「一人くらい増えても邪魔にならないでしょ?」
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マイ「艦これ」「みほ2ん」
第50話 <寛代の変化>(改)
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「ブー!」
振り返る間もなく私のでん部に衝撃が走った。
「あ痛ぁっ」
思わず飛び上がる。
「誰だっ!」(カンチョーするのは!)
一瞬、テーブルの周辺は騒然とした……が。私は振り返って驚いた。
寛代らしき娘がオヤジのような「ヘン顔」でニタっと笑っている。
「お、お前は寛代じゃないか? もうケガは良いのか」
それには応えず彼女はアカンベーをして走り去って行った。
「何だありゃ?」
北上が笑う。
「あはは、寛代ちゃん元気そうジャン」
「あれが寛代? 信じられないな」
私は中腰のまま、でん部を擦る。
「うーむ、尻が痛い……じゃなくて」
あのワカメのようなサラサラ黒髪ストレートヘアは間違いなく寛代だろうが……しかし雰囲気が変わったな。
「あんなに変なことをする娘じゃなかったのに」
(寛代が壊れた)
私はそう思った。
すると大淀さんも半分呆れたように応える。
「あれば紛れもなく寛代ちゃんですが回復したら改になっていたんです」
「ええ?」
半分振り返った私は改めて彼女に聞いた。
「噂に聞くが艦娘の『改』って、あんなに変わるものなのか?」
「いえ、個体差はあります。ただ寛代ちゃんの場合は、むしろ珍しいパターンだと……」
「へえ」
大人しい寛代ちゃんの方が良かったが……ちょっと下品に壊れ過ぎてないか?
「もしかして深海棲艦に毒されたのか?」
思わず呟いた。
大淀さんは、ただ苦笑するばかりだった。
痔ではないが駆逐艦に思いっきりカンチョーされれば、でん部がヒリヒリする。
(チクショウ、あいつめ覚えていろよ)
……と、司令にあるまじき怒りがこみ上げた。
しかしテーブルに戻って生真面目な大淀さんとクールな北上の顔を見ていたら、さすがに平常心を取り戻した。
(やれやれ……自分が恥ずかしい)
日向の言っていた「平常心」か。司令にも必要だよな。
(それはそうと……)
私は改めて大淀さんに向き直った。
「あとで祥高さんにも伝えて欲しいんだが、お盆前に改めて墓参をしようと思うんだ」
「墓参……ですか?」
大淀さんは、ちょっと意外な表情を見せた。
私は続ける。
「ああ、今日も祥高さんの提案で行ったは良いけど、結局は墓参という雰囲気じゃなかった」
北上が口を挟む。
「上に下に、大騒ぎだったもンね」
「ああ」
彼女が言うと不思議と嫌味がない。それは性格だろうな。私がチラッと彼女を見ると北上は微笑んでいた。
私は続ける。
「別に信心してるほどじゃないが、やはり墓参は、きっちりやりたい。お盆は込むからタイミングを前にずらしてね……もう、お墓の場所は分かったから迷わないだろうし」
納得したような大淀さんも頷いた。
「分かりました、伝えておきます」
そのとき後ろから低い声。
「司令……」
「うわっ」
一瞬、山城さんかと思った。
だが私が、ぎこちなく振り返るとそこに、すまし顔の日向が居た。
「どうした?」
「差し支えなければ私もご同伴願いたく存じます」
「そうか」
今回、彼女は最大級の功労者だ。拒否出来るはずもない。
「分かった。お前も今日は大変だったからな」
私は頷いた。
彼女は少し微笑むと明るい声で言った。
「ありがとうございます」
すると意外な声。
「へえ、それならアタシも行きたいな。あいつが出没したところも拝んでみたいしね」
私は少し慌てた。
「何を言い出すんだ、北上」
「えぇ、何でサ。別に良いよね? だって一人くらい増えても邪魔にならないでしょ? アタシも主体的に動くから」
そう言いつつ彼女は後ろに結んだ三つ編みの髪の毛を鞭(むち)のように振り回す。
(それはヌンチャクか?)
その三つ編みを振り回すなって。チクチクして痛いんだよ……。
「あ、まあ良いか」
気がつくと結局、押し切られた。
北上と日向は、私の目の前で嬉しそうに言葉を交わしている。タイプの違う二人の艦娘を見て私は思った。
この二人の艦娘とは付き合いが長い。だが思い起こせば、その多くは鎮守府での時間だ。
だが艦娘の部隊では指揮官と艦娘が共に闘う機会が普通の軍隊よりも少なくなっていく。それはいけないと思いつつ今直ぐに改善するのは難しいだろう。政治家や上層部から見たら、これほど人間が守られる戦闘システムは他にないからだ。
私も長らく、その傾向が強かった。
しかし今回、美保に着任して、いろいろ考え方が変わった。
特に日向や寛代と行動を共にして艦娘への認識が改まったな。
「このままじゃいけない……か」
「え? 何が」
直ぐ反応したのは北上。
「いろいろ変えていこうってことだ」
「ふうん」
頭の後ろに手を組んでいる彼女。この屈託の無い開けっ広げなところは彼女らしい。
私は言った。
「今回は実家にも寄らないつもりだ」
「へぇ」
「別に良いだろう?」
そう思って、ふと見ると……あれ?
「……」
気のせいか日向がジト目で見詰めていた。
「何だ? 日向……」
「いえ」
すると北上が突っ込みを入れる。
「日向はサ、司令の実家に行きたいんだよね」
「はぁ?」
そりゃ意外と言うか……まさか日向に、そんな嗜好があるとは私も想像すらしなかった。
聞いてみる。
「そうなのか?」
「……」
否定も肯定も出来ずに黙っている日向。
もう一度聞く。
「そもそも、何でウチの実家だ?」
「……」
確か実家に来た艦娘は夕立だけだ……と思って向こうを見ると、その夕立本人が嬉しそうに手を振っている。
「司令っぽい」
「何だよ? それ」
その隣では青葉がブイサインを出している。
(あいつらめ余計なことを日向に吹き込んだな?)
変な噂を立てられても困るから注意してやろうと立ち上がりかけた瞬間、ズン! という衝撃が再び襲った。
「ああぁぁ!」
振り返ると、やっぱり寛代だ。
「なんだ? お前は」
イラついた声で応える私。
「……」
しかし、それに構わず無言で自分を指差す寛代。
「へ? ……あっ、ひょっとして、お前も同伴したいのか?」
盛んに頷く寛代。
「やれやれ……」
私は肩をすくめた。
「仕方ないな」
本当は、もっと静かに参りたかったけど。
「これで4人か」
(ほぼ、軍用車は満席だな)
「実家に行くとは言ってないからな」
私は念のために釘を刺した。
『えぇ?』
どこかから艦娘の残念そうな声……誰だよ? まったく。
正規軍でさえ艦娘は、まだ余り認知されていないのに。まして普通の人間である私の両親のところへ、お盆前に大挙して艦娘を連れていくワケには行かないだろう。
「我慢しろ。命令だ」
『はぁい』
……私は苦笑するばかりだった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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食堂で司令は謎の「攻撃」を受けた。その後、彼はある計画を発するのだった。