ?」

「え」

「・・・ふふ、違いますよクウヤ。」

 

クウヤの天然発言にセイは真顔で硬直し、アダンは静かに笑う。

そのあと、セイは苦笑しつつクウヤに説明する。

 

「あのねクウヤ・・・懐かしい人って言うのは、アダンさんじゃなくて彼のことだよ。」

「え・・・あぁ!」

 

クウヤの前に現れたのは青みがかった緑色の髪の、長身の男性・・・凄腕のトレーナーでありコンテストマスターでもある、アダンの弟子ミクリだった。

 

「ミクリにいちゃん!」

「久しぶりだな、クウヤ。」

「ホント久しぶりだなぁ、ミクリにいちゃん!」

 

クウヤとミクリは実の兄弟のように仲がいい。

クウヤに小さいときはセイが塾や勉強で忙しく相手にしてもらえないときなどに遊び相手になってもらい、またポケモンとの共存のすばらしさなどを教えたのは、ミクリだった。

もちろんセイも、親に強要されている勉強に疲れたときはミクリの助けでこっそり抜け出し彼の水ポケモンと遊んだりもしていたのだ。

ナルシストなところこそあるものの、実際は優しい性格だからクウヤもセイもミクリを慕っている。

 

「でもにいちゃん、どうしたんだよ、仕事は休みなのか?」

「ああ、そうだな・・・それに、クウヤに話もあるしな」

「ん?」

 

ミクリの話にクウヤはきょとんとした。

アダンの案内で応接間に導かれた先でミクリはクウヤになにかの封筒を差しだした。

クウヤがその封を開けるとそこには船が描かれたなにかの券が入っていた。

それが船のチケットだと解ったが一番気になったのはその船に書かれている船の行き先だった。

 

「シンオウ、地方?」

「北の方にある島国だね。」

 

どうやらセイもこのチケットのことを知らなかったらしい。

 

「・・・ミクリ、まさか?」

「そのまさかです、師匠」

 

アダンの言葉にミクリは静かに頷き、クウヤの方に向き直る。

 

「どうだクウヤ、シンオウ地方を冒険したいとは思わないか?」

「え!」

 

ミクリの言葉にクウヤは驚いた。

 

「ポケモントレーナーとしての新しい旅をして、シンオウのいろんなポケモンと出会って、そしてジムも制覇してみたくはないか?」

 

ミクリの話を聞き、クウヤは一気にシンオウ地方に興味がわき、目を輝かせて笑顔で頷いた。

 

「おれ、やってみたい、いきたい!」

「・・・決まり、だな」

 

クウヤの返事にミクリは小さく口角をあげる。

 

 

彼の気持ちにセイも同意したことでシンオウ地方に旅にでることが決まり、早速準備に取りかかっていた頃、ミクリはクウヤにある提案を持ち込んだ。

 

「え、ポケモン達を?」

「ああ。 せっかく新しい場所を旅するというのなら新しいポケモンと一緒にまた一歩から始めてみたらいいんじゃないかと思ってな。

きっとその方が、いいトレーナー修行にもなると思う」

 

ミクリの提案というのは、手持ちポケモンの一新だった。

ホウエンでともに旅をしたポケモンをセイやアダンに預けルネシティに残し、シンオウ地方でまた新しいポケモンを手にして、トレーナーとしてリセットするというもの。

それは彼なりの、クウヤのトレーナーとしての成長をかんがえた結果の提案だった。

 

「・・・」

 

うつむいて考え込んだクウヤに、ミクリは落ち着いて話を続ける。

 

「・・・クウヤの気持ちも、私にはわかるよ。

お前のポケモン達、みんなとてもよく育てられているし・・・お前との絆もとても強い。

手放したくない気持ちも、一緒にいきたい気持ちも分かる・・・。」

「・・・違うよ、にいちゃん・・・」

「?」

 

クウヤはぐ、と拳を握り話を続ける。

 

「にいちゃんの言っていることは正解だよ。

・・・おれ・・・あいつらと一緒にまた冒険もしたい。

でも、おれは・・・新しいポケモンとも出会って一緒に強くなりたい・・・だけど」

「だけど?」

「・・・あいつら達・・・待っててくれるかな?」

「え」

 

クウヤが、一番に心配だったのはそれだった。

自分の気持ちばかり優先して、別のポケモンを仲間にして旅をすること・・・そんな我が儘をアーチたちは受け入れてくれるだろうか。

そんなにクウヤが悩んでいるのは他でもない、ポケモンたちのことを第一に考えているせいだ。

 

「自分勝手な気持ちで手持ちを一方的に変えるなんて、おれできないよ。」

「・・・クウヤ・・・」

 

ミクリが話を続けようとしたとき、クウヤの頭に赤い足がおちた。

 

「うぉぉっ!?」

 

頭を抱えて顔を上げるとそこにはアーチがいた。

そばには他のポケモンたちがいる。

 

「あ、アーチ、みんな・・・!?」

「・・・クウヤ、彼らはお前に、ポケモントレーナーとしてしゃんとしろって言っているみたいだよ?」

「え?」

「手持ちが一新して、別のポケモンといこうとも・・・お前が彼らのことを忘れなければ絆も消えないし信頼も失われない。

お前が彼らを思い続ける限り・・・な」

「にいちゃん・・・」

「離れてしまった、当分会えないだけで絆が消えるんだったら、それは最初から絆なんかではなかったということだ。

だが私は、お前とポケモンたちには本物の絆があると思うよ。」

 

それが、ミクリがクウヤに手持ちの一新をすすめた、もう一つの理由だった。

彼なら距離とかそういうのを気にしないで絆を結び続けられる、それは彼のポケモンも同じだろうとミクリは推測した。

 

「・・・アーチ・・・みんな・・・。

おれ、新しいポケモンと旅したい!

だから、ここで、待っててほしいんだけど・・・いいかな?」

 

クウヤがそう言うと6匹のポケモンは力強くうなずき、クウヤにも笑顔が戻った。

 

 

こうしてクウヤは装いも新たにし、セイとアダンにかつてのメンバーをたくし、彼らに必ずシンオウのジムをすべて制覇して帰ってくると約束して、シンオウ地方いきの船に乗った。

 

「どんなジムリーダー、どんな強いトレーナー・・・そしてどんなポケモンがいるのかな?」

 

自分が頼りにしていた仲間はここにはいない。

友人たちも、家族も、顔見知りも、あそこには誰一人としていない。

これから行く場所のことなんて、なにも知らない。

それにたいして不安なんて感じてない、なんて言えば嘘になってしまう。

 

「えへへ、楽しみだぜ」

 

だがクウヤはそういう不安を決して見せない。

それは断じて強がりなんかではない。

なぜならば、不安を覆い隠してしまうほどに今のクウヤにはこれからの期待と楽しみに満ちあふれているのだ。

 

「待ってろシンオウ地方・・・おれ、絶対に全部のジムを制覇してやるからな!」

 

かつての経験、経歴、全てをおいていって。

心にはこれからの希望を埋めるスペースを作って。

 

ポケモントレーナーとして、あともどりして、また一歩を踏み出す。

 

新しい大地、新しい人々、新しいポケモンとの出会いともに・・・。

 

ここからまた、この少年・・・

 

 

クウヤの新しい冒険が始まる。

 

 

 


 
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